下歯肉癌などの下顎骨区域切除や亜全摘後の再建には血管柄付遊離骨移植が第一選択だが,患者の年齢,合併症,病期,下顎骨や周囲組織の切除範囲などを考慮すると血管柄付遊離骨皮弁が適応とならない場合がある。そのような症例に対し,金属プレートや骨による硬性再建を行わずに軟部組織である遊離皮弁単独により再建を行っているので報告する。
対象と方法:腫瘍切除に伴う下顎骨区域切除あるいは亜全摘後に硬性再建を行わず遊離皮弁単独により即時再建を施行した13例である。移植皮弁は腹直筋皮弁10例,前外側大腿皮弁3例であった。
結果:合併症は創感染・創〓開3例,小瘻孔2例であった。術後食餌形態は常食9例,軟食1例,キザミ食2例,全粥摂取可能であったが術後照射した後に胃瘻となった1例であった。会話機能は広瀬の会話機能評価で平均8.8点であり,全例で日常会話可能であった。
結語:下顎骨切除後に遊離皮弁単独で移植する再建法は,手術時間の短縮や手術の低侵襲化が図れ,また術後機能も良好であるため,高齢者,病期進展例などのリスクを持つ患者に対して有用な選択肢の一つになりうると考えられた。
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