頭頸部癌
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34 巻, 4 号
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第29回日本頭頸部手術手技研究会
シンポジウムA
切除と再建―QOL向上を目指したseamless collaboration―
  • ―切除の立場から―
    大幸 宏幸, 林 隆一, 櫻庭 実, 斎川 雅久, 海老原 充, 宮崎 眞和, 篠崎 剛, 浅野 隆之, 宮本 慎平, 海老原 敏
    2008 年 34 巻 4 号 p. 465-468
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    医療の基本的水準と質の向上を目指し,診療科が細分化され各分野における高い専門性が求められている。また,細分化された分野の統合により専門性が高い診療科が形成される。頭頸部がんに対する外科治療は,切除と再建で一つの医療体系を構築しており,それぞれの専門性を高め相互理解による医療連携が更なる疾患の根治性と患者QOL向上に寄与すると考える。
第32回日本頭頸部癌学会
シンポジウム1
頭頸部癌治療における医療経済
  • 岸本 誠司
    2008 年 34 巻 4 号 p. 469-477
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    第32回日本頭頸部癌学会(会長・東京女子医大形成外科野崎幹弘教授)シンポジウム「頭頸部癌治療における医療経済」の司会を担当するにあたり,ディスカッションの資料にすべく,本学会全評議員に対し本テーマに関するアンケート調査を行った。本稿では,頭頸部癌治療に関わる医療経済の現在の問題点を明らかにし,今後の展望を探る目的で,アンケート結果を示す。
  • 頭頸部癌のチーム医療推進の立場から
    鬼塚 哲郎, 岸本 誠司, 飯田 善幸, 上條 朋之, 浅野 理恵, 中村 哲, 中川 雅裕, 大田 洋二郎, 西村 哲夫, 小野澤 祐輔, ...
    2008 年 34 巻 4 号 p. 478-481
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌治療のチーム医療は近年,各施設に浸透しつつある。これには多くのコメディカルが介入しており,各職種の専門業務は患者にとって有益であるが,その労力に見合った妥当な診療報酬が算定できていないのが現状である。頭頸部癌学会評議員を対象にしたアンケートでも,頭頸部癌治療には多職種チーム医療が重要であるが,それに見合った算定ができていないため,診療報酬改定が必要であるという意見が多くを占めた。今後は,頭頸部癌学会の保険委員会などと協力しながら,頭頸部癌治療におけるチーム医療の有効性を証明し,外保連(外科系学会社会保険委員会連合)などにアピールする必要があると思われる。
パネルディスカッション2
下顎骨再建のupdate―腫瘍切除後の一次下顎再建における治療指針の確立―
  • 中川 雅裕, 飯田 拓也, 成田 圭吾, 逸見 仁, 赤澤 聡, 永松 将吾, 茅野 修史, 鬼塚 哲郎, 飯田 善幸, 上條 朋之, 淺野 ...
    2008 年 34 巻 4 号 p. 482-487
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    下歯肉癌などの下顎骨区域切除や亜全摘後の再建には血管柄付遊離骨移植が第一選択だが,患者の年齢,合併症,病期,下顎骨や周囲組織の切除範囲などを考慮すると血管柄付遊離骨皮弁が適応とならない場合がある。そのような症例に対し,金属プレートや骨による硬性再建を行わずに軟部組織である遊離皮弁単独により再建を行っているので報告する。
    対象と方法:腫瘍切除に伴う下顎骨区域切除あるいは亜全摘後に硬性再建を行わず遊離皮弁単独により即時再建を施行した13例である。移植皮弁は腹直筋皮弁10例,前外側大腿皮弁3例であった。
    結果:合併症は創感染・創〓開3例,小瘻孔2例であった。術後食餌形態は常食9例,軟食1例,キザミ食2例,全粥摂取可能であったが術後照射した後に胃瘻となった1例であった。会話機能は広瀬の会話機能評価で平均8.8点であり,全例で日常会話可能であった。
    結語:下顎骨切除後に遊離皮弁単独で移植する再建法は,手術時間の短縮や手術の低侵襲化が図れ,また術後機能も良好であるため,高齢者,病期進展例などのリスクを持つ患者に対して有用な選択肢の一つになりうると考えられた。
パネルディスカッション4
下咽頭癌切除後再建の標準化
  • -咽喉頭食道摘出空腸置換術について-
    三谷 浩樹, 垣淵 正男, 浅野 隆之, 桜井 裕之, 栗田 智之, 井上 要二郎
    2008 年 34 巻 4 号 p. 488-492
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    1997年から10年間の化学放射線療法(以下CRT)後の咽喉頭食道摘出空腸置換術症例に限定して合併症のアンケート調査をおこない6施設,計60例を検討した。結果,重篤11%(うち死亡3%),中等度10%,軽度36%,計57%となった。頸動脈破裂が3例(5%),空腸壊死は4例(6%)に認めた。その他,大瘻孔は6例(10%),小瘻孔8例(13%),膿瘍8例(13%),気管孔壊死3例(5%),頸部皮弁壊死3例(5%)であった。飲水開始平均日数は非瘻孔形成例:18.1日(中央値14日),瘻孔形成例:81.8日(中央値37日)となり,瘻孔の内訳別では大瘻孔:129日,小瘻孔:34.7日を要した。5年粗生存率は37%であった。CRTの台頭にともない再発例も一定の増加が予測されるが,手術合併症を減少させる手技の標準化,リスクを踏まえて適応を拡大化するなど各施設の治療戦略の確立が当面の課題と考えられた。
基礎
  • 石川 和宏, 石井 秀始, 西野 宏, 古川 雄祐, 市村 恵一
    2008 年 34 巻 4 号 p. 493-497
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    我々の染色体DNAはさまざまな要因により常に損傷を受け続けており,それに対して細胞内ではチェックポイントが活性化すると同時にDNAの損傷修復あるいはアポトーシス誘導へと働く。TP53遺伝子はヒトの癌の過半数で何らかの変異が観察される重要な癌抑制遺伝子であり,変異に伴い癌細胞でその転写産物であるp53蛋白質の蓄積を示す。また分裂酵母のホモローグRad9はDNA損傷後のチェックポイント応答に関わる蛋白質で,頭頸部癌ではその遺伝子が存在する11q13領域の遺伝子増幅が高頻度にみられる。以上の背景から頭頸部癌におけるRad9の発現を検討した。その結果,Rad9とp53は同一の領域に発現する一方で臨床病期や生存率とは相関しなかった.すなわち頭頸部癌においてはRad9とp53の強発現と相互作用に伴うチェックポイント応答異常が発癌など初期の病態に関与している可能性が示唆された。
  • 渡辺 正人, 里見 貴史, 松田 憲一, 續 雅子, 松尾 朗, 金子 忠良, 岩本 宗春, 千葉 博茂
    2008 年 34 巻 4 号 p. 498-502
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌を対象にフッ化ピリミジン系抗癌剤の代謝活性化酵素であるorotate phosphoribosyltransferase(OPRT),thymidylate synthase(TS)およびThymidine phosphorylase(TP)の発現と薬剤奏効性との関連を検討した。術前化学療法(NAC)を施行した31例の投与前生検組織に発現するこれらの酵素を画像解析を用いて定量化し,他の臨床病理学的因子を含めカテゴリー化後,二項ロジスティック回帰分析を行った。結果,奏効性に影響を与えた独立因子はOPRT,TS,およびp53蛋白であった。特に,OPRTが最も強い影響力を示した。奏効の条件としてOPRTの高発現,TSおよびp53蛋白の低発現が必要とされた。よって,フッ化ピリミジン系抗癌剤の効果発現にOPRTを介したリン酸化経路が主体と考えられた。しかも腫瘍組織中に発現するOPRT,TSの評価は薬剤選択の重要な判断材料になり得ると示唆された。
口腔
  • ―プロテオームによるバイオマーカーの解析―
    片倉 朗, 作間 巧, 菅原 圭亮, 恩田 健志, 高木 亮, 神山 勲, 高野 伸夫, 柴原 孝彦, 村松 敬, 佐藤 裕
    2008 年 34 巻 4 号 p. 503-507
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    我々は簡便で非侵襲的に反復して採取できる全唾液を試料とした口腔癌のスクリーニング検査の開発を行ってきた。今回,二次元電気泳動法,peptide-mass fingerprinting法によって口腔癌の全唾液で特徴的に変化するバイオマーカーの同定を行った。その結果,口腔癌患者の術前全唾液から検出され,術後全唾液および健常者全唾液から検出されない口腔扁平上皮癌と関係のあると考えられるタンパク質スポットは10個であった。その中で,口腔癌患者の唾液のみで検出されるenolase 1が同定された。enolase 1は口腔扁平上皮癌組織では健常組織に比べて強く発現していることが,免疫組織化学染色で確認された。このことから,enolase 1は唾液中に出現する口腔癌のバイオマーカーとしての有用性が示唆され,口腔癌組織に由来している可能性が考えられた。
  • 岩井 俊憲, 光藤 健司, 福井 敬文, 馬場 隼一, 上園 将慶, 大原 良仁, 東海林 志保美, 光永 幸代, 足立 誠, 渡貫 圭, ...
    2008 年 34 巻 4 号 p. 508-512
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    口腔癌に対する浅側頭動脈(STA)よりの超選択的動注化学療法は効果的な治療法であるが,STAが使用できない場合に不可能である。それゆえに,われわれは逆行性の超選択的動注化学療法を行うために後頭動脈(OA)よりのカテーテル留置術について報告する。
    術前に外頸動脈の走行とOAとカテーテル留置目的の動脈の位置関係を把握するために,3D-CT angiographyを撮影した。10人の口腔癌患者は局所麻酔下にドップラー血流計とハーモニックスカルペル®を用いてOAよりのカテーテル留置術を受けた。全例で超選択的にカテーテルの留置が可能であった。OA露出時間は17.5分,平均手術時間は70.5分であった。STAよりのカテーテル留置が不可能な場合,本法は逆行性の超選択的動注化学療法を達成するために有用である。3次元的な動脈のマッピングやドップラー血流計とハーモニックスカルペルの使用により手術時間は短縮される。
  • 荒本 孝良, 中城 公一, 西川 英知, 住田 知樹, 宮川 正男, 浜川 裕之
    2008 年 34 巻 4 号 p. 513-517
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    近年,FDG PET-CTは悪性腫瘍の原発,所属リンパ節および遠隔転移の精査に広く用いられている。今回,われわれは口腔扁平上皮癌 cN0 症例における FDG PET-CT およびセンチネルリンパ節生検の意義について検討した。対象は,従来の画像診断にて頸部リンパ節転移を認めず,同時に FDG PET-CTによる精査を行った口腔扁平上皮癌23症例,計43個のセンチネルリンパ節とした。センチネルリンパ節を同定,摘出したのちに病理組織学的に転移の有無を評価した。その結果,43個のリンパ節のうち転移陽性リンパ節は4症例4個で,そのうちFDG PET-CTで診断可能であったものは1症例1個のみであった。
    以上の結果より,口腔扁平上皮癌の頸部リンパ節転移の評価において従来の画像診断に加え,FDG PET-CTを用いてもその診断精度には限界が認められるため,センチネルリンパ節生検の併用が必要であることが示唆された。
  • 平 周三, 新国 農, 林 孝文, 星名 秀行, 新垣 晋
    2008 年 34 巻 4 号 p. 518-525
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    組織弾性イメージング(Real-time Tissue Elastography®)は,探触子を用いた用手圧迫による組織の変形の度合いを超音波画像上にカラースケールで表示し,組織の弾力性(硬さ)を客観的に把握することができる画期的な技術である。今回,われわれは口腔癌の転移リンパ節診断におけるElastographyの有用性を評価した。対象は口腔癌と診断された患者15症例,26リンパ節である。Tsukuba Elastography Scoreを参考に,リンパ節の描出パターンを5分類し,術前の超音波画像を手術により得られた病理組織像と対比した。非手術症例においては,Elastography検査から1年以上経過しても,画像診断で転移所見が認められない場合,非転移リンパ節であったと判断した。転移リンパ節はパターン3か4もしくは5であり,非転移リンパ節はパターン1か2で,転移リンパ節と非転移リンパ節の組織弾性の差が明確に描出された。パターン3以上を転移陽性と判断した場合の診断精度は,敏感度92%,特異度86%,正診率88%,PPV(Positive Predictive Value)85%,NPV(Negative Predictive Value)92%であった。また,評価できた最小の転移リンパ節は短径0.5cmであった。組織弾性イメージングは,転移リンパ節と非転移リンパ節の鑑別において高い診断精度を有しており,従来の超音波検査法に補完的な役割を果たす可能性が示唆された。
上・中・下咽頭
  • 蝦原 康宏, 吉田 昌史, 安藤 瑞生, 中尾 一成, 朝蔭 孝宏, 寺原 敦朗, 光嶋 勲
    2008 年 34 巻 4 号 p. 526-529
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    当院での中咽頭側壁癌一次治療32例をretrospectiveに検討した。粗生存率は5年で50%,疾患特異的生存率は5年で62%であった。原発巣頸部制御率は5年で57%,救済分を含めると62%であった。上咽頭/喉頭進展の原発巣進行症例は制御困難であった。局所単発再発であれば救済の機会があるが,原発巣頸部同時再発および頸部多発再発の場合は困難であった。今後も症例により制御率の高い治療法を検討する必要がある。
  • 中村 香織, 秋元 哲夫, 茂木 厚, 橋本 弥一郎, 清塚 誠, 泉 佐知子, 前林 勝也, 三橋 紀夫, 唐澤 久美子, 吉原 俊雄
    2008 年 34 巻 4 号 p. 530-535
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    1993年1月から2005年8月に当科で根治的放射線治療が施行された中咽頭癌IVA-B期患者57例を対象として治療成績の検討を行った。年齢は34~84歳(中央値62歳),性別は男性43例,女性14例であり,発生部位は前壁16例,側壁39例,後壁1例,上壁1例であった。全身化学療法が49例で施行されたが,導入化学療法(induction chemotherapy: ICT):25例,ICT+同時併用化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy: CCRT):15例,CCRT:9例であった。37例に1.2Gy1日2回の多分割照射法で60~82Gy(中央値72Gy),20例には通常分割照射法で60~72Gy(中央値66Gy)の放射線治療が施行された。初期治療として放射線治療後の救済手術が5例に施行された。5年粗生存率,無病生存率はそれぞれ52.9%,51.4%であった。T3以上,N2c以上,高分化型であった症例で有意に予後不良であった。しかし,全身化学療法の有無,施行時期,照射スケジュールには生存率に有意を認めなかった。未だ治療成績は良好とは言えず,さらなる治療成績改善のための検討が必要と考えられた。
  • 宮口 衛
    2008 年 34 巻 4 号 p. 536-539
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    2000年から2008年にかけて根治手術を施行した下咽頭癌28例のうち19例で残存粘膜を用いて一期的に再建した。このうち進行癌である梨状陥凹型T4N2b症例を提示し,実際の術式を説明した。正常喉頭粘膜,具体的には喉頭蓋,披裂部,仮声帯,声帯,声門下粘膜を用いて再建する術式は侵襲が少なく,手術時間を短縮し,出血量を減らし,術後合併症を減らす術式である。さらに術後の嚥下機能も十分維持できる術式である。
  • 宇野 雅子, 秋定 健, 粟飯原 輝人, 西池 季隆, 余田 栄作, 今井 茂樹, 原田 保
    2008 年 34 巻 4 号 p. 540-543
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    進行下咽頭癌(ステージIII,IV)症例にドセタキセル(TXT)を用いた超選択的動注療法と放射線同時併用療法について検討を行った。対象は25症例(男性24例,女性1例)で,年齢は42~83歳,平均63.8歳であった。亜部位は梨状陥凹21例,咽頭後壁3例,咽頭食道接合部(輪状後部)1例であった。動注はSeldinger法で行い,続いてシスプラチン(CDDP),5-FUの全身化学療法を行い,同時に放射線治療を行った。一次治療効果は原発巣ではCR率95.5%,奏効率100%,頸部転移巣ではCR率31.8%,奏効率76.2%であった。症例全体の5年粗生存率は57.6%であり,T分類別ではT1,T2群で57.1%,T3,T4症例は62.2%であった。有害事象については,治療を中止するような重篤なものは認めなかった。
  • 井上 俊哉, 永田 基樹, 湯川 尚哉, 小椋 学, 八木 正夫, 藤澤 琢郎, 宮本 真, 近野 哲史, 竹村 博一, 山下 敏夫, 辻 ...
    2008 年 34 巻 4 号 p. 544-547
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    進行下咽頭癌に対して多くの施設で化学放射線療法が第一選択として用いられている。臓器を温存した場合,その治療効果判定として組織学的判定を明確に得ることは不可能である。
    当科では進行下咽頭癌に対し,化学放射線療法を開始し,約40Gyが終了した時点での局所所見によって,保存的治療を続行するか,根治切除に切り替えるかを決定してきた。今回,化学放射線療法後に拡大切除(咽喉食摘)を施行した33例に対し,その摘出全割病理標本より化学放射線療法の効果について検討した。その結果,Grade 1が12例,Grade 2が13例,Grade 3が8例(全体の24%)という結果であった。ただ術前の化学放射線療法が著効し,なおかつ咽喉食摘をしたケースでも,60%しか非担癌生存が得られていないことがわかった。著者らの検討では,局所の制御はおこなわれており,予後因子として重要なのは遠隔転移という結果であった。遠隔転移の制御が今後の課題であるが,手術療法の選択に関しては,さらなる検討が必要と考えられた。
唾液腺
  • 山元 英崇, 瀬川 祐一, 白土 秀樹, 平川 直也, 橋本 和樹, 中島 寅彦, 小宗 静男, 恒吉 正澄
    2008 年 34 巻 4 号 p. 548-551
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    唾液腺腫瘍は組織像や生物学的態度が多彩である。適切な診断,治療の発展の基礎となることを目的とし,我々の施設で1983年~2007年の約24年間に手術された大唾液腺原発性腫瘍551例を収集・解析した。その内訳は,上皮性腫瘍537例(97.5%),血液・リンパ系腫瘍10例,間葉系腫瘍4例であった。上皮性腫瘍537例(耳下腺475例,顎下腺62例)中,悪性は123例(22.9%)であったが,悪性の占める割合は,耳下腺20%に対し,顎下腺は45.2%と高率であった。組織型別では多形腺腫285例(53.1%),ワルチン腫瘍104例(19.4%)の順に多く,悪性では,腺様嚢胞癌(25例),粘表皮癌(17例),多形腺腫由来癌(15例)が多かった。また,多形腺腫の癌化は5%(15/300例)程度と推定された。また,多形腺腫由来癌の悪性成分は多彩だったが,高悪性度である唾液腺導管癌も少なくなく,注意が必要である。
  • 吉岡 伸高
    2008 年 34 巻 4 号 p. 552-556
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    耳下腺良性腫瘍に対して耳下腺部分切除術をおこなう際に,顔面神経本幹からの順行性アプローチだけでなく,腫瘍の局在に応じたアプローチができれば,より侵襲の低い手術が可能となる。末梢枝からの逆行性アプローチは,本幹が腫瘍に圧排され,同定が困難な場合に主に用いられているが,腫瘍が神経本幹上にない場合の部分切除術にも用いることができる。しかし逆行性アプローチは,末梢枝の剥離操作がやや難しい点などから,下顎枝以外は用いられることが比較的少ない。我々は耳下腺内の静脈を指標として,静脈と交差する顔面神経の分枝からアプローチする方法を用いている。この方法は,本幹が腫瘍に圧排されている場合以外に,下顎枝,頬骨枝,頬筋枝の領域に存在する腫瘍に対してもアプローチしやすいという利点がある。さらに逆行性アプローチに比べると剥離する神経が太いという利点も併せもつ。今回,その手術手技と術式の有用性について報告した。
頸部
  • 力丸 文秀, 古後 龍之介, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2008 年 34 巻 4 号 p. 557-562
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌頸部転移症例に対する術前化学放射線同時併用療法の効果と頸部郭清術の必要性を検証するため,pN,原発巣および頸部の再発率,再発症例の救済率を検討した。化学放射線同時併用療法から頸部郭清術までの期間は平均3.1週であり,頸部郭清術後のpN0は全症例で62%であった。原発巣再発症例は60例中14例23%に認め,14例の原発巣制御率は71%であった。頸部再発症例は60例中2例3%で,いずれも非頸部郭清側であり,頸部制御率は100%であった。原発巣再発と治療開始時の原発巣進行度に有意差は認めなかったが,頸部郭清術後のpNと原発巣再発はpN(+)症例がpN0症例より有意に多かった(p<0.05)。化学放射線同時併用療法の頸部郭清術で38%にpN(+)を認めており,治療開始時に頸部転移を認める症例は頸部郭清術を行う必要があると思われる。さらにpN(+)症例は原発巣再発に留意した厳重な経過観察が必要と思われた。
  • ―反回神経即時再建―
    山田 弘之, 宮村 朋孝, 福家 智仁, 富岡 利文, 福喜多 晃平
    2008 年 34 巻 4 号 p. 563-567
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    甲状腺手術の際に,反回神経の即時再建を22例において行った。術前から声帯麻痺を認めていたのは3例であった。再建方法は,4例において神経の端々吻合を,3例において神経間置移植を,15例に頸神経ワナとの吻合を行った。術後のMPTは9.2秒から22.5秒にわたり,平均16.4秒であった。神経再建群と非再建群との間にはMPTで有意な差を認めた。反回神経即時再建は有用な手技であることから,甲状腺外科医が身につけるべきものと考える。
  • 田中 顕太郎, 大幸 宏幸, 櫻庭 実, 林 隆一
    2008 年 34 巻 4 号 p. 568-571
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌領域における頸部郭清術後リンパ漏に対しては,まず保存的治療(脂肪制限食,絶飲食,局所圧迫)が試みられる。無効な場合には外科的治療(リンパ管損傷部位の同定,結紮)が選択されるが治療に難渋する症例も多い。2005年1月から2006年12月の間に難治性術後頸部リンパ漏8症例に対しソマトスタチンアナログを投与し有効性を検討した。投与量は1回100μg,1日2~3回を3~7日間とした。リンパ漏の治癒に要した期間は投与後5日間が2例,9日間が2例あり,有効症例と判断した。無効と判断した症例は4例で,うち3例は14~22日で自然軽快したが1例は2度の再手術を必要とした。一般外科領域では術後乳び胸や乳び腹水にソマトスタチンアナログが有効との報告が散見されるが,投与法や有効性の判断基準は統一されていない。頭頸部での報告は少ないが,今回の検討では半数に有効であり今後治療の選択肢の一つとなり得ると考えた。
その他
  • 山下 佳雄, 後藤 昌昭
    2008 年 34 巻 4 号 p. 572-577
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    チタンメッシュを使用した下顎骨の再建は,下顎骨の解剖学的な形態を容易に再現できる有用な方法である。さらに再建した移植骨にインプラント義歯を装着でき,患者の口腔機能を早期に回復できる有効な手段といえる。しかしながらチタンメッシュを残存下顎骨へ適合させることは必ずしも容易ではない。本論文では,下顎骨再建症例に対してCT画像情報をもとに三次元光造形顎顔面樹脂模型を製作し,術前に下顎骨形態に適合させたチタンメッシュを実際の手術に使用する方法を報告する。利点としては術中の操作時間を短縮でき,骨片の固定に際して残存骨の偏位を防止できる。またメッシュの過度な屈曲をなくし,術後の破折を防ぐことができる。今回,9症例に本法を用いて下顎骨の再建を行ったが,全症例ともインプラント義歯を装着し,機能的,審美的に満足の得られる結果となった。
  • 細川 誠二, 望月 大極, 岡村 純, 瀧澤 義徳, 大和谷 崇, 竹下 有, 峯田 周幸
    2008 年 34 巻 4 号 p. 578-581
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    当科において,1978年から2007年までの30年間に取り扱った頭頸部原発の腺様嚢胞癌29症例についての治療成績を検討した。年齢は24歳~82歳(平均58.5歳),年代別では60歳代が12例(41.4%)と最も多かった。男性は16例(55.2%),女性は13例(44.8%)であった。原発部位では鼻・副鼻腔が12例(41.4%)を占めていた。病理組織学的Grade分類では,Grade I,II,IIIがそれぞれ2例(6.9%),20例(69.1%),7例(24.2%)であった。全29症例のKaplan-Meier法による死因特異的5年累積生存率は81.3%,死因特異的10年累積生存率は60.6%であり,また病期別および病理組織学的Grade分類別においては,今回のわれわれの症例では統計学的有意差はなかった。初回治療によって局所制御可能か否かが重要である,と思われた。
  • ―治療法と予後の関係を中心に―
    佐藤 克郎, 富田 雅彦, 渡辺 順, 松山 洋, 高橋 姿
    2008 年 34 巻 4 号 p. 582-586
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    当科で加療した聴器癌の36例につき検討した。期間内の聴器癌は全頭頸部癌の3.5%にあたった。原発巣は外耳道癌が67%と最も多く,中耳癌,耳介癌と続いた。年齢の中央値は66歳,男女比は約3対2であった。外耳道・中耳癌の主訴は耳漏が最も多く,耳掻痒感,耳痛が続いた。外耳道・中耳癌の26%に耳手術の既往があり,35%に耳掻きの常習癖があった。病理組織型は扁平上皮癌が94%,悪性黒色腫が6%であった。扁平上皮癌の62%に手術を施行,残り38%に根治照射を行い,手術例の67%に術後照射を追加した。扁平上皮癌症例の5年生存率は外耳道癌が74%と最も良好で,耳介癌67%,中耳癌34%と続いた。手術可否別の5年生存率は手術施行例82%,手術不能例29%と有意差を認めた。手術施行例の術後照射施行例と非施行例の5年生存率に有意差はなく,聴器癌の治療においては,積極的に一塊切除手術を行い,症例により術後照射を追加する方針が妥当と思われた。
  • 木村 幸紀, 山本 智理子, 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 吉本 世一, 本橋 征之, 花澤 智美, 岡野 友宏
    2008 年 34 巻 4 号 p. 587-593
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    本報告では,下顎骨内から発生した骨中心性腺様嚢胞癌の稀な1例を報告する。49歳の女性が3か月前から下顎の麻痺感があり受診した。被覆口腔粘膜に異常はなかった。パノラマ,デンタルエックス線写真とCT像で下顎骨体のほぼ全体にびまん性骨融解性変化がみられた。T2強調MR像では両側の下顎神経周囲浸潤と右側口腔底と顎下部から鎖骨上レベルまで波及したアグレッシブな悪性腫瘍が疑われた。下顎骨亜全摘,舌喉頭全摘と両側頸部郭清術が施行された。術中,左側下顎神経周囲への浸潤が頭蓋底付近まで,右側は鎖骨下まで鎖骨上神経周囲に浸潤がみられた。また,両側性頸部リンパ節転移も病理学的に認めた。手術標本の詳細な病理学的検討で,下顎骨中心性腺様嚢胞癌が示唆された。本例は術後5か月半で多発性骨転移にて死亡した。このような臨床像,画像および病理組織像は1981年以降の文献の下顎骨中心性腺様嚢胞癌の22例にはみられないものであった。
  • 鈴木 幹男, 又吉 宣, 長谷川 昌宏, 新濱 明彦, 平川 仁, 喜友名 朝則
    2008 年 34 巻 4 号 p. 594-599
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    当科を受診した80歳以上の頭頸部癌新鮮例51例を診療録に基づき解析した。原発巣は下咽頭,中咽頭,喉頭に多くみられた。進行癌が多く,III,IV期が74%を占めた。初診時併存疾患を72%の症例で認め,1994年の当科調査と比較して増加していた。心疾患,腎不全をともなう5例で併存疾患が治療法選択に影響していた。根治治療を52.9%,姑息治療を19.6%におこない,無治療例は27.5%であった。治療による合併症を4例に認め,このうち1例で術後早期に突然死を生じた。根治治療群は姑息治療群,無治療群と比較し有意に粗生存率が高く,姑息治療群は無治療群よりも粗生存率が高かった。この調査から,80歳以上の高齢者頭頸部癌の治療にあたっては,歴年齢にとらわれることなく,個々の全身状態を十分に評価して治療法を選択すべきと考えた。また可能であれば姑息治療を選択する方が無治療と比較し生命予後を改善することが判明した。
  • 小池 修治, 那須 隆, 石田 晃弘, 野田 大介, 青柳 優, 高村 浩, 菊池 憲明
    2008 年 34 巻 4 号 p. 600-605
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    眼部原発悪性腫瘍は稀な疾患で,頭頸部外科医が関わる場合は少ない。しかし病期の進行と伴に,眼窩周囲への浸潤やリンパ節転移をきたす場合もある。涙嚢・眼瞼悪性腫瘍にて集学的治療を行った,耳下腺内・頸部リンパ節転移をきたした眼瞼脂腺癌2例,顔面皮膚浸潤,頸部リンパ節転移をきたした涙嚢・眼瞼原発粘表皮癌2例を報告した。全例手術を行い,原発巣に対し,脂腺癌2例が局所切除,粘表皮癌2例が眼球摘出を行った。耳下腺内・頸部リンパ節転移に対しては,耳下腺全摘2例,耳下腺浅葉切除1例,頸部郭清は全例に行った。また切除後の欠損部を遊離組織移植よる再建を3例に行った。粘表皮癌1例を除いた3例に対し術後放射線治療を行った。術後放射線治療を行わなかった粘表皮癌1例を除いた3例が無再発生存である。
    今後,頭頸部外科医が眼部原発の悪性腫瘍を扱う機会が増えると考えられ,関連各科との綿密な連携が必要である。
  • 横内 順一, 新城 秀典, 供田 卓也, 不破 信和, 佐久間 秀夫, 今野 昭義
    2008 年 34 巻 4 号 p. 606-609
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/01/15
    ジャーナル フリー
    63歳男性,鼻出血が主訴。MRIで造影効果を有する腫瘍を鼻腔に認めた。病理診断で形質細胞腫と診断され,骨髄生検,FDG-PET/CT所見などより孤立性の髄外性形質細胞腫と診断,放射線治療単独で治療を行った。放射線治療は通常分割で50Gy照射した。治療終了約1ヶ月後のMRIで腫瘍の消失が確認され,その後の経過観察で再発を示唆する所見は認められていない。
    髄外性形質細胞腫は稀な腫瘍であるが,鼻腔副鼻腔,扁桃,上咽頭等頭頸部が好発部位である。髄外性は骨性と比べ孤立性であれば放射線治療単独で良好な局所制御率が得られ,多発性骨髄腫への移行も少ないとする報告が多く,40~50Gy程度の総線量が妥当と考えられた。
    また,FDG-PET/CTは局所所見のみならず,全身の情報を一度に高い精度で多発病変の有無をチェックできる有用な検査である。
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