頭頸部癌
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40 巻, 1 号
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第36回日本頭頸部癌学会
シンポジウム1
頭頸部癌再建後の長期的観察から学ぶ
  • 八木 俊路朗, 鳥山 和宏, 小野 昌史, 藤本 保志, 平松 真理子, 丸尾 貴志, 西尾 直樹, 亀井 譲
    2014 年 40 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    2002年7月から2011年12月までの期間に,当院において下咽頭・喉頭・頸部食道全摘術(咽喉食摘術)および遊離空腸移植を行った47例(男性40例,女性7例,平均年齢64.3歳)について,術後合併症および術後摂食機能について検討した。術前放射線照射を行っていた症例は15例であり,手術に追加する治療として節外浸潤や腫瘍切除断端が陽性であった24例に対して術後放射線照射を行った。移植した遊離空腸は全例で生着した。創部感染やリークは術前照射を受けた症例で多く,高度吻合部狭窄は術後放射線照射を受けた症例に多い傾向が見られた。高齢によるものと考えられる摂食障害は認めず,遊離空腸移植は咽喉食的術後の下咽頭再建において安全な術式であると考えられた。
第37回日本頭頸部癌学会
シンポジウム1
頭頸部表在癌の診断と治療
  • 岩本 修, 轟 圭太, 小野 剛治, 前田 明輝, 楠川 仁悟
    2014 年 40 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    口腔表在癌69例(舌癌32例,歯肉癌22例,口底癌10例,頬粘膜癌5例)の術前診査および治療態度を検討した。病変描出率はCT(21.9%),MRI(42.4%)より舌エコー(89.9%)が有意に高かった。NBIで食道癌頻発の異常血管type3,4(有馬分類)が約80%観察できた。細胞診の正診率は77.9%だったが偽陰性症例のうち66.7%はNBI異常血管像により是正診断ができた。NBIで識別した病変領域はヨード不染帯と一致性が高かった。NBIで異常血管type4の発現,かつ病理組織学的浸潤様式YK-4症例では頸部リンパ節後発転移の可能性が高かった。手術は癌播種に配慮したexcisional biopsyが多かった。自家蛍光,赤外光観察にて癌病変像を強調して視認することができた。以上の知見より口腔表在癌治療に多用するexcisional biopsyを確実に実施するには従来の検査にNBI他,特殊光術前観察を加味して診断の向上,確実な病変範囲の把握が必要と考える。
シンポジウム2
唾液腺癌の診断と治療 up-to-date
  • ―鑑別診断と病期診断のポイント―
    池田 耕士, 菅野 渉平, 米虫 敦, 宇都宮 啓太, 播磨 洋子, 黒川 弘晶, 谷川 昇
    2014 年 40 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    磁気共鳴画像(MRI; Magnetic resonance imaging)は唾液腺領域において軟部組織の分解能とコントラストに優れた非侵襲的検査である。唾液腺癌におけるMRI診断の意義は大きく分けて2つある。ひとつめは組織学的な鑑別診断であり,ふたつめは病期診断である。治療計画や手術手技の決定にはこれらの画像情報は必須である。今回は唾液腺領域の鑑別診断と病期診断を中心に述べる。
シンポジウム4
頸部郭清術の新展開
  • 原田 浩之, 小村 健, 島本 裕彰
    2014 年 40 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌において適応しうる選択的頸部郭清術の範囲をcN分類と原発巣の亜部位から検討した。
    2001年4月から2011年12月までに当科で頸部郭清術を施行した394例を対象とした。
    cN0症例で潜在性リンパ節転移を認めた51例の転移リンパ節levelはIa:2例,Ib:19例,IIa:28例,III:4例,その他:3例であった。Level III転移例は舌:3例,下歯肉:1例であった。舌癌と下歯肉癌のcN0症例ではlevel I+IIa+IIIが,他の口腔癌ではlevel I+IIaの郭清が適用可能であることが示唆された。
    cN1症例における転移リンパ節はlevel I~IIIの領域に加え,IV:1例,その他:2例であった。level IV転移例は舌癌であり,舌癌ではlevel I~IVの郭清が,他の口腔癌ではlevel I~IIIの郭清が適切であると考えられた。
    一方,cN2b症例においてはlevel I~Vに多岐に転移を認めたことから,level I~Vを郭清すべきと考えられた。
  • 花井 信広, 小澤 泰次郎, 平川 仁, 鈴木 秀典, 福田 裕次郎, 小出 悠介, 別府 慎太郎, 西川 大輔, 中多 祐介, 木村 隆浩 ...
    2014 年 40 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    化学放射線療法(CRT)は咽喉頭癌における臓器温存治療の中心的役割を果たしている。その中で導入化学療法まで含めると頸部郭清術介入の時期は多岐にわたり,郭清範囲,適応判断を含めた頸部マネージメントの方法が多様化している。集学的治療の一環としての治療戦略という観点からCRT後の頸部郭清術について述べた。
    現在の主流は早期救済頸部郭清術であり,CRTの効果に応じて頸部郭清介入の要否が判定される。このために真のリンパ節残存を見極めるためのリンパ節転移診断が重要となる。侵襲の低減,合併症の回避を目的として頸部郭清範囲は縮小の方向に向かっており,現在の標準と考えられているのは選択的頸部郭清術である。超選択的頸部郭清術はこれをさらに縮小しようという新しい概念である。また新たな治療戦略として先行頸部郭清術(up-front neck dissection)が再び注目されていることについても紹介した。
シンポジウム5
頭頸部再建外科の新展開 〜上下顎の理想的再建
  • ―インプラント義歯にどんなメリットがあるのか―
    中山 敏, 陶山 淑子, 福岡 晃平, 領家 和男, 北野 博也
    2014 年 40 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    2002年4月から2013年3月の間,悪性腫瘍の上下顎骨切除および合併症症例は33例であった。これらに対する再建法の内訳については,腓骨による顎骨再建症例が19例,再建用チタンプレートによる下顎骨再建症例が8例,硬性再建なしが6例であった。腓骨再建症例19例中7例が義歯を使用していた。その内1例は食事の際に義歯は外し,残りの6例は義歯を使用していた。しかし健側と患側の両方で咬んでいる症例は1例のみであった。インプラント義歯は上顎歯槽部再建例1例と下顎骨再建例2例で施行された。患者インタビューから,インプラント義歯は咀嚼機能の向上に寄与するものと思われた。歯科用骨内インプラントとそれに装着するインプラント義歯の保険適用によって,今後インプラントは広く普及すると考えられる。その有効性について,咀嚼機能のみならず,口腔機能全体の向上や審美面および心理的影響について,多面的な観点からエビデンスを示していく必要がある。
一般投稿
上顎(鼻副鼻腔)
  • 三浦 弘規, 鎌田 信悦, 多田 雄一郎, 増淵 達夫, 伏見 千宙, 岡本 伊作, 松木 崇, 金子 哲治, 高橋 秀聡, 猪股 徹, 田 ...
    2014 年 40 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    目的:蝶形洞腫瘍を臨床的に検討する。
    対象と方法:国際医療福祉大学三田病院頭頸部腫瘍センターでの蝶形洞腫瘍として紹介あるいは診断された15例につき外来・入院診療録をretrospectiveに検討した。
    結果:当院受診の鼻腔・副鼻腔悪性腫瘍の4%を占めた。疼痛は最も多い受診動機だが,疼痛以外の脳神経症状も同程度に自覚されていた。病理組織像は多彩であった。腫瘍容積中央値43cm3,全例頭蓋内浸潤を認めていた。全例に放射線療法が行われ手術施行例はなかった。生存期間中央値28ヶ月(3~82ヶ月),3年無病生存率38%,3年疾患特異的生存率68%であった。2例の重篤な合併症が生じていた。
    結論:個々の症例に適した放射線療法の手技と化学療法の使い分け・見極めは,生存期間の確保に貢献すると考えられた。
口腔
  • 新井 俊弘, 太田 嘉英, 青山 謙一, 齋藤 寛一, 傳田 裕也, 山崎 浩史, 青木 隆幸, 金子 明寛
    2014 年 40 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    シスプラチン(CDDP)を含む化学療法を行った口腔癌患者に生じた低ナトリウム血症の臨床像について検討した。対象は2007年4月から2012年10月までに東海大学医学部付属病院口腔外科にて,CDDPを含むレジメンの化学療法および化学放射線療法を施行した口腔癌65例である。初回投与時の低ナトリウム血症は53.8%にみられ,grade3以上は16.9%と比較的高頻度であった。低ナトリウム血症の危険因子としては,grade2以上の嘔気,口内炎,および水分負荷の有無,発熱性好中球減少症が考えられた。ナトリウムの摂取低下,喪失,水分負荷の有無が低ナトリウム血症の誘因になると考えられた。また,詳細なメカニズムは明らかではないが,発熱性好中球減少症は低ナトリウム血症発現のマーカーとなりうる可能性が示唆された。
  • 高木 雄基, 佐藤 春樹, 佐久間 英規, 野田 晴菜, 長縄 陵亮, 寺田 聡広, 大岩 伊知郎
    2014 年 40 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞移植(HSCT)後に発症した口腔癌5例についての検討を行った。5例の内訳は,男性3例,女性2例で,原疾患は,それぞれ低形成白血病,急性骨髄性白血病,濾胞性リンパ腫,急性リンパ性白血病,骨髄異形成症候群であった。いずれもドナーは同胞で,3例は骨髄移植,2例は末梢血幹細胞移植がなされていた。全例,原疾患の再発は認められなかった。HSCT後慢性口腔移植片対宿主病の発症を認めたのは3例であった。HSCTから口腔癌診断までの期間は3年5ヶ月から17年2ヶ月で,1例は口腔咽頭多発例であった。多発例を除き,根治手術を施行した。無病生存例は1例のみで,腫瘍死3例,他病死(呼吸不全)1例であった。
    これら5例には,二次性口腔癌発癌および予後に関しての共通性は認めなかった。
喉頭
  • 隈部 洋平, 田中 信三, 平塚 康之, 渡邉 佳紀, 山田 光一郎, 小山 泰司, 古田 一郎, 吉松 誠芳
    2014 年 40 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    当科ではこれまで局所進行喉頭癌に対して原則的に喉頭全摘術(TL)を施行してきており,その治療成績を検討した。対象症例は36例で,30例にTL,手術拒否例などの6例に放射線治療(RT)を施行した(4例が化学療法同時併用)。再発はTL群で5例あり全例が頸部再発,そのうち1例のみ救済可能であった。RT群では1例に遠隔再発,1例がRT後のN残存であったが手術拒否にて原病死となった。T3でのRT施行は2例のみでともに無再発生存であった。全症例の3年疾患特異的生存率は83.0%,亜部位別では声門81.8%,声門上88.9%,声門下75.0%であった。T別では,T3 13例,T4a 23例で,3生率はそれぞれ100%,73.0%であった。N別では,N- 24例,N+ 12例で,3生率はそれぞれ91.7%,64.2%であった。今回の検討の結果,治療成績は良好であるものの,大半の症例でTLが施行されていたために3年喉頭温存率はT3 20.5%,T4a 8.7%と低く,喉頭温存治療への取り組みが今後の課題と考えられた。
上・中・下咽頭(頸部食道癌を含む)
  • 渡邉 佳紀, 安里 亮, 辻 純, 神田 智子, 本多 啓吾, 辻村 隆司, 森 祐輔
    2014 年 40 巻 1 号 p. 56-65
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    咽喉頭領域の表在癌・早期癌に対し,内視鏡下での経口的手術が行われている。代表術式として内視鏡的咽喉頭手術(Endoscopic Laryngo-pharyngeal Surgery: ELPS)や経口的咽喉頭部分切除術(Transoral Videolaryngoscopic Surgery: TOVS)が挙げられ,安全性と有用性が報告されている。
    われわれは,先端可動型硬性内視鏡を用いた新たな内視鏡下経口的咽喉頭手術を施行した。本術式は,細径の硬性内視鏡を用いる。原発巣に合わせ様々な咽喉頭鏡・開口器が選択できる点が特徴である。平成22年3月から平成24年12月までに喉頭・中下咽頭癌29例に施行。年齢45~86歳(平均65歳),男女比25:4,観察期間20~983日(中央値262日)。表在癌4例,浸潤癌24例,MALTリンパ腫1例。新鮮例24例,照射後再発3例,他院外切開切除後再発2例。根治治療を計画した28例中25例(89%)で一塊切除,26例(93%)で根治切除でき,TOVSと同等であった。
    本術式は咽喉頭全域に渡り安全かつ拡大切除が可能で,低侵襲・経口的手術の選択肢となり得る。
  • 水町 貴諭, 本間 明宏, 坂下 智博, 加納 里志, 畠山 博充, 土屋 和彦, 安田 耕一, 鬼丸 力也, 白土 博樹, 福田 諭
    2014 年 40 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    当院にてCDDP 40mg/m2/週併用の化学放射線療法を行った中咽頭扁平上皮癌新鮮例22例に対して臨床的検討を行った。22例中13例がHPV陽性であった。放射線治療は本人希望にて50Gyで終了した1例以外は全例70Gy完遂できた。CDDPの平均投与量は179mg/m2であった。有害事象はGrade4以上は認めなかったが,Grade3の粘膜炎が16例(73%),好中球減少,皮膚炎が各4例(18%)認めた。原発病変に対する一次治療効果は,HPV陰性の1例がPRであったが,21例はCRとなった。頸部に対しては22例全例CRとなった。HPV陽性例の3年粗生存率は92.3%であったのに対し陰性例は66.7%であった。統計学的有意差は得られなかったが,HPV陽性例の方が予後が良好な傾向にあった。HPV陽性例は導入化学療法を先行させた症例が多かったものの,本治療における治療成績は良好で十分な効果が期待できると思われた。HPV陰性例に対しては一次治療効果は良好であるものの再発や転移を来す症例が陽性例に比べ多く生じた。
唾液腺
  • 佐藤 要, 田口 享秀, 木谷 有加, 田中 恭子, 高橋 秀聡, 荒井 康裕, 佐野 大佑, 小松 正規, 西村 剛志, 高橋 優宏, 折 ...
    2014 年 40 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma:SDC)は,浸潤性乳管癌に類似した組織像を呈する高悪性度の腫瘍で,非常に予後不良な腫瘍と報告されている。今回,耳下腺原発のSDCに対する根治的手術,術後化学放射線療法,補助化学療法を含めた集学的治療の成績について検討した。対象は2003年9月から2011年3月までの間に当科で治療した耳下腺原発のSDC7症例(stageI: 1例,II: 1例,IVa:5例)である。切除断端に十分な安全域を設けた腫瘍切除を行い,stageIVa症例には根治的頸部郭清術を併施した。更に全例で術後に化学放射線療法および補助化学療法を施行した。5年粗生存率は83.3%であり,根治的手術,術後化学放射線療法,補助化学療法を含めた集学的治療で良好な予後が得られる可能性が示唆された。
頸部・甲状腺
  • 正道 隆介, 太田 久幸, 山崎 恵介, 松山 洋, 高橋 姿
    2014 年 40 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域に生じた高分化型脂肪肉腫の3例を経験したので報告する。症例1は78歳男性,頸縦隔脂肪肉腫。他院で縦隔病変の開胸切除後に当科紹介となり,頸部病変を全摘した。症例2は41歳男性,中下咽頭脂肪肉腫。経口切除後に再増大したため,頸部外切開により腫瘍を全摘した。永久病理診断にて一部粘液型部分を認めたため,術後照射を行った。症例3は62歳男性,頸縦隔脂肪肉腫。経頸部的に腫瘍を全摘した。
    脂肪肉腫は悪性軟部組織腫瘍の中では発生頻度が高いが,頭頸部領域では稀である。一般に悪性軟部組織腫瘍の治療には十分な安全域をつけた広範囲切除術が原則とされるが,脂肪肉腫の中でも良悪性中間腫瘍に位置する高分化型脂肪肉腫においては切除縁に関する統一見解はない。本報告では全例に辺縁切除術を行い,現在まで明らかな再発を認めていない。浸潤傾向のない頭頸部高分化型脂肪肉腫に対しては隣接臓器を温存した辺縁切除術で対応可能と思われた。
  • 北野 睦三, 佐々木 徹, 日高 竜太, 山田 南星, 志村 英二, 福岡 修, 富樫 孝文, 小倉 真理子, 蛯名 彩, 神山 亮介, 小 ...
    2014 年 40 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    術前の頸部リンパ節転移の評価は重要であり,正確な診断が求められている。今回当科における頸部リンパ節転移の超音波断層法(以下エコー)による診断の評価を行った。
    対象は2012年1月~12月までに頸部エコーを施行した頭頸部扁平上皮癌症例のうち術前治療を行わずに頸部郭清術を行った62症例88側のリンパ節転移の検出率について検討した。結果は感度61%,特異度97%,正診率90%であった。内部エコーの所見を含めて診断した場合,リンパ節の厚みのみにより診断した場合に比べ正診率は良好であった。また,内部評価をしやすい口腔癌は咽頭癌と比べ正診率が良好であった。偽陰性となったリンパ節の特徴として,(1)角化および変性物や壊死の少ないもの(2)転移病巣がリンパ門から離れて存在するもの(3)びまん性に腫瘍が存在するものが示唆された。エコーは頸部リンパ節転移の診断に有効な検査であるが,その診断能には限界がある。そのためCT,MRI,PET等その他のモダリティーや穿刺吸引細胞診による質的診断を併用して正診率を向上させていくことが重要であると考えられた。
  • —甲状腺腫瘍診療ガイドラインにおけるグレーゾーンへの対応—
    山田 弘之, 福喜多 晃平, 荒木 真美佳, 杉山 智宣
    2014 年 40 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    2010年に提唱された日本の甲状腺腫瘍診療ガイドラインでは,乳頭癌を低危険度・高危険度とグレーゾーンの3つにリスク分類している。高危険度癌には甲状腺全摘が推奨され,低危険度癌には葉切除が容認されている。一方で,グレーゾーンでは片葉癌の切除範囲が規定されていない。今回,当科での372例のグレーゾーン乳頭癌のうち,355例に対して葉切除を行った。355例中,局所再発や肺転移などへのヨードアイソトープ治療のために全摘を追加した症例が19例存在した。19例中14例は非担癌生存中で,2例のみが肺転移により死亡した。これらの成績からは,グレーゾーンでの片葉の癌の場合には葉切除が容認される。グレーゾーン372例における術後反回神経麻痺はわずか1例のみであった。また,グレーゾーンでの全摘17例での術後副甲状腺機能低下もわずか1例であった。従って,合併症を危惧したために葉切除を行った訳ではないと言える。
  • 唐澤 克之, 二瓶 圭二, 田中 寛, 清水口 卓也, 羽生 菜穂子, 三橋 敏雄, 晝間 清, 留守 卓也, 渡部 涼子
    2014 年 40 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    1995年~2009年の期間で当院にてI-131内用療法を施行した分化型甲状腺癌症例462例のうち,当科初診時に骨転移を有していた81例を対象とした。年齢は中央値63歳,男女比31:50,骨転移単独が52例,他臓器転移合併例が29例であった。瀘胞癌が56例,乳頭癌が14例,一回投与量の中央値は100mCiであった(50~200mCi)。64例(79%)に遠隔転移に有意な集積を認めた。I-131の集積がある症例の5年全生率(5生率)及び生存期間の中央値(MST)は各々59%,7.8年,ない症例の5生率及びMSTは各々28%,3.2年であった(p=0.0007)。集積がある症例の内,骨転移のみの症例の5生率は76%,他臓器転移合併例は17%であった(p<0.0001)。骨転移の個数が4個以下の症例と5個以上の症例では71%,38%であった(p=0.008)。サイログロブリン(Tg)値が10,000ng/ml未満と10,000ng/ml以上では74%,34%であった(p=0.001)。I-131内用療法により集積を認める骨転移症例の予後が良好であった。また他臓器転移のない症例,骨転移の個数が少ない症例,Tg値が低い症例の予後が夫々良好であった。
  • 清原 英之, 力丸 文秀, 松尾 美央子, 檜垣 雄一郎, 益田 宗幸
    2014 年 40 巻 1 号 p. 98-101
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,1972年3月から2012年12月までに当科にて一次治療を行った甲状腺未分化癌症例13例の臨床的検討を行った。転帰は全例原病死であり,初回治療からの生存期間は1~15ヶ月(平均5.3ヶ月)であった。T関連死12例,M死1例であり,局所制御率は8%,遠隔転移率は88%であった。遠隔転移の約8割は肺転移であった。予後予測に有用とされるPrognostic Index別の生存期間に有意差はみられなかった。根治手術群は非根治手術群よりも有意差はないが生存期間が延長する傾向にあった。
    初診時の局所の進行度,遠隔転移の有無により,局所制御のための集学的治療を検討する必要があるが,短期間で制御不能な状態となるため,在宅療養を視野に入れた緩和医療も,治療の選択肢の一つとして考慮する必要があると考えられた。
その他臨床
  • 松尾 美央子, 力丸 文秀, 檜垣 雄一郎, 益田 宗幸
    2014 年 40 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    頭頸部粘膜原発悪性黒色腫は,非常に稀で悪性度が高い腫瘍である。今回当院における頭頸部粘膜原発悪性黒色腫の13例のretrospectiveな検討を行った。13例中一次治療として切除術が施行できた8例の3年局所制御率は73%,13例全体の3年粗生存率は31%であった。遠隔転移について検討すると,初診時からすでに38%(5/13例)の症例に遠隔転移を認め,13例全体の3年累積遠隔転移出現率は72%と非常に高率であった。また今回我々は,生検後から治療開始日までの日数と,治療成績との関係についても検討した。結果は,有意差はなかったものの,局所制御率,生存率,生存期間中央値,遠隔転移出現率いずれの面からみても,治療開始が遅れるにつれ悪くなる傾向にあった。
  • 嶋本 涼, 井上 啓太, 山本 裕介, 五来 克也, 北辻 まき, 五島 幹太, 鬼塚 哲郎, 中川 雅裕
    2014 年 40 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    永久気管孔の術後狭窄は,しばしば遭遇する合併症のひとつであり,時には外科的に気管孔開大術を行う必要がある。術後狭窄を防ぐために,Z形成法や三角弁の挿入など種々の気管孔作成方法が考案されているが,われわれは,埋没縫合を用いて縫合法を工夫する単純な方法で気管孔作成を行い,術後狭窄が少なく良好な結果を得られたので報告する。
    気管孔狭窄の原因は,皮膚と気管粘膜に生じた段差に瘢痕拘縮が生じることや,気管粘膜や気管孔周囲の皮膚に血流障害をきたすことと考えられる。これらに対する改善方法として,埋没縫合により皮膚と粘膜を丁寧に合わせ,気管粘膜の血流を障害せず,気管軟骨を被覆することで,術後狭窄が予防できると考えられる。また,喀痰や痂皮の付着が少なく気管孔の管理も容易であることから,患者の負担が軽減するだけでなく,医療者の術後気道管理も容易であった。
  • 大島 梓, 櫻庭 実, 藤木 政英, 宮本 慎平, 茅野 修史, 林 隆一
    2014 年 40 巻 1 号 p. 114-119
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    眼窩底を含めた上顎全摘術後の25例に,チタンメッシュを用いて眼窩底再建を行った。チタンメッシュによる眼窩底再建は,眼窩底の3次元構造を容易に再現できることから,術後視機能の保持のために簡便で有用な方法である。使用にあたっては,感染に留意すること,死腔の充填を行うこと,筋体でチタンメッシュの被覆することが重要である。また,チタンメッシュの広範囲の使用は感染のリスクをあげるため,避けた方がよいと考えられる。
  • 嘉村 陽子, 岩江 信法, 平山 裕次, 米澤 宏一郎, 手島 直則, 松居 秀敏, 古川 竜也, 森田 成彦
    2014 年 40 巻 1 号 p. 120-125
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/04/26
    ジャーナル フリー
    喉頭摘出術後の代用音声として,電気式人工喉頭は術後早期から使用可能である。当院では術直後や放射線治療中に他の代用音声・コミュニケーション手段が使用困難な場合の代替的手段として,口腔伝導用チューブを装着した電気式人工喉頭を試用し,患者・医療者の良好な反応を得ている。しかし,術後早期のコミュニケーション手段としてどの方法が最も実用的であるかは,患者の使用感等の主観に依存する事が多い。その選択肢に発話明瞭度の客観的情報を加えるため,通常型電気式人工喉頭発声と口腔伝導型電気式人工喉頭発声の単語・会話における明瞭度の比較を,成人構音障害者用単語明瞭度検査・会話明瞭度検査を用いて分析・検討を行った。結果,単語・会話明瞭度ともに口腔伝導型電気式人工喉頭発声が,通常型電気式人工喉頭発声と比較し有意に良好な結果が得られ,口腔伝導型電気式人工喉頭発声は,他覚的評価においても術後早期のコミュニケーション方法として有用な手段になり得ると思われた。
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