頭頸部癌
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40 巻, 4 号
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第37回日本頭頸部癌学会
シンポジウム4
頸部郭清術の新展開
  • —早期舌癌における現状と課題—
    松塚 崇, 鈴木 政博, 西條 聡, 松井 隆道, 野本 幸男, 池田 雅一, 大森 孝一
    2014 年 40 巻 4 号 p. 397-401
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    センチネルリンパ節(SN)生検は,舌癌N0例における潜在リンパ節転移を検出し頸部郭清術の要否を決める明確な指標となる。
    当科のSN生検は,トレーサーとして99mTc標識フチン酸を腫瘍周囲に注入し手術中にハンディタイプγ線検出器を使いSNを探索し摘出する。T1T2N0舌癌29例(T1:14例,T2:15例)にSN生検を行い,6例にSNに転移を認め頸部郭清術を行い,23例で転移を認めず21例に頸部郭清術を省略した。SN生検29例に原病死はなく5年粗生存率は96%で,以前のWait and See 52例(84%)と比べ改善した。
    SN生検の課題に,迅速病理検査の準備や微小転移診断の難しさがある。OSNA(One Step Nucleic Acid Amplification)法は術中にリンパ節全体の情報を確認できる新しい診断法である。また,トレーサーにはRI法が一般的であるが制約があり,近赤外線を励起する特徴があるICGやCT Lymphography,超常磁性酸化鉄粒子をトレーサーに用いた研究が進んでいる。
第38回日本頭頸部癌学会
シンポジウム2
頭頸部がん治療医の養成の現状と今後の方向について
  • 桐田 忠昭
    2014 年 40 巻 4 号 p. 402-405
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    頭頸部がん治療医の養成の現状と今後の方向について,「頭頸部がん」でもとりわけ「口腔がん」治療を主とする口腔外科医の立場から検討した。「口腔がん専門医制度」は日本口腔腫瘍学会を基盤学会とし,2012年より本格的に開始された。本制度の特徴は,第一段階としての「口腔外科専門医」,第二段階としての「がん治療認定医」,そしてそのうえに「口腔がん専門医」を置くという三段階での取得を認定要件としている点である。本制度により口腔がん治療をサブスペシャリティーとする口腔外科専門医ならびにがん治療認定医のさらなる質の担保と向上,および口腔がん治療を専門とする高い志を持った専門医の育成と増加に結びつき,頭頸部がん治療に貢献できることを期待するものである。
シンポジウム6
頭頸部進行がんに対する治療戦略
  • 大月 直樹, 四宮 弘隆, 小松 弘和, 森本 浩一, 齋藤 幹, 清田 尚臣, 佐々木 良平, 丹生 健一
    2014 年 40 巻 4 号 p. 406-411
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    当院の進行期(Stage III/IV)喉頭癌に対する治療方針はT3以下であれば化学放射線療法を,T4であれば手術(喉頭全摘術)を基本としているが,喉頭温存手術も選択肢として検討している。一方,進行期下咽頭癌ではT2以下であれば化学放射線療法を行い,リンパ節残存または再発に対して救済手術もしくはリンパ節転移が3cmを超える場合には頸部郭清先行の化学放射線療法も選択肢として考慮している。局所進行(T3,T4)では喉頭全摘を含む根治手術を勧めるが,喉頭温存の希望が強い場合には化学放射線療法を検討している。また,根治切除後の術後治療は節外浸潤,断端陽性の場合には化学放射線療法,節外浸潤がないがリンパ節転移が多い(N2b以上)場合には放射線単独治療を行うことを原則としている。本報告では進行期喉頭癌および下咽頭癌の当院での治療方針に基づく治療選択の結果と治療成績を示し,喉頭温存を目指した進行期喉頭癌および下咽頭癌の治療戦略について検討する。
シンポジウム7
治療決定のための画像診断のポイント—中・下咽頭,喉頭癌を中心に—
  • 久野 博文
    2014 年 40 巻 4 号 p. 412-416
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌に対する切除不能病変の画像評価は,治療方針決定と治療予後に大きく影響を及ぼすため,臨床的意義が高く極めて重要である。切除不能因子には,原発病変によるT4b因子と,節外進展を伴う転移性リンパ節病変による切除不能因子があるが,画像診断医はそれらを慎重にかつ正確に評価する必要がある。原発病変および転移性リンパ節病変において最も頻度の高く重要な切除不能因子は,頸動脈浸潤,椎前筋膜浸潤および原発病変による上咽頭進展である。CTは高い時間・空間分解能を有し,MRIは高い濃度分解能を有する。切除可否に関して可能な限り正確な判断を行うためには,CTおよびMRIの各シーケンスにおいて,最適なモダリティや撮像法の選択,重要な画像所見の知識が必要となり,適切な治療方針の決定に寄与すると考えられる。
第5回教育セミナー
一般投稿
上顎(鼻副鼻腔)
  • 岡崎 雅, 白倉 聡, 畑中 章生, 得丸 貴夫, 藤川 太郎, 山田 雅人, 別府 武
    2014 年 40 巻 4 号 p. 422-425
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    混合型小細胞癌は小細胞癌と扁平上皮癌あるいは腺癌などが混在する腫瘍の総称である。いわゆる小細胞癌と同様に肺に好発することが知られており,高率に遠隔転移を生じることから予後不良と考えられている。頭頸部領域では腺癌との混合型の報告は認めない。当センターで治療を行い長期生存が得られている篩骨洞原発の混合型小細胞癌(小細胞癌と腺癌の混合型)について報告する。症例は53歳男性,頸部腫瘤と鼻出血を主訴に当科受診となった。CTで篩骨洞原発腫瘍を疑われ,生検を行ったところ小細胞癌と腺癌の混合型小細胞癌の診断(cT2N2bM0)であった。放射線治療(総線量74Gy)を施行したが,頸部リンパ節および原発部位に腫瘍残存を認めたため,外切開法による汎副鼻腔手術と頸部郭清術を施行した。術後5年経過するが非担癌生存している。長期生存している理由として,腫瘍細胞の悪性度(Ki–67標識率)が低いことが示唆された。
口腔
  • 遊佐 和之, 尾崎 尚, 吉田 雪絵, 下山 泰明, 橘 寛彦, 櫻井 博理, 菊地 憲明, 飯野 光喜
    2014 年 40 巻 4 号 p. 426-431
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    下顎再建では腓骨皮弁などの血管柄付遊離骨皮弁が第一選択とされているが,全身状態や病期など症例ごとに適応を検討する必要がある。今回われわれは2009年9月から2013年12月までに山形大学医学部附属病院歯科口腔・形成外科にて下顎再建を行った25例の臨床的検討を行った。良性腫瘍13例では全例で金属プレート(RP)による一次再建を行い,7例で二期的再建を施行した。悪性腫瘍は一次症例11例の一次再建は,遊離腓骨皮弁4例,腹直筋皮弁+RP3例,腹直筋皮弁2例,前外側大腿皮弁+RP,前腕皮弁+RPが各1例であり,2例に対し二期的再建を行った。二次症例ではチタンメッシュトレー+腸骨海綿骨細片による再建を施行した。また,9例に対しデンタルインプラントを埋入し,うち2例はインプラントオーバーデンチャーによる咬合再建が完了した。下顎再建では整容的,機能的回復が重要であり,さらに咬合再建まで含めた一貫治療が術後QOLの向上に寄与すると考えられた。
  • 鈴木 基之, 藤井 隆, 栗田 智之, 喜井 正士, 音在 信治, 貴田 紘, 北村 公二, 須川 敏光, 高原 厚子, 金村 亮, 小池 ...
    2014 年 40 巻 4 号 p. 432-436
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    舌亜全摘術における喉頭挙上術の併施の適応を検討する目的で,舌亜全摘術を行った44例を対象として後ろ向きに研究を行った。舌の切除範囲を健側オトガイ舌筋を一部切除したtype 1と完全に切除したtype 2に分類し,術後嚥下機能を術後初回VF時のAsRスコアを用いて評価し検討を行った。type 1(n=17)では舌骨上筋群の切除の程度によらずAsRスコアの平均は6点以上で,喉頭挙上術の併施によるスコアの向上は認めなかった。type 2(n=27)では舌骨上筋群の切除の程度によらずAsRスコアの平均は5点以上で,片側舌骨上筋群を切除した群では喉頭挙上術の併施により有意にスコアの向上を認めた。舌亜全摘術における喉頭挙上術の併施の適応は,両側舌骨上筋群切除例およびtype 2の片側舌骨上筋群切除例とするのが妥当であると考えられた。
  • 山田 慎一, 柳本 惣市, 高橋 英哲, 松下 祐樹, 鳴瀬 智史, 白石 剛士, 池田 久住, 藤田 修一, 池田 通, 朝比奈 泉, 梅 ...
    2014 年 40 巻 4 号 p. 437-442
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    リンパ節転移の被膜外浸潤の進展度を2つに分類し予後との検討を行った。2008年1月から2012年12月の4年間における長崎大学病院顎口腔外科で加療した口腔扁平上皮癌症例は124例であり,このうち被膜外浸潤は23例であった。進展度分類で周囲の脂肪組織あるいは筋組織内に腫瘍が肉眼的に広範囲にみられるType Bでは再発率は60%,遠隔転移死は3例にみられ,2年疾患特異的生存率は53.3%と有意に予後不良となる傾向が認められた(P < 0.05)。被膜外浸潤症例における再発予測因子の検討を行ったところ,単変量解析,多変量解析ともにリンパ節転移個数が4個以上の症例,被膜外浸潤進展度分類がType Bのものが有意に予後不良であり,有意な再発予測因子となる可能性が示唆された(P < 0.05)。
唾液腺
  • 浦野 誠, 吉岡 哲志, 加藤 久幸, 堀部 兼孝, 日江井 裕介, 油井 健宏, 岡田 達佳, 櫻井 一生
    2014 年 40 巻 4 号 p. 443-447
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    症例は40代,女性。右耳内違和感を主訴に受診。術前約20ヶ月の間に,頻回に再発を繰り返す右外耳道腫瘤に対して計6回の生検が施行された。1~4回目では粘液を有する炎症性肉芽様組織と病理診断し,経過観察をされていた。経過中に耳下部腫脹は認めなかった。5回目の生検で悪性腫瘍の可能性を疑い,その後CTで右耳下腺に腫瘍が存在することが判明し,外耳道を含む拡大耳下腺全摘術が施行された。手術検体の病理組織像では,耳下腺上極に発生した低悪性粘表皮癌が上方に進展し,軟骨部外耳道の「サントリーニ裂溝」を穿通して外耳道へ進展していた。本例は,臨床的および病理学的に終始外耳道病変と認識されていたことで,生検組織を長期間にわたり奇異な粘液性上皮構造を含む炎症性肉芽と判断し,耳下腺腫瘍の存在を早期に認識することが困難であった。まれではあるが,本例の様な耳下腺腫瘍の非定型的な外耳道方向への進展形式について注意を払うことが必要と思われた。
  • 平賀 幸弘
    2014 年 40 巻 4 号 p. 448-452
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    耳下腺に発生した多形腺腫由来腺房細胞癌の1症例を報告した。患者は32歳女性,4~5年来の30mm大の無痛性左耳下腺腫瘍を主訴に来院した。術中所見で顔面神経を一部巻き込んでおり,迅速病理検査で上皮性悪性腫瘍が疑われたため,耳下腺拡大全摘術を施行した。病理組織検査の結果浸潤型であったため術後放射線治療50Gyを行い,87ヶ月経過したが再発を認めない。
    多形腺腫由来癌は,2005年刊行された唾液腺腫瘍の新WHO分類ではじめて採用された呼称である。耳下腺にもっとも多く発生し,その発生率は耳下腺癌の13%であった。さらに発生する癌腫は腺癌NOS,唾液腺導管癌,未分化癌,筋上皮癌などの報告が多いが,腺房細胞癌の発生の詳細な報告は渉猟した限り本例を含め2例のみと非常にまれであった。多形腺腫由来癌の臨床的悪性度は一般に発生した癌腫により規定される。腺房細胞癌は低悪性に分類され予後は比較的良好と考えられるが,厳重な経過観察を要する。
  • 上田 哲平, 鵜久森 徹, 富所 雄一, 山田 啓之, 脇坂 浩之
    2014 年 40 巻 4 号 p. 453-458
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    1987年1月から2011年11月の間に当科で初回根治手術を施行した耳下腺癌42例を対象に頸部郭清術の方針につき検討した。術前に頸部リンパ節転移を認めた症例(以下cN(+)群)は10例で,全例に患側頸部郭清が施行された。頸部再発を6例に認め,内2例は選択的頸部郭清施行例の郭清野外再発であった。術前に頸部リンパ節転移を認めなかった症例(以下cN0群)は32例で,内23例は予防的頸部郭清を施行しなかったが,後発転移を認めたのは1例のみであった。病理学的頸部リンパ節転移陽性例は11例で,転移部位は患側レベルIからVの全頸部に及び,全例で患側レベルIIに転移を認めた。
    今回の検討から,cN(+)群に対しては患側の全頸部郭清が妥当と考えられた。またcN0群に対して予防的頸部郭清は必ずしも必要ではないと考えられたが,患側レベルIIの術中迅速病理検査が予防的頸部郭清の適応決定に有用である可能性が示唆された。
頸部・甲状腺
  • 水田 啓介, 山田 南星, 久世 文也, 加藤 久和, 青木 光広, 伊藤 八次
    2014 年 40 巻 4 号 p. 459-463
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌転移性頸部リンパ節の頸動脈浸潤の術前画像評価を検討した。対象は術前に頸部造影CTで頸動脈浸潤が疑われ,手術治療を実施した14例である。術中に頸動脈浸潤が確認され頸動脈合併切除したのは10例で,浸潤がなく頸動脈を温存した例は4例である。頸動脈浸潤例の頸部造影CTで頸動脈と転移リンパ節の接触角度は180度以上であった。接触角度が270度以上の例では全例頸動脈浸潤していた。頸部MRIのT2強調画像で頸動脈周囲の全周に低信号帯の不明瞭さがない例では頸動脈浸潤がなく,低信号帯が全周不明瞭である例では全例頸動脈浸潤があった。病理組織学的頸動脈外膜浸潤部位と頸部MRIの頸動脈周囲低信号帯の不明瞭部を7例で比較検討した。動脈外膜浸潤部に一致してMRI 低信号帯不明瞭性がみられ,動脈外膜浸潤角度とMRI 低信号帯不明瞭性角度は相関した。MRI 低信号帯不明瞭性は頸動脈外膜浸潤を示唆する所見であると思われた。
  • 硲田 猛真, 宝上 竜也, 野村 直孝, 中原 啓, 榎本 雅夫
    2014 年 40 巻 4 号 p. 464-467
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    化学放射線同時療法により,進行頭頸部癌においても局所制御の改善に加え,頸部転移も臨床的,病理学的に完全寛解率が増えている。しかし,治療後のCTや超音波検査で頸部転移が残存した場合に,活動性の腫瘍が残存しているかどうかを判定する方法は確立していない。今回我々は,化学放射線療法後に行った超音波ガイド下穿刺吸引細胞診の正答率を調べた。
    化学放射線療法を受け,頸部リンパ節残存が疑われた23例に,頸部郭清術を行う前に超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を施行した。頸部郭清後の組織診では10例(43.5%)で活動性の腫瘍がみられた。超音波ガイド下穿刺吸引細胞診は感度60.0%,不適切検体とされたものを陰性に含めると,特異度83.3%であった。
    以上から,超音波ガイド下穿刺吸引細胞診は頸部の残存腫瘤が活動性かどうかの判定にある程度有用ではないかと考えた。
  • —胸骨L字切開によるアプローチ—
    別府 武, 白倉 聡, 畑中 章生, 岡崎 雅, 得丸 貴夫, 藤川 太郎, 山田 雅人, 岡野 渉, 有泉 陽介
    2014 年 40 巻 4 号 p. 468-472
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺分化癌は一般に予後良好であるが,縦隔リンパ節転移を放置すれば気道や食道にいずれ影響を及ぼしQOL低下を招くことから,たとえ遠隔転移があったとしても手術適応となることが珍しくない。手術適応には切除可能かどうかという点のほかに,年齢,耐術能なども充分考慮しなければならないが,気道も食道も保存できるような場合は,永久気管孔を増設する必要がないので,切除において安全な視野,ワーキングスペースを得るために胸郭をいったん切開,縦隔を開放し,最後に骨を再び固定すればよい。このような場合に胸骨L字(または逆L字)切開によるアプローチは良い適応となる。本法は上縦隔の郭清を問題なく行うことが可能で,QOL低下が少なく済む有用な方法と考えられる。
その他臨床
  • 香川 一史
    2014 年 40 巻 4 号 p. 473-478
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    2006年~2013年に頭頸部癌の原発巣に放射線治療を行った463例中,治療開始時に非制御の遠隔転移を有した10例を対象とした。年齢中央値63歳,男女比9:1,原発部位は咽頭6,鼻腔2,口腔1,唾液腺1で,組織型は扁平上皮癌5,腺様嚢胞癌3,悪性黒色腫1,腺癌1であった。遠隔転移部位は骨5(うち骨+肝1),肺5(うち肺+肝2)ですべて多発であった。原発巣に中央値60Gyの照射が行われ,3例で骨転移にも照射された。局所一次効果はCR:PR=4:6だが腺様嚢胞癌の2例で辺縁再発を認め,1年局所制御率は60%であった。1年全生存率は照射開始時のPS1~2(64%)に対しPS3(0%)で不良であった。死因は癌性髄膜炎1,癌性胸膜炎3,誤嚥性肺炎1例であった。遠隔転移例であってもPS2までで薬物療法による生存期間延長が見込まれる場合は原発巣に対する姑息的照射の適応になる可能性がある。
  • 橋本 香里, 門田 伸也, 花川 浩之, 三浦 直一, 石川 徹, 西川 敦
    2014 年 40 巻 4 号 p. 479-484
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    セツキシマブは,EGFRを標的としたモノクローナル抗体で,現在,頭頸部癌における唯一の分子標的薬である。米国のNCCNガイドラインでは,局所進行頭頸部扁平上皮癌治療の選択肢として,セツキシマブ併用放射線療法が記載されている。当院では,現在まで頭頸部扁平上皮癌11例に適用した。内訳は,中咽頭癌6例,下咽頭癌2例,喉頭癌3例。Stage II4例,III3例,IVA4例。男性10例,女性1例で,年齢は49~81歳(中央値63歳),PSは全例0であった。ほぼ全例で,Grade3の放射線性皮膚炎・口腔咽頭粘膜炎が生じたが,Grade4の有害事象は生じず,全例で治療完遂できた。治療終了12週間後の評価は,全体でCR9例,PR2例であり,Stage III/IVではCR5例,PR2例であった。今後,症例数を積み重ね,長期成績も含めた検討が必要であると考えられた。
  • 吉田 正, 鵜久森 徹, 三谷 壮平, 富所 雄一, 山田 啓之, 羽藤 直人
    2014 年 40 巻 4 号 p. 485-489
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    セツキシマブは頭頸部癌に対するEGFRを標的とした分子標的治療薬である。近年,セツキシマブによるアナフィラキシーの原因がgalactose-α-1, 3-galactose(α-Gal)に対する抗糖鎖抗体であるとの報告がなされた。α-Gal糖鎖はウシなどの哺乳類に存在するため,牛肉アレルギーとの関連性が指摘されており,マダニ咬傷によるα-Gal糖鎖の感作も報告されている。当科で2013年1月から12月までにセツキシマブ治療を行った頭頸部癌症例17例におけるinfusion reaction (IR)に関して,牛肉,豚肉,鶏肉,α-Galに対する特異的IgEの血清学的検討に加え,問診によるマダニ咬傷有無について検討を行った。IRは4例に認められ,3例では牛肉,豚肉,鶏肉,又はα-Galのいずれかに対する特異的IgE高値が認められた。α-Gal糖鎖が原因となって引き起こされたセツキシマブアレルギーであった可能性が示唆された。
  • 島田 貴信, 清田 尚臣, 今村 善宣, 森本 浩一, 斉藤 幹, 西村 英輝, 大月 直樹, 佐々木 良平, 丹生 健一
    2014 年 40 巻 4 号 p. 490-496
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    目的:再発・転移頭頸部がんに対するドセタキセル・シスプラチン(DC)療法の安全性および効果について後方視的に検討する。
    対象および方法:2006年7月から2012年10月までにDC療法を実施した再発・転移頭頸部がん患者24例。
    結果:扁平上皮癌(上咽頭がん3例を除く)17例を対象とする有効性に関する検討では,奏効割合47%(完全奏効 18%,部分奏効 29%),生存期間中央値390日,無増悪生存期間中央値188日であった。全24例を対象とする安全性に関する検討では,有害事象は発熱性好中球減少が8例(33%)にみられ,そのうち5例は1コース目で発症していた。有害事象のために減量が必要となった,または治療を中止した症例はそれぞれ12例(50%),2例(8%)であった。治療関連死亡は認めなかった。
    結論:再発・転移頭頸部扁平上皮癌に対するDC療法は既報と同程度の治療効果を示した。実施にあたっては発熱性好中球減少に対する適切な対応が必要と考えられた。
  • 和佐野 浩一郎, 鈴木 法臣, 川崎 泰士, 小川 郁
    2014 年 40 巻 4 号 p. 497-501
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    鎖骨上動脈島状皮弁(SCAIF)は鎖骨上動静脈を血管茎とする有茎筋膜皮膚弁であり,当初熱傷瘢痕の治療などに用いられていた。海外では徐々に頭頸部癌切除後の再建に用いられるようになり,有用性が報告されているが,国内からの報告はまだない。
    今回我々はSCAIFを4症例の頭頸部癌切除後の再建に用いて有用性を検討した。皮弁挙上に必要な時間は1時間程度であり,皮弁採取部位は一期的縫合可能であった。手術は頭頸部外科医のみで行ったが,皮弁の扱いにある程度慣れた医師であれば難しい手術手技ではなかった。結果として全例で皮弁は生着し,1例で唾液瘻を生じたものの再手術を行うことにより全例で常食摂取が可能となった。頭頸部癌切除後の再建に用いる皮弁として,一つの選択肢となりうる有用性があるものと考えられた。
  • 中村 亮太, 兵藤 伊久夫, 奥村 誠子, 澤本 尚哉, 桑田 知幸, 亀井 譲
    2014 年 40 巻 4 号 p. 502-506
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/08
    ジャーナル フリー
    頸部郭清の既往のある患者において,瘢痕内で移植床血管を求めるのは困難を伴うため,前回の頸部郭清とは対側の血管を使用することが多い。当院では顕微鏡下での鋭的剥離により瘢痕内の血管でも剥離露出が可能と考え,同側瘢痕内の移植床血管を選択している。当院における頸部郭清後の再手術患者における移植床血管選択について検討した。2011年1月から2014年5月に当院において遊離組織移植にて頭頸部再建を行った口腔,中咽頭,上顎癌患者で既頸部郭清例22例を対象とした。22例中13例が同側で,8例は対側にて移植床血管を求めた。1例は術中有茎皮弁に変更した。全例皮弁は生着した。顕微鏡下に愛護的に剥離することにより,瘢痕周囲内でも移植床血管を安全に剥離することができた。同側の移植床血管を使用することで,欠損からの距離が近く,組織の充填も十分に行うことができ,有用であると考える。
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