頭頸部癌
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42 巻, 3 号
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第40回 日本頭頸部癌学会
シンポジウム3
口腔がんに対するチーム医療
  • 栗田 浩, 鎌田 孝広, 上原 忍
    2016 年 42 巻 3 号 p. 277-283
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    口腔癌の治療は,手術,放射線,薬物療法の三大療法に,欠くことのできない支持療法や緩和ケア等を組み入れた集学的治療(チーム医療)により行われている。周術期口腔機能管理は支持療法のひとつであり,がん患者の口腔機能の維持・改善,口腔内の保清,慢性感染巣のコントロール等を行う事により,がん治療時の有害事象の予防・軽減,がん治療成績の向上,生活の質(QOL)の維持・改善等をはかるものである。本稿では,当科で行っている口腔癌治療における周術期口腔機能管理の内容,理論および根拠を概説した。管理方法の標準化とその効果の検証が,今後の課題である。
  • 山下 佳雄
    2016 年 42 巻 3 号 p. 284-289
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    口腔がんの術後に生じた実質欠損に対しては,咀嚼,嚥下,構音といった機能面に加え,審美性に配慮した再建術を行わなくてはならない。
    術後の咀嚼機能の回復には補綴的アプローチが不可欠で,従来より顎義歯が広く用いられてきた。顎義歯は残存歯や栓塞子を利用して口腔内での安定性を高め,咀嚼のみならず言語,嚥下機能を早期に改善する有用な方法である。しかし欠損が大きく残存歯のない,もしくは少ない症例では顎義歯の安定性は低く,十分な咬合力を回復することはできない。このような症例に対してデンタルインプラントの使用は有用である。
    顎義歯やインプラント義歯といった咀嚼機能を回復する補綴治療を可能にするには,再建骨の位置や形態が重要である。しかし顎骨の解剖学的形態は複雑なため,移植骨を用いて再現することは容易ではない。補綴治療が可能な位置,骨量,骨質を確保できていない再建症例も多く,症例によっては追加手術が必要となる。
    よって顎補綴治療まで見据えた手術計画を立案し,術前より頭蓋顔面骨模型やコンピューターを用いた手術シミュレーションを行っておくことが必要と考える。
シンポジウム4
頭頸部癌における治療前・後画像評価のポイント
  • 加藤 博基, 松尾 政之, 水田 啓介, 青木 光広, 久世 文也, 柴田 敏之, 牧田 浩樹, 加藤 恵三
    2016 年 42 巻 3 号 p. 290-293
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌患者において,頸部リンパ節転移の有無は治療方針決定や予後予測に影響する重要な因子となる。頸部リンパ節転移の画像診断では超音波・CT・MRIによる形態診断が中心的な役割を果たし,形態診断ではリンパ節の大きさ,形状,内部性状,辺縁性状を評価する。大きさでは長径より短径を基準とした方が高い診断能を示すとされ,短径が上内深頸リンパ節で11mm,その他のリンパ節で10mm以上を腫大とする基準が一般的である。ただし,大きさだけの評価では十分な診断能が得られないため,リンパ門を意識した形状,中心壊死を意識した内部性状,被膜外浸潤を意識した辺縁性状を同時に評価することで診断能が上昇する。頸部リンパ節転移の治療前画像診断は造影CTを用いた形態診断が基本となるが,造影CTの弱点である低い感度を補うためには,FDG-PETを補助的に使用することが望ましい。
  • 藤田 晃史
    2016 年 42 巻 3 号 p. 294-298
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌術後の画像評価は,術前と比較して解剖学的構造が大きく変化しており,化学療法や放射線治療が追加されると様々な修飾が加わり評価がより困難になる。術後の画像評価には形態的変化の詳細な読影が重要であり,過去画像との比較が必須であるため,治療終了後6~12週にベースラインとなる検査を施行しておくことが望ましい。局所再発およびリンパ節転移再発においては,いずれの場合もベースライン検査を基準とした過去画像との比較により増大あるいは新規病変が検出されたときには再発の可能性が高い。縮小や内部性状変化など画像所見に変化が生じているときには再発なしとは断定できない。また術後のリンパ節転移再発は,通常のリンパ経路以外の領域にも注意をする必要がある。頭頸部癌の再発に対する追加治療は予後やQOLに寄与するため,再発が疑わしい所見が検出された際には,短期間での画像再検も躊躇せず,早期発見に努めることが重要である。
  • 中本 裕士
    2016 年 42 巻 3 号 p. 299-303
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    フッ素-18標識のフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたポジトロン放射断層撮像法(PET)検査は,腫瘍性疾患の治療方針を考慮する上で広く行われる画像診断法のひとつである。現在は一体型PET/CT装置で撮像されることが一般的で,PETで得られる代謝画像はCTの形態画像とともに評価できるため,“どこで何がおきている”という情報がPET/CT検査によって提供される。FDG-PET/CT検査の目的を大別すると,(i)病変を検索すること,(ii)病変を評価すること,になる。病期診断や再発診断,原発不明癌の原発巣検索は前者に,鑑別診断や治療効果判定は後者に属する。FDGの集積による鑑別診断は困難であり,組織学的検索に代わるものではないが,FDGの集積程度を利用することによって,形態のみでは判定しづらい活動性病変を効率的に検索・評価することが可能となる。PET検査の特徴について,将来展望もふまえて解説する。
第6回教育セミナー
第7回教育セミナー
  • 安藤 雄一, 大田 亜希子, 坪井 理恵
    2016 年 42 巻 3 号 p. 309-315
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    頭頸部がん領域に限らず,がん薬物療法は臨床試験のエビデンスを根拠に行われる。減量など標準治療を変更する場合はその理由を明らかにする。局所進行頭頸部がんの切除不能例ではシスプラチン併用の化学放射線療法が標準治療である。放射線療法とセツキシマブ併用も選択肢になるが,化学放射線療法と直接比較した臨床試験はない。術後の化学放射線療法は根治切除後再発高リスク群に対して行う。局所進行切除可能例で喉頭温存を目的とする場合,化学放射線療法とともに,導入化学療法とその後の放射線療法(または化学放射線療法)も選択肢になる。転移再発例では薬物療法の目的は多くの固形がんと同様に延命・症状緩和である。初回治療はシスプラチンと5-フルオロウラシルにセツキシマブを追加する3剤併用が標準治療である。二次治療以降はパクリタキセル,ドセタキセル,S1,セツキシマブが使用される。
  • 冨藤 雅之
    2016 年 42 巻 3 号 p. 316-321
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    喉頭癌に対する経口的切除は低侵襲で治療期間も短いという特徴があり,喉頭温存治療の一つとして有用性がある。声門癌においては顕微鏡下のレーザー手術が主に行われており,European Laryngological Society(ELS)分類に沿った切除範囲の分類が有用である。レーザー手術の成績としては放射線治療とほぼ同等の成績が報告されており,音声の面からも特にType I,Type IIといった限局した切除範囲であれば良好である。一方広範囲の切除においては嗄声が目立つこともあり,他の治療法も含めたインフォームドコンセントが必要である。
    声門上部癌においては拡張型喉頭鏡や内視鏡の使用により,広い視野と広い操作範囲を得ることが可能である。海外でもロボット手術の応用なども行われている領域であり,今後の治療手技の発展が期待される。声門上部切除においては嚥下機能障害の可能性があるが,喉頭蓋の全摘や化学放射線治療後のサルベージ症例,下咽頭,食道癌の合併例においては注意が必要である。
一般投稿
上顎(鼻副鼻腔)
  • 藤村 真太郎, 庄司 和彦, 堀 龍介, 児嶋 剛, 岡上 雄介, 奥山 英晃, 北野 正之
    2016 年 42 巻 3 号 p. 322-326
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    2003年10月~2014年7月に当科でTS-1を用いた三者併用療法による治療を行った上顎洞扁平上皮癌14例について疾患特異的生存率と局所制御率,有害事象を検討した。症例の内訳はT1:1例,T2:2例,T3:5例,T4:6例で,頸部リンパ節転移はN2b:1例のみ,遠隔転移を認めた症例は無かった。治療プロトコールは2005年以後改良を加えているが,いずれも基準量よりも一段階減量したTS-1内服を3~4週併用し総線量50Gy/25frの放射線照射と手術を組み合わせている。最終転帰は原病死が4例(28.6%),担癌生存例は無く,非担癌生存が10例(71.4%)であった。全体の3年疾患特異的生存率は84.7%,5年疾患特異的生存率は75.2%,3年局所制御率は76.9%,5年局所制御率65.9%であり十分な治療成績が得られていると考えている。有害事象は放射線性粘膜炎が目立ったが,重篤な血液毒性は認めておらず,TS-1の投与量を基準量に増やすことも今後検討したい。
  • 小野 剛治, 田中 法瑞, 梅野 博仁, 千年 俊一, 進 武一郎, 麻生 丈一朗, 温 光太郎, 江藤 英博, 村木 宏一郎, 服部 睦行 ...
    2016 年 42 巻 3 号 p. 327-333
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    選択的動注化学放射線治療(以下RADPLAT)を行ったT4上顎洞扁平上皮癌37例の検討を行った。RADPLATに対して反応不良群(11例)は手術(上顎亜全摘,あるいは全摘)を行い術後補助療法として放射線単独治療を行った。反応良好群(26例)はRADPLATを継続した。5年T別局所制御率は,T4a(33例):60.0%,T4b(4例):66.7%,粗生存率はT4a:51.0%,T4b:25.0%であった。5年治療別局所制御率は手術群:72.7%,RADPLAT群:53.6%,粗生存率は手術群:63.6%,RADPLAT群:41.3%であり,統計学的有意差は認めなかったが手術群で良好な傾向があった。Gr3以上有害事象は0~21.6%に認めたが治療を中断する事象はなかった。局所再発12例中4例に救済手術を行い1例で救済が可能であった。T4症例の局所再発に対する救済は困難であり,いかにして局所制御を向上させるか,また治療後の残存,再発への対策をいかに行うかが今後の課題である。
口腔
  • 奥山 英晃, 庄司 和彦, 堀 龍介, 児嶋 剛, 岡上 雄介, 藤村 真太郎, 北野 正之
    2016 年 42 巻 3 号 p. 334-338
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    早期舌癌の予防的頸部郭清術の是非は施設により見解が分かれるが,当科では舌癌T2N0症例には予防的頸部郭清術は行わず舌部分切除のみとしてきた。2004年~2014年までに部切術を施行したT2N0症例26例を対象に局所再発・後発頸部リンパ節転移と腫瘍の厚みとの関連につき検討した。5年生存率は86.5%であった。局所再発を2例(7.7%),後発頸部リンパ節転移を11例(42.3%)に認めた。リンパ節転移例10例で頸部郭清術を施行し,いずれも頸部制御できたが後に肺転移で2例が死亡した。転移部位はlevel Iが5/10例(50.0%),level IIが8/10例(80.0%),level IIIが3/10例(30.0%),level IV・Vは0例で,潜在転移部位は全例患側SONDの範囲内であった。原発巣の厚みによる後発頸部リンパ節転移は2mm以下の症例では0/6例,4mm以上の症例では10/14例(71.4%)と高率に転移を認めた。転移を認めた11例では厚みが6.7±3.1mmで,転移のない15例の2.9±3.2mmに比べて厚かった。厚みが4mm以上の症例では予防的頸部郭清術を積極的に検討すべきと考えられた。
  • 杉山 聡美, 岩井 俊憲, 小栗 千里, 中島 英行, 小泉 敏之, 太田 信介, 廣田 誠, 來生 知, 光藤 健司, 藤内 祝
    2016 年 42 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    口腔内に初発症状を呈する節外性悪性リンパ腫(ML)は非常にまれである。われわれは2005年1月から2015年12月までの間に当科を受診した口腔悪性腫瘍患者1,081例のうち口腔内に初発症状を呈した節外性ML10例について臨床的特徴を検討した。男性は7例,女性は3例であり,年齢は8~82歳(平均年齢:64.4歳)であった。8例が歯肉に生じており,その他の部位としては口底と頰粘膜に生じていた。病理診断ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫が7例を占めていた。Ann Arbor分類ではステージ I,II,III,IVはそれぞれ,3,1,2,4例であった。さらに,本邦で報告された口腔内に初発症状を呈する節外性ML115例を検討した。口腔病変を診断する際には,MLが口腔内に発生しうることを念頭に置くべきである。
喉頭
  • 東野 正明, 河田 了, 鈴木 倫雄, 櫟原 崇宏, 寺田 哲也
    2016 年 42 巻 3 号 p. 345-348
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    目的:声門癌T2症例に対するS-1併用放射線治療の有効性と問題点の検討。
    対象:大阪医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて声門癌T2症例に対して外来通院で初回治療した症例のうち,放射線単独治療を施行した22例(RT単独群)とS-1併用放射線治療を施行した26例(S-1併用群)。
    結果:S-1併用群26例中6例で再発を疑われたが,5例で壊死組織であり,1例で異形成であった。3例に両側声帯麻痺を認め,気管切開術を要した。一方,RT単独群22例中4例に局所再発を認め,患側声帯麻痺は1例に認めた。S-1併用群はRT単独群に比べ,局所制御率が有意に高かった。S-1併用群で喉頭機能障害を生じた5例は上方進展および披裂軟骨にかかる傾向にあった。
    結語:T2声門癌の局所制御率は放射線にS-1併用することで有意に向上した。S-1併用群26例では局所再発が認められなかったものの,喉頭機能障害を生じている症例があり,今後はさらなる真の喉頭機能温存を目指す必要がある。
その他臨床
  • ―高用量シスプラチン使用の安全性とマグネシウム補充による腎保護作用について―
    有泉 陽介, 高橋 亮介, 立石 優美子, 山田 雅人
    2016 年 42 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    目的:市中病院におけるCDDP 100mg/m2同時併用CRTの安全性,およびMg補充による腎保護作用について明らかにする。
    対象と方法:本治療を行った中下咽頭・喉頭癌13例のうち,Mg補充を行わずCDDP 80mg/m2で投与した初期の6例(80mgMg-群)とMg補充を行いCDDP 100mg/m2で投与した7例(100mgMg+群)の2群について後方視的に調査した。当院では市中病院における安全性を鑑み慎重に治療継続可否を判断している。両群のCDDP総投与量及び腎機能障害をはじめとする有害事象について比較検討した。
    結果:Grade 3の有害事象は口内炎5例(38%),白血球減少3例(23%),血小板減少1例(8%),発熱性好中球減少症1例(8%)。Grade 4以上はなし。CDDPを200mg/m2以上投与出来たのは,80mgMg-群1/6例に対して100mgMg+群7/7例であり,市中病院における安全性に配慮をしつつ有意(p=0.0097,Wilcoxon順位和検定)に総投与量を多くすることが出来た。
    結論:Mg補充で腎毒性が軽減され,市中病院でもCDDP 100mg/m2を用いたCRTが施行可能であった。
  • 松木 崇, 三浦 弘規, 多田 雄一郎, 増淵 達夫, 伏見 千宙, 金子 哲治, 猪俣 徹, 高橋 秀聡, 田中 太邦, 黒坂 正生
    2016 年 42 巻 3 号 p. 355-358
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー
    化学放射線治療後の残存や再発病変に対して喉頭全摘出術を行った場合,術後に咽頭皮膚瘻を形成し治療に難渋することが多い。Vacuum Assisted Closure®(V.A.C.®)治療システムを用いた局所陰圧閉鎖療法(Negative pressure wound therapy:NPWT)を施行し咽頭皮膚瘻の閉鎖に至った症例を報告する。症例は68歳男性で,声門癌T2N0M0に対しS-1併用放射線治療を施行したが腫瘍が残存し,喉頭全摘出術を施行したが術後にリークを認めたため前頸部に咽頭皮膚瘻を造設した。咽頭との交通が残存した場合には治療中止となる旨を十分に説明したうえで患者の強い希望があったためNPWTを開始した。感染が増悪することなく瘻孔は縮小し,開始後41日目で瘻孔が閉鎖し,48日目に経口摂取を開始した。症例を選ぶ必要があるが,NPWTは咽頭皮膚瘻の治療の有用な選択肢のひとつである。
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