頭頸部癌
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43 巻, 1 号
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一般投稿
上顎(鼻副鼻腔)
  • 小澤 宏之, 冨田 俊樹, 渡部 佳弘, 関水 真理子, 伊藤 文展, 猪狩 雄一, 斎藤 真, 佐藤 陽一郎, 戸田 正博, 小川 郁
    2017 年 43 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    2010年以降,当院耳鼻咽喉科と脳神経外科とのチームで経鼻内視鏡による腫瘍切除を行った嗅神経芽細胞腫9症例を対象とし,患者因子,手術因子,予後などについてレトロスペクティブに解析した。腫瘍の進行分類はModified-Kadish分類ではA/B/C/D=1/4/4/0,Dulguerov分類はT1/2/3/4=1/4/2/2であった。3例で開頭腫瘍切除を併用した。頭蓋底再建には5症例で筋膜,頭蓋骨膜,鼻中隔粘膜弁を用いた3層構造の再建を行い,全例で術後髄液漏を認めなかった。7例において術後放射線治療を施行した。3例に再発を認め,追加治療を行った。観察期間は短いものの現時点で全例生存中である。近年は頭蓋内浸潤を伴う進行例においても内視鏡下手術が行われており,術後放射線治療を行うことにより,開頭法による拡大切除と同等の治療成績が得られることが報告されている。今後は内視鏡下腫瘍切除術が嗅神経芽細胞腫の中心的な役割を担うと考えられる。
  • 関水 真理子, 新橋 渉, 川端 一嘉, 三谷 浩樹, 米川 博之, 福島 啓文, 佐々木 徹, 瀬戸 陽, 北野 睦三, 小泉 雄, 神山 ...
    2017 年 43 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    嗅神経芽細胞腫はその発生頻度の稀さゆえに治療方法は確立していない。当院では2004年に三嶋らがcyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, 持続投与のcisplatin, etoposide(CADO-CVP)による導入化学療法が高い奏功率を得られていることを報告してから,2004年以降CADO-CVP療法を一次治療として用いる機会が増えている。今回1992年1月から2012年12月までに当院で一次治療を実施した嗅神経芽細胞腫31症例を対象とし導入化学療法実施群,非実施群に分類しretrospectiveに検討したので報告する。全体の5年粗生存率は82%で,5年無病生存率は53%であった。両群の5年無病生存率は,導入化学療法実施群では65%,非実施群では24%で統計学的に有意差を認めた。また治療後5年以上経過してから再発転移を来たした症例も4例認め,長期経過観察が必要であると考えられた。
  • 佐藤 文彦, 小野 剛治, 橋口 晋一郎, 清川 兼輔, 梅野 博仁
    2017 年 43 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    涙囊原発腫瘍は比較的稀な疾患であり,初期症状から慢性涙囊炎と診断され,治療が遅れるケースがしばしばある。今回,涙囊原発悪性腫瘍に対して眼窩内容物摘出術,上顎部分切除術,保存的頸部郭清術,耳下腺浅葉切除術,腹直筋皮弁による再建術を施行した症例を経験した。涙囊原発腫瘍に対する治療は,手術,放射線療法,化学療法,またそれらの組み合わせた集学的治療が行われるが,扁平上皮癌,未分化癌,移行上皮癌などといった多彩な組織型と分化度を有するため,組織型に応じた治療を行う必要がある。また,術後長期再発例も稀ではないため,長期間のフォローアップが望まれる。流涙や涙囊部腫脹などの症状を呈している場合は,原疾患として腫瘍が存在する可能性があることを念頭に置き,早期発見に努めるべきである。
口腔
  • 島津 倫太郎, 山本 美保子, 峯崎 晃充, 嶋崎 晃充, 倉富 勇一郎
    2017 年 43 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    多くの早期舌癌(T1/T2/N0M0)は,頭頸部悪性腫瘍の中では比較的予後良好な疾患のひとつであるが,術後遠隔転移をきたし,不幸な転機をたどる高リスク群の患者が存在する。その高リスク群の患者を予測し得る予後因子を検索するために,山本・小浜による腫瘍浸潤様式(YK分類)を中心に検討した。
    早期舌癌48例について生存率および後発頸部転移率を統計学的に検討した結果,浸潤様式分類は,YK-1が7例(14.6%),YK-2が8例(16.7%),YK-3が18例(37.5%),YK-4Cが13例(27.0%),YK-4Dが2例(4.2%)であった。6例(12.5%)で局所再発が,13例(27.1%)で後発頸部転移を認めた。8症例が原病死し,そのうち2例は病理学的に紡錘細胞癌であり,浸潤様式YK-4Dであった。後発頸部転移,遠隔転移,YK-4(C, D)が統計学的に有意差をもって予後不良であった。また浸潤様式YK-4(C, D)は後発頸部転移をきたす有意な因子であった。浸潤様式YK-4(C, D)は早期舌癌の臨床病理学的因子の中で最も有用な予後不良因子であると思われた。
上・中・下咽頭(頸部食道癌を含む)
  • 本多 啓吾, 安里 亮, 辻 純, 宮﨑 眞和, 嘉田 真平, 辻村 隆司, 片岡 通子
    2017 年 43 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    上咽頭は顔面深部に位置し,手術での到達が難しい。経頸部到達法では顎下部から副咽頭間隙を経由して手術を進める。しかし,特に下顎骨を離断しない場合の操作手順を説明した報告はない。本報告では,上咽頭に進展した中咽頭後壁癌cT3例を提示し,操作について詳述する。手術では顎下部からStyloid diaphragmおよび内側翼突筋の筋膜に沿って剥離を進めた。茎状突起関連筋(茎突舌骨筋,茎突舌筋,茎突咽頭筋),耳管関連筋(口蓋帆挙筋,口蓋帆張筋),咽頭頭底板を順次同定した。咽頭側壁を広く展開した後,腫瘍を一塊に摘出した。粘膜欠損部は遊離空腸弁で再建した。経口摂取を維持するために喉頭枠組みを除去し声門下粘膜を閉鎖した。術後経過は,介入なく治癒した顔面麻痺を除き問題なかった。上咽頭への経頸部到達法は系統的に行うことができ,上咽頭に進展した中咽頭癌にたいして有用である。
  • 野村 文敬, 杉本 太郎, 川田 研郎, 角 卓郎, 有泉 陽介, 清川 佑介, 田崎 彰久, 岡田 隆平, 服部 夏子, 河野 辰幸, 岸 ...
    2017 年 43 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    目的:セツキシマブ併用放射線治療(bio-radiotherapy:BRT)後局所再発例に対する内視鏡的咽頭喉頭手術(Endoscopic laryngopharyngeal surgery:ELPS)の安全性と適応について明らかにする。
    対象と方法:2013年4月より2014年10月までにBRTを施行した下咽頭癌症例13例のうち,救済手術としてELPSを施行した5例を対象とし,治療成績,食事摂取の状況の検討を行った。
    結果:5例中1例は局所再発にて原病死,別の1例は担癌生存,残りの3例は再発なく常食摂取可能であった。局所再発例は術後の病理結果にて深部断端陽性例であった。2例に創部感染を認めたが保存的加療にて改善した。
    結論:BRT後の救済手術としてのELPSは病変制御と喉頭温存に有用であるがその適応を厳密に規定する必要がある。
  • 上條 朋之, 鬼塚 哲郎, 横田 知哉, 小川 洋史, 飯田 善幸, 長岡 真人, 木谷 卓史, 濱内 諭, 尾上 剛士, 中川 雅裕, 井 ...
    2017 年 43 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    切除不能下咽頭癌の予後は極めて不良である。今回,当院で切除不能と診断した下咽頭癌の治療経過についてまとめた。「切除不能」の定義を腫瘍が,1.内頸動脈もしくは総頸動脈に浸潤,2.椎前筋もしくは椎骨に明らかに浸潤,3.軟口蓋もしくは上咽頭に進展,4.腕神経叢に浸潤,5.頭蓋底に進展,のいずれかに当てはまるものとし,そのうち遠隔転移を伴わない「切除不能下咽頭癌」を検討対象とした。2002年9月から2015年12月までに治療目的で受診した下咽頭癌529例のうち,遠隔転移を伴わず切除不能と評価した症例は26例(約5%),男性25名,女性1名,平均年齢は64歳であった。PS0:3例,PS1:11例,PS2:4例,PS3:7例,PS4:1例で,治療内容は,CRT群:16例,ICT→CRT群:5例,RT群:4例,BSC群:1例であった。転帰は,原病死が19例,無病生存が5例,他病死が2例であり,原病死症例の生存期間は2.5ヶ月~3年2ヶ月(中央値6.4ヶ月),無病生存症例の観察期間は10ヶ月~10年(中央値3年6ヶ月)であった。全体の3年粗生存率は20.7%であった。「切除可能下咽頭癌」症例と較べPSが悪いことが多く治療中の重篤な有害事象の懸念もある一方で,長期間無病生存している症例もあり治療前の見極めは難しく,治療を行う際は充分な説明と同意がより重要である。
唾液腺
  • 森 大地, 新井 啓仁, 布施 慎也, 毛利 宏明, 松井 雅裕, 中野 宏, 平野 滋
    2017 年 43 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    Salivary duct carcinoma (SDC) の亜型の一つであるinvasive micropapillary SDCは,SDCの中でも悪性度が高いことが報告されている1)。今回我々はinvasive micropapillary SDCの1例を経験したので報告する。症例は44歳男性,主訴は左耳下部腫脹であった。術前の画像検査では耳下腺腫瘍と多発頸部リンパ節腫大を認め,細胞診ではクラスⅤ,腺系癌であった。左拡大耳下腺全摘術,左根治的頸部郭清術を施行したところ,顔面神経は腫瘍と強く癒着しており,合併切除した。摘出標本の病理組織診断ではcomedo necrosisを認めた。また,豊富に認められた乳頭構造では,内部にfibrovascular coreを欠き,周囲にclear spaceを有していた。MUC1による免疫染色では乳頭外縁に陽性となった。これらの所見からinvasive micropapillary SDCと考えられた。術後化学放射線療法を行うも全身多発転移を来し,初診から約1年で死亡した。
  • 井田 翔太, 鈴木 政美, 江口 紘太郎, 江原 威, 工藤 滋弘, 近松 一朗
    2017 年 43 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域原発の腺様嚢胞癌は肺や骨を中心に血行性転移を来すことが知られているが,顎下腺腺様嚢胞癌の脈絡膜転移について本邦からの論文報告はない。今回,顎下腺腺様嚢胞癌の初回治療から約11年後に脈絡膜転移を来した症例を経験したので報告する。脈絡膜転移と同時に肺転移を認め,眼球摘出の適応はない状態であった。脈絡膜転移に対し放射線単独治療(40Gy/20回)を施行し,腫瘍縮小および視力改善の治療効果が得られた。また,治療に伴う有害事象は認めなかった。腺様嚢胞癌の脈絡膜転移に対する放射線治療は治療効果が得られる可能性が高く,生存期間が限られた患者においても低侵襲に施行可能であり,選択に値する治療であると考えられた。
  • 菅野 真史, 成田 憲彦, 藤枝 重治
    2017 年 43 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    唾液腺導管癌(Salivary duct carcinoma, SDC)は主に耳下腺に原発し,早期に遠隔転移を起こしやすい。放射線療法や化学療法の効果は一般的に乏しく,頭頸部癌の中でも悪性度の高い腫瘍である。特徴の一つとして,アンドロゲンレセプター(AR)を発現することが知られており,これを標的とした内分泌療法が効果を示す可能性がある。ARを標的とした治療は前立腺癌で行われており,頭頸部癌での適応はない。2012年度から当科ではAR陽性の進行唾液腺導管癌でファーストラインの化学療法が効果を示さなかった症例に対して,通常前立腺癌に行われる最大アンドロゲン遮断(Maximum androgen blockade, MAB)療法を併用している。これまで5例に施行し,標的病変の最良効果が3例は完全奏功となり部分奏功および進行が1例ずつであった。また,生命予後の延長に寄与している可能性が示唆され,MAB療法は進行SDCに対して効果的で安全な治療法と思われる。
頸部・甲状腺
  • ―局所再発,予後因子について―
    小野 剛治, 梅野 博仁, 千年 俊一, 進武 一郎, 麻生 丈一朗
    2017 年 43 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    本検討はpN2c症例の局所領域,遠隔再発および予後因子の解析を目的とした。2001年1月から2013年12月までに久留米大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科およびその関連施設で治療を行ったpN2c頭頸部扁平上皮癌81症例を対象とした。男性74例,女性7例,年齢:29~81歳(中央値62歳),部位別:口腔癌22例,中咽頭癌8例,喉頭癌13例,下咽頭癌38例であった。年齢,性別,原発部位,T分類,病理分化度,術前化学療法,術後補助療法,原発巣切除断端,頸部レベルⅣ転移,転移リンパ節の節外浸潤の有無,最大径,および総数を因子とし局所領域,遠隔再発および予後因子を解析した。局所領域再発因子は切除断端,遠隔再発因子は転移リンパ節総数とT分類,また予後因子は転移リンパ節総数であった。pN2c症例は,転移リンパ節の個数が多いほど遠隔転移を来す可能性が高く,また予後不良である。このようなハイリスク症例に対して補助療法の検討が必要であると考えた。
  • 松尾 美央子, 小池 浩次
    2017 年 43 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    頭頸部発生の小細胞癌は稀で,かつ予後不良な疾患である。当施設で経験した,頭頸部発生小細胞癌は6症例で,うち4例が副鼻腔発生であった。治療方法は統一性がなく,2例は手術療法を基本とし,3例は放射線治療を基本とし,1例は緩和治療のみ行われていた。初期治療として手術療法を行った2例は,術後放射線治療中~治療直後にリンパ節や遠隔転移をきたし治療開始から1年以内に死亡していた。最初に放射線治療を行った3例は,うち2例でCisplatinとEtoposide併用の化学放射線療法が行われていた。これら3例は全例生存中で,104ヶ月の長期生存症例も認められた。緩和治療のみ行ったのは,初診から多臓器遠隔転移を認めた症例であった。なお経過中に脳転移をきたしたのは,初診から遠隔転移を認めた1例のみで,初回治療で局所制御が可能だった症例が,のちに脳転移をきたしたものはなかった。以上の結果から頭頸部発生でも小細胞癌の場合は,肺小細胞癌に準じた化学放射線治療を第1選択にすることは妥当であると思われた。一方,脳転移出現率は肺にくらべ低い傾向にあり,予防的全脳照射は不要と思われた。本疾患は,病勢進行が速く予後不良な疾患であり,治療開始の遅れや治療強度を下げることは,比較的短期間での死につながりかねない。頭頸部発生小細胞癌と診断された場合,肺小細胞癌治療を参考にすみやかに治療開始すべきである。
  • 麻生 丈一朗, 清原 英之, 松尾 美央子, 力丸 文秀, 福島 淳一, 檜垣 雄一郎, 益田 宗幸
    2017 年 43 巻 1 号 p. 68-75
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    甲状腺扁平上皮癌は非常に稀な疾患である。発症機序に関しては諸説があるが,確定的なものはない。現在まで様々な治療法が報告されてきたが,治療抵抗性であり,有効な治療法は確立されていない。隣接臓器への直接浸潤や遠隔転移をきたしやすく,その予後は極めて不良である。
    2000年1月から2012年12月までの13年間に当科で治療を行った甲状腺扁平上皮癌は3例で,甲状腺癌全体の1.1%であった。3例中2例に根治手術が施行され,1例は治療後20ヶ月で原病死したが,1例は遠隔転移を認めるものの,治療後44ヶ月と長期生存が得られている。もう1例は根治手術困難例であり,化学放射線療法を行うも,効果なく,5ヶ月後に原病死した。当科における甲状腺扁平上皮癌症例をまとめ,文献的考察を加え報告する。
その他臨床
  • 石浦 良平, 飯田 拓也, 柿木 章伸, 安藤 瑞生, 吉田 昌史, 齊藤 祐毅, 山岨 達也, 光嶋 勲
    2017 年 43 巻 1 号 p. 76-78
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    外耳道癌は稀かつ予後不良な疾患である。その危険因子として過剰な耳かきが臨床上推測されているが,統計学的に検討した報告は少ない。今回,我々は当科で加療を行った外耳道癌患者14例を対象とし年齢,性別,耳かき頻度,耳かきに使用する道具の材質,罹患側,病理組織について検討した。また,本研究に同意を得た健常人69名を対象とし,年齢,性別,耳かき頻度,耳かきに使用する道具の材質について調査し患者群と比較検討した。その結果,50歳未満の若年群における患者群と健常人群間において,有意に耳かき頻度,および硬質素材を用いる率が高かった。今回の結果から,過剰な刺激の耳かきが外耳道癌発生を誘発する可能性が示唆された。
  • 堤内 俊喜, 下出 祐造, 辻 裕之
    2017 年 43 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域の進行癌において,骨転移は病的骨折・脊椎損傷・疼痛などといった骨関連事象(SRE)を来たしPerformance status(PS)を著しく低下させる。治療として,手術,放射線照射や抗腫瘍効果を含めたビスホスホネート製剤の投与が有効であるとされてきたが,本邦において2012年にreceptor activator of nuclear factor-kB ligand(RANKL)に対するヒト型IgG2モノクローナル抗体であるデノスマブが使用可能となり,骨転移に対する新規薬剤として期待されている。従来,骨転移治療薬は抗腫瘍効果を狙ったものではなく,破骨による脆弱性の予防や疼痛緩和といった目的で使用されていた。しかし,近年は疼痛への効果だけでなく抗腫瘍効果についての報告も散見される。今回,嗅神経芽細胞腫の骨転移症例で著明な抗腫瘍効果を認めた1例を経験したので報告する。
  • 鈴木 千晶, 岸本 曜, 北村 守正, 林 智誠, 伊木 健浩, 楯谷 一郎, 吉村 通央, 大森 孝一, 平野 滋
    2017 年 43 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    【はじめに】局所進行頭頸部扁平上皮癌に対するCetuximab併用放射線療法(Bioradiotherapy:BRT)では急性期に高度な粘膜炎が出現し,嚥下性肺炎などでしばしば治療中断を余儀なくされる。BRTの治療完遂率向上のため,嚥下性肺炎発現のリスク・時期を把握する必要があると考え,本研究ではBRT中の嚥下性肺炎に関して後方視的に検討を行った。
    【対象】2009年4月から2016年3月までに中下咽頭・喉頭癌の初回治療として導入化学療法(ICT)後に化学放射線療法(CRT)を行った19例,BRTを行った21例の計40例を対象とした。
    【結果】ICT後のBRTはCRTよりも有意に誤嚥の頻度が高く,治療開始早期から出現していた。急性期の嚥下障害パターンは喉頭下降期型誤嚥で,嚥下性肺炎の発現は局所進行例で有意に多かった。
    【結論】局所進行例でBRTを行う場合は早期より嚥下性肺炎に留意する必要がある。
  • 藤井 海和子, 寺尾 保信, 谷口 浩一郎, 森山 壮
    2017 年 43 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    2011年11月から2015年2月までに舌癌に対して舌半切~全摘後に再建を行った症例に,術後ビデオX線嚥下検査(VF)を行い,咽頭後壁の運動を観察した。第2頸椎前上端から咽頭後壁までの垂直方向の距離を静止時と嚥下時で測定し,その比率を運動率として,術後6ヶ月以内と6ヶ月以上で比較した。症例は13例(男性7人,女性6人),平均年齢62.7歳で,切除は半切6例,亜全摘6例,全摘1例で,再建は遊離腹直筋皮弁9例,遊離前外側大腿皮弁1例,遊離前腕皮弁3例であった。術後6ヶ月以内の運動率は平均2.53で,6ヶ月以上では3.03であった。再建舌に適度なボリュームと動きが得られれば代償運動は不要となり,再建舌の機能とボリュームが不十分であると代償運動が亢進することが示唆された。また咽頭壁合併切除により代償機能が働かない場合があると思われた。舌再建において残存機能と咽頭後壁の代償運動を考慮することで,よりよい術後機能が得られると考えられた。
  • 隅田 由香, 原口 美穂子, 服部 麻里子, 乙丸 貴史, 村瀬 舞, 吉 志元, 山口 聡, 原田 浩之, 谷口 尚
    2017 年 43 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー
    東京医科歯科大学歯学部附属病院顎義歯外来では,顎顔面補綴治療の専門外来として1979年設立以来口腔外科や頭頸部外科,放射線科などとの連携にて,6,000症例以上の顎顔面補綴治療を行ってきた。そのなかで,手術野を覆うことで創傷治癒を促し,機能回復を行うことを目的として外科手術前に製作し術直後から使用するイミディエイトサージカルオブチュレータ(ISO)の適用症例は200症例を超える。本稿ではISOが外科領域でも広く認識されることを目的に,本外来でのISO製作のコンセプトと製作手順を紹介する。製作に先立ち執刀医より製作依頼を受ける。手術前に検査・診察を行いISOの目的を製作手順とともに患者に説明し,印象採得を行う。本外来の製作では,ISOの必要条件である創面の保護を念頭に置き人工歯が存在することで咬合時に創面に刺激が加わることを回避するため,ISOの段階では人工歯を付与しない。手術直後から使用することで,口腔機能,形態回復およびQOLを向上させるとともに,取り扱いを含め最終顎義歯使用に向けた訓練移行期間の確保に寄与するISOが広く認識され,さらに活用されることを期待する。
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