頭頸部癌
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43 巻, 4 号
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第41回 日本頭頸部癌学会
シンポジウム2
HPV陽性中咽頭癌に対する低侵襲治療の展望と子宮頸癌の現状
  • —p16陽性/p53陰性をバイオマーカーとした導入化学療法—
    篠原 尚吾, 竹林 慎治, 菊地 正弘, 道田 哲彦, 林 一樹, 山本 亮介, 今井 幸弘, 上原 慶一郎, 宇佐美 悠
    2017 年 43 巻 4 号 p. 403-408
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    著者らはp16陽性/p53陰性中咽頭癌が極めて良好な予後を示すことから,発癌物質非関連性のHPV関連中咽頭癌を表しているものと考えてきた。今回この一群の中咽頭癌の特徴についてさらに検討を加えた。対象は2004年から2016年までに経験した中咽頭癌患者94例。これらをp16陽性/p53陰性群(A群:41例)とそれ以外の群 (B群:49例)に2群化し,その各々の予後,重複癌発生率,導入化学療法(NAC)を施行した47例についてはその効果を評価した。3年全生存率はA群:B群=90%:72% p=0.02,疾患特異的生存率は95%:76% p=0.03,無再発生存率は88%:52% p<0.01であり,A群の予後の良さが明らかになった。また,5年重複癌発生率はA群:B群=12%:45% p<0.01と有意にA群のほうが低かった。NACの奏功率は,PETを用いた治療効果判定と組織学的効果判定にてA群で有意に良好な結果となった。今回の検討から,これら一群の中咽頭癌扁平上皮癌に対して,NAC後に縮小手術を行う低侵襲医療を進めている。
シンポジウム6
鼻副鼻腔悪性腫瘍に対する外科治療の最適化
  • 小川 武則, 小嶋 郁穂, 村田 隆紀, 阪本 真弥, 岸田 佳太, 高橋 紀善, 松下 晴雄, 荒川 一弥, 野村 和弘, 中目 亜矢子, ...
    2017 年 43 巻 4 号 p. 409-414
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    頭蓋底浸潤鼻副鼻腔癌の治療法として,手術(開頭,顔面切開,内視鏡),化学放射線治療(RADPLAT,全身投与)があるが,1:硬膜浸潤診断が困難であり内視鏡単独手術適応に迷う事がある,2:内頸動脈系にはRADPLAT困難であるが頻度が不明,3:有効な全身化学療法レジメンがないなどの問題点がある。治療アルゴリズム作成を目的とし,上記問題解決を目指した後方視的観察研究を行った。対象は,2002年から2017年の間に加療した頭蓋底浸潤頭頸部癌92例(鼻副鼻腔癌68例)である。結果として,1:頭蓋底手術20例中18例に硬膜造影所見を認め,18例中10例(55.6%)に病理学的硬膜浸潤を認めた。腫瘍浸潤群は,硬膜周囲のADC値は有意に低値であった。2:RADPLAT施行T4上顎洞癌18例中7例(38.9%),T4b:6例中5例(83.3%)に内頸動脈からの腫瘍濃染を認めた。3:TPF化学放射線治療20例の5年粗生存率は58.3%,5年無増悪生存率は50%であり有効と考えられた。
教育講演1
  • 金井 雅史, 高 忠之, 松本 繁巳, 武藤 学
    2017 年 43 巻 4 号 p. 415-418
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    ゲノム研究の進歩により,個々の患者におけるがん組織の遺伝子変異を解析し,最適な治療方法を分析・選択するprecision medicineが実臨床でも可能となってきた。すでに米国では手術や検査等で得られたがん組織のDNAを用いてがん関連遺伝子変異を次世代シーケンサーで網羅的に解析し,最適な薬をリストアップする体細胞ゲノム検査が日常臨床に導入され急速に普及している。当院では2015年4月より,国内では初めてとなるClinical Laboratory Improvement Amendment (CLIA) 基準を満たした網羅的がん関連遺伝子変異パネル(OncoPrime™)を自費診療として導入している。導入以後2016年2月までに141症例に対して本検査を実施し,まだ数は限られているが治療奏効例も経験している。またOncoPrime™を導入した全国6大学で本検査を受けた症例のゲノム情報と臨床情報を収集し統合するデータベース構築をAMEDの事業として進めている。今後ますますゲノム情報に基づくprecision medicineが果たす役割は大きくなるものと予想される。
学術セミナー2
  • 森 照茂
    2017 年 43 巻 4 号 p. 419-424
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    人間の固有腔である口から器械を挿入し,早期癌に対する積極的なTransoral surgeryが報告されるようになり,その技術が普及しつつある。咽喉頭癌に対するTransoral surgeryは2009年米国FDAで承認されたことによりda Vinci surgical systemを使用した経口的ロボット支援手術TORSが世界中で発展してきた。本邦では未承認であり,デバイスラグの問題でTOVSやELPSといった独自の手法が開発され,次世代の標準治療としてのパラダイムシフトが起こりつつある。しかしその一方で,従来とは異なる解剖学的知識が要求されること,必要な器械やセッティングが煩雑であり,施設毎の運用がなされているのが実際である。本稿ではTransoral surgeryに必要な解剖,TOVSとELPSの特徴,デバイスの有用性などを紹介する。
学術セミナー3
  • 久保田 彰
    2017 年 43 巻 4 号 p. 425-429
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    多くの薬物療法が局所進行頭頸部扁平上皮癌の標準治療に採択され治療の選択肢が拡大した。期待される効果を実現するためにはphase 3試験の適格規準の遵守,治療目的(生存期間の延長,臓器・機能温存)の明確化,層別化因子[根治切除不能/可能,Human papillomavirus (HPV) 関連の有無,亜部位]への配慮が必要となる。薬物療法の重要な役割はQOLの向上にある。そのためには急性および遅発性有害事象の軽減も重要な課題となる。過去のphase 3試験から明らかになった薬物療法の意義をまとめると,①導入化学療法は放射線で臓器・機能温存可能な症例を選別する,②化学放射線同時併用療法は根治切除不能の生存期間を延長し,根治切除可能の臓器・機能温存率を向上する,③術後化学放射線同時併用療法は予後不良な症例の局所制御率を向上し,生存期間を延長する,④局所進行頭頸部扁平上皮癌の生存期間と臓器・温存率を最も向上するのは標準分割照射の化学放射線同時併用療法である,となる。
学術セミナー6
  • ―耳鼻科領域での経験―
    坂本 達則
    2017 年 43 巻 4 号 p. 430-434
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    京都大学医学部附属病院に高規格手術室プロジェクトの一部として導入された移動式術中CT装置について紹介する。この装置は,小型化が可能で空間解像度が良好というコーンビームCTの特長を活かしつつ,必要時に手術室に搬入して術中CTを撮影できるような可搬性,安定性を持たせた装置である。撮影時には水平な軸に対してX線源とフラットパネルディテクターが回転する必要があり,対象物の大きさや手術台に制限があるが,耳鼻科で取り扱う臓器は対象物が頭部に有り,サイズも比較的小さいため,このような装置による撮影に適している。副鼻腔疾患や人工内耳,腫瘍など,mCBCTによる術中CTを活用することができた実例を示す。
  • 吉川 勝宇
    2017 年 43 巻 4 号 p. 435-438
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    近年は3D-CTにより顔面骨の形態は,きわめて詳細に評価が行えるようになったが,全身麻酔の手術中には容易にはCT検査を行うことができない。超音波検査での評価法もあるが,全体像を把握できない。2015年に京都大学医学部附属病院に国内初の移動式コーンビームCTが導入され,形成外科でも顔面骨の骨折や変形の手術において使用している。術中にCTを撮影し,即時に3D画像を構築することで,3D-CTレベルで手術効果を判定できるため,緻密な整復,形成手術が可能となった。手術の精度と安全性を高めるために有用であると感じている。移動型コーンビームCTの形成外科での使用経験について述べる。
学術セミナー8
  • ―最善な結果をもたらすための個別化因子―
    森谷 季吉
    2017 年 43 巻 4 号 p. 439-444
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    甲状腺分化癌は予後良好であるが,局所進行や病理学的な高悪性を有するものは局所や遠隔再発をきたしやすい。2014年に放射線ヨウ素不応の甲状腺分化癌の遠隔および局所再発(切除不能)例に対して,分子標的薬が本邦でも承認された。使用件数も増加しているが,局所進行再発癌の切除不能についての議論は少ない。局所再発進行癌のうち手術が困難なものとして,器官では頸動脈などの大血管への浸潤が,部位では副咽頭や縦隔への転移が考えられる。また局所進行再発癌の特徴は,局所では浸潤傾向が強いこと,遠隔転移を高率に認めることであり,切除による機能の維持と予後の両面で難治例が多い。しかし自験の成績では,切除可能であったものの局所制御は良好であり,手術療法が治療の中心と考えられる。切除不能局所再発癌に対して分子標的治療が適応となったことを受けて,今後さらに局所再発癌の手術適応について議論していく必要がある。
学術セミナー9
  • 末廣 篤
    2017 年 43 巻 4 号 p. 445-451
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌患者では治療開始前に低栄養に陥っている場合が多く,治療効果を高める上でも栄養管理は必須である。がん細胞は主にエネルギー産生効率の悪い嫌気性解糖により糖質代謝を行っており,それががん患者におけるエネルギー消費量増大の一因となっている。好気性解糖優位の体内環境を作るような栄養素の補給がポイントとなる。
    癌治療における栄養管理も重要である。化学放射線療法で用いられる抗がん剤は,血中でアルブミンと結合して身体各部に輸送される。そのため,低アルブミン状態では抗がん剤の血中濃度が上昇して副作用が発現しやすい。また,周術期における栄養管理の重要性も近年広く認知されており,消化器外科領域では術後早期回復プロトコール「ERAS」などもすでに一般化している。しかしながら,頭頸部外科領域においては,標準的な周術期管理の方法が確立されていないのが実情である。
モーニングセミナー3
  • 遠藤 俊吾, 斉藤 暁子, 五十畑 則之, 高柳 大輔, 隈元 謙介, 根本 大樹, 愛澤 正人, 歌野 健一, 冨樫 一智, 山部 茜子, ...
    2017 年 43 巻 4 号 p. 452-456
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科内視鏡の感染制御に関する手引きが刊行され,高水準消毒薬として本邦で認可されている過酢酸,フタラール,グルタラールに加えて,参考として二酸化塩素が追加された。二酸化塩素は高水準消毒薬の承認はないが,これを用いた内視鏡洗浄消毒器は薬事承認を取得している。そこで消化器内視鏡検査後の内視鏡への細菌付着状況と二酸化塩素を用いた内視鏡洗浄消毒器の効果を検討した。上部内視鏡検査65例と下部内視鏡検査60例で検査終了時と洗浄消毒後に鉗子孔から生理食塩水10mlを注入し,その洗浄液を採取し,細菌培養に提出した。検査終了の洗浄液からは全例で細菌が培養・同定された。洗浄後は上部では全例,下部では59/60例が細菌陰性となり,下部の1例のみ増菌培養でE. coliが確認された。消毒液に起因する内視鏡の不具合や内視鏡室スタッフの皮膚,呼吸器の有害事象はなかった。消化器内視鏡における二酸化塩素を用いた洗浄消毒器の効果が確認された。
モーニングセミナー5
  • 堀 龍介, 児嶋 剛
    2017 年 43 巻 4 号 p. 457-462
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    VIO®3のモノポーラ,バイポーラ,バイクランプの機能は頭頸部手術において有用である。モノポーラのプレサイスセクトモードは,組織の炭化が少なく組織抵抗によらず剥離能力が一定であるうえに素早く効果的な止血力を有する。バイポーラの凝固モードであるソフトコアグバイポーラは,低温加熱で組織を炭化させずに十分な凝固止血能を有する。切開モードのバイポーラオートカットで,器具を持ちかえることなく凝固した血管を切離することができる。バイクランプによるサーモシールでは血管を周囲組織ごと挟んでスイッチを踏むと,組織が炭化せずに約100℃で組織や血管が融合し,しっかりと凝固される。凝固された後は組織を剪刀などで切離する。VIO®3を用いることにより,初心者,ベテランにかかわらず動静脈の素早く確実な止血操作が可能となり,手術での結紮止血操作は激減し,短時間で効率的な手術が可能となる。
第8回教育セミナー
  • ―集学的治療体系―
    仲野 兼司
    2017 年 43 巻 4 号 p. 463-466
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    頭頸部に原発する骨・軟部肉腫の頻度は,頭頸部腫瘍全体の1%程度を占めるとされており,また肉腫の側からは全体の15%程度が頭頸部原発といわれているが,本邦での正確な疫学情報は得られていない。骨・軟部肉腫は稀な疾患でありながら,その病理組織像は多彩であり,組織型により経過,予後,治療戦略も大きく異なり,治療にあたっては多職種によるチーム編成を組んで臨むことが求められる。本稿では,とりわけ非手術治療の適応,治療戦略別に主な組織型の骨軟部肉腫を分類し,それぞれの疫学,予後,治療戦略について解説する。
一般投稿
口腔
  • 西久保 周一, 渡邊 伸也, 高田 満
    2017 年 43 巻 4 号 p. 467-471
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    超高齢者に対する口腔癌治療では化学療法や放射線治療が困難な場合が多く,手術単独で治療を終結できることが望ましい。今回上顎歯肉癌の超高齢患者に対し,上顎骨部分切除術および鼻唇溝皮弁と有茎頬脂肪体弁移植術を用いた上顎洞口腔瘻閉鎖を行いほぼ満足する結果を得たので報告する。症例は87歳女性で,近医で左側上顎歯肉病変を指摘され,当科を紹介され受診し,精査の結果,左側上顎歯肉癌(T2N0M0)と診断された。全身麻酔下に左側上顎骨部分切除および鼻唇溝皮弁と有茎頬脂肪体弁移植による鼻・上顎洞口腔瘻閉鎖術を施行した。7病日目より経口摂取可能となり,13病日目に退院となった。本法による再建術では,術後早期からの経口摂取と早期退院が可能である。本法は,超高齢患者の上顎歯肉癌に対する1つの有効な手術方法であることが示唆された。
  • 上山 善弘, 山川 延宏, 柳生 貴裕, 上田 順宏, 桐田 忠昭
    2017 年 43 巻 4 号 p. 472-477
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    口腔癌患者における放射線治療において,治療中に経管栄養が余儀なくされる場合がある。しかし,どのような症例において経管栄養が必要となるかは明らかではない。経管栄養をストレスなく導入するにあたり,治療前より胃瘻を造設することがあるが,その適応について明確な判断基準はない。そこで,奈良県立医科大学口腔外科において治療を行った口腔癌患者58症例において,統計学的に解析を行い,検討した。多変量解析を行った結果,経管栄養が必要となるリスク因子として性別,CCI,血清TP値,照射範囲が認められた。得られた結果をもとに予測モデルを作成したところ,当てはまりは良好であった。放射線治療を開始する前に,これらのリスク因子に注意するとともに,予測モデルを使用し評価することは,胃瘻造設の判断の一助になると考える。
唾液腺
  • 大江 祐一郎, 神前 英明, 松本 晃治, 清水 猛史
    2017 年 43 巻 4 号 p. 478-482
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    唾液腺導管癌は局所再発や遠隔転移を生じやすいが,再発・転移例に対する確立した治療法はない。また,アンドロゲン受容体(AR)の発現が高率に認められる特徴を有する。今回,唾液腺導管癌の局所再発・多発骨転移に対し,抗アンドロゲン療法が奏功した1例を経験したので報告する。
    症例は64歳,男性。右顎下腺癌T3N2bM0に対し手術加療を行い,唾液腺導管癌と診断され,病理学的にARの過剰発現を認めた。術後に化学放射線療法を施行したが,6ヶ月後に局所再発を認めた。17ヶ月後には多発骨転移が出現し,ビカルタミド(80mg/日)内服投与を開始した。腰痛に対して30Gy/10Frの緩和照射も行った。ビカルタミド投与6ヶ月後のPET-CTで局所の腫瘍は消失し,7ヶ月後の腰椎造影MRIでも大部分で腫瘍の造影効果が消失した。遠隔転移から1年経過し,乳房腫脹を認めているが,その他大きな副作用はない。
    AR陽性の唾液腺導管癌に対して,抗アンドロゲン療法は有用な治療選択肢の一つである。
頸部・甲状腺
  • 大庭 晋, 小柏 靖直, 井上 準, 久場 潔実, 南 和彦, 蝦原 康宏, 中平 光彦, 菅澤 正
    2017 年 43 巻 4 号 p. 483-487
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患であるが治療により長期生存が得られる症例も存在する。積極的な治療の適応を判断するため予後因子に関して検討した。今回われわれは,2007年4月~2015年12月までに当科で経験した甲状腺未分化癌21例を対象にPrognostic Index(PI),炎症性マーカー,免疫チェックポイント分子,根治手術の有無で層別化を行い生存期間を検討した。炎症マーカーであるCOP-NLR(combination of platelet count and neutrophil-lymphocyte ratio)で2群にわけて検討したところ,低値群は有意に予後が延長していた(p=0.02)。また,根治手術施行群と非施行群では生存期間に有意差を認めた(15.4ヶ月,2.6ヶ月;p<0.001)。根治手術を施行した9例の検討では,PI,炎症性マーカー高値群で予後不良となる傾向がみられた。PD-L1の発現を検討できた11例中6例(54.5%)で陽性となった。以上よりPI,炎症マーカーは予後予測に有用である可能性が示唆された。
その他臨床
  • 松尾 美央子, 西嶋 利光, 小池 浩次
    2017 年 43 巻 4 号 p. 488-492
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    遠隔転移は悪性腫瘍が全身化した状態で,治療の原則は薬物療法である。しかし頭頸部癌症例の場合,遠隔転移を有していても,原発巣や頸部リンパ節転移による,窒息や出血や嚥下不能状態を回避することは,Quality of Life(QOL)維持に欠かせず,局所制御も重要な課題となる。2014年1月~2016年6月に当施設を初診した頭頸部扁平上皮癌症例で,初診時から遠隔転移を有した11例を対象として,後方視的に検討を行った。治療内容は,無治療群,薬物療法先行群,化学放射線療法先行群の3群に分類され,局所制御率・生存期間中央値はそれぞれ,無治療群0%・4ヶ月,薬物療法先行群0%・10ヶ月,化学放射線療法先行群83%・20ヶ月であった。化学放射線療法を最初に行うことは,その後長期間にわたって局所を制御する点で有用で,それはQOL維持につながると思われた。また生命予後の改善という面においても有用である可能性が示唆された。
  • 鈴木 健介, 阪上 智史, 藤澤 琢郎, 八木 正夫, 清水 皆貴, 林 謙治, 中村 聡明, 澤田 俊輔, 岩井 大
    2017 年 43 巻 4 号 p. 493-498
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    2013年1月から2017年1月にFirst lineとしてセツキシマブ併用化学療法を施行した再発・転移頭頸部扁平上皮癌39例を対象とし,治療効果および予後因子につき検討した。年齢は23歳から89歳(中央値68歳),男性32例,女性7例であった。First lineとしてセツキシマブと併用した化学療法の内容はFC(5-FU+カルボプラチン)が32例,パクリタキセル5例,その他2例であった。全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の中央値はそれぞれ9.0ヶ月,5.3ヶ月であった。Grade 3以上の有害事象は5例(12.8%)と少なく,First lineとしてのFC+セツキシマブは治療効果,有害事象の観点から有効と考えられた。化学療法前のperformance status良好例(PS 0-1),Second line以降の治療を行ったものはOS,PFSいずれも有意に予後良好であった。
その他クリニカルパス
  • 山﨑 知子
    2017 年 43 巻 4 号 p. 499-504
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    頭頸部がん治療には大きく,手術,化学療法,放射線療法,緩和ケアがあるが,治療の際に様々な急性・晩期口腔内合併症が生じ,治療中断や患者のQOL低下につながる。適切な口腔管理,良好な口腔衛生環境を維持することで,口腔内合併症の低下および治療完遂に結びつく。そのためには,頭頸部がんと診断された段階で歯科に紹介し,治療前からの継続した口腔管理を依頼することが重要である。近年,さまざまな薬剤が開発,承認されており,かつ急激な高齢化が進んでいることもあり,これまで以上に医科歯科連携を図る必要がある。
    本稿では,口腔内の特徴,頭頸部がん化学療法および化学放射線療法の口腔管理,支持療法,分子標的薬や免疫療法による口腔有害事象とその対策,医科歯科連携の重要性についてまとめる。
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