頭頸部癌
Online ISSN : 1881-8382
Print ISSN : 1349-5747
ISSN-L : 1349-5747
45 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
第42回 日本頭頸部癌学会
シンポジウム1
新TNM分類(第8版)の改定点と問題点
  • 別府 武, 得丸 貴夫, 山田 雅人, 杉山 智宣, 小出 暢章, 谷 美有紀, 金子 昌行, 朝守 智明, 石川 文隆
    2019 年 45 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    2017年に改訂されたUICCのTNM分類第8版についてその内容と臨床上の問題点を自験例で検討した。転移性頸部リンパ節から扁平上皮癌が検出されp16免疫染色が陽性であればp16陽性中咽頭癌にEBER-ISHが陽性であれば上咽頭癌に分類され,それ以外の残りが新分類上の原発不明頸部転移扁平上皮癌となった。自験例では従来のおよそ7割が新分類の原発不明頸部転移癌,3割がp16陽性中咽頭癌に相当した。節外進展を強力な予後因子として考慮したN分類が提唱され,病期はⅢ期およびⅣ期に分類された。cN病期はpN病期に比して過小評価される傾向が高く,両者の解離による生存曲線の大きな違いが臨床上の問題点と思われた。
シンポジウム7
Quality of Survivalを考慮した頭頸部癌支持療法
  • 横田 知哉
    2019 年 45 巻 3 号 p. 268-271
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    化学放射線療法を受ける頭頸部癌患者を対象に,洗浄と保湿による系統的皮膚処置を基本として,ステロイド外用薬を用いた介入による皮膚処置を加えることで,放射線皮膚炎を予防する効果に上乗せが期待できるかどうかを検証する,ランダム化第3相試験(TOPICS試験)が進行中である。本試験は日本がん支持療法研究グループ(J-SUPPORT)の支援のもと,国内8施設の参加による多施設共同研究として行っている。試験を行うにあたり,医師のみならず,各施設の看護師や薬剤師が中心となり,プラセボ薬の開発,放射線性皮膚炎に対する処置や皮膚の写真撮影の手順書作成に関わるワーキンググループを立ち上げ,試験の運用手順をまとめた。今後,様々な支持療法の臨床試験を実施するにあたり,本試験は一つのmodel trialになるものと考えられる。
第9回教育セミナー
  • 大山 哲生
    2019 年 45 巻 3 号 p. 272-279
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    腫瘍等の術後のQOLの確保には,術前に原疾患の治療のみではなく,術後の咬合・咀嚼・発音機能等の再建までもトータルに考慮した治療計画が必要となる。そして,その計画に基づく手術から顎補綴処置へのスムーズな移行が早期の社会復帰を可能にする。特に術後に口腔(副)鼻腔瘻が予想される上顎顎欠損症例では外科的即時栓塞子(Immediate Surgical Obturator:ISO)の適切な応用が術後のQOLの維持と早期の社会復帰に重要な要素となる。
第10回教育セミナー
  • 山﨑 知子
    2019 年 45 巻 3 号 p. 280-285
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    中咽頭は4つの亜部位(前壁・側壁・上壁・後壁)に分けられ,様々な機能を有する。主に,呼吸機能(加湿・加温・除塵など),嚥下機能,共鳴機能,味覚や扁桃の免疫などがあり,中咽頭癌を治療する際は,生存だけではなく,機能温存,治療後の生活の質(Quality of life : QOL)について,十分に配慮する必要がある。中咽頭癌において,非手術治療のひとつである化学放射線療法は主要な治療方法のひとつである。
    中咽頭癌はp16タンパク免疫染色の有無にて,HPV関連中咽頭癌と非関連中咽頭癌に分類され,HPV関連中咽頭癌の治療成績は,非関連癌と比較して良好であると報告されている。HPV関連および非関連各々にて,治療強度を考慮した臨床試験が進行している。
    本稿では,中咽頭癌における化学放射線療法とその課題,HPV関連および非関連中咽頭癌の疫学,臨床試験について考察する。
一般投稿
総説
  • 萩原 純孝, 花井 信広, 古江 浩樹, 伊藤 千春, 長谷川 泰久
    2019 年 45 巻 3 号 p. 286-293
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    がん治療や周術期の合併症に対し歯科医療者による専門的口腔ケアが有効であることが認知され,2012年4月には「周術期口腔機能管理」が保険収載された。それと同時期に,都道府県がん診療連携拠点病院である当院では,がん患者の口腔機能管理連携システムを構築する試みとして「口腔機能管理医療連携モデル事業」を3年にわたり展開した。当モデル事業では,愛知県の歯科診療所・保険薬局の医療関係者らを対象として,がん患者の口腔機能管理を実践するための研修を開催し,研修登録者名簿を当院ホームページに公開した。研修事業の一環で,頭頸部がん等の治療予定患者41名を対象に,入院前の地域連携による口腔機能管理が主病治療にもたらす影響を検証する臨床研究を行った。また,当モデル事業終了から4年後,研修登録歯科医師199名を対象に口腔機能管理に関する実態調査を行った。その結果,文書を介した地域連携や研修事業継続の課題が浮かび上がった。
原著
  • マーシャル 祥子, 仲野 兼司, 平良 眞一郎, 小野 麻紀子, 友松 純一, 新橋 渉, 佐々木 徹, 福島 啓文, 米川 博之, 三谷 ...
    2019 年 45 巻 3 号 p. 294-299
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    背景:EXTREMEレジメンは再発/転移頭頸部扁平上皮癌に対する標準療法とされている。
    方法:当施設で2013年2月から2015年10月の間,EXTREMEレジメンにて治療を行った患者について,後方視的にレビューを行った。シスプラチンまたはカルボプラチン(1日目),持続的5-FU(2日目–4日目)およびセツキシマブ(1日目,8日目,15日目)を3週毎に行った。奏功率,無増悪生存期間,全生存期間および有害事象の評価を行った。
    結果:34症例のうち,部分奏功が50%であった。中央無増悪生存期間5.1ヶ月,中央全生存期間15.9ヶ月であった。有害事象は好中球減少,白血球減少,低ナトリウム血症が多かった。
    結語:EXTREMEレジメンは安全でかつ効果的な治療であると考えられた。
  • 加納 里志, 森田 真也, 中丸 裕爾, 水町 貴諭, 対馬 那由多, 鈴木 崇祥, 中薗 彬, 福田 篤, 安田 耕一, 鬼丸 力也, 白 ...
    2019 年 45 巻 3 号 p. 300-304
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    我々は,局所進行外耳道扁平上皮癌に対する治療成績,特にドセタキセル,シスプラチン,5-FUの併用(TPF)の化学療法同時併用放射線療法(CCRT)の治療成績と安全性,および腫瘍の進展範囲と予後との関係を検討した。対象は当科で根治治療を行った外耳道癌扁平上皮癌で,ピッツバーグ分類のT3-4の21症例とした。その結果,硬膜と顎関節への進展が頸部転移と相関を示し,顎関節への進展が局所再発と相関を示した。全症例の2年粗生存率(OS)は61.1%,2年局所制御率(LC)は52.1%であった。CCRT症例では,TPF併用の2年OSは85.7%,それ以外では25.0%,TPF併用の2年LCは57.1%,それ以外では25.0%であった。また,TPF併用CCRTにおけるG3以上の白血球減少は55%,好中球減少は45%であった。TPF併用のCCRTは局所進行外耳道扁平上皮癌に対して高い有効性と安全性を示した。
  • 西谷 友樹雄, 鬼塚 哲郎, 飯田 善幸, 上條 朋之, 向川 卓志, 濱口 宣子, 森田 浩太郎
    2019 年 45 巻 3 号 p. 305-309
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    当院を受診した内視鏡治療適応外の頭頸部食道同時重複進行癌症例20例について検討を行った。頭頸部癌に対する治療は(化学)放射線療法11例,手術8例,BSC(Best Supportive Care)1例であり,食道癌に対する治療は(化学)放射線療法12例,手術3例,導入化学療法後化学放射線療法2例,導入化学療法後手術2例,BSC 1例だった。5年生存率15.8%,3年生存率31.7%と悪い結果であった。無再発生存が得られている4症例のうち3症例は頭頸部,食道同時化学放射線療法を行った症例であり,生存率,後遺障害の点で手術を含む集学的治療よりも優れていると考えられた。
  • 岡田 拓朗, 伏見 千宙, 増淵 達夫, 多田 雄一郎, 馬場 大輔, 木谷 洋輔, 山崎 森里生, 田中 惇平, 北嶋 達也, 三浦 弘規
    2019 年 45 巻 3 号 p. 310-313
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    当科では口腔中咽頭癌に対する再建手術の際,気管切開を併施している。術後喉頭所見を参考にカフ付きカニューレをレティナに変更していたが,客観的な基準がなかった。そこで,再建術後の喉頭所見のスコア化を考案した。
    対象と方法:対象は2016年7月から2017年12月まで口腔中咽頭癌に対して再建手術を行った51例である。スコア化以前の2015年1月から2016年6月までの48例と比較した。声帯麻痺,喉頭浮腫,唾液貯留の3項目を3段階(0, 1, 2点)で評価し合計点を求めた。
    結果:スコア化前後で症例の差はなかった。スコア化後はレティナ変更日中央値8日,肺炎3例(6%)であった。スコア化前はレティナ変更日中央値8.5日,肺炎2例(4%)であった。
    考察:スコア化前後でレティナ変更日や入院日数などに悪化はなかった。経験的に行っていたカニューレ交換は客観的になり,スコア化は有用と考えられた。
  • 久我 亮介, 橋本 和樹, 内 龍太郎, 中野 貴史, 古後 龍之介, 安松 隆治, 田川 哲三, 中川 尚志
    2019 年 45 巻 3 号 p. 314-317
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    当科において遠隔転移病変に対して外科的切除を行った頭頸部扁平上皮癌症例に関して検討を行った。対象は,2000年1月から2016年12月までに九州大学耳鼻咽喉・頭頸部外科で一次根治治療を施行した頭頸部扁平上皮癌症例のうち,肺転移,肝転移に対して外科的切除を施行した26例である。原発巣の内訳は上咽頭3例,中咽頭6例,下咽頭8例,喉頭5例,口腔3例,顎下腺1例であった。転移臓器は肺が22例,肝臓が4例であった。遠隔転移巣切除後の1年全生存率は78%,2年全生存率は70.9%であり,遠隔転移巣に対する外科的切除が予後の改善に寄与する可能性が示された。初回治療から遠隔転移再発までが短期間であった症例では,転移巣の切除後も予後不良な傾向を認めた。遠隔転移に対する外科的切除後も慎重なフォローアップが必要と考えられる。
  • —術後いかに発声させるか—
    長岡 真人, 鬼塚 哲郎, 木谷 卓史, 飯田 善幸, 上條 朋之, 天津 久郎
    2019 年 45 巻 3 号 p. 318-322
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    天津式気管食道瘻形成術は,誤嚥が少ない一方,音声獲得率が高く,メンテナンスフリーという理想的な音声獲得方法である。しかし1996年に日本耳鼻咽喉科学会で宿題報告された後,一部の施設を除いて現在あまり施行されていない。今回,2015-2017年に天津法による音声再建を当院で施行した7症例に対して検討を行った。6例が会話実用レベルに達しており,日常会話獲得まで中央値10ヶ月,最長で1年5ヶ月を要した。発声練習開始日が26-40日目(中央値29日目)であり,原音確認日は33-64日目(中央値53日目)であった。シャントからの誤嚥は1例もなく,最長発声持続時間は7-27秒(中央値20秒)であり,良好な結果であった。ただし患者が音声獲得に至るまでには通気やブジーなどを含めた術後管理が必要であると思われた。
  • 牛呂 幸司
    2019 年 45 巻 3 号 p. 323-329
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    頭頸部悪性腫瘍術後にactivities of daily living (ADL)が低下し退院困難となる例がある。初回治療として根治手術を行った70歳以上の頭頸部癌患者71例の診療録調査を行った。退院時にBarthel index 60点以下となった例を,入院時に60点以下の場合は入院時以上の介護力が必要となった例をADL低下とした。併存疾患の評価はAdult Comorbidity Evaluation-27 indexを用いた。Performance status,ASA Physical status,脳神経系併存疾患,中等度以上の心血管系併存疾患,低アルブミン血症,呼吸機能低下,術後合併症の発生がADL低下のリスク因子であった。70歳以上で,中等度以上の併存疾患のある患者や呼吸機能や栄養状態が不良な患者では,手術内容に関わらず術後のADL低下に留意する必要があると考えられた。
  • —有害事象に関する中間評価—
    太田 陽介, 古平 毅, 藤井 博文, 下川 元継, 中島 寅彦, 門田 伸也, 横田 知哉, 本間 明宏, 上田 眞也, 秋元 哲夫
    2019 年 45 巻 3 号 p. 330-336
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌に対するセツキシマブ(Cmab)の国内実施状況,安全性と有効性を調査する多施設共同前向き観察研究(JROSG12-2)において,局所進行例に対するCmab併用放射線治療(BRT)の中間評価を行った。予定集積180例中90例のうち,解析が可能であった69例を解析した。年齢中央値66歳で75歳以上の後期高齢者は14例(20%)含まれた。「Cmab投与6回以上かつ放射線治療60Gy以上」の治療完遂割合は75%であった。Grade 3-4の急性期有害事象は咽頭粘膜炎58%,放射線皮膚炎42%,口腔粘膜炎39%と頻度が高く,また誤嚥性肺炎5%,肺臓炎3%と呼吸器合併症に注意が必要と思われた。実臨床におけるBRTの治療完遂割合は過去の臨床試験結果よりやや低く,許容しうる有害事象の発生割合と考えられた一方で,粘膜炎や呼吸器合併症には慎重な観察と支持療法の徹底が重要と考えられた。
症例報告
  • 中村 和樹, 小川 武則, 中目 亜矢子, 大越 明, 石田 英一, 六郷 正博, 石川 智彦, 若盛 隼, 吉田 拓矢, 香取 幸夫
    2019 年 45 巻 3 号 p. 337-341
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/14
    ジャーナル フリー
    鼻腔原発腸管型腺癌の1例を報告する。症例は63歳女性。1年前から反復する右鼻出血を主訴に受診した。右嗅裂に腫瘍を認め,生検で腺癌の診断であった。CT・MRIでは37×26×15mmの腫瘍であり,蝶形骨洞浸潤にてcT4aN0M0,ステージ4aの診断となった。頭蓋底に広範に接しており,経鼻内視鏡支援下両側前頭開頭手術を施行した。嗅覚脱失以外の合併症は認めなかった。術後病理学的所見で腸管型腺癌の診断が確定し,硬膜浸潤陰性,断端陰性であった。術後放射線治療として強度変調放射線治療56グレイを施行し,術後2年の経過で局所再発および転移再発を認めていない。本症例の臨床経過と病理像について文献的考察を加えて報告する。
feedback
Top