頭頸部遺伝性腫瘍の新展開 —頸動脈小体腫瘍とHereditary pheochromocytoma-paraganglioma syndrome (HPPS)—
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松木 崇, 宮本 俊輔, 加納 孝一, 堤 翔平, 古木 綾子, 籾山 香保, 原田 雄基, 山下 拓
2021 年 47 巻 1 号 p.
15-20
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
ジャーナル
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遊離組織による再建術は,頭頸部癌切除後の治癒,形態,機能温存において有用である。遊離組織採取と縫い付け,顕微鏡下血管吻合は形成外科医が施行するのが一般的だが,当科では空腸の採取を除き2017年4月から頭頸部外科医が行っている。2019年9月までの40例(41皮弁)に対し,主に周術期に関する後方視的検討を行った。原発巣は舌が16例,下咽頭が12例と多く,ほぼ全例が進行癌であった。切除術は咽頭喉頭頸部食道全摘出術が13例,舌亜全摘出術が7例と続いた。再建材料は空腸が12例,前外側大腿皮弁が11例と多く,上甲状腺動脈と内頸静脈への吻合が大半を占めた。術時間と出血量の中央値はそれぞれ603.5分,517.5mlであった。術中トラブルは5例で生じた。術後合併症は17例,再手術が3例あったが,吻合部血栓による皮弁壊死や縫合不全はなかった。改善点はあるが,過去の報告と比較しても劣らない成績であった。
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髙山 香名子, 加藤 貴弘, 中村 達也, 阿左見 祐介, 小野 崇, 鈴木 志恒, 高田 彰憲, 山口 久志, 瀬戸 一郎, 中里 龍彦, ...
2021 年 47 巻 1 号 p.
21-29
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
ジャーナル
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腺様嚢胞癌(ACC)は稀な唾液腺上皮性悪性腫瘍である。ACCの標準治療は外科的切除とされるが,進行例への適切な治療戦略は確立されていない。本研究では,シスプラチンを用いた逆行性動注化学療法と陽子線治療の併用療法を行った局所進行舌根部ACC15例に対してその治療効果と有害事象を検討した。観察期間の中央値は56(15〜116)ヶ月,5年局所制御率は89%,5年全生存率は76%であった。晩期障害としてgrade 2の骨髄炎が1例,grade 5の咽頭壊死が1例観察された。多くの症例が進行例で手術不能であったことを考慮すると,本療法は腫瘍制御・機能維持・生活の質の維持に効果的であったと考えられる。有害事象低減のためさらなる改善が必要だが,動注化学療法と陽子線治療の併用療法は,局所進行舌根部ACCの治療選択肢となりうる。
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松塚 崇, 小林 徹郎, 鈴木 政博, 仲江川 雄太, 川瀬 友貴, 長谷川 泰久, 室野 重之
2021 年 47 巻 1 号 p.
30-34
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
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Virtual touch tissue imaging quantification (VTIQ)はシアウェーブ伝搬速度(Vs)として定量的弾性と組織弾性イメージングを表示する技術であり福島県立医科大学附属病院の唾液腺腫瘍51例を対象に悪性腫瘍11例,多形腺腫21例,その他の良性腫瘍19例の3群間でVsと組織弾性イメージングを組織型と比較した。Vsが4.8m/s以上は全体で45%あり,悪性腫瘍91%,多形腺腫55%,その他の良性腫瘍0%であった。多形腺腫はVsの範囲が大きく悪性腫瘍と鑑別が困難であった。組織弾性イメージングを4型に分類すると硬い部分が均一か地図状な型では悪性腫瘍は91%,多形腺腫は10%であり,硬い部分と軟らかい部分がスポンジ様に混在している型が悪性腫瘍は9%,多形腺腫は67%であった。Vsの大きい多形腺腫は組織弾性イメージングで悪性腫瘍と鑑別できる可能性がある。
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阿部 厚, 伊東 優, 林 宏紀, 石濱 嵩統, 古田 浩史, 堀部 宏茂, 丹下 和久
2021 年 47 巻 1 号 p.
35-41
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
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2007年1月から2020年3月までに名古屋掖済会病院歯科口腔外科を受診し,病理組織学的に扁平上皮癌と診断され,根治的外科治療を行った124例中,原発頸部再発・頸部再発・遠隔転移および二次癌が生じた17例を除いた107例の原発巣再発について臨床的検討を行った。これらのうち局所再発を認めたものは14例で局所再発率は13.1%であった。局所再発までの期間の中央値は293.5日(21-1,408日)であった。原発巣再発に関連するリスク因子を検討したところ深達度が独立したリスク因子であった。再発後の処置内容は外科療法が7例,化学放射線治療が4例,緩和治療が3例であった。緩和治療を除き救済しえた症例は11例中7例(63.6%)であった。局所再発への対応としては,手術療法が比較的良好な結果が得られたが,再発危険因子の解明や救済治療に対する多方面からの分析が必要である。
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山田 弘之, 福家 智仁, 金児 真美佳, 小林 大介, 平田 智也, 澤 允洋
2021 年 47 巻 1 号 p.
42-46
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
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癌治療においては,治療完遂と同時に,定期的で慎重な追跡が重要である。一方で,治療を行った施設が引き続いて追跡する負担は大きく,医療の質を担保しつつ地域の医療機関で追跡されることが望ましい。本邦では,まず5大がんにおいて,地域連携パスを用いた地域連携が開始された。甲状腺癌は罹患数が少ないため,連携パス運用を強く推奨されてはいないが,良好な術後予後と長期にわたる追跡を必要とすることから,パス運用に適した疾患である。当院では2014年から甲状腺癌術後パスを用いた地域連携を開始した。6年間に手術を行った380例のうち76例において連携パス運用が可能であった。一方で,304例がパス非運用で,最大の理由は,甲状腺癌の治療経験が少ないことによる連携施設の不足であった。地域連携を促進させるためには,当院医師・連携施設・患者の行動変容が求められる。
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小杉 康夫, 川本 晃史, 大島 理規, 鈴木 通真, 藤巻 充寿, 大峡 慎一, 松本 文彦, 鹿間 直人, 笹井 啓資
2021 年 47 巻 1 号 p.
47-52
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
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動注化学放射線療法を行った進行上顎洞扁平上皮癌55症例を対象に,画像上ルビエールリンパ(Rp)節転移頻度とRp領域照射線量について遡及的に検討した。治療前画像再評価によりRp節転移は10例(18%)で認め,9例は短径5mm以上,1例は長径10mm以上の基準で診断した。MRIまたはPET-CT施行症例はRp節転移頻度が高い傾向があった(P=0.090)。10例のRp節転移照射線量の中央値は57.7 Gyで,8例で標的設定を行わずとも高線量が照射され,Rp節再発は1例も認めなかった。強度変調放射線治療時にRp領域を標的設定しない場合,3次元放射線治療に比べRp領域線量は有意に低下した(47.4 Gy対36.0 Gy,p=0.040)。
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武者 篤, 久保 亘輝, 岡野 奈緒子, 神沼 拓也, 河村 英将, 佐藤 浩央, 高安 幸弘, 紫野 正人, 新國 摂, 井田 翔太, 白 ...
2021 年 47 巻 1 号 p.
53-58
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
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群馬大学では2010年より頭頸部癌に対する重粒子線治療を開始しており,長期的な有効性と安全性について,2010年から2014年に頭頸部非扁平上皮癌に対する前向き試験として重粒子線治療を施行した35症例を解析した。総線量57.6-64.0Gy(RBE)/16回で治療した。有害事象はCTCAE ver 4.0で評価した。年齢中央値は59歳(31-77歳),経過観察期間中央値は65.0ヶ月(6.1-98.8ヶ月)であった。T分類はT2/3/4はそれぞれ5/8/22例であり,手術不能例は20例(57%)だった。組織型は腺様嚢胞癌21例(60%)が最も多く,原発部位は上顎洞と鼻腔がそれぞれ9例(26%)で最多であった。5年局所制御率は74.5%,無増悪生存率は53.2%,全生存率は81.3%であった。観察期間中に原病死5例,他病死1例を認めた。Grade 3以上の急性期有害事象として粘膜炎を8例認めた。晩期有害事象は,眼窩内進展の2例で患側の失明,頭蓋内浸潤の1例にGrade4の脳壊死を認めた。頭頸部非扁平上皮癌に対する重粒子線治療は高い局所制御率を示し,有害事象は許容範囲内と考えられた。
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—特に食道重複癌を中心に—
千田 邦明, 別府 武, 得丸 貴夫, 山田 雅人, 杉山 智宣, 小出 暢章, 河邊 浩明
2021 年 47 巻 1 号 p.
59-64
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
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下咽頭癌症例では特に食道癌との重複が多い。同時重複癌症例では治療の選択が難しく,先行・後続治療が予定通り行えない場合もある。そこで2011–2014年の4年間で治療を行った下咽頭癌152例を検討した。重複癌は84例(55%)で認め,食道癌が最も多かった。5年全生存率(OS)は下咽頭癌単独症例54%,下咽頭食道癌重複例80%と有意差をもって重複症例が良好で,上部消化管内視鏡検査で下咽頭癌が早期で発見されたことが理由と考えられた。同時重複癌症例のOSは,下咽頭–食道どちらも早期癌症例で100%,進行癌症例で63%,早期–進行癌で75%,進行–早期癌で56%であった。早期食道癌が後続治療で,早期に治療が開始できない場合,先行治療で化学療法を行うべきと考えられた。下咽頭早期癌が後続治療の場合,先行治療の化学療法を行い不明瞭化しても,厳重な経過観察もしくは治療を行うべきと考えられた。
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宮本 俊輔, 松木 崇, 加納 孝一, 堤 翔平, 古木 綾子, 籾山 香保, 原田 雄基, 清野 由輩, 山下 拓
2021 年 47 巻 1 号 p.
65-70
発行日: 2021年
公開日: 2021/06/08
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喉頭亜全摘出術(supracricoid laryngectomy:SCL)は有用な機能温存手術であるが,治療長期化が問題となる。今回われわれは,治療期間短縮の目的で嚥下リハを早期に開始する試みを行ったため報告する。
2013年3月から2020年8月までに当科で喉頭癌に対してSCLを施行した31例を対象として,嚥下リハを気管孔閉鎖前から行った7例(早期リハ群)と後から行った24例(後期リハ群)の治療期間を比較した。
早期リハ群と後期リハ群の嚥下リハ開始日(中央値)はそれぞれ術後20日(範囲15〜24日)と71.5日(33〜227日)(p<0.001),全治療期間はそれぞれ54日(45〜109日)と108.5日(63〜441日)であり(p<0.001),いずれも早期リハ群で有意に短縮していた。
気管孔閉鎖前からの嚥下リハ開始は治療期間を大幅に短縮し,実行可能な介入であると考えた。
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