頭頸部癌
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48 巻, 4 号
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第45回 日本頭頸部癌学会
シンポジウム4
頭頸部癌 —支持療法,緩和医療のパラダイムシフト—
  • 篠﨑 剛, 松浦 一登
    2022 年 48 巻 4 号 p. 313-318
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    再建手術を要する進行頭頸部癌手術では治療を完遂し周術期の合併症を減少させるため周術期管理が重要である。
    頭頸部癌患者では腫瘍病変による経口摂取困難から低栄養状態で受診することが少なくない。当院において再建を伴う手術を実施された患者177例では,術前に低栄養と評価される患者は45例(25.4%)であった。適切な栄養状態に近づけるために低栄養群のスクリーニングと術前栄養介入を多職種で行っている。
    術後早期回復プログラムERAS(Enhanced Recovery After Surgery)に基づいた周術期管理が推奨されている。国内の頭頸部癌診療施設にアンケートを行ったところ27施設から回答を得ることができ,多くの施設で運動・嚥下リハビリや栄養管理に取り組んでいることが確認された。
    現在ステロイドホルモン投与の意義を検討する多施設共同前向きランダム化比較試験を実施中である。
原著
  • 山村 悠大, 堀地 祐人, 松居 秀敏, 岩江 信法, 沖本 智昭, 出水 祐介
    2022 年 48 巻 4 号 p. 319-322
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域悪性腫瘍に対する粒子線治療は主に非扁平上皮癌に対して2018年4月より保険収載となった。保険適応基準は切除による根治困難症例であり,手術適応の有無が重要となる。当院では2017年5月より兵庫県粒子線医療センター,兵庫県粒子線医療センター付属神戸陽子線センターと合同でキャンサーボードを行い,その治療適応について協議している。
    今回我々はキャンサーボードについて,取り扱った症例数の推移とその内容について検討した。2017年5月から2020年12月まで208症例について検討した。症例数は粒子線治療の保険収載以降で増加傾向にあった。11例で治療方針の変更があり,内8例は手術へ,3例は粒子線以外の放射線治療への変更であった。キャン サーボードがより適切な医療の提供につながることが期待された。
症例報告
  • 木谷 卓史, 三谷 壮平, 佐藤 恵里子, 羽藤 直人
    2022 年 48 巻 4 号 p. 323-329
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    放射線性骨壊死は放射線治療の晩期有害事象の一つである。放射線性頭蓋底骨壊死3症例について,文献的考察を加え報告する。 症例1:55歳男性 上咽頭癌に定位放射線治療後6ヶ月で上咽頭壊死が出現した。生検で悪性所見なく,頭蓋底骨壊死として抗菌薬投与後は症状改善したが,その24ヶ月後に症状が再燃した。以降は現在まで抗菌薬投与継続し,安定している。
    症例2:78歳男性 上咽頭癌に強度変調放射線治療後5ヶ月頃,上咽頭壊死と頭痛が出現した。頭蓋底骨壊死として抗菌薬が開始され,現在まで投与継続し,安定している。
    症例3:55歳男性 篩骨洞癌にシスプラチン+強度変調放射線治療後8ヶ月頃,蝶形骨壊死と頭痛が出現した。抗菌薬が投与され,症状は改善したが,その12ヶ月後,内頸動脈破裂により急死した。
    頭蓋底骨壊死には抗菌薬の長期投与が必須である。また,内頸動脈破裂による急死の可能性を十分に説明する必要がある。
  • 髙橋 紗央里, 門田 伸也, 青井 二郎, 秋定 直樹, 林 祐志, 森田 慎也, 中村 匡孝
    2022 年 48 巻 4 号 p. 330-337
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    頭頸部悪性腫瘍に占める軟部肉腫の割合は1%程度と希少疾患である。その組織型は骨肉腫,横紋筋肉腫,Ewing肉腫など多様である。今回,我々は2011年~2020年の10年間に治療を行なった成人発症の胞巣型横紋筋肉腫4症例について検討したので,文献的考察を加え報告する。内訳は男性2例,女性2例,年齢は52~58歳(中央値56歳)であった。初診の時点で3症例がリンパ節転移,2症例が遠隔転移を伴っており,化学療法,放射線治療および手術を組み合わせた集学的治療を行った。全症例で一定の治療効果を認め,1例は治療終了後1年間無再発生存,1例は治療継続中である。初診時から遠隔転移を伴っていた2例は遠隔転移病変が制御困難となり死亡した。成人の胞巣型横紋筋肉腫には確立された標準治療がなく,小児と比較して予後不良である。今後,成人に対する標準的治療の確立が待たれる。
  • 谷 美有紀, 杉本 太郎, 近藤 律男, 鈴木 由紀
    2022 年 48 巻 4 号 p. 338-343
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    腸管気腫症(Pneumatosis intestinalis,以下PI)は腸管の粘膜下,漿膜下に多数の含気性小囊胞を形成する病態である。門脈ガス血症(Portal venous gas,以下PVG)を認める場合は腸管壊死などの重篤な病変の存在を疑う必要がある。PIは近年,頭頸部癌領域でも報告が散見される。今回我々は,化学放射線療法後にPIとPVGを発症し,保存的治療で軽快した下咽頭癌の2症例を経験したので報告する。症例1は50歳女性。下咽頭癌に対し化学放射線療法を施行した。放射線療法終了後13日目に発熱があり,CTでPIとPVGを認めた。症例2は73歳男性。下咽頭癌に対する経口的切除術後に後発ルビエールリンパ節転移を認め,化学放射線療法を施行した。放射線療法終了後3日目に腹部膨満感と嘔気があり,CTでPIとPVGを認めた。両症例とも腹膜刺激症状はなく,腸管壊死が伴っている可能性は低いと考えられ,保存的加療を行い軽快した。臨床経過を報告し,頭頸部癌治療と関連して発症したPIとPVGの診断と治療について考察する。
  • 望月 大極, 山口 裕貴, 竹内 一隆, 今井 篤志, 瀧澤 義徳, 三澤 清
    2022 年 48 巻 4 号 p. 344-350
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    頸動脈破裂は頭頸部癌治療にて留意すべき致死的合併症である。最近4年間で2例の頸動脈破裂を救命しえたため報告する。症例1は46歳男性。下咽頭の難治性潰瘍にて紹介となる。23年前上咽頭癌に対する化学放射線療法によって,下咽頭左梨状窩粘膜の壊死,舌骨が一部消失し潰瘍形成していた。大量出血にて搬送され,左内頸動脈からの出血が疑われた。緊急血管内治療にてステントを留置し止血した。ステント内が閉塞し,脳梗塞を発症したが,その後2年生存している。症例2は71歳男性。p16陽性中咽頭癌に対してIMRTを施行した。リンパ節転移が治療中に増大し,総頸動脈から分岐部にかけ血管を取り囲んだ。同部位で腫瘍が皮膚穿破し,大量出血にて入院した。仮性動脈瘤が形成されており,血管内治療にてコイル塞栓を施行し止血した。その後免疫療法が奏効し,1年半生存している。頸動脈破裂について事前の対応などを熟知しておく必要がある。
  • 矢内 敬子, 伊藤 純平, 中平 光彦, 榎木 祐一郎, 菅澤 正
    2022 年 48 巻 4 号 p. 351-355
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    嚥下機能の評価法として数多くの方法が挙げられるが,ベッドサイドで簡便に定量評価が可能な方法は少ない。嚥下時の舌骨挙上は嚥下機能評価の重要な観察項目と考えられる。そこで今回我々は,ベッドサイドで簡便に嚥下時の舌骨移動距離の測定が可能かどうか,またその年齢層による違いについて,超音波診断装置を用いて健常人を用いて測定を行った。対象と方法は,30~84歳の健常ボランティア39名に対し,超音波診断装置を用いて唾液嚥下時の舌骨移動距離を計測し,年代別に3群に分け統計学的検討を行った。結果は,70~84歳の高齢群の舌骨移動距離が延長する傾向がみられた。過去のレントゲン造影検査を用いた計測において,舌骨移動距離は加齢とともに延長すると報告されており,今回の検討から超音波診断装置においてもその有用性が示唆された。
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