分泌癌は2017年からWHO分類に収載され,唾液腺癌の組織型として確立された,比較的新しい疾患概念である。今回我々は分泌癌に対し,ラロトレクチニブを投与し奏功した症例を経験したので報告する。症例は68歳男性,36年前に硬口蓋腫瘍摘出術を施行し,小唾液腺由来の腺房細胞癌と診断された。術後再発に対し複数回の手術や放射線療法を施行したが治療効果は乏しく,腫瘍は緩徐に増大を続けた。がん遺伝子パネル検査を施行し,
ETV6-NTRK3融合遺伝子を検出したことから,分泌癌と診断した。TRK阻害薬の適応でありラロトレクチニブ投与を開始し,治療開始後1年6ヶ月で完全奏功(CR)を維持している。
ETV6-NTRK3融合遺伝子を有する分泌癌に対してはTRK阻害薬の投与が有効な治療になり得ると考えられた。
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