頭頸部癌
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原著
  • 森田 琢磨, 瀬戸 陽, 三谷 浩樹, 福島 啓文, 佐々木 徹, 新橋 渉, 小泉 雄, 神山 亮介, 市川 千恭, 鳥居 淳一, 檜原 ...
    2023 年 49 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/26
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌切除および一期的に遊離組織再建手術を行った2018年〜2020年の3年間318例を対象に,Clavien-Dindo分類(CDC)を用いて術後合併症の検討を行った。CDC grade Ⅲa以上を合併症ありと評価し,全体で115例(36.2%)にみられた。遊離組織移植に関する合併症に関して,20例(6.3%)で術後吻合血管に血栓を認め,このうち14例において血管再吻合を行い12例が救済された。全壊死は8例(2.5%)で,新たな組織移植による再建手術を要した。呼吸器に関しては17例(5.3%)で術後呼吸不全のため人工呼吸器管理を要した。これらの合併症は有意に在院期間を延長した。本研究では遊離組織移植に関する2000年〜2007年の8年間1,031例の当科からの過去の報告に比べ,吻合血管血栓後の救済率に向上が認められ,術後のシームレスな経過観察と適切な開創処置が重要と考えられた。
  • 阿部 史佳, 河野 辰行, 河野 憲司
    2023 年 49 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/26
    ジャーナル フリー
    多発性の口腔扁平上皮癌について,口腔潜在的悪性疾患(OPMD)の随伴に注目して検討を行った。対象は2008年1月から2018年12月に当科で治療した15例で,同時性多発症例が4例,異時性多発症例が11例である。男女比は4:11と女性が多く,癌の発症部位は歯肉が最も多く,35個の癌病巣のうち17個(48.6%)を占めた。15例中11例(73.3%)が癌病巣と同部位または異なる部位にOPMDを伴っていた。随伴したOPMDは口腔扁平苔癬(OLP)が5例,口腔扁平苔癬様病変(OLL)が2例,口腔白板症が3例,口腔白板症と慢性肥厚性カンジダ症の併発が1例であった。OPMDと癌病巣の部位の一致率は63.0%であり,口腔白板症と慢性肥厚性カンジダ症は一致率が高かった。喫煙・飲酒習慣を有する症例は3例のみであった。今回の検索から,口腔多発癌は単発性の口腔癌とは異なる臨床背景を有し,OPMDの随伴が口腔癌の多発に関係していた。
症例報告
  • 山内 麻由, 稲木 利英, 山﨑 有朋, 飯島 宏章, 戎本 浩史, 酒井 昭博, 西山 耕一郎, 大上 研二
    2023 年 49 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/26
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌治療において,治療後に嚥下障害が遷延したり,晩期の有害事象として嚥下障害が生じたり,嚥下障害による著しいQuality of Life(QOL)の低下を来すことがある。嚥下障害の治療として,嚥下リハビリテーションも有効であるが,無効例では外科的治療も考慮される。頭頸部癌治療後患者の嚥下障害に対して手術加療した症例について,手術前後の嚥下状態など検討し,頭頸部癌患者の嚥下障害に対する外科的治療について考察した。
    今回,嚥下機能改善手術2例と誤嚥防止術1例を行った。身体的・社会的要因をもとに術式を選択した。嚥下機能改善手術を施行した症例1,2において嚥下機能改善手術が有益であったため,頭頸部癌治療後の患者でも検討すべきと考えられる。また,身体的社会的背景が厳しかった症例3においては,誤嚥防止術が有益であった。身体的・社会的要因を考慮して,術式の選択が重要である。
  • 三橋 敏順, 佐藤 文彦, 山元 英崇, 小野 剛治, 梅野 博仁
    2023 年 49 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/26
    ジャーナル フリー
    血管肉腫は脈管の内皮細胞に由来する稀な悪性腫瘍である。今回,耳下腺領域の転移が診断契機となった血管肉腫を経験した。症例は79歳女性。左耳下部腫瘤を主訴に来院した。MRIで左耳下腺内に長径52mm大の境界不明瞭な腫瘤と,右頸部リンパ節の腫大を認め,いずれもFNAで上皮様異型細胞を認めた。当初,左耳下腺癌(cT3N2cM0)と診断し,原発巣に対して重粒子線治療を予定し,左耳下腺生検と右頸部郭清術を施行した。病理検査の結果は血管肉腫であった。術後,頭皮正中部に長径約6cmの紫斑が出現し,皮膚生検の結果も血管肉腫であった。耳下腺領域の病変は耳下腺リンパ節への転移と考えた。肺と肝にも多発転移を認め,最終的に頭皮原発血管肉腫(T2N1M1)と診断した。患者は積極的治療を希望せず,初診日から4ヶ月後に原病死した。耳下腺領域に悪性腫瘍を認めた場合,頭皮や顔面にも悪性腫瘍がある可能性を念頭に置く必要がある。
  • 福薗 隼, 西村 文吾, 大山 真司, 松本 信, 中山 雅博, 髙橋 邦明
    2023 年 49 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/26
    ジャーナル フリー
    分泌癌は2017年からWHO分類に収載され,唾液腺癌の組織型として確立された,比較的新しい疾患概念である。今回我々は分泌癌に対し,ラロトレクチニブを投与し奏功した症例を経験したので報告する。症例は68歳男性,36年前に硬口蓋腫瘍摘出術を施行し,小唾液腺由来の腺房細胞癌と診断された。術後再発に対し複数回の手術や放射線療法を施行したが治療効果は乏しく,腫瘍は緩徐に増大を続けた。がん遺伝子パネル検査を施行し,ETV6-NTRK3融合遺伝子を検出したことから,分泌癌と診断した。TRK阻害薬の適応でありラロトレクチニブ投与を開始し,治療開始後1年6ヶ月で完全奏功(CR)を維持している。ETV6-NTRK3融合遺伝子を有する分泌癌に対してはTRK阻害薬の投与が有効な治療になり得ると考えられた。
  • 神戸 史乃, 小池 修治, 大澤 悠
    2023 年 49 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/26
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌は遠隔転移をきたしやすい特徴があるが,甲状腺への転移は少ない。腎癌の甲状腺転移,内頸静脈内腫瘍塞栓を認め,手術で切除した1例を経験した。症例は73歳男性,18年前に腎細胞癌のため右腎摘出術を施行後,近医で施行した頸部超音波検査で偶然,甲状腺腫瘍を指摘され,当科を受診した。甲状腺左葉腫瘍,左内頸静脈塞栓,多発肺結節の所見を認めた。Dynamic CTを施行したところ,甲状腺腫瘍において早期相で濃染,後期相でwash outされる所見を認め,腎細胞癌の甲状腺転移を強く疑った。腫瘍の周囲への進展や気道狭窄を防ぐ目的で,甲状腺左葉切除術,左頸部郭清術に加え,呼吸器外科,心臓血管外科の協力を得てTransmanubrial Osteomuscular Sparing Approachを用いた左内頸静脈内腫瘍塞栓切除,鎖骨下静脈の再建を施行した。術後3ヶ月で免疫チェックポイント阻害薬による加療が開始された。
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