【背景】嗅神経芽細胞腫(olfactory neuroblastoma;ONB)は,発生頻度が稀であり,頸部リンパ節転移に対しての治療法に関して,明確なコンセンサスは得られていない。
本研究では,嗅神経芽細胞腫(olfactory neuroblastoma;ONB)の頸部リンパ節転移について検討を行った。
【方法】1996年 9月から2022年4月までに当院で治療を行ったONB患者59例のうち頸部リンパ節転移に対して治療を行った17例(初回治療時に頸部リンパ節転移を伴っていたKadish D 群が6例,Kadish C以下の群で後発頸部リンパ節転移をきたした11例)を対象として臨床研究をおこなった。
【結果】Kadish D群6例のうち,頸部郭清術が行われた症例が3例(50%),放射線治療が行われた症例が3例(50%)であった。後発頸部リンパ節転移を来したKadish C以下の群11例のうち,頸部郭清術が行われた症例が9例(81.8%),放射線治療が行われた症例が2例(18.2%)であった。すべての症例において頸部リンパ節転移による死亡を認めなかった。初回治療から頸部リンパ節転移出現までに20年以上経過していた症例が1例認められた。Kadish C以下の群における原発巣の制御率は72.7%(8/11)でありKadish D群と比較して良好であった。
【結論】初発,後発ともに頸部リンパ節転移による死亡を認めなかった。頸部リンパ節転移を有する患者では全身状態や頸部リンパ節転移以外の病変を含めた検討を行い,可能であれば頸部リンパ節転移に治療を検討すべきである。
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