頭頸部癌
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第48回 日本頭頸部癌学会
シンポジウム6
頭頸部癌終末期患者の診察で悩んだこととその工夫
  • 東野 正明, 山﨑 知子
    2024 年 50 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/21
    ジャーナル フリー
    目的:頭頸部がん患者の終末期対応の現状と問題点を見出す。
    方法:日本頭頸部悪性腫瘍登録事業に参加している施設代表者にアンケートにて全国調査をおこなった。
    結果:全199施設中168施設(84%)から回答を得た。医療圏内で受け入れ可能な在宅医療診療所数は3~4が多かった。在宅導入率および在宅看取り率は,在宅診療所数が5~6になるまで上昇し,それ以上でプラトーになった。自施設に緩和ケア病棟を持つ施設は31%あった。医療圏内で受け入れ可能な緩和ケア病棟を持つ施設数は3~4が多かった。頭頸部がん治療医は在宅導入に支障をきたす問題点を,咽頭皮膚瘻,腫瘍の自壊,気管切開,誤嚥のリスク,キーパーソン不在,認知症,精神的不安定,経済的不安定と認識していた。
    考察:頭頸部がんに携わる医師が情報発信し,在宅医や緩和ケア病棟をもつ施設の医師との連携強化を図ることで頭頸部がん終末期医療は改善の余地がある。
原著
  • 前田 耕太郎, 篠﨑 剛, 松浦 一登
    2024 年 50 巻 4 号 p. 280-284
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/21
    ジャーナル フリー
    【背景】嗅神経芽細胞腫(olfactory neuroblastoma;ONB)は,発生頻度が稀であり,頸部リンパ節転移に対しての治療法に関して,明確なコンセンサスは得られていない。
    本研究では,嗅神経芽細胞腫(olfactory neuroblastoma;ONB)の頸部リンパ節転移について検討を行った。
    【方法】1996年 9月から2022年4月までに当院で治療を行ったONB患者59例のうち頸部リンパ節転移に対して治療を行った17例(初回治療時に頸部リンパ節転移を伴っていたKadish D 群が6例,Kadish C以下の群で後発頸部リンパ節転移をきたした11例)を対象として臨床研究をおこなった。
    【結果】Kadish D群6例のうち,頸部郭清術が行われた症例が3例(50%),放射線治療が行われた症例が3例(50%)であった。後発頸部リンパ節転移を来したKadish C以下の群11例のうち,頸部郭清術が行われた症例が9例(81.8%),放射線治療が行われた症例が2例(18.2%)であった。すべての症例において頸部リンパ節転移による死亡を認めなかった。初回治療から頸部リンパ節転移出現までに20年以上経過していた症例が1例認められた。Kadish C以下の群における原発巣の制御率は72.7%(8/11)でありKadish D群と比較して良好であった。
    【結論】初発,後発ともに頸部リンパ節転移による死亡を認めなかった。頸部リンパ節転移を有する患者では全身状態や頸部リンパ節転移以外の病変を含めた検討を行い,可能であれば頸部リンパ節転移に治療を検討すべきである。
  • 三上 稜平, 三根 実穂子, 藤原 肇, 下田 光, 手島 直則, 四宮 弘隆, 丹生 健一
    2024 年 50 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/21
    ジャーナル フリー
    耳下腺癌の頸部リンパ節転移はT分類,組織学的悪性度がリスク因子とされるが,術前悪性度診断は困難な場合も多い。当科での耳下腺癌手術症例を後方視的に検討し,悪性度診断と頸部制御について検討する。
    2008年から2021年に初回治療として手術を行った遠隔転移のない耳下腺癌78例を対象。男性47例,女性31例。cT1,2,3,4=11,27,17,23例。cN−60例,cN+18例。
    cN−例でlevel Ⅱリンパ節の術中迅速診断は23例全例癌陰性であった。cN−例の潜在的頸部リンパ節転移率は7%(4/60)であった。cT1-3もしくは術前に低,中悪性の症例のうち術後に高悪性と診断された7例はいずれも頸部リンパ節再発はなかった。
    cN−例ではT4,高悪性に予防郭清が推奨されるが,術前の悪性度診断は困難な場合も多い。
    術前悪性度診断が違っていた例も頸部再発はなく,認容可能な治療方針と考えられた。
  • 東野 正明, 河田 了, 神人 彪, 粟飯原 輝人, 寺田 哲也
    2024 年 50 巻 4 号 p. 291-297
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/21
    ジャーナル フリー
    【目的】唾液腺導管癌(SDC)と浸潤型多形腺腫由来癌(iCXPA)におけるHER2発現および抗HER2療法が予後に与える影響を検証する。
    【対象と方法】耳下腺SDCおよびiCXPAの40例(うちHER2陽性19例)を後方視的に検討した。
    【結果】34例に初回根治手術を施行し,そのうち21例で再発した。HER2陽性19例中9例で抗HER2療法を施行し,抗HER2療法の奏効率は66.7%,CR率は33.3%,1年病勢制御率は76.2%であった。無増悪生存期間の中央値は18ヶ月であった。HER2陽性例では,抗HER2治療施行例が抗HER2療法非施行例より有意に予後が良かった(p=0.01)。
    【考察】HER2陽性耳下腺癌例は抗HER2療法によって長期生存を見込める可能性がある。ただし,頭蓋内転移には効果が乏しい。今後,HER2陽性耳下腺癌に補助療法として抗HER2療法の検討が望まれる。
  • 京野 真理, 橋本 和樹, 松尾 美央子, 古後 龍之介, 次郎丸 梨那, 本郷 貴大, 真子 知美, 脇山 浩明, 中川 尚志
    2024 年 50 巻 4 号 p. 298-303
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/21
    ジャーナル フリー
    進行中下咽頭癌症例ではしばしば外側咽頭後リンパ節(ルビエールリンパ節,以下RLN;Rouvière lymph node)に転移を来すが,RLN転移病変に対する治療に関する報告は少なく,未だ統一した見解はない。今回,初回治療時にRLN転移を有した中下咽頭原発扁平上皮癌症例22例について検討した。原発巣を含む病変への初回治療内容は,手術11例/(化学)放射線療法11例であり手術例のうち3例でRLN転移病変を合併切除し,残る8例ではRLN転移病変は切除せず術後に放射線治療を行った。全体のRLN再発率は18.2%であり,RLN病変に対して(化学)放射線療法のみを行った症例でも比較的良好に制御されていた。一方,RLNの制御状況に関わらず,特に下咽頭癌症例では治療後の遠隔転移発生率が66.7%と高く予後不良であった。下咽頭癌症例ではより厳重な治療後の経過観察が必要である。
  • 結束 寿, 阿久津 泰伴, 水成 陽介, 志村 英二, 長岡 真人
    2024 年 50 巻 4 号 p. 304-309
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢頭頸部がん患者において婚姻状況(配偶者の有無)が生存に及ぼす影響を明らかにすることである。当院で2015年から2019年までに根治治療を行った65歳以上の頭頸部がん患者258例を対象に,診療録より婚姻状況(配偶者の有無),患者基本情報および疾患情報を調査した。全生存率をKaplan-Meier法により算出し,Cox比例ハザードモデルにより配偶者の有無が生存に及ぼす影響を推定した。その結果,配偶者のいないことは,患者基本情報と疾患情報で補正しても有意に不良な予後と関連していた(ハザード比1.73,95%信頼区間1.08~2.76,P=0.022)。根治治療を行う高齢頭頸部がん患者の社会的支援において,特に配偶者のいない患者への支援の強化の必要性が示唆された。
症例報告
  • 稲田 正浩, 植原 拓也, 松尾 幸憲, 西村 恭昌
    2024 年 50 巻 4 号 p. 310-315
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/21
    ジャーナル フリー
    今回我々は,上咽頭癌に対する化学放射線療法後の腋窩リンパ節転移再発に対して根治的化学放射線療法を施行し,長期生存が得られた症例を経験したので報告する。症例は77歳男性。頸部腫脹を主訴に診断された上咽頭癌T1N3M0 StageⅣAに対してシスプラチン併用化学放射線療法70Gy/35frおよび5FU+シスプラチンによる補助化学療法を施行後,11ヶ月目に腋窩リンパ節転移再発をきたした。他に明らかな転移は認めず,キャンサーボードで耳鼻咽喉頭頸部外科医,腫瘍内科医と協議の結果,根治的化学放射線療法の方針となった。腋窩リンパ節に対してネダプラチン併用化学放射線療法66Gy/33frを施行し,リンパ節は消失した。再発治療後5年11ヶ月経過し,明らかな再々発を認めることなく誤嚥性肺炎で死亡した。
  • 田中 瑛久, 三上 慎司, 木村 直幹, 北原 糺
    2024 年 50 巻 4 号 p. 316-321
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/21
    ジャーナル フリー
    副甲状腺癌は副甲状腺機能亢進症を示す症例の中でも非常に稀な疾患で,生検は播種の危険性から禁忌とされており術前に確定診断を得ることは難しい。今回,原発性副甲状腺機能亢進症に対して臨床所見から悪性疾患を念頭におき手術し,良好な経過をたどる副甲状腺癌症例を報告する。症例は50歳女性。他科での血液検査で高Ca血症,intact-PTH高値,また頸部CT検査で副甲状腺腫大を認め当科を受診した。右下頸部に腫瘤を触知し,頸部エコー検査では横断走査で縦横比1.12の副甲状腺腫瘍を認め,甲状腺との境界は不明瞭であった。99mTc-MIBIシンチグラフィでは甲状腺右葉下極背側に強い集積を認め,これらの所見より遠隔転移を伴わない副甲状腺癌を疑い手術を行った。術後の病理組織学的検査では術前の予測通り副甲状腺癌の診断となった。術後2年3ヶ月経過しているが腫瘍制御を得ており,血清Ca値やintact-PTH値は正常化し経過良好である。
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