頭頸部腫瘍
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22 巻, 3 号
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  • 1996 年 22 巻 3 号 p. 405
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
  • 長谷川 泰久, 松浦 秀博, 中山 敏, 藤本 保志, 佐井 博範, 甲村 孝秀, 小川 徹也, 松塚 崇, 寺田 聡広, 奥村 耕司
    1996 年 22 巻 3 号 p. 406-410
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    上皮小体を意識せず甲状腺全摘を行うと永続的な機能低下を招く。機能低下を避けるためには少なくとも1腺の血流を確実に温存するか, あるいは2腺以上移植することが必要である。上上皮小体は大部分が crico-tracheal junction の高さで甲状腺後縁に位置している。生ウニ色でやや光沢のある5mm位の楕円形の組織である。温存法: 上上皮小体の確認後下甲状腺動脈を同定し本幹より末梢に向かい上上皮小体まで血管を丁寧に剥離する。上甲状腺動脈の後枝からの血行が明かであればこれを温存する。移植法: 甲状腺全摘後ただちに移植可能な上皮小体を摘出する。一部を迅速標本とし, 上皮小体と確認する。眼科用剪刀を用いて薄切 (10~15片) する。頸胸部の筋肉 (胸鎖乳突筋, 後頸筋, 大胸筋) にモスキートで小ポケットを3~4個所作り, この移植床に上皮小体片を埋没する。上皮小体の手術において必要なことは解剖の知識と丁寧な手術操作である。
  • 窪田 哲昭
    1996 年 22 巻 3 号 p. 411-415
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    上皮小体機能亢進症83例 (原発性33例, 続発性50例) の手術経験から手術方法について述べた。
    本手術は異所性や過形成の可能性から4腺を探索することが原則であるが, 原発性では正常上皮小体の探索が, 必ずしも容易ではない。原発性の場合まず2腺を探し, その大きさに著明な差があれば腺腫と考え, 大きい方の一腺のみの摘出で済むのが通例である。
    術前診断は大切であり, その方法もいろいろあるが, 不確実要素も大きく腺を探し出す手技を習得すべきものと思われる。4腺探索の要点は上下の上皮小体の存在部位や上皮小体と反回神経との位置関係を熟知しておくことである。
  • 武宮 三三
    1996 年 22 巻 3 号 p. 416-422
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    20年間における163例の上皮小体機能亢進症の経験から, 手術における留意事項を述べ, その1例をビデオで供覧した。
    上皮小体は小さい臓器であるだけでなく, 過剰腺や位置異常に富むから, 術前術中の局在診断が時によっては難しい。過不足のない切除をおこなうために必要な, 無血的な丁寧な手技について論じ, 剥離面の正確さの必要性を強調した。
  • (1) 経耳下腺法
    川堀 眞一, 高原 幹, 野中 聡
    1996 年 22 巻 3 号 p. 423-427
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙腫瘍のアプローチ法にはいくつかの方法がある。術前診断による腫瘍の大きさ, 存在する位置の高さ, 腫瘍の性状より使い分けられる。アプローチ法の一つに経耳下腺法があり, 副咽頭間隙腫瘍に対するこのアプローチ法の主な適応と手術手技について述べた。
  • 安田 範夫, 村上 泰
    1996 年 22 巻 3 号 p. 428-433
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙へのアプローチ法として下顎 Push up 法の手術手技について概説した。この方法のポイントは, (1) 口腔底の粘膜切開は下顎骨離断時に必要な最小限にとどめ切り進まないこと, (2) 離断した下顎骨は swing back せず上方へ押し上げること, の2点である。短時間の手術操作で大きな術野を確保でき, 開口および咀嚼機能への影響はきわめて少なく, 知覚障害や神経損傷の危険がない。容易に mandibular swing に移行することができるのも利点であるがオトガイから下口唇にかけて手術痕が残ることが唯一の欠点である。この Push up 法は副咽頭間隙に発生したほとんどの良性腫瘍の摘除手術に有効な方法である。ただその限界は腫瘍の高さによって決定され, 展開される視野の中で腫瘍が直視できるかが適応の限界となる。つまり頭蓋底直下にまで及ぶ高位置の腫瘍はより広い視野の得られる方法を選ぶべきである。
  • 下口唇非切開法
    渡辺 周一
    1996 年 22 巻 3 号 p. 434-439
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙腫瘍摘出術のアプローチ法のうち下顎骨正中離断法では一般的に下口唇皮膚切開が行われている。しかしこの皮切はしばしば術後顔面正中に瘢痕を残す整容的な問題がある。下口唇皮下で下顎骨離断を行えばこの問題は解決する。mandibular swing 法では皮切を顎下部で対側に延長し, 下顎骨より対側オトガイ孔を越える部位まで下口唇, 頬部皮膚, 咬筋を剥離し患側オトガイ神経を切断する。口腔前庭部粘膜を下顎骨外周に沿って切開すると下口唇・頬部皮膚・咬筋が帯状皮弁 (バイザー皮弁) となり下顎骨より遊離する。皮弁下に下顎骨離断が可能となる。口腔底粘膜切開後, 皮弁を挙上し下顎骨を上外方に牽引すると口腔内の術野が広く展開され, 副咽頭間隙上部へのアプローチが可能となる。
  • 沼田 勉, 遊座 潤, 片橋 立秋, 日野 剛, 今野 昭義
    1996 年 22 巻 3 号 p. 440-445
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    副咽頭間隙に発生した多形腺腫症例2例において, 下歯槽神経を温存する下顎骨側面離断法により腫瘍を摘出した。本術式により, 下顎正中離断には劣るものの, 副咽頭間隙に側面から術野が確保され, 盲目的用手剥離操作を避けることができた。ミニプレートによる固定で, 咬合障害は認められなかった。美容的な観点, 経耳下腺法からの移行の容易さなどより, 耳下腺深葉から副咽頭間隙に進展する多形腺腫など良性腫瘍に対しては選択する意義のある術式であると考えられた。
  • 頭蓋内顔面神経
    井上 泰宏, 神崎 仁
    1996 年 22 巻 3 号 p. 446-450
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    我々の施設で行っている顔面神経頭蓋内吻合術の術式と, 術後の顔面神経機能について報告した。
    頭蓋内顔面神経吻合術には, 端々吻合の他に Re-routing (顔面神経迷路部を露出し内耳道内へ伸長する方法) や Transposition (大錐体神経を内耳道へ伸長する方法), さらに腓腹神経を用いた神経移植の4つの方法があり, 神経の欠損部の長さに応じて, いずれかを選択している。
    また, 吻合術術後1年以上経過観察が可能であった17症例を検討したところ, Re-routing を含む端々吻合例の9例中7例の顔面神経機能がH-Bの grade III以下と最も良好であったが, 他の方法においても比較的良好な回復を示した。
    術中に顔面神経中枢端が確認されれば, 同じ術野で一期的に施行できる点, 術後の機能回復が良好な点, 必要に応じて頭蓋外吻合を含めた追加治療ができる点等から, 頭蓋内吻合は顔面神経再建の第1選択になるものと思われた。
  • 側頭骨内顔面神経移植術と舌下神経―顔面神経移植術
    村上 信五
    1996 年 22 巻 3 号 p. 451-454
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    中耳手術や側頭骨内腫瘍, 聴神経腫瘍などで顔面神経が切断され端々吻合できない場合の再建術として, 中枢端が同定できる場合には神経移植術が, 中枢端が同定できない場合は異種神経である舌下神経と顔面神経を吻合する手術が行われる。神経移植, 舌下神経―顔面神経吻合術は強い筋収縮と自然な顔面表情が得られるが, 病的共同運動も必発である。また, 舌下神経―顔面神経吻合術は舌の萎縮を生じ, 症例により構音, 咀嚼, 嚥下障害をきたすことが難点である。これに対して jump graft は神経再生は遅く弱いが, 舌の萎縮が生じず, 病的共同運動も軽いという利点がある。何れの神経再建術も単独で満足な顔面の表情を獲得することはできず, 特に前額部の回復は困難である。吊り上げ術や側頭筋移行術 (Gillius-Andersen 変法) などの補助的な形成手術を併用したり, また神経再生に伴う病的共同運動に対しては選択的筋切除術なども有効である。
  • 江浦 正郎
    1996 年 22 巻 3 号 p. 455-460
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    癌細胞傷害性T細胞 (CTL) の認識する癌関連抗原をコードする遺伝子が最近次々に同定されているが, その中で頭頸部扁平上皮癌に比較的発現が多いとされるMAGE-1, MAGE-3, GAGE遺伝子について, それぞれ108, 111, 63症例においてその発現をmRNAのレベルで検索した。MAGE-1, MAGE-3, GAGE遺伝子はそれぞれ27.8%, 47.4%, 41.3%の症例で発現がみられた。さらに, MAGE-3遺伝子のコードするペプチドのうちHLA-A2分子とともに癌細胞表面に発現されるFLWGPRALVを合成し, HLA-A2保有者の末梢血単核細胞を用いてこのペプチドに特異的なCTLの誘導を in vitro にて試みた。IL-4とGM-CSFにて増殖させた樹状細胞を抗原提示細胞として用い, interleukin-1 (IL-1), IL-2, IL-4, IL-6を加えた培養液にて誘導すると, エフェクター細胞はHLA-A2陽性でしかもMAGE-3遺伝子を発現している頭頸部扁平上皮癌細胞株を傷害した。このことは頭頸部扁平上皮癌症例は癌抗原ペプチドをターゲットとした癌抗原特異的免疫療法の良き対象になることを示唆する。
  • 杉本 千鶴, 松川 茂, 藤枝 重治, 都築 秀明, 田中 信之, 斎藤 等
    1996 年 22 巻 3 号 p. 461-465
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    癌の悪性化は抗癌剤耐性, 転移能, 増殖能の獲得などが代表的であるが, 癌細胞がアポトーシスのメカニズムに異常をきたし, アポトーシスを回避することにより悪性の性質を獲得するという従来とは異なる別の機構も考えられている。そこで, アポトーシスを誘導することによって抗癌剤感受性を高めることを目的として, アポトーシスを誘起する Fas 抗原および抑制するBcl-2に着目した。まず, 頭頸部癌細胞株における Fas およびBcl-2蛋白の発現を調べ, CDDP感受性との関連について検討し, bcl-2のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてその発現を抑制することによるCDDP感受性の変化を検討した。さらに, 頭頚部癌摘出標本を用いて免疫組織化学的に Fas およびBcl-2の発現を検討し, 抗癌剤感受性との関連について検討した。その結果, これらの発現をコントロールすることにより, より効果的な化学療法を行いうる可能性が示唆された。
  • 中井 茂, 木村 隆保, 四ノ宮 隆, 安田 範夫, 福島 龍之, 村上 泰
    1996 年 22 巻 3 号 p. 466-470
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    癌細胞の早期に起こる染色体異常と癌の進展に伴って起こる染色体の変化を検討するため, 核DNA定量と Fluorescence in situ hybridization 法 (FISH) を行った。舌癌13例と甲状腺癌16例を対象に, 1番, 7番, 11番, 17番X, Y染色体と1p36領域について検討した。diploid の舌癌6例中4例に染色体の数的異常が見られた。しかし異常に共通性は見られなかった。diploid の甲状腺癌14例は全て染色体の異常を示さなかった。aneuploid の舌癌7例, 甲状腺癌2例には染色体数の増加が見られた。そしてこれらの変化の殆どは tetrasomy であった。これらの異常は多倍体化を経た後起こったと考えられた。何例かの aneuploid の腫瘍において, 注目すべきことに disomy 1と disomy 11の細胞集団が見られた。この disomy 1と disomy 11の起源を検討するため, aneuploid 癌の diploid 成分に既に出現している, より早期の染色体変化と aneuploid 成分に見られる多倍体化を経た後に起こった後期の変化の違いを検討した。この検討のためには auto-scanning stage を備えた蛍光顕微鏡を使用し, 個々の核で核DNA量とFISHのシグナル数を直接関連付けることが必要であった。disomy 11の起源は多倍体化を経た後, tetrasomy から染色体の欠失を繰り返して生じたと考えるよりもむしろ, monosomy からゲノムの倍化を経て生じたと考えられた。double-target FISHの結果から1p36領域の欠失が注目された。以上より diploid 癌における1番, 11番染色体, 1p36領域の2つのうち1つの欠失が aneuploid 癌の出現や進展に重要な関連があると推測された。
  • 與田 順一, 廣橋 良彦, 山中 昇
    1996 年 22 巻 3 号 p. 471-475
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    癌の浸潤, 転移の機序に関して, 頭頸部癌細胞株を用いて検討した。細胞間接着分子であるE-カドヘリンの機能抑制に伴い, 癌細胞の再構成基底膜への浸潤性が増加した。ヌードマウスでの移植実験では, リンパ節転移が早期に起こった。これらの機序としては, E-カドヘリン機能の抑制に伴い, 癌細胞間の接着特性が消失し, 癌細胞が離脱しやすくなること, 同時に, 細胞外基質分解酵素の産生が増加すること, 血管内皮増殖因子 (VEGF) の産生が高まり血管新生が亢進すること, が考えられた。
    臨床像との関連に関しては, E-カドヘリンの発現が減弱していた症例では, 予後不良例が多かった。E-カドヘリンの血清中可溶成分が増加していた症例では, リンパ節転移を含む局所再発が多かった。
    頭頸部癌の浸潤, 転移はE-カドヘリンの機能と深く関係していると考えられた。転移の早期診断におけるE-カドヘリンの重要性が示唆された。
  • 田中 信之, 斎藤 等
    1996 年 22 巻 3 号 p. 476-481
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    細胞内ATP量を指標とした抗癌剤感受性試験 (ATP法) を行い, 臨床相関を中心に同法の現況とその有用性について検討した。評価可能率は94%であり, 薬剤別感受性陽性率は, 5-FU, CDDPで高く, 扁平上皮癌にしぼった検討でも同様の傾向があった。また, 部位別の検討では, 口腔, 中咽頭において感受性陽性薬剤が多かった。15例の臨床効果との相関では, 真陽性率75%, 真陰性率100%, 正診率87%であり, 我々が過去に報告した迅速サイミジン法と比較しても良好な結果であった。また, 術後補助化学療法として, 感受性陽性薬剤を用いた検討を13例に行い現在まで死亡例は1例のみであったが, 平均観察期間17ヵ月と短く, 今後も引き続き検討が必要であると思われた。以上の結果より, ATP法は assay の技術的な面での簡便さや評価可能率の高さ, 臨床相関においても良好な結果であり, 抗癌剤感受性試験として有用であると考えられた。
  • 深野 英夫, 長谷川 泰久, 村松 泰徳, 松浦 秀博
    1996 年 22 巻 3 号 p. 482-487
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    頭頚部癌55 (男:女=38:17) 例, 総検体数74件に対して, SDI法による抗癌剤感受性試験を行い, 本試験の臨床適応について検討した。対象は, 扁平上皮癌51, 腺癌2, 未分化癌2で, 判定可能率は80.0% (44/55) であった。同一症例の原発巣と転移リンパ節の試験結果から, 転移リンパ節由来の腫瘍細胞でのI.I. が低値になる傾向が見られた。感受性試験後に再発した9例の腫瘍に対する化学療法の臨床効果から, 臨床との相関を検討した。CDDP (25μg/ml) 或いは5FU (100μg/ml) の抗腫瘍効果を予測するためのI.I. のカットオフ値を40%に設定した場合, 正診率はCDDPでは56%, 5FUでは63%であった。また, 低感受性の正診率はどちらも80%であった。抗癌剤に対して抵抗性のある腫瘍の個別化がSDI法により可能なことが示唆され, 症例に応じて化学療法の適応決定の参考資料となりうると考えられた。
  • 甲能 直幸, 中澤 詠子, 楠 正恵, 中村 昇太郎, 市川 銀一郎
    1996 年 22 巻 3 号 p. 488-495
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    in vitro の抗癌剤感受性試験材料として一般的に広く用いられているのは単層培養細胞である。しかしながら単層培養細胞は二次元的空間で平面上を増殖するので薬剤に対する感受性が高く評価され, 臨床成績との相関に問題がある。頭頸部癌は固形癌であるので, その感受性試験材料としては固形のモデルが理想である。多細胞スフェロイドの特長は1) 三次元的な細胞の結合。2) 細胞間の結合組織としてラミニン, ファイブロネクチン, ヒアルロン酸, コラーゲン等の物質を含む。3) 中心部に低酸素状態の細胞を含む。4) 構築された細胞の細胞周期が異なる。などがあげられる。これは, 固形癌の細胞特性を反映しており, 本法を用いた成績は, より臨床に近いものとなる。
    本法における特長は, 利点として1) 安価である, 2) 再現性に富む, 3) 薬剤接触時間が自由に設定できる, 4) 併用療法の検討が出来る。欠点は1) 評価に時間がかかる, 2) 技術を要す, 3) 臨床材料からの作成が制限される, などである。
    個別化への展望は, 臨床材料から如何に効率よく短時間で多細胞スフェロイドの作成が出来るかにかかっている。多細胞スフェロイドの作成に約1ヶ月かかると, 薬剤の評価をして直ちに臨床応用する事が難しい。このあたりが今後の課題である。
  • 吉賀 浩二, 宗像 裕司, 茅田 義明, 高田 和彰
    1996 年 22 巻 3 号 p. 496-504
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    当科における頭頸部悪性腫瘍 (1985-1993年) にたいして Subrenal Capsule (SRC) により Tumor growth inhibition rate (TGIR) および inhibition rate of specific activity of succinate dehydrogenase (SSDI) をもちいて, それぞれ100例, 67例について感受性評価を行った。また臨床との相関性をみるために, 44例の口腔腫瘍についても検討した。その結果評価可能率はいずれも94.0%と高く, 感受性陽性率ではSSDI法がより臨床の一般的陽性率を反映した。臨床相関性では通常のSRCAではやや低い値であったがSSDI法では74.2%の相関率であった。
  • 前原 喜彦, 山本 学, 馬場 秀夫, 杉町 圭蔵, 中島 格
    1996 年 22 巻 3 号 p. 505-510
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    癌化学療法の治療成績向上のためには, 抗癌剤感受性試験による個々の症例に応じた最も感受性の高い薬剤の選択が肝要である。本稿では, 抗癌剤感受性試験の歴史, 分類, 各々の感受性試験の特徴について述べ, さらにわれわれが1984年以来行っているSDI法について概説した。SDI法は細胞内のコハク酸脱水素酵素活性を細胞の viability の指標とする感受性試験で, 簡便性, 再現性, 高い検出率の点で優れた方法であり, 現在広く普及している。これまでに, われわれはSDI法によりヒト臨床各種腫瘍4649検体の感受性試験を行った。その結果, 抗癌剤の感受性は, 組織型, 分化度, 転移臓器, 細胞増殖活性, DNA合成酵素の多寡, DNA plaidy, ホルモンリセブターの有無等により規定されることが明らかとなった。また, SDI法による感受性試験結果と化学療法の臨床成績が相関することも判明した。今後, 抗癌剤感受性試験のさらなる発展に伴い, 癌化学療法の治療成績の向上が期待される。
  • 佐々木 武仁
    1996 年 22 巻 3 号 p. 511-516
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    一日多分割照射法は基本的には二つの異なった生物学的現象に基づいて考案された照射法である。1つは晩期正常組織反応が早期反応組織や腫瘍よりも回復能力が大きく, それ故に分割線量依存性が大きいことを利用した Hyperfractionation であり, もう1つは治療期間中に腫瘍幹細胞の増殖速度が加速することによる治療効果の低減を防ぐための Accelerated fractionation である。本項では, これらの放射線生物学的根拠について解説し, それをもとにした生物学的モデルの数式的表現によって多分割照射法の平均的効果予測を試みた。臨床効果を予測するには, 晩期正常組織反応を修飾する因子に関する研究や個々の腫瘍のポテンシャル倍加時間と治療効果との関係についての研究が更に必要であると考えられた。
  • 多分割照射についての現状
    菊池 雄三
    1996 年 22 巻 3 号 p. 517-521
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    多分割照射法の頭頚部腫瘍への臨床応用の現状について, これまでの世界の主な臨床試験を考察し, 問題点と有用性を検証した。HFXの臨床試験を除いて, 全て第I/II相試験に基ずく結果であるが, 1) 局所制御での改善が得られること。2) 生命の延長について, 多くが有意の傾向, もしくは有意であっても境界領域であること。3) 急性期反応は従来法と比較してやや強度。4) 晩期障害は同程度か Type A (CHART) のようにむしろ軽度であること。結論として, 生命の延長についての貢献は明らかではないものの, 治療比を改善させる分割法として有用性が期待される。現在 TypeA について英国を中心に, TypeB, TypeC については米国 (RTOG) を中心に従来法との三群による無作為第III相比較試験が行われており, 最終的な有用性の確認が期待される。
  • 喜多 みどり
    1996 年 22 巻 3 号 p. 522-527
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    多分割照射法は正常組織の晩期障害を少なくし, 腫瘍の局所制御卒を高めることを目的に行われる。東京女子医大・放射線科ではT2NOMOの声門癌42例に対し, 1日2回照射法 (1回1.5Gy, 1日2回照射間隔は6時間以上, 総線量72Gy) を施行した。救済手術も含めた5年累積局所御率は88.2%で, 5年喉頭保存率は83.2%であった。全国13施設による多施設問共同研究では喉頭癌T2症例に対し1日2回照射法 (1回1.5Gy, 1日2回, 総線量72Gy) と1日1回の通常法 (1回2Gy, 週5回法, 総線量66Gy) との Prospcctivc randomized trial が行われた。一次制御率は1日2回照射法97% (37/38), 通常法93% (39/42) であり, 4年累積局所制御率は1日2回照射法59%, 通常法53%であった。化学療法併用多分割照射はCRは80%, PRは20%と奏功率100%と良好であった。一方, 疼痛や出血に対する対症的照射として1回3Gy, 1日2回, 計18Gy/3日の acceleated fractionation では11例中9例に症状の緩解が認められた。以上より多分割照射により局所制御率の向上が期待され, 予後の改善につながると考えられた。
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