目的:今回は Passiflora sp. (主に P. incarnata)に含まれている植物成分の中で,アルカロイドの定性および定量分析に関する文献検索を行った.文献検索から,Passiflora sp. 各種 (主に P. incarnata)に含まれているハルマンアルカロイド (β-カルボリンアルカロイド)の種類 (成分化学ファイル)およびその含有量,さらにその精神薬理学的活性効果について,調査を行った.そしてハルマンアルカロイドの Passiflora sp. の精神神経作用への寄与について,考察した.また Passiflora sp. (主に P. incarnata)に含まれているハルマンアルカロイドの成分組成およびその含有量について,幻覚植物として知られている Peganum harmala と対比を行い,ハルマンアルカロイドによる重大な健康被害の可能性について,考察した.
方法:著者が今まで,Passiflora sp. の史的研究調査で使用したいくつかの文献の中で,Costa, et al. (2016)の報文には,唯一,アルカロイド分析に関する研究報告が記載された.Costa, et al. (2016),およびそれに使用された引用文献から,Passiflora sp. に含まれているアルカロイドについて検索した.それに関連してWeb にて,Peganum harmala,およびハルマンアルカロイド (β-カルボリンアルカロイド)について検索した.
結果:1980 年以降の Passiflora sp. に含まれているハルマンアルカロイドの含有量の研究報告では,それ以前の1970年代までの研究報告と比べると,その濃度が低レベルであることが示された.Peganum harmalaとの対比においては,Peganum harmalaに含まれているβ-カルボリンアルカロイドの含有量は% w/w レベルで,ppm レベルの P. incarnataよりも,かなり高いレベルであった.また調査結果では,ハルマンアルカロイドなどのβ-カルボリンアルカロイドは血液脳関門を容易に通過しベンゾジアゼピン,セロトニン,およびドパミンなどの受容体に結合して,相互作用すること,ならびに MAO-A 阻害作用により,脳内モノアミン神経伝達物質の代謝および濃度をレベル調節することにより,抗うつ作用,中枢興奮作用,幻覚作用などの幅広い精
神薬理作用を有することが示された.一方ハルマンなどのβ-カルボリンアルカロイドは GABAA 受容体?ベンゾジアゼピン受容体系において,ベンゾジアゼピン受容体に結合して,抗痙攣作用などの GABA の抑制作用を減弱または逆転させることが示された.
結論:Passiflora sp. に含まれているハルマンなどのハルマンアルカロイド (β-カルボリンアルカロイド)はppm レベルのかなりの低濃度レベルである.しかしこの濃度レベルにおいて,ハルマンなどのハルマンアルカロイドは GABAA 受容体に対して,GABAA 受容体逆作動薬 (陰性アロステリック調節因子)として働き,不安惹起,中枢興奮など GABA 神経抑制作用と逆の作用を誘発する可能性は考えられる.したがって,Passiflora sp. の緩和な精神神経作用は,GABAA 受容体において,アピゲニンなどのアグリコンによる GABA神経抑制作用の過剰を微量のハルマンアルカロイドが制御しているためではないかと著者は推察する.
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