薬史学雑誌
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最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 武田 収功
    2026 年61 巻1 号 p. 1-13
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
     『古事記』と『日本書紀』に記された「天岩戸」の神話は,太陽神アマテラスが岩屋に隠れたために世界が闇に包まれるという危機について記している.またアメノウズメの「憑依」についても述べている.「憑依」とは神霊が人に憑く(宿る)ことを言う.一部の研究者たちは,アメノウズメの憑依現象が変性意識状態(ASC)(トランス状態)を示しているのではないかと指摘している.精神医学的には,憑依は向精神薬の影響を示唆する.歴史的記録によれば,古代スキタイ人は大麻を加熱することで生成した向精神活性物質を吸入して酒に酔ったように踊り狂った.これは「天岩戸」の儀式において,アメノウズメが青和幣(あおにぎて)の煙を吸い込み,まるで神に憑かれたかのように踊り狂う場面を説明する科学的仮説として解釈できる.2024 年の研究では理論的・実験的方法を用いて,大麻の非精神活性成分カンナビジオール(CBD)が加熱により向精神活性成分 Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)へ変換可能であることが実証された.ヤマト王権は,大麻の持つ「穢れを浄化する力」や「神憑り」の概念を,王権自らの権威を正当化する象徴として神話に取り入れた可能性がある.これらの考えは神の言葉「託宣」と見なされる.神話は単なる虚構ではなく,そこに隠された「真実」は,科学的な解釈によっていつか解明されるだろう.
  • 西川 隆, 飯野 洋一
    2026 年61 巻1 号 p. 14-31
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    目的:明治政府の薬事法規の規範となる「薬剤取調之方法」から「医制」,「薬品営業竝薬品取扱規則」(通称「薬律」)の成立過程や内容の特徴を概説した. 方法:「医制百年史」,「薬学史」など先行文献のほか,近年の研究成果を検索した. 結果および考察:政府は医薬制度の確立を目指し,明治 5 年(1872)「薬剤取調之方法」を作成した.これは相良知安がドイツ人教師ミュルレルらの意見を翻訳作成したものだが,政府が「薬事制度のみの先行法制化に難色を示した」ため,その計画は明治 7 年(1874)制定の「医制」の中に反映された.「医制」の成案も相良が作成したが,3府(東京・京都・大阪)で実施したのは長与専斉であった.「医制」は医事・薬事に対する対策が主であったが,政府はさらに近代的薬事制度の確立を目指し,明治 22 年(1889)「薬律」を法律10号として整備した.この作成・施行は長与が当たった.「薬律」は今日の「薬剤師法」,「医薬品医療機器法」に引き継がれている.
  • 勝山 真人
    2026 年61 巻1 号 p. 32-38
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    目的:歌舞伎の市川猿之助家は屋号を「澤瀉屋」というが,その由来について Web 上では「初代猿之助(1855-1922)の生家が副業として薬草のサジオモダカを商う薬舗をやっていた」というのが通説となっている.その真偽について検証した. 方法:猿之助家に関する歌舞伎関係の書籍,および「おもだかや」という薬屋に関する文献を調査した. 結果:Web 上で流布している説は歌舞伎の専門誌では見出せなかった.江戸時代,名古屋で「沢瀉膏薬」を製造販売していた薬屋「沢瀉屋勘左衛門」と混同されているものと推測された.一方その店舗の看板やそれを詠み込んだ狂歌が,猿之助家の屋号「澤瀉屋」の由来となった可能性があると考えられた. 結論:Web 上の通説は真実でない可能性が高いと考えられた.
  • 北村 美江, 松尾 幸子
    2026 年61 巻1 号 p. 39-47
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    目的:長崎聖堂文庫に保存の外国産薬用植物の栽培に関する『御触「唐蛮薬種植付に関する件」』について,出された歴史的背景を解析した.また,御触を通して見える江戸幕府の薬務行政についても調べた. 方法:江戸幕府が編纂した『御触書集成』の“薬種之部”に収載の全ての御触に目を通し,長崎のものと比較した.同時に,御触を目的別に分類した. 結果:長崎聖堂文庫に保存のものは他の一つの御触と共に寛政 2 年(1790)に勘定奉行を通して伝えられたことが判明した.御触の内容は外国産の薬用植物を日本に輸入し,増殖に成功したことから積極的に和産のものを活用すること,国内での増産をさらに進めるように関係者に通達したものだった.“薬種之部”に収載の御触は全部で 99 件存在し,その内の半数以上が薬用人参に関わるもので,これが江戸期の最も重要な薬だったことがわかった.幕府は薬の安定供給・品質管理・高騰防止に努めたこと,これらは現在の薬務行政に通ずるものである.
  • 平岩 知子
    2026 年61 巻1 号 p. 48-55
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    目的:喜谷實母散は,正徳 3 年(1713 年)の創業以来三百余年にわたり継承されてきた伝統的な婦人薬である.その起源は長崎の医師より伝授された秘薬とされ,江戸時代の『耳嚢』にもその名が記されるなど,古くから女性に愛用されてきた. 方法:本稿は,この喜谷實母散の歴史的変遷を,日本の各時代における女性の生き方,社会における役割,そして健康を取り巻く環境の変化と重ね合わせながら考察する.特に,江戸時代に確立された「血の道」という概念が婦人薬の存在意義と深く関わってきた点に着目し,喜谷實母散が伝統的な女性の役割を支えつつも,同時に女性が自身の健康について意思決定を行い主体的に関与するための手段として機能してきた側面を分析する. 結果および考察:令和の時代に「女性の健康」が国家的な課題として注目される中,喜谷實母散の歴史は,時代を超えて女性の心身の健康を支え,その生き方に寄り添ってきた伝統薬の多面的な役割を示すものであった.
  • 西谷 篤彦
    2026 年61 巻1 号 p. 56-65
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    目的:ASHP第4代 CEO(2011-2026)Dr. Paul W. Abramowitz の ASHP での活動と薬剤師職能に与えた影響について調査した. 方法:本稿では次の資料について文献調査を行った.1. Traynor K, Cobaugh DJ. Paul W. Abramowitz: a proud legacy. Am J Health-Syst Pharm. 2026; 83 (2): 14-70,2. Abramowitz PW. From Vision To Change: Leading Pharmacy Practice Advancement. ASHP Publications, 2025, 3. Abramowitz PW, Thomson K, Cobaugh DJ. ASHP at 75 years: celebrating the past and embracing the future. Am J Health-Syst Pharm. 2017; 74: 1936-7,4. ASHP の Website の Section of Specialty Pharmacy Practitioners. 結果:薬剤師職能に影響を与えたDr. PaulのASHPにおける業績は次のようなものである. 1.ASHP の名称の「H」を「Hospital」から「Health-System」に変更する提案の論理を説明した.2.ASHP 会員の構成を在宅ケアや臨床専門分野の医療従事者,そして学生を含めるという組織改革を行った.3.彼はまた ASHP 本部の売却と移転で,ASHP の財務基盤を強固なものにした.このことは COVID-19 パンデミック中の ASHPの活動を持続させることにつながった.4.彼は ASHP の世界的な役割と影響力を拡大するために,アメリカ以外の薬学実務およびレジデンシープログラムの認定,薬学部への相談業務を行った.また薬剤師のスキルと能力の評価を高めるため,様々な資格認定方法を策定した.さらにはファーマシーテクニシャンの認定と免許取得に尽力した. 結論:Dr. Paul は ASHP の多くの分野で多大な貢献をし,薬剤師の地位向上と職能の拡充に寄与した.さらにアメリカの薬剤師制度やファーマシーテクニシャンの地位向上にも影響を与えるなど世界の薬剤師教育・業務の参考となる業績を残した.
  • 風岡 顯良
    2026 年61 巻1 号 p. 66-71
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    目的:名城大学薬学部標本室に収蔵される木村康一関連標本について,その内容と特徴を明らかにすることを目的とした. 方法:名城大学薬学部標本室に収蔵される生薬標本を調査し,木村康一の在任期(1969年から1974年)における研究・教育活動と照合した. 結果:木村康一関連標本24点を確認した.これらの中には,自身が栽培した植物,名古屋市内の中国物産店で入手された市場品,牧野富太郎や京都府農林部農事試験場分場の記載を有する標本などが含まれていた.しかしながら,在任期に使用されたことが文献上明らかになっている研究材料の多くは,その中に含まれていなかった. 結論:名城大学在任期の木村康一が,研究・教育活動と並行して多様な生薬・薬用植物・食品を蒐集していたことが明らかとなった.本稿で確認された標本群は,限定的ではあるが,名城大学在任期における木村康一の蒐集活動や研究者間交流の一端を示す資料と位置づけられる.
  • 五位野 政彦
    2026 年61 巻1 号 p. 72-75
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    序論:目的;明治時代の静岡県における近代薬学導入過程の解明.本稿では静岡県最初の女性薬剤師斎藤カ子についての調査結果を報告する. 方法:以下の史料の文献調査;官報,薬学雑誌他. 結果・考察:斎藤カ子は静岡県で最初の女性薬剤師である.斎藤は1866(慶応2)年に生まれ,1902(明治35)年に永眠した.斎藤は東京の済生学舎で薬学を学び 1891(明治24)年に薬剤師試験に合格,1893(明治26)年に薬剤師免状を取得した.しかし斎藤は薬剤師の業務は行わなかった.理由として,明治時代の西伊豆地方では,女性が医学/薬学の職に就くことができなかった,あるいは何らかの疾病を発症して薬剤師業務を行いえなかった可能性がある.
  • 2026 年61 巻1 号 p. 77-83
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
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