日本健康開発雑誌
Online ISSN : 2434-8481
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40 巻
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原著論文
  • 亀田 佐知子, 早坂 信哉, 斉藤 雅樹, 佐藤 栄介, 壽福 良平, 藤本 紀代美, 藤内 修二
    2019 年 40 巻 p. 1-13
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 温泉研究として基礎医学的エビデンスが多数明らかになっている一方で、一般的な温泉利用者の身体的エビデンスに関する調査は少ない。本研究では大規模調査を前提としたインターネットを用いたweb調査形式で、温泉入浴の利用実態及びテキストデータを既存アプリケーションプログラムによって半自動化した解析による身体的エビデンスがどの程度明らかにできるかを検討することを目的とした。

    方法 Web調査形式で2018年2月末から3月初旬に実施。対象者は大分県内の職員であり、3,917名からの回答を得た。

    結果 大分県内の職員の温泉入浴の特徴として、温泉利用者の半数以上が月数回以上温泉を利用していた。入浴温度は「40-42度」を好む人が多く、湯船に浸かる時間は「30分以下」と「31分以上」が共に半数程度であった。体質や持病では、「体の凝り・痛み」が最も多く、次に「冷え性(症)」であり、男性より女性に多くみられた。温泉入浴後の心身の変化や効果では、「体の変化(軽くなる、温まる)」が最も多く、次に「ポジティブな気分の変化」、 「良く眠れる」、 「疲労回復」の順であった。

    考察 大分県内の職員の自宅入浴は過去の関東の自宅入浴データとほぼ同じであり、温泉入浴独自の特徴としては、湯船に浸かる時間が自宅入浴に比べ長く浸かる人が多い傾向が示唆された。また、テキスト分析結果から、温泉効果を把握することができたと考えられ、身近に温泉のある人を対象としたWeb調査によって、利用者視点の温泉効果を知ることが可能であると考えられた。

  • 内藤 智義, 倉田 貞美, 牧野 公美子, 中村 美詠子, 岡田 栄作, 尾島 俊之
    2019 年 40 巻 p. 14-21
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 介護保険施設における直腸性便秘に対する看護実践の現状はほとんど明らかにされていない。本研究の目的は、介護保険施設における直腸性便秘に対する看護実践の現状を明確にし、3種類の施設間の看護実践を比較することで、その特徴や課題について検討することである。

    方法 静岡県の介護保険施設(特別養護老人ホーム:特養、介護老人保健施設:老健、介護療養型施設:療養型)に勤務する看護師753名を対象に、郵送法による自記式質問紙調査を行った。回収された調査票は336名 ( 回収率44.6%) で、全て分析対象とした。調査項目「直腸性便秘に対する看護実践」は、観察、分析、実施、評価に関する29項目であった。直腸性便秘の看護実践について3種類の施設間に差があるかをχ2検定で比較した。

    結果 特養では、〈観察・把握〉の項目にある「排泄された便を観察する」「直腸内や肛門内に便が残留しているか観察する」の実践割合が、他施設と比較して相対的に低く有意差を示した。老健では、〈実施〉の項目にある「オムツでの排泄ではなく、トイレやポータブルトイレでの排便を促す」「便意を感じた時に、優先してすぐに排便できる状況にする」「対象に合った排便パターンから、排便誘導を促す」の実践割合が、他施設と比較して相対的に高く有意差を示した。療養型では、「医師から処方された下剤を内服してもらう」「浣腸を実施する」「摘便を実施する」の実践が8~9割と高く他施設と比較して有意差を示した。

    考察 3種類の施設間の比較により、直腸性便秘に対する看護実践には差が認められた。その要因としては、入所者の平均要介護度や職種の人員配置基準が異なることが考えられた。この結果からは、各施設の種別に応じて直腸性便秘に対する看護実践を促進する必要性について示唆された。

  • 早坂 信哉, 亀田 佐知子, 野々村 雅之, 栗原 茂夫
    2019 年 40 巻 p. 22-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 一般公衆浴場の銭湯は全国に身近にある公衆を入浴させる施設であり、地域住民にとって銭湯は保健、医療、福祉の面から重要な資源であると考えられる。また、ソーシャルキャピタルという視点からも銭湯の活用は重要である。本研究では「銭湯」について、利用者と非利用者の健康指標ついて調査し、銭湯利用と各健康指標との関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 インターネットを利用した横断研究を2018年9月に実施した。調査対象者558名(男性281名 (50.4%) 、女性277名 (49.6%))であった。

    結果 銭湯の利用頻度の高い人は「主観的幸福感」が非常に高く、 「主観的健康感」でも「(健康状態が)よい」とした人が多かった反面、ストレスを感じる傾向がみられた。地域住民とソーシャルキャピタルについては、銭湯の利用頻度の高い人は「人とのつきあい」が豊かであること、 「地域社会への活動に参加」している傾向があることが示唆された。また、銭湯利用者は様々な設備の利用や気分転換等に銭湯の良さを実感している一方で、銭湯を利用しない人は銭湯に行くのを面倒に感じていることが明らかになった。

    考察 銭湯利用頻度の高い人は、ソーシャルキャピタルが豊かで、近隣との付き合いや社会的交流ができており、幸福感や健康状態を良いと感じている。その反面、ストレスを感じる傾向がある。ある程度のストレスを感じつつも銭湯を活用し、むしろ良好な健康状態や高い幸福感が維持できている可能性が考えられた。今回の調査から銭湯がソーシャルキャピタルの豊かな人が集う場になっていることが明らかになり、その人々を中心に、銭湯がソーシャルキャピタルを培養する場となり、地域活性化へとつながっていく可能性がある。そのためには、銭湯利用者の感じている効果を科学的に検証し、地域の保健、医療、福祉にどのように貢献できるかを検討することが今後の課題となる。

  • 大平 雅子, 山田 雄大
    2019 年 40 巻 p. 31-38
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 これまでの研究では、運動後にも全身浴を行うことが前提条件となっており、運動後に異なる入浴条件を選択した場合の生理的反応やその後の睡眠の質への効果についてまで、はっきりとは分かっていない。本研究では、激しい運動の後に全身浴とシャワー浴を実施し、入浴条件の違いがその後の睡眠の質にどのような影響を及ぼすのについて検証することを目的とした。

    方法 本研究の対象者は、週3回2時間以上運動を行っている学生20名である。全対象者に対しては、実験初日の1週間前から睡眠統制を実施した。対象者には、20時半から主運動を実施させた。主運動後、全身浴条件では38度の全身浴を15分間実施させ、 シャワー浴条件では38度のシャワー浴を15分間実施させた。その後、対象者には24時から7時間就床させた。また、睡眠脳波、眼電位、頤筋電位の測定結果より、睡眠段階の判定を行った。

    結果 就寝0~30分前において、シャワー浴条件よりも全身浴条件で副交感神経系が優位になることが明らかになった。この自律神経活動に伴い、全身浴条件では入眠潜時やN2、N3潜時が短くなる傾向が認められた。

    考察 激しい運動後の全身浴の実施は、時間経過と共に自律神経系の興奮を沈静化し、スムーズな入眠をもたらす可能性があることが明らかになった。しかしながら、これらの結果には統計的な差異は認められておらず、今後サンプルサイズを拡大した上で、更なる研究を進めていく必要がある。

報告
  • 佐羽根 博一, 後藤 澄子, 早坂 信哉, 高橋 伸佳, 後藤 康彰
    2019 年 40 巻 p. 40-46
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    ヘルスツーリズムは、「健康面での何らかの価値提供を含んだ観光の形態の1つ」とされている。旅の喜びとともに、多くの人々に対して健康への気づきをもたらすヘルスケアサービスとして、「ヘルスツーリズムプログラム」が位置づけられている。一方でこうしたプログラムは、地域住民にとっても楽しみながら行動変容を促すツールとして有用であることも期待される。

    世界的なヘルスツーリズムの潮流は加速度的に進展しているが、「プログラム」の開発・提供の枠組みは確立されておらず、消費者にとって安心して購入・利用する選択基準も未整備な状況が続いてきた。こうした課題の解決を目指して、「品質評価」の枠組みをつくる取り組みとして、2018年度に始まったのが、「ヘルスツーリズムプログラム認証制度」である。認証基準の評価ポイントは、「安心・安全への配慮」、 「楽しみ・喜びといった情緒的価値の提供」、 「健康への気づきの促進」の3つで、2019年4月現在、35のプログラムが認証されている。

    岩手県久慈市、三重県明和町では、地域資源を活用した地域ヘルスケアビジネス創出と地域住民の健康増進を目指し、相互に連携してヘルスツーリズム推進に取り組んでいる。地域の特性を活かして健康づくりに寄与することを想定した「食」、 「運動」プログラムの開発や、サービスを提供する人材育成、提供体制の構築、モニターツアーの開催等を行ってきた。久慈市、明和町それぞれにおいて、「ヘルスツーリズムプログラム認証」申請を視野に、地域住民を対象とした3か月のウォーキングプログラムの試行ならびに効果検証を試みたので、報告する。

助成研究
  • 林 敬人
    2019 年 40 巻 p. 48-55
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 浴室内突然死(入浴死)はわが国に特に多く社会的問題になっているが、死亡に至る過程は充分解明されていない。私たちは入浴死の病態解明及び鑑別診断法の開発を目指して動物モデルによる研究を進めてきた。今回、温水を吸引して溺死する過程で変動する遺伝子をDNAマイクロアレイによって網羅的に解析した。

    方法 温水溺死マウス(38, 41℃)の各肺から抽出したtotal RNAを試料としてAgilent Array発現解析(タカラバイオ)を行った。各遺伝子発現が対照(頚椎脱臼により安楽死)に対して1.5を上回る、あるいは0.66を下回るものを有意な変動とした。

    結果及び考察 38℃温水溺死では793遺伝子、41℃温水溺死では743遺伝子に変動がみられた。両群で変動がみられた遺伝子を(A)水チャネル/浸透圧受容体群、(B)熱ショック蛋白群、(C)低酸素誘導群に分けて抽出したところ、(A)群はaqp (aquaporin) 2、aqp4、aqp11、trpm1(transient receptor potential cation channel, subfamily M, member1)、(B)群 はfkbp5(FK506 binding protein 5)、hsp90ab1、hspa1l、hspb1、hspb8、(C)群はhif1an(hypoxia-inducible factor1, alpha subunit inhibitor)、egln3(egl-9 family hif3) が同定され、これまで注目していない遺伝子が多数含まれていた。今後、それらの遺伝子についてqRT-PCRにて発現を確認することで、複数の指標に基づく温水溺死の分子生物学的診断法の確立を目指したい。

  • 石川 正昭
    2019 年 40 巻 p. 56-66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 心拍変動解析を用いた研究から足浴が自律神経活動に影響を及ぼすことが報告されている。近年、何らかの負荷から生じる自律神経活動変化を検証する際には複数の臓器を対象に評価を行う必要性が基礎・臨床研究から報告されている。足浴が自律神経活動にもたらす効果を複数の臓器を用いて検証した報告は皆無である。本研究では、健常成人男性を対象として、足浴がもたらす自律神経活動への効果を過去に報告のある心拍変動のみならず、初の試みとして瞳孔対光反射を用いて検証し、その効果を反映するパラメータや条件の探索を行う。

    方法 40名の健常成人男性 ( 平均年齢±標準偏差 : 28.1±3.9歳 ) を対象に、心拍変動と瞳孔対光反射の測定を足浴前に行った。15分間の足浴を行い、足浴を継続した状態で二つの自律神経機能検査を再度行った。瞳孔対光反射測定には4つの異なる光刺激強度を両眼に施行した。足浴から生じる自律神経活動の変化を検証した。

    結果 心拍変動では、パラメータの有意な変化を認めなかった。瞳孔対光反射では、光刺激前の最大瞳孔径・光刺激後の最小瞳孔径・最大縮瞳速度・平均縮瞳速度・平均散瞳速度・潜時が足浴により有意に変動した。また最小瞳孔径・縮瞳率・平均散瞳速度では光刺激強度と時点における有意な交互作用を認めた。

    考察 足浴による心拍変動の変化は認めなかった一方で、瞳孔では副交感神経活動亢進を認めた。つまり、足浴から生じる生体の自律神経活動変化は一様ではないことが示唆された。瞳孔対光反射の最大瞳孔径・最小瞳孔径・最大縮瞳速度・縮瞳率・平均縮瞳速度・平均散瞳速度・潜時・異なる光刺激強度設定が足浴効果を反映するパラメータや条件となり得る。

  • 八木 明男, 近藤 克則, 早坂 信哉, 尾島 俊之
    2019 年 40 巻 p. 67-73
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 抑うつは高齢者の生活機能低下の原因の一つであり、その予防は公衆衛生上の重要な課題である。本研究では縦断デザインにより高齢者の浴槽入浴頻度と抑うつ傾向発症 ( 以下、うつ発症) との関連を評価することを目的とした。

    方法 日本老年学的評価研究2010年度版、2013年度版の両質問用紙に回答した高齢者のうち、日常生活動作が自立し、2010年度調査時点でGeriatric Depression Scale (GDS) 4点以下であった4,466人 ( 男性2,159人、女性2,307人) を対象とした。2013年度調査でのうつ発症 (GDS 5点以上) を目的変数、2010年度調査時点での浴槽入浴頻度 ( 夏と冬それぞれ) を説明変数とし、共変量として年齢、性、婚姻状況、就労状況、等価所得、教育年数、治療中の病気の有無を用い、ポアソン回帰分析により解析した。

    結果 新規うつ発症は、夏の週0-6回で14.1% 、週7回以上で11.5% 、冬の週0-6回で15.1% 、週7回以上で10.8% に生じた。多変量解析の結果、週0-6回を基準とした週7回以上でのうつ発症率比 (95% 信頼区間) は夏で0.84 (0.71-1.00) 、冬で0.77 (0.65-0.91) であった。

    考察 浴槽入浴頻度が高い高齢者では新規うつ発症が少ないことが示された。高齢者の浴槽入浴はうつ発症の予防につながる可能性が示唆される。

  • 金山 ひとみ, 平井 一芳, 井上 博行, 佐藤 一博
    2019 年 40 巻 p. 74-89
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 ドイツ・ミュンヘン大学の気候療法に基づき、日本人向け気候療法プログラムを用いた研究を行ってきた。その結果に基づき、冷えの訴えのある人のために作成した温冷交互刺激を取り入れた気候療法プログラム実施前後で深部体温、体力および、持久力を比較することを目的とした。

    方法 鹿児島県奄美市で冷えを自覚する参加者を募集し、地形療法コースを利用して冬季に2ヶ月間の気候療法プログラムを実施した。温冷交互刺激の施行方法についてプログラム開始前に実演説明を行い、各自自宅で毎日、肩甲部と腰部に蒸しタオルを当て、完全に冷たくなるまで放置するよう指示した。プログラム前後に腋窩温の測定を含む体格・体力測定、およびアンケートを実施した。

    結果 開始前体力測定時に健康上の問題が新たに発見された1名を除外し、40-53歳の女性3名がプログラムに参加した。蒸しタオルを毎日使用した者は腋窩温が0.3℃上昇し、週2回では変わらず、ほとんど使用しなかった者は0.3℃低下した。片足立ちテスト(閉眼)とタイムアップアンドゴーテストは3名とも改善し、エアロバイクによる多段階負荷時の脈拍数は、週2回の気候療法参加で全ワット数での改善が見られた。

    考察 蒸しタオル使用による腋窩温の上昇、地形療法路を利用した気候療法プログラムでの静的・動的バランス能力と持久力向上が示唆された。今後、参加者を増やして更に検証する必要がある。

  • 迫田 晃弘, 神﨑 訓枝, 田中 裕史, 片岡 隆浩, 山岡 聖典
    2019 年 40 巻 p. 90-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 ラドン温泉の影響効果の評価には、曝露量として被ばく線量が求められる。本研究では、吸入ラドン(Rn-222)が体内で生成した子孫核種の臓器分布を検討するために、ラドン子孫核種(Pb-214)のトレーサとしてラドンの同位体トロン(Rn-220)の子孫核種(Pb-212)に着目し、マウスへのトロン曝露とPb-212の体内分布に係る実験を行った。

    方法 トロン線源としてマントルを用意し、これを通過した空気を飼育ケージに導入することで、トロン雰囲気を作製した。トロンをマウスに曝露した後、血液・肝臓・腎臓・筋肉を採取した。試料は、ガンマ線スペクトロメトリにより放射能分析を行った。

    結果 血液・肝臓・腎臓・尿中のPb-212濃度は概ね同じオーダーで、糞はその一桁高かった。

    考察 今回の曝露条件で、概ね臓器中のPb-212を有意に検出できることがわかった。また、今後の実験結果の精度向上に向けて、飼育ケージ内でトロンの壊変により生成されたPb-212の各種表面への付着の影響などを検討する必要もあることがわかった。

  • 森 康則, 西 智広, 吉村 英基
    2019 年 40 巻 p. 95-104
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 環境省は、温泉地の健康増進効果の測定と把握を目的として、2018年3月に、全国一律の調査フォーマットである「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」を公表した。本研究では、三重県内の温泉地を対象に、同調査プロジェクトのパイロットスタディを実施し、同プロジェクトの効果検証ならびに課題抽出を試みた。加えて、得られたデータをもとに、温泉利用施設の利用前後における主観的な健康状態の変化に着目して、解析を行った。

    方法 三重県内で研究協力が得られた14の温泉利用施設において、2018年7月から12月にかけて、施設の温泉を浴用利用した成人を対象に調査を実施した。有効回答数は537であった。本研究では同調査プロジェクトに定められた調査フォーマットを用いた。統計解析は、施設利用前後の健康状態の変化に係る11の調査項目について、各施設から得られたデータ(各「調査群」)と、そのデータを除いた全体データ(対照群)を、カイ二乗検定により比較した。

    結果 施設毎の統計解析の結果、榊原温泉に位置する公営の公衆浴場で得られた調査データで、施設利用前後の健康状態の変化に係る11の調査項目のうち、9の項目(「より健康になった」「ストレスが少なくなった」等)で、改善したとする回答数が対照群に比べて有意に高かった。

    考察 本研究によって有意差が得られた調査項目については、泉質や施設状況等、様々な複合的要因が関連しているものと考えられる。同調査プロジェクトによる調査結果は、温泉利用施設の利用に伴う有用な効果に関する研究シーズの探索に貢献できる可能性があることが示された。

  • 村上 慎之介
    2019 年 40 巻 p. 105-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis, 以下AD)は、湿疹および慢性的なかゆみを伴い、増悪・寛解を繰り返す疾患で、根本的な治癒に至らない場合もある。本研究では近年AD寛解の症例が多数報告されている北海道豊富町の豊富温泉に注目し、そのAD抑制メカニズムの解明を目指した研究を実施した。

    方法 本研究ではADモデルマウスを用いて、豊富温泉由来の温泉水および油分によるAD抑制効果を評価した。AD発症後に温泉水の水浴や油分の塗布を行い、重症度スコア(SCORAD)などでAD様症状を比較した。

    結果 豊富温泉由来の油分を塗布した群では、コントロール群と比較してSCORADの値が減少傾向であった。

    考察 豊富温泉由来の油分には、AD様症状を緩和する何らかの成分が含まれている可能性が示唆された。

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