背景・目的 行動医学的ストレスマネジメント・プログラム(本プログラム)において「健康的な入浴」の指標を導入するため、まず「健康的な入浴」と精神的健康度との関連を明らかにした。次に本プログラムに指標を適用した際の介入期間前後の変化について、症例報告をした。
方法 先行研究に基づいて「健康的な入浴」の要件を定義し、質問紙を作成して成人600人(女性50%、平均年齢45歳)を対象としたアンケート調査をした。「健康的な入浴」に関連する指標と、本プログラムの精神的健康度を示すアウトカム(「WHO-5精神的健康状態表、「うつと不安のK6」)との関連を調べた。その上で、「健康的な入浴」に関する質問内容を本プログラムの健康評価に反映させ、典型的な2症例の経過をまとめた。
結果 毎日湯船につかって入浴をする人(n=267)は、湯船につからない人(n=168)と比べて、精神的な健康度が良かった(WHO-5得点の平均と標準偏差11.5(5.4) vs. 10.3(5.9), p=0.036, t検定)。多重ロジスティック分析によって性別や年齢などの影響を調整しても、前者は後者と比べて、WHO-5得点が有意に高かった(オッズ比1.036[95%信頼区間1.001-1.074], p=0.049)。ケース・スタディでは、本プログラムによって精神的健康度も入浴習慣も改善、精神的健康度は改善するも入浴習慣は改善せず、の2パターンの症例を示した。
考察 入浴行動と精神的健康度の密接な関連が示唆され、本プログラムによる健康的な入浴行動への変容が期待できた。今後も症例を重ねて、本プログラムの効果検証と社会実装を進めたい。
抄録全体を表示