日本健康開発雑誌
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最新号
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巻頭言
原著論文
  • 宮川 哲弥, 早坂 信哉, 土田 夕紀, 安藤 茎子
    2026 年47 巻 p. 3-12
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    [早期公開] 公開日: 2025/11/28
    ジャーナル フリー

    背景・目的 本研究は、子ども家庭支援センターに新規配属された職員(新卒含む)を対象とし、保護者対応を想定したバーチャルリアリティロールプレイ(Virtual Reality Role-Playing:以下、VRRP)研修を実施し、新版STAIによる主観指標及び心拍変動解析による生理指標を通して、VRRP研修の有効性について検討することを目的とした。

    方法 大田区・杉並区の子ども家庭支援センターに新規配属された相談員11名を対象に、全3回のVRRP研修を実施した。各回、前後に新版STAIを用いて不安度を比較し、VRRPを「実験前安静1分→実験約12分→実験後安静1分」の手順で2回行い、心拍数(HR)、交感神経指標(LF/HF)、副交感神経指標(HF)を測定し、心拍変動解析を行った。

    結果 新版STAIの分析では、VRRPの継続から、状態不安は1回目前の3.55±0.50から3回目後には2.36±0.98へと低下し、平均1.19ポイントの改善が認められた。心拍変動解析では、LF/HF値は全体的に実験中に上昇したが、回数を重ねるにつれ上昇幅が縮小した。2−2は2.38±2.85→4.21±1.81(差+1.83, p=0.005)、3−2は2.32±1.35→3.53±1.75(差+1.21, p=0.008)と生理的慣れが示唆された。

    考察 VRRPは新規配属職員に対して、繰り返し経験することにより不安度は改善され、生理指標においても心理的負担が少なく、訓練後平常に戻りやすいことが示唆された。さらに、これはオンラインでの研修が可能であり録画も簡単にできるため、復習やノウハウの蓄積の利便性があり、新人育成の新たな研修として期待される。

  • 野村 健, 浜田 葵, 長野 寛之, 田中 一成
    2026 年47 巻 p. 13-21
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    [早期公開] 公開日: 2026/04/17
    ジャーナル フリー

    背景・目的 高齢者の皮膚は、加齢に伴う生理的変化により非薄化し脆弱化するため、皮膚のバリア機能が低下する。近年、介護予防の観点から高齢者に対するフットケアの重要性が指摘されているものの、機能性を有する靴下に関する科学的知見は十分に蓄積されていない。本研究では、シルク繊維を用いた機能性靴下の着用が、下腿および足部の皮膚水分率ならびに主観的感覚に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

    方法 脚部および足部に皮膚病変のない健常な中高齢男性7名、中高齢女性11名を対象に、機能性靴下と普通靴下を用いた非盲検非ランダム化比較試験を実施した。皮膚水分率の測定部位は、下腿側面、足背、踵および足底の4箇所とし、靴下着用前、着用1時間後、3時間後および8時間後の計4回測定した。また、主観的感覚はVAS(Visual Analog Scale)スケールを用いて評価した。

    結果 下腿側面および踵の皮膚水分率については、中高齢男女ともに有意な変化は認められなかった。一方、足背では中高齢男性において、靴下着用前と8時間後および3時間後と8時間後において有意差が認められた。また、足底では中高齢女性において、普通靴下と機能性靴下の間に有意差が認められた。主観的評価では、機能性靴下を着用した中高齢女性において、「しっとり感がある」の項目が普通靴下と比較して有意に高値を示した。

    結論 シルク繊維を用いた機能性靴下の着用は、中高齢男性において足背の保湿機能を向上させることが示された。また、中高齢女性では、足底の皮膚の保湿維持および快適性の向上に寄与する可能性が示唆された。

  • 髙橋 伸佳, 那須 清吾
    2026 年47 巻 p. 23-35
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    [早期公開] 公開日: 2026/04/20
    ジャーナル フリー

    背景・目的 超高齢化が進む過疎地域では、コミュニティの脆弱化が課題となっている。本研究は、前期高齢者と来訪者の日常的な交流がウェルビーイングに与える影響を量的に検証し、新たなヘルスツーリズムへの応用を探ることを目的とした。

    方法 過疎地域に居住する前期高齢者(65〜74歳)1,000名を対象にオンライン調査を実施した。このデータを用い生活満足度や幸福感を目的変数、来訪者との交流頻度などを説明変数とし、年齢などの背景情報を調整した線形回帰分析を行った。

    結果 日常的な来訪者との交流頻度は、生活満足度(点推定値: 0.13, 95% CI: 0.07–0.18)や幸福感(点推定値: 0.12, 95% CI: 0.07–0.17)と一貫して有意な正の関連を示した。これは、交流頻度が1単位増加するごとにウェルビーイングスコアが標準偏差の約0.1倍上昇することに相当し、無視できない影響を持つことが示唆された。一方で、マクロな観光の経済的貢献意識や有償ガイドへの関与意向がウェルビーイングに与える影響は限定的であった。

    考察 経済的便益よりも、来訪者とのミクロな交流が前期高齢者の心理的・社会的つながりや役割意識を高めることが示唆された。この活力再生は、地域のソーシャル・キャピタルを再構築し、持続可能な地域社会とツーリズムの基盤となり得ると考えられた。

助成研究
  • 久米 大祐
    2026 年47 巻 p. 39-44
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    ジャーナル フリー

    背景・目的 効果的な温熱療法を確立するために、一過性の温熱刺激に対する血管機能の変化を検討することは重要である。本研究では、一過性の手浴がもたらす血管機能改善効果について大血管と微小血管から検証することを目的とした。

    方法 健常若年成人15名(21±1歳)を対象とした。Hot hand bathing条件(40℃)とThermoneutral hand bathing条件(34℃)を設定し、15分間の手浴試行を行った。手浴前後に、大血管機能の指標として動脈スティフネス(心臓足首血管指数)を測定した。さらに、近赤外線分光法と血管閉塞試験を組み合わせた手法により、再灌流時における組織酸素飽和度の曲線下面積を求め、これを微小血管機能の指標とした。

    結果 心臓足首血管指数は、Hot hand bathing条件でのみ有意に低下した(P<0.05)。組織酸素飽和度の曲線下面積は、両条件ともに有意な変化を示さなかった。

    結論 一過性の手浴は大血管機能を一時的に改善させるが、微小血管機能に対する手浴の影響は限定的であることが示唆された。

  • 岩田 浩明, 田中 加蓉子, 朝比奈 良太, 山内 恒生
    2026 年47 巻 p. 45-50
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    ジャーナル フリー

    背景・目的 北海道の豊富温泉は、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬に対する湯治療養施設として全国から多くの患者を受け入れている。本研究では、その効能に寄与すると考えられるコールタール由来芳香族炭化水素化合物に着目し、皮膚バリア機能の回復および抗炎症作用について科学的検証を行った。

    方法 入浴施設へ送湯する前段階で除去処理される原油成分を採取し解析に用いた。不死化ヒト角化細胞に原油成分を刺激し、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を実施した。角層バリア機能関連遺伝子および炎症関連遺伝子の変動を評価した。さらに得られた分子応答を基に、正常ヒト表皮ケラチノサイトおよび正常イヌケラチノサイトを用いて動物種横断的な作用の再現性を検証した。

    結果 原油成分刺激によりフィラグリン発現が有意に亢進し、炎症関連遺伝子ではケモカインの発現抑制、とくにCCL17/TARCの顕著な抑制が認められた。これらの変化は湯治利用者の臨床的改善と一致した。ヒトおよびイヌの正常ケラチノサイトでも同様の変化が再現され、共通の作用機序が示唆された。

    考察 豊富温泉原油成分はバリア機能改善と炎症抑制の両面で治療的価値を有する可能性が示された。今後、有効成分の特定と作用機序の解明を進めることで、炎症性皮膚疾患に対する新たな治療法の開発が期待される。

  • 吉村 聡志, 鈴木 涼馬, 丸山 和栞, 眞弓 優希, 谷口 功樹, 稲葉 直子, 日向 美羽, 石見 拓
    2026 年47 巻 p. 51-56
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    ジャーナル フリー

    背景・目的 入浴に伴う急激な血圧変動は、特に高齢者や循環器疾患患者において起立性低血圧(OH)を引き起こし、失神や転倒、溺水などのリスクとなり得る。しかし、実社会における入浴前後のOH発生割合や関連因子を検討した研究は乏しい。本研究では、入浴前後の血圧変動およびOH発生とその関連因子を探索的に調査した。

    方法 令和8年4月27日現在(4月9日登録開始)、関西地域の温浴施設において観察研究を実施中である(中間報告)。18歳以上の健常成人を対象とし、入浴前後で血圧・脈拍・体重・体内水分量を測定した。OHは立位1分以内に収縮期血圧20 mmHg以上または拡張期血圧10 mmHg以上の低下と定義した。また入浴中にウェアラブル端末の装着し、脈拍数を測定した。中間解析として、OHの有無で群分けし、各因子との関連を検討した。

    結果 1例の欠測を除いた16例中5例(31.3%, 95%信頼区間14.2%-55.6%)にOHを認めた。OHの有無による群間比較において、年齢、性別、身長、入浴前の血圧、脈拍、体重および水分量には、大きな群間差は認められなかった。一方、飲酒習慣、睡眠充足感(OHあり群で低値)、入浴前脈拍数(OHあり群で高値)、入浴後拡張期血圧(OHあり群で高値)、入浴前後の拡張期血圧の差(OHあり群で低下)に統計学的有意な差を認めた。

    考察 実環境の入浴では、無症候の起立性低血圧が一定割合で発生しており、飲酒歴、熟睡の自覚の有無ならびに、入浴前の脈拍とOHの関係性が示唆された。今後は、最終予定症例(126例)の登録継続を行い、登録終了後に解析並びに最終報告を行う予定である。

  • 小椋 正之, 大橋 正和, 増子 善太, 柴田 康則, 大河原 伸浩
    2026 年47 巻 p. 57-62
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    ジャーナル フリー

    背景・目的 歯や口腔に影響を及ぼす可能性がある飲泉を含め入浴・温泉及び一般社団法人日本温泉気候物理医学会が認定する温泉療法医などに関して歯科医師がどのくらい関心を持っているかの報告は認められない。そのため、本研究では、歯科医師を対象として、入浴・温泉・飲泉及び温泉療法医などへの関心について調査し、歯科医師の関心の度合いを明確にすることを目的とした。

    方法 千葉県歯科医師会の会員を対象として、年齢、性別等の属性、入浴・温泉・飲泉に関する患者への指導、専門的な学習に対する関心度などについて、無記名式の調査を実施した。

    結果 合計で167名からの回答があった。患者から注意点などを尋ねられた経験は、入浴72%、温泉27%、飲泉7%であった。患者へ指導してみたいかは、入浴58%。温泉31%、飲泉23%であった。専門的な学習をしてみたいかは、入浴46%。温泉38%、飲泉29%であった。

    専門医などの資格を取得したいと回答した者は、入浴25%。温泉25%であった。学習方法については、入浴、温泉ともに「動画」が多く、学習費用は「1万円以下」、「10万円以下」、学習期間は「1週間以内」が多かった。

    また、飲泉が口腔内に影響することを知っている者は14%であった。

    考察 入浴には高い関心、温泉には中程度の関心、飲泉は低い認知・関心という段階的な傾向があることが明らかになった。入浴や温泉に対する歯科医師の関心については、一定程度のニーズが認められたことから、歯科医師に科学的根拠に基づく情報提供を行うことは、歯科医療を通じて、患者の健康寿命の延伸にも一定の役割を果たし得る可能性が示唆された。

    また、専門的な資格を取得したいという者は一定程度認められるが、その費用や期間は極めて限定的であることから、先ずは学習費用・学習期間について、負担の少ない学習機会の設定といったアプローチが妥当であると考えられた。

  • 金田 晃一, 藤本 知臣
    2026 年47 巻 p. 63-69
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    ジャーナル フリー

    背景・目的 足浴は下腿のみの浸水で水の物理的特性による様々な生理的効果を得ることができる。足浴に関する検討は多く行われているが、足浴に運動を付加することで浸水部分の筋や循環系への効果を得られる可能性がある。そこで本研究は、足浴中の浸水部分の運動が血流動態や筋活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

    方法 健常な若年成人男性13名を対象に、10分間の陸上安静の後、足浴を伴う(足浴あり:水深25cm、水温40°C)もしくは足浴を伴わない(足浴なし)環境で10分間の安静と10種類の下肢の運動を行い、再度5分間の陸上安静を行った。実験中、腓腹筋の総ヘモグロビン量、酸素飽和度、血流量、皮膚温、筋活動、瞳孔径、心拍数を測定した。

    結果 総ヘモグロビン量、血流量、筋活動は足浴ありが足浴なしと比較してやや低い値を示した。総ヘモグロビンと酸素飽和度は退水後の安静時に運動時と比較して高い値を示した。酸素飽和度と血流量は運動中が安静時と比較してやや高い値を示した。皮膚温は足浴ありが足浴なしと比較して高い値を示した。瞳孔径と心拍数は足浴による影響は見られなかった。

    結論 足浴中に浸水部分の運動を行うことで足浴中の腓腹筋における血液量や血流量がやや制限されるが、全身の生理的負荷を抑えつつ緩やかな筋刺激を与え、さらに退水後の血液量や酸素供給を増加することができるため、疲労回復やリハビリテーションの手段として有効である可能性が示唆された。

  • 小川 景子, 石橋 章汰, 金田 紗和, 岩永 真弥, 瀧 慎伍, 小野 晃路, 田中 亮, 緒形 ひとみ
    2026 年47 巻 p. 71-79
    発行日: 2026/06/17
    公開日: 2026/06/17
    ジャーナル フリー

    背景・目的 リモートワークは通勤の負担軽減や柔軟な働き方などの利点がある一方で、生産性の低下や心理的ストレスの増加といった負の側面もある。本研究ではリモートワークの負の側面を解決する方略として、入浴と仮眠の相乗効果に着目し、この2つを組み合わせることで通常の仮眠の機能がより促進されるか検討した。

    方法 大学生7名を対象に1時間の認知課題後に20分間の休憩を行う休憩条件、仮眠を行う仮眠条件、仮眠前に10分間の入浴を行う入浴+仮眠条件を実施し、その後再び1時間の認知課題を実施した。認知課題は10分×6セッションずつ行い、1セッションごとに主観(眠気、疲労感、気分、動機づけ)と作業成績(正答率、反応時間)を検討した。また、ポリグラフ測定を行うことで仮眠の質と量も検討した。

    結果 検討の結果、仮眠条件では他の条件に比べて、主観および作業成績の改善がみられた。その一方で、仮眠前に入浴を行った入浴+仮眠条件では、これらの仮眠効果は打ち消された。ポリグラフ測定の結果から、入浴+仮眠条件で仮眠条件より深い眠りである睡眠段階3への移行が早い傾向が示された。

    考察 先行研究より、仮眠を30分以上とることで睡眠段階3の最中に目覚め、起床直後に眠気や疲労感が残る現象(睡眠慣性)が生じやすくなることが知られている。本研究においても仮眠前に入浴を行うことで深い眠りが誘導されやすくなり、睡眠慣性が生じた可能性が考えられる。

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