1.海産魚11種, 淡水魚9種の摂餌開始時の仔魚の消化系を観察し, 成魚の消化系との比較を基礎にその機能に推察を加えた。
2.摂餌開始時の仔魚の消化管は直線型と回旋型に大別され, 前者は主としてニシン魚群・中生魚群に属する魚種の, 後者はスズキ魚群に属する魚種の特徴である。3.味蕾の発達は一般に海産仔魚で悪く, 淡水産仔魚とくに摂餌開始前に咽頭歯が分化した仔魚でよく発達している。
4.食道の粘液腺は摂餌開始時にPAS陽性物質を分泌している。
5.有胃魚では食道と腸との問に胃の前駆体と考えられる部分が存在するが, その上皮は条紋縁を欠く立方状細胞で構成され, 胃腺や胃盲嚢部は未分化の状態にあり, 機能的にこの段階の仔魚は無胃魚といえる。
6.成魚の消化管にみられるち密層や顆粒層は仔魚には認められない。
7.一部の魚種を除き, 摂餌開始時の仔魚の腸上皮は円柱細胞のみで構成され, その遊離縁には条紋縁がよく発達している。
8.一般に幽門垂は後期仔魚の初期には分化していない.
9.摂餌開始前に肝臓中にグリコーゲンの蓄積はほとんど認められない.
10.肝臓と膵臓はたがいに分離し, 肝膵臓は未形成である。
11.摂餌開始時の仔魚の消化系の基本稱造は無胃魚の消化系の構造と共通しており, 消化吸収機構の類似性が推察される.
12.摂餌開始時の仔魚の消化系の分化程度はその種の摂餌し得る餌の範囲を規定する主要な要因であり, 生命力とも密接な関係にあるものと推察される。
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