魚類学雑誌
Online ISSN : 1884-7374
Print ISSN : 0021-5090
ISSN-L : 0021-5090
34 巻, 3 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 石原 元
    1987 年 34 巻 3 号 p. 241-285
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    北西太平洋産ガンギエイ属Rajaの標本を, この海域のほぼすべてのnominal speciesのtype標本と比較した結果, 従来イサゴガンギエイとされていた種は新種R.(Okamejei) boesemaniであることが明らかとなった.北西太平洋産オカメエイ亜属R.(Okamejei) の中でこの種は, 尖った吻, 長いprocaudalおよびpost-dorsal length, 広いinterdorsal distance, 体盤上の黒色粒状斑点, 縦扁したscapulocoracoidを持つことなどで, キテンカスベ (新称) R.(O.) hollandi Jordan et Richardsonに極めてよく似ていて, Ui (1929) 以来両種は混同されてきた。しかしイサゴガンギエイはキテンカスベと, ややせまいinterdorsal distance, 黒色粒状斑点が集合したrosette-like patches, 胸びれ腋部の1対の黒色ring, 前側方突起が長く延長するatr 1 clasper cartilage, scapulocoracoidに円形のanterior fenestraを持つことなどで区別される.
    Raja porosa Güther, R. fusca Garman, R. japonica Nyström, R. tobae Tanaka, R. katsukii Tanaka, R. meerdervoortii sensu Jordan and Fowler (1903) はいずれもR.(O.) kenojei Müer et Henleのjunior synonymであることが判明したので, コモンカスベの学名はR.(O.) kenojeiとなる。Raja (O.) meerdervoortii Bleekerはvalidな種で, メダマカスベR. macrophtholma Ishiyamaのsenior synonymであることが明らかと。なったガンギエイRaja kenojei sensu Okada et al.(1935) はR.(Dipturus) kwang-tungensis Zhuのjunior synonymと判明した。以上のことからIshiyama (1967) が記載したテングエイ亜属R.(Dipturus) 4, オカメエイ亜属R.(Okamejei) 7, 計11種の内5種は学名が変更される.本論文の1新種を加えて北西太平洋には, テングエイ亜属5, オカメエイ亜属6, 計11種のガンギエイ属魚類が分布することになった.この11種に北東太平洋産テングエイ亜属の2種, R.(D.) binoculata GirardとR.(D.) rhina Jordan et Gilbertを加えた13種の検索表を作成した.
  • 中坊 徹次, 田 祥麟, 李 思忠
    1987 年 34 巻 3 号 p. 286-290
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    黄海の韓国・中国沿岸の浅海域から得られたネズッポ科ネズッポ属魚類の1新種Repomucenus koreanus (新韓国名: Ch'am-Tot-Yangtae;新中国名Chao-xian-xian, 朝鮮鮨行) を記載した.本種は前鰓蓋骨と頭部側線系において, 日本産ネズッポ属のハタタテヌメリR. valencienneiとヌメリゴチR. lunatusによく似ており, それら両種と近縁であるが, 以下の形態的特徴で区別される.1) 背鰭は4棘10軟条, 臀鰭は10軟条, 2) 脊椎骨数は7 (腹椎) +15 (尾椎), 3) 雌雄ともに第1背鰭は小さく, 背鰭棘は糸条にのびない, 4) 第1背鰭は雄では全体に淡暗色で各鰭膜中部に白色の長円形の斑紋があり, 雌では前半部が透明で後半部が黒褐色, 5) 成熟した雄の体側中部には1本の暗褐色縦線がある.本種は黄海沿岸からしか採集されていず, 黄海固有種と思われる.
  • 深尾 隆三
    1987 年 34 巻 3 号 p. 291-308
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    和歌山県白浜で採集された従来コケギンポNeoclinus bryope1種と考えられていた魚類を検討したところ3種に分けられることが判明した.これら3種は形態学的には主として2つの数量形質 (脊椎骨数と頭部管器の開孔数) の組み合わせにより区別される.そこで, 白浜産の標本に基づき, 真のコケギンポの再記載と2新種, アライソコケギンポNeoclinus okazakiiとシズミイソコケギンポNeoclinus chihiroeの記載を行なった.
  • 深尾 隆三, 岡崎 登志夫
    1987 年 34 巻 3 号 p. 309-323
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    和歌山県白浜町, 京大瀬戸臨海実験所周辺の磯に生息するコケギンポ属5種の遺伝的分化及び異同について, アイソザイムにより検討した。その結果, 同所的に分布するこれら5種間では遺伝子の交換が生じていないことが確認され, それぞれは独立種として分化を遂げていることが判明した.さらに, これらは遺伝的な類縁関係からは2群に大別された.すなわち, 1群はコケギンポ, シズミイソコケギンポ及びアライソコケギンポからなり, 他の1群はイワアナコケギンポとトーシマコケギンポからなっており, これらの結果は形態学的なグループ分けとよく一致するものであった.また, これら5種の生息場所について観察した結果, 前者の群内では不完全な棲み分けがみられ, 後者の群内では比較的厳密な棲み分けが認められた.一方, 群間ではシズミイソコケギンポとイワアナコケギンポ及びアライソコケギンポとトーシマコケギンポの主生息場所が重複し, それぞれより穴居性の生活に特化したと考えられるイワアナコケギンポとトーシマコケギンポが優占的であった.この生息場所についての知見と遺伝的距離から推定された分化年代に基づき, これら5種の種分化について考察を加えた.
  • 赤崎 正人, 岩槻 幸雄
    1987 年 34 巻 3 号 p. 324-333
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    従来, フエダイ科のハマダイ亜科に属するヒメダイ属 (Pristipomoides) とシマチビキ属 (Tropidinius) にっいては, 両者を区別する属特有の形質が不明瞭である上に, 混同される場合もあった.そこで, シマチビキ属とされていた2種を含む両属のインド西部太平洋産の8種と西部大西洋産の3種の計11種について内外諸形質を比較し, さらに, ハマダイ亜科の他の4属の諸形質とも比較し属の再検討を行った.その結果, ヒメダイ属以外では, 集合した6枚以上の小鱗が体側の最前部の鱗と離れて両側の擬鎖骨後上部に存在するが, ヒメダィ属とシマチビキ属には存在しないことがわかった.又, ヒメダイ属とシマチビキ属を明瞭に区別できる属レベルの相違は認められなかった.このことから両属を合わせてヒメダイ属の1属とするのが妥当と考えられる.さらに, ヒメダイ属は背鰭と臀鰭の最後の軟条の伸び率, 下尾骨の癒合状態及び第1番目の臀鰭担鰭骨の形状などにより2グループに分かれ, これらの違いは亜属レベルと考えられたため, 著者らは本属をヒメダイ亜属とシマチビキ亜属の2亜属に細分した.シマチビキ属とされていたインド西部太平洋産の2種とヒメダイ属とされていた西部大西洋産の3種はシマチビキ亜属に統一され, インド西部太平洋産の他の6種はヒメダイ亜属に含まれる.ヒメダイ属の属名はPristipomoides Bleeker, 1852が有効であり, シマチ
  • 斉藤 憲治, 相澤 裕幸
    1987 年 34 巻 3 号 p. 334-345
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    スジシマドジョウの7地方種族 (大型・ビワ小型・淀小型・小型・東海小型・点小型・中型の各種族) の形態を比較した.7種族はそれぞれ独自の分布域を持ち, 形態的に大きく分化していた.2種族が同所的にみられた3つのケースでは, 雑種個体はほとんど見られなかった.したがって, 従来スジシマドジョウと呼ばれてきたものは3つの種からなる種群であると考えられる.ただし, ヨーロッパのCobitis taeniaに対する日本産集団の分類学的位置づけが不明確なため, 命名の問題は今後に残された.今回調べた種の形態的分化の程度を検討すると, 種内変異の方が種間変異より大きい例がみられた.
  • 木村 清志, 津本 欣吾, 森 浩一郎
    1987 年 34 巻 3 号 p. 346-350
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    水槽内で自然産卵させたアサヒアナハゼ卵を飼育し, 卵内発生および孵化仔魚から若魚までの外部形態の形成過程を観察した.本種は体内受精を行い, 卵は産出直前に受精する.卵は球形の沈性凝集卵で, 卵径1.60-1.98mm, 卵黄は淡黄色から淡緑黄色を呈し, 多数の油球が存在する.水温約16℃で受精13-15日後に孵化する.孵化仔魚は全長6.3-7.1mm, 黄色素胞はない.全長約7.5mmで卵黄が完全に吸収される.脊索末端の屈曲は全長約10mmで開始し, 約14mmで終了する.全長16mm以上になると, 各鰭条数が定数に達し, 稚魚になる.側線は全長37mm以上で完成する.
  • 中村 直志, 池田 弥生, 小比賀 正敬
    1987 年 34 巻 3 号 p. 351-360
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    カダヤシ鱗黒色素胞の色素穎粒移動および微小管の役割について考察した.色素顆粒凝集速度は反応初期の10-20秒間が最大で, その後は急激に減少した.一方拡散はほぼ等速移動であり, 速度は色素顆粒凝集に比較して小さかった.また凝集においては突起の細い部分で速く, 太い部分で遅かったが, 拡散においては突起の太さにかかわらずほぼ一定であった.色素顆粒凝集に伴って突起の扁平化が起こるが, それに付随して細胞膜を裏打ちする微小管 (CMT) も減少した.一方拡散においては, 色素顆粒移動に先行して突起中への細胞質基質の流動が起こり元の形態を回復することが認められた.さらに低温処理による微小管の消失は, 細胞膜と色素顆粒間の距離を有意に短縮した.このようにCMTは色素顆粒移動を円滑にするための構造的役割を担っていると考えられる.また数種の代謝阻害剤の実験結果から, 色素顆粒凝集はダイニン依存性であることが示唆されたが, 色素顆粒拡散はチューブリンーダイニン系あるいはアクチンーミオシン系の何れにも非依存性であることが示唆された.
  • 日高 敏隆, 高橋 さち子
    1987 年 34 巻 3 号 p. 361-367
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    日高敏隆・高橋さち子琵琶湖産ヨシノボリ (橙色型) の成熟の開始は, 自然条件下では個体によってまちまちであるが, 雌では3月から卵黄形成を開始するものが見られる.雄では早いものでは12月ごろから成熟分裂を行っているものがあるが, 多くは3月ごろから成熟を始める.6月には多くの産着卵と保育中の雄が観察された.異なる水温と日長を組みあわせた実験によると, 雌では高温長目条件下でのみ卵黄形成が始まり, 1-2か月で産卵に至る.雄では低温あるいは短日の下でも成熟分裂を行うものがあるが, 高温長目条件で精子形成が促進される.雌の成熟に必要な水温と日長の最低値は9℃, 12時間前後であると思われる.
  • Ken-ichi Yamamoto
    1987 年 34 巻 3 号 p. 368-372
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Parameters on gas exchange in the gills were measured in eel acclimated for more than 2 weeks at 9.1±0.1, 25.8±0.6 and 33.5±0.2°C under normoxic and hypoxic condi-tions. Under normoxic condition, oxygen pressure of the dorsal aortic blood (Pa, o2) in-creased and pH of the blood (pHa) decreased as the temperature increased. Under hypoxic condition, pHa increased gradually, and Pa, o2 and oxygen content of the blood (Ca, o2) de-creased as the oxygen pressure of the water decreased. Under normoxic and hypoxic con-ditions, Ca, o2 at 25.8°C was the same as that at 9.1°C, but Ca, o2 at 33.5°C was smaller than that at both temperature. High Pa, o2 at high temperature must be a compensation for the detrimental effects of low pH and high temperature on the oxygen transport by the blood.
  • Kunio Sasaki, Teruya Uyeno
    1987 年 34 巻 3 号 p. 373-376
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • M. McDowall, 仲谷 一宏
    1987 年 34 巻 3 号 p. 377-383
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    以前には分布が確認されていなかったチリ南部からAplochitonidaeのAplochiton zebra Jenynsと.A. taeniatus Jenynsの2種を報告する.本研究に用いられた最大の標本は以前に知られていた最大の個体 (両種ともに240mmLCF) よりはるかに大きく, A.zebraで304mmLCF, A.taeniatusで384mmLCFであった.魚体の大きさ, 海に極めて近い所からとれていること, 脊椎骨数が多いことなどから彼らは両側回遊型のライフサイクルをもっているものと考えられる.
  • 高田 啓介, 後藤 晃, 山崎 文雄
    1987 年 34 巻 3 号 p. 384-386
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    雄物川水系平鹿の小さな池に同所的に生息しているイバラトミヨとトミヨの生殖的隔離の有無をアイソザイムを用いて調査した.鱗板形態から区分されたイバラトミヨとトミヨの集団問には, 13遺伝子座中の1遺伝子座で対立遺伝子の置換が認められた.また, イバラトミヨに区分された集団 (40個体) の中には, そのアイソザイム・パタンからトミョとの雑種と推定される2個体が検出された.この2個体をイバラトミヨから除くと, 両集団問には5遺伝子座で対立遺伝子の置換が存在することになる.従って, この池のイバラトミヨとトミョには, かなり厳密な生殖的隔離が存在すると考えられた.また, 雑種個体の出現頻度が低く, それらがF1雑種ではなくそれ以降の世代の雑種個体であったことから, 両集団問には, 交配前の隔離機構だけでなく, 交配後の隔離機構として雑種崩壊も機能している可能性が示唆された.
  • 猿渡 敏郎, 別井 一栄, 沖山 宗雄
    1987 年 34 巻 3 号 p. 387-392
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    14尾のクチバシカジカ仔稚魚 (7.8mm NL-11.5mmSL) が1986年3月11日, 茨城県久慈川河口にて行われたサケ稚魚調査の採集物中から発見された.今回の出現時期が, 東部太平洋岸に於て報告されている本種に関する知見と良く一致する事と, 出現水域が現在知られている本種の日本沿岸に於ける分布域の中央に位置することから, クチバシカジカは我が国沿岸においても繁殖していることが判明した.茨城県下では, 幼期に砕波帯に出現するイシカワシラウオが本種と共通する分布様式を示すことが推定された.
  • 谷内 透, 柳沢 践夫
    1987 年 34 巻 3 号 p. 393-395
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    和歌山県那智勝浦町宇久井沖の定置網で第2背鰭を欠くオオテンジクザメの白子が採集された.この標本は全長2, 904mmの成熟した雄で, 過去に知られている成熟した板鰓類の白子のなかでは最大の大きさであった.また, 本報告以外にも第2背鰭を欠くオオテンジクザメの出現が3例報告されていることから, 第2背鰭の欠除は本種では比較的容易に生じるものと推察される.
  • Wichian Magtoon, Thawat Donsakul
    1987 年 34 巻 3 号 p. 396-398
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    タイ国産ナマズ目Pangasiidae科に属する2種, Pangasius sutchiP. larnaudiiの染色体を観察した.P.sutchiの核型は, 10対の中部着糸染色体, 6対の次中部着糸染色体, 2対の次端部着糸染色体, 12対の端部着糸染色体よりなる.P. larnaudiiの核型は12対の中部着糸染色体, 10対の次中部着糸染色体, 2対の次端部着糸染色体, 6対の端部着糸色体よりなる.各染色体の相対長の測定結果から, 両種の核型のちがいは, 12本の端部着糸染色体の挾動原体逆位によることが推定された.
feedback
Top