ナマズ科魚類はユーラシア大陸に広く分布するが, これまでに知られている9属のうち, ナマズ属
Silumsは, 特に分布が広い.本属については分布が広いため標本の入手が容易でないこともあり, 系統分類学的な研究はまだなされておらず, 属の再検討を行ったHaig (1950) と中国産の種の再検討を行ったChen (1977) の研究があるにすぎない.したがって本属にはこれまでに何種が記載されているかも明確ではなかった.また, 本属は下顎の髪の数によって
Silums属と
Parasilums属に分けられていたが, Haig (1950) およびChen (1977) はいくっかの種で下顎の髪の数には種内変異が認められ, 属の特徴とするに値しないことを指摘している.本研究では, 1新種を含む17種を有効な種と認め,
S. bedfordi Reganは
S. asotus Linnaeusの同物異名とし, S. goae HaigはOmpok属とした.また, 新種S. torrentisを記載した.これら17種の外部形態を, 12種については解剖学的にも比較し, 分岐分類法によって系統関係を推定した.その結果, 本属を
Silurusと
Parasilumsに分けるのは妥当ではなく,
Pamsilurusは前者の同物異名であると認めた.さらにいくつかの形態的特徴により, 本属は大きく2っの種群に分けられることがわかり,
cochinchinensis種群,
glanis種群と名づけた.
cochinchimnsis種群は
glanis種群の稚魚的な特徴を維持していた.これら2っの種群は, 例外はあるものの, 分布からもその有効性が確かめられた.これら2っの種群は属に相当するとも考えられるが, 今後ナマズ科の他の属との比較を行った上で検討すべきであろう.
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