魚類学雑誌
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37 巻, 1 号
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  • 町田 吉彦, 塩垣 優
    1990 年 37 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    青森県沿岸の水深60m以浅で採集された10個体に基づき, ウミヘビ科ミミズアナゴ属の新種Muraenichthys borealisキタノウミヘビを記載した.本種は背鰭始部が肛門より後方に位置し, その距離は頭長より短かいこと, 尾部は全長の半分より僅かに長いこと, 眼の後縁は口裂後端より僅か前方に位置すること, 全長は体高の36-63倍であること, 頭長は眼径の13-17倍であること, 総脊椎骨数が131-137個であることでM.gymnotusミミズアナゴに似る.しかしながら, 本種はミミズアナゴとは吻下面正中線上に前方に伸びる明瞭な裂溝があること (後者にはない), 前鋤骨歯が2列をなすこと (後者では1列) で容易に区別できる.本種は同属の他種に比べより北方に産するので, それにちなんだ種小名と和名を与えた.丸山 (1971) によりダイナンウミヘビとして岩手県から報告された種は本種と思われる.
  • Nikolay V. Parin, Yuri I. Sazonov
    1990 年 37 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    南太平洋東部のSala y Gomez海嶺 (25°10'S, 90°19'W, 545-600m) で採集された1個体に基づき, チゴダラ科イトヒキダラ属の新種Laemonema yuvtoを記載した.本種は体形ではL.robustumL.filodorsaleに似る.しかしながら, 両種とは第1背鰭の第2鰭条が糸状に延長しないこと, 第2背鰭と臀鰭の鰭条が多いことで区別される.さらに, 前者とは腹鰭が短いこと, 主上顎骨が短いことで, 後者とは腹鰭が長いこと, 側線上横列鱗数が少ないこと, 吻部有鱗域が狭いこと, 口腔が着色していないこと, 両顎に肥大した歯がないことでも区別される.
  • 谷内 透, 石原 元
    1990 年 37 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    淡水産エイ類の内, アカエイ属Dasyatis (アカエイ科) に属するD. garouaensisと, Paratrygonに属するP. aiereba, Potamotrygonに属するP. motoroP. orbignyi (いずれもポタモトリゴン科) の交接器の相違点を明らかにする目的で比較検討を行った.交接器を構成する軟骨の名称については, 混乱が多いので正確に定義を行った.これら4種の交接器の観察結果に, 他の淡水産エイ類の2種オトメエイ属のHimantura signifer (アカエイ科) とPlesiotrygonに属するP. iwamae (ポタモトリゴン科) の交接器に関する文献資料を加え, これら2科5属の淡水産エイ類の類縁開係を交接器の形態から考察した.その結果, 属間のみならず科間でも交接器の構造に際だった差異は認められなかった.サカタザメ科, ウチワザメ科, ガンギェイ科 (ガンギエイ目) では交接器が相違することに比較すると, これら2科 (トビエイ目) の類縁関係を考究するのに交接器は不向きであることが明らかとなった.
  • 酒井 治己
    1990 年 37 巻 1 号 p. 17-28
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ウグイ仔魚 (艀化から稚魚に変態するまで) の発育を記載し, 形態と機能および行動の発達という観点から, それを6段階に区分した.仔魚の発育は, 大まかに摂餌および遊泳に関した二っの機能の発達からなると把握され, しかも各々の発達の始まりは, 必ずしも一致していなかった.そうした発育を, 繁殖および仔魚の生活様式の異なる近縁種間で比較すると, それらの発育様式の違いは, たとえば, 摂餌に関した発育や, 場合によっては卵黄量のみを変更することによって達成されているように思われた.それゆえ, 発育のあり方, すなわち一連の発育段階区分は, 繁殖様式によって異なりうる.すなわち, 沈積物付着型産卵魚のAbramisや植物付着型産卵魚のCazassiusなどでは, 脊索末端の上屈前に摂餌に関する機能を発達させ, 卵黄を消費して摂餌を開始する.一方, 無脊稚動物隠ぺい魚のRhodeusでは, 摂餌に関する形態は, ウグイの場合と同様に脊索末端の上屈後に発達するものの, 稚魚に変態するまで卵黄を保持し, 二枚貝から浮出するまで摂餌を開始しない.それに対して, 底生幼生型岩・礫底産卵魚のウグイ仔魚の発育は, 脊索末端の上屈後まで卵黄を保持し, そのときまでに摂餌を開始することに特徴づけられる.このことは, 本種が卵を砂利中に産み込むという繁殖様式と, 早春に贈化する仔魚にとっての餌の得難さに深く関係していると思われる.
  • 木村 清志, 塚本 洋一
    1990 年 37 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    水槽内で自然産出させたムギイワシ卵を飼育し, 卵および艀化仔魚から若魚までの外部形態の形成過程を観察した.卵は直径0.90-1.05mmの球形で, 卵膜の両極に40-55本のてん絡糸を有する.孵化仔魚の脊索長は3.95-4.70mm.7.0-7.5mmで脊索の屈曲が始まる.標準体長10.7-11.5mmで鰭条総数が定数に達し, 18.5-20mmで体はほぼ完全に被鱗される.本種の仔魚は側中線上の黒色素胞が点状であることや脊索後端部の背腹両面に数個の黒色素胞が存在することなどの特徴によって, ギンイソイワシやトウゴロウイワシの仔魚と区別できる.
  • 日置 勝三, 鈴木 克美, 田中 洋一
    1990 年 37 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    水槽飼育されたアカハラヤッコCentropyge ferrugatusに産卵が観察された.親魚は雌雄各1尾 (雄全長78.0mm;雌全長66.0mm) で1987年4月26日-5月16日の間に16回 (1日1回) の産卵が観察された.繁殖期間中の飼育水温は25.0-27.0℃であった.受精卵は油球1個を有する無色透明の球形分離浮性卵で卵径0.67-0.70mm, 油球径0.16-0.17mm.卵膜腔は狭く卵膜および卵黄表面に特殊な構造はない.水温25.0-26.0℃で受精16時間10分後に最初の孵化が認められた.孵化直後の仔魚は全長1.28-1.30mm, 卵黄が大きくその先端は吻部より前方に突出する.油球は卵黄の後端に位置し, その後半は卵黄嚢外に突出する.肛門は卵黄後縁に接して位置する.黒色素胞が頭部から尾部の体背面に多数, 油球表面に6-7個, 卵黄前端上縁部に1-2個認められる.孵化5日後の後期仔魚まで飼育され記載することができた.本種の孵化直後から5日後までの仔魚の形状は同属のレンテンヤッコと良く似る.孵化直後の仔魚について既知のキンチャクダイ科のタテジマヤッコ, キンチャクダイ両属と比べると本種の仔魚では卵黄の形が丸みを帯びている.しかし, その他の形質には, 科内各種相互の共通点が少なくなかった.
  • Maria R. Menezes, 谷口 順彦, 関 伸吾
    1990 年 37 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    日本産ニベ科魚類, ニベ (Nibea mitsukurii), コイチ (N.albi-flora), およびシログチ (Pennahia argentata) の3種の種内集団間の遺伝的分化と変異性について調べた.遺伝的変異性はニベで比較的高かった.有明海と瀬戸内海・東シナ海のコイチ間および土佐湾と渥美湾のニベ間の遺伝的距離 (D) はそれぞれ0.0092, 0.0067であり, それらは独立した集団と考えられた.瀬戸内海と東シナ海のコイチ間 (D=0.0010) およびシログチ集団内の遺伝的分化は小さかっお.遺伝的距離と地理的距離の関係は, シログチにおいて正の相関が認められた.種内の地方集団間の遺伝的分化の程度の差が魚種によって異なることにういて, 生態的特性における魚種間差に関連づけて考察した.
  • 齊藤 節雄
    1990 年 37 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    キンギョとティラピアの内耳におけるミトコンドリアに富む細胞の分布と微細構造を, 光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察した.この細胞は両種ともに, 三半規管の膨大部, 通のう及び小のうに密集して存在していた.また, キンギョの横行管及びティラピァの壺においても認められた.しかし, キンギョの壺には観察されなかった.微細構造上の特徴としては, 細胞質は核以外ほとんどがミトコンドリアとそれを取り巻く滑面小胞体で占められ, 細胞基底部の下の結合組織中には内皮に小孔を有する毛細血管が多数存在していた.これらの形態的特徴から, ミトコンドリァに富む細胞は, おそらく内リンパ液のイオン調節に関与していると考えられる.
  • Tapan K. Ghosh, Gopal K. Kunwar, Jyoti S.D. Munshi
    1990 年 37 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    空気呼吸をするヒレナマズ科のClarias batrachusの両式 (水呼吸及び空気呼吸) 酸素摂取量に, 明らかな日周変化が認められた.総酸素摂取量は明け方 (04-06時) に最大 (222±20mlO2・kg-1・h-1) となり, 日中 (12-14時) に最小 (64±5mlO2・kg-1・h-1) となった.本種の代謝量の日周的な変動は, その生息する池沼水中の溶存酸素及び遊離二酸化炭素の日周変動と関係しているように思われる.
  • 中野 秀樹, 田淵 誠
    1990 年 37 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1980年から1985年の6年間に, 大目流し網, サケマス流し網, イカ流し網をそれぞれ使用した調査合計293地点のうち43地点で合計103尾のダルマザメIsistius brasiliensisを採集した.これらは北緯23度から北緯38度30分, 東経146度から西経131度に及ぶ広い海域で夜間に表層で採集された.この海域はこれまでダルマザメが報告されている海域よりさらに北方である.測定した雌の全長は337から520mmであり, 雄は368から418mmであった.雌の卵巣重量は全長460mm以上で急激に増加し子宮内に卵を持つ個体が出現した.子宮内卵は両子宮あわせて合計6-12個で最大卵径22mmであった.雄は解剖した15個体中9個体に精液が観察された.採集地点の水温は18°から26℃までであった.
  • 町田 吉彦, 尼岡 邦夫
    1990 年 37 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    アシロ科タライタチウオ属のPorogadus milesは大西洋両岸に広く分布し, 近年はインド洋からも報告されている.日本からはAmaoka (l983) がPorogadus sp.として本種を発表したが, その後さらに4個体が日本近海で採集されていることが判明した.これらをP, milesの完模式標本を含む西部大西洋産の標本と直接比較し, インド洋産の標本との比較を文献に基づいて行った.その結果, 本種が日本近海のl, 500-4, 000mの深海底に生息することを確認した.本種にその強い頭部棘に由来する新和名コワトゲタライタチウオを提唱する.日本産の標本は眼径及び頭部と体部の色彩が大西洋産の標本とは異なるが, インド洋産の標本とは前者が重複し, 後者もより似ている.計数形質では, 背鰭と啓鰭の鰭条数にかなりの変異が認められているものの, 3地域の数値に明瞭な差はない.本種の頭部棘を詳細に検討し, 涙骨の前方上縁部に強い数本の棘を認めた.本種と同様に強い頭部棘をもつP. nudusはこの骨に棘が無いことから, この棘は本種の新たな標徴形質と考えられる.
  • 片山 正夫, 益田 一
    1990 年 37 巻 1 号 p. 69-70
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    伊豆半島大瀬崎沖よりミナミハナダイ (新称) Luzonichthys waieei (Fowler) の雌雄が採集された.本種は我国からは初記録である.ミナミハナダイ属 (新称) Luzonichthysは背鰭が2基に分かれているので近縁のハナダイ属Pseudanthiasと区別される.
  • 朝日田 卓, 井田 齊
    1990 年 37 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    日本産エイ類, ヤマトシビレエイTorpedo tokionisとホシエイDasyatis matsubaraiの核型を, 簡易組織培養法を用いて分析した.またホシエイとカラスエイDasyatis violaceaのDNA量を, 顕微分光濃度を用いて測定した.ヤマトシビレエイの核型は2n-86で, すべての染色体が端部着糸型であった.ホシエイでは2n=64, 中部-次中部着糸型染色体 (M-SM) =40, 次端部-端部着糸型染色体 (ST-A) =24, 腕数 (FN) =104であり, DNA量は9.5pg/cellであった.またカラスエイのDNA量は9.6pg/cellであった.核型とDNA量の検討の結果, ヤマトシビレエイの核型は同属の基本核型に近いものと考えられた.シビレエイ類の倍数性進化については, その機構についてより詳しい研究が必要であると判断された.またホシエイはその核型の特徴から, アカエイ科魚類の中では特化した種であると判断された.
  • 高畑 悟郎
    1990 年 37 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    メダカの腸管壁において, substance P免疫反応陽性の内分泌細胞と神経線維を, 光顕的に観察した.substance P免疫反応陽性の内分泌細胞は, 粘膜上皮の吸収上皮細胞の間に散在していて, 腸の全域を通じて観察された.腸の前部, 中部, 後部の間における分布状態に差異は認められなかった.細胞の形態的特徴は, すでに報告されている他の硬骨魚種のsubstance P免疫反応陽性細胞と類似していた.substance P免疫反応陽性神経線維は, おもに筋間神経叢に分布しているが, 内輪筋層や, 縦走筋層内にも観察された.substance P免疫反応陽性神経線維は, 小さな点状のvaricosityを持ち, 筋間神経叢では, ゆるい網目を形成していた.
  • 山岡 耕作
    1990 年 37 巻 1 号 p. 80-82
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    タンガニーカ湖に固有な付着藻類食性カワスズメ科魚類Asprotilapia lepturaの摂食行動を記載した.成魚は摂食を行う岩面に約2mmまで接近し, 頭部腹面に位置する口を素早く連続的に突出し (平均突出回数6.2/秒) 岩面を打つ特徴的な摂食行動を示した.これを「pecking」と呼んだ.小型個体は, 摂食に際して連続突出回数が少なくなり, 単発の突出頻度が高くなる傾向を示した.
  • 1990 年 37 巻 1 号 p. 93
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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