ウグイ仔魚 (艀化から稚魚に変態するまで) の発育を記載し, 形態と機能および行動の発達という観点から, それを6段階に区分した.仔魚の発育は, 大まかに摂餌および遊泳に関した二っの機能の発達からなると把握され, しかも各々の発達の始まりは, 必ずしも一致していなかった.そうした発育を, 繁殖および仔魚の生活様式の異なる近縁種間で比較すると, それらの発育様式の違いは, たとえば, 摂餌に関した発育や, 場合によっては卵黄量のみを変更することによって達成されているように思われた.それゆえ, 発育のあり方, すなわち一連の発育段階区分は, 繁殖様式によって異なりうる.すなわち, 沈積物付着型産卵魚の
Abramisや植物付着型産卵魚の
Cazassiusなどでは, 脊索末端の上屈前に摂餌に関する機能を発達させ, 卵黄を消費して摂餌を開始する.一方, 無脊稚動物隠ぺい魚の
Rhodeusでは, 摂餌に関する形態は, ウグイの場合と同様に脊索末端の上屈後に発達するものの, 稚魚に変態するまで卵黄を保持し, 二枚貝から浮出するまで摂餌を開始しない.それに対して, 底生幼生型岩・礫底産卵魚のウグイ仔魚の発育は, 脊索末端の上屈後まで卵黄を保持し, そのときまでに摂餌を開始することに特徴づけられる.このことは, 本種が卵を砂利中に産み込むという繁殖様式と, 早春に贈化する仔魚にとっての餌の得難さに深く関係していると思われる.
抄録全体を表示