タイメダカ
Oryzias minutillusは, タイ, ミャンマー, および, 中国の雲南省に分布する.本種には核型の多型が知られており, 28本から42本の問で染色体数が変異する.本研究では, タイメダカの地理的分布に沿った遺伝的分化の程度と核型多型との関係を明らかにするために, タイ各地から11個体群を採集し, 酵素多型を用いて集団遺伝学的解析を行った.
調査された24遺伝子座のうち, Est, Pgm, Gpi-3, およびMeの4遺伝子座において, タイメダカは地域に特有な対立遺伝子を有していた.この4遺伝子座の対立遺伝子の特徴と24遺伝子座に基づくデンドログラムから, 調査した11個体群は, マレー半島部の半島集団, チャオプラヤ川水系を中心にしたチャオプラヤ集団, そして, メコン川水系に属するメコン集団の3っの遺伝的集団から構成されていることが明らかになった.3つの集団の分布域は大河川流域あるいは地峡部に形成されており, これらの遺伝的集団は, 山脈等の地形的要因により遺伝的交流が妨げられた結果形成されたと推測される.
3っの遺伝的集団と報告されている核型を比較すると, 半島集団とメコン集団はいずれも, 腕数が42, NORsが端部染色体に位置することで特徴づけられるbasic typeの核型を有しており, 染色体数にも変異はなかった.一方, チャオプラヤ集団は腕数が44, NORsは次中部型染色体にあることで特徴づけられるevolvedtypeの核型から構成され, 染色体数も42本から28本の間で変異していた.このことは, 3っの遺伝的集団が分化した後に, チャオプラヤ集団内だけで核型の多型が生じたことを示唆している.
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