動物の単位体重当り酸素消費量 (M/W) は, 体重 (W) の増大に伴って低下し, 魚類では一般にW
-0.15に比例して低下する.この現象は過去150年以上に亘って論議されてきた生物学上の古典的話題であるが, その理由については未だに明らかでない.
我々は, 体の大きさの増大に伴い, 代謝活性の高い組織の体重に占める重量比が低下し, 反対に代謝活性の低い組織の体重に占める重量比が上昇して, その結果この現象を生ずるのではないかと考えた.そしてこの仮説が定性的にも定量的にも妥当することを, 淡水真骨魚のコイについて実証した.さらに海水真骨魚のマダイについても検証中であり, 本研究ではその一環として, 0.0033-1200gのマダイ
Pagrus majorにおける36通りの器官ないし部分の重量 (P, g) と体重 (W, g) の関係を, 相対成長式P=kw
5に基づいてしらべた.
脳, 消化管, 心臓など代謝活性の高い器官の相対成長は, 生活史の初期を除きnegative allometry (s<1) で, これらの器官の体重に占める割合は成長に伴って低下した.例えば脳の体重比は体重0.01g前後では約10%であったものが, それ以降体重の増大に伴って低下し, 1000gでは0.1%であった.これに対し, 主として代謝活性の著しく低い筋肉から構成されている躯幹部は, positive allometry (s>1) で, 体重に占める割合は成長に伴って35% (体重0.1g) から60% (体重1000g) まで増大した.これらの結果は, 上述の我々の仮説を, 定性的に支持するものである.
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