カレイ亜科魚類4種の魚卵の卵膜微細構造を走査型電了顕微鏡を用いて観察した.アカガレイ (
Hippoglossoides dubius) は囲卵腔の広い浮性卵を産み, 最も薄い卵膜を持ち, 層構造も単純であった.一方, マコガレイ (
Pleuronectes yokohamae) は囲卵腔の狭い沈性卵を産み, その卵膜は他のカレイ亜科魚類のものと比べて厚く, より複雑な層構造を呈していた.ムシガレイ (
Eopse-tta grigorjewi) とメイタガレイ (
Pleuronichthys cornutus) の卵は囲卵腔が狭く浮性であり, 卵膜が前2者の中間の厚さと層構造を示した.メイタガレイでは卵膜表面に, 直立した平板で形成された亀甲構造が観察された.今回調べたカレイ亜科魚類の卵は, これまで報告された他の魚種に比べ, 卵膜全体に分布する微孔の分布密度が小さく, その直径も人きいという共通の特徴を持っていた.卵膜の厚さ, その層構造および膜表面上の構造物は, 外圧からの保護, 浮上速度の調整といった機能により卵の生育環境と密接な関連を持ち, 一方, 微孔の密度や大きさは, これら魚種の属する分類群の特徴を示していると考えられる.
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