耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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30 巻, 1 号
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総説
  • ~樹状細胞と腫瘍細胞による融合細胞を用いた免疫療法を中心に~
    田中 康広
    2012 年 30 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    近年,樹状細胞を用いた悪性腫瘍に対する免疫療法は特に注目を集めており,腫瘍抗原特異的な抗腫瘍効果の誘導を目指した臨床試験が世界各国のさまざまな施設で行われてきた。樹状細胞は生体内において最も強力な抗原提示細胞であり,T細胞を中心とした免疫担当細胞を調節し,腫瘍特異的な免疫反応を誘導するうえで重要な存在だと言える。この樹状細胞を用いた免疫療法は1996年に悪性リンパ腫に対して初めて臨床試験が行われ,2010年4月にはホルモン療法抵抗性の転移性前立腺がんに対する樹状細胞療法(sipuleucel-T)の製造販売が初めてFDAにより認可された。
    これまでのところ樹状細胞を用いた抗腫瘍免疫療法は腫瘍抗原が明らかとなっているペプチドのパルス療法が主体となっており,その他腫瘍抗原自体やその溶解成分,またはRNAをトランスフェクトする方法なども行われてきた。これらの方法は腫瘍抗原の同定が必要であるが,腫瘍抗原が未だ同定されていないものも多く存在する。このような腫瘍に対しては腫瘍細胞と樹状細胞をポリエチレングリコールにて処理した融合細胞によるワクチンが有効と考えられる。本稿では現在までに筆者らが行ってきた樹状細胞と腫瘍細胞からなる融合細胞を用いた免疫療法とその抗腫瘍免疫の機序について概説し,頭頸部腫瘍に対する免疫療法の現状についても言及したい。
  • ―その最新の知見について―
    倉上 和也, 太田 伸男, 欠畑 誠治
    2012 年 30 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    IgG4関連疾患は,全身の諸臓器にCD4ないしCD8陽性Tリンパ球とIgG4陽性形質細胞が浸潤する全身性疾患であり,IgG4陽性細胞の浸潤は,唾液腺,甲状腺,膵臓,胆管,後腹膜などに認められることが多い。近年,自己免疫性膵炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症など,これまで独立して診断されてきた疾患が,新しい疾患概念であるIgG4関連疾患の一つの表現型である可能性が示唆されている。耳鼻咽喉科領域においては,ミクリッツ病やキュットナー腫瘍などの硬化性唾液腺炎やRiedel甲状腺炎などがIgG4関連疾患であるといわれている。IgG4関連疾患では,自己免疫性膵炎や硬化性胆管炎で発症する例も少なくないが,耳下腺,顎下腺,涙腺の腫脹が自覚症状として認識しやすいため,耳鼻咽喉科や眼科を最初に受診する例が多く存在する。また無痛性であるため,医療機関を受診していない例も相当数存在すると予想される。しかしながら,IgG4関連疾患は単独の病変にとどまらず,経過中に全身諸臓器に病変を生じることが知られており,注意が必要である。当科で経験した症例においても,その約半数に自己免疫性膵炎をはじめとした他臓器合併症を認め,他科との連携治療を行っている。IgG4関連疾患は,たとえ初診時の症状や所見が軽微なものであったとしても,詳細な全身検索と長期間の経過観察,また他科との密接な連携を要する疾患である。
第37回耳鼻咽喉科アレルギー懇話会 『鼻アレルギーの新たな知見』
  • 玉利 真由美, 冨田 かおり, 田中 翔太, 広田 朝光
    2012 年 30 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    アレルギー疾患は遺伝要因と環境要因とが複雑に関与して生じる炎症性疾患である。近年のHapMapプロジェクトによる情報基盤の整備,及び高速大量タイピング技術の確立により,大規模で信頼性の高いゲノムワイド症例対照関連解析(GWAS)が行なわれるようになってきた。アレルギーの分野でも遺伝要因が明らかとなってきている。その結果,疾患関連領域には,IL-33,その受容体であるIL1R1,TSLPなどの遺伝子が含まれる事が明らかとなった。これらはアレルギーの病態においてTh2免疫応答を誘導および活性化する自然免疫機構の重要性を示している。一方,関連領域にはIL18R,IL2RBなどのサイトカイン受容体,活性化した制御性T細胞の特異的マーカーであるLRRC32(GARP)も含まれていた。これらGWASの結果はアレルギー疾患における上皮バリアおよび免疫応答機構の重要性を示唆している。これまで,疫学や免疫研究により,呼吸器感染症,吸入抗原に含まれるプロテアーゼ,大気汚染による上皮傷害は気道アレルギー発症の誘因でもあり増悪要因にもなることが示されている。また,病原体成分や化学物質などのdanger signalsが自然免疫受容体により認識され,Th2免疫応答を活性化させる仕組みも明らかとなってきている。今後もゲノム医学,免疫学,臨床疫学により得られた見識はアレルギーの病態の理解を助け,予防法の確立やより良い治療法の確立に貢献すると思われる。
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