節外性NK/T細胞性リンパ腫,鼻型は成熟TおよびNK細胞リンパ腫の一病型である。鼻腔病変を特徴とする鼻NK/T細胞性リンパ腫と,鼻腔以外の節外臓器に発生する鼻型NK/T細胞性リンパ腫に分けられる。今回,我々は視力低下を初発症状とし,発症数か月後の当科初診時に眼窩内・副鼻腔に病変を認めたNK/T細胞性リンパ腫の症例を経験した。患者は74歳男性,右視力低下と眼瞼腫張が初発症状であった。当科受診時,右視力は光覚弁で左の視力低下も認められた。症状や画像所見より浸潤型真菌症等の鼻性眼窩内合併症も疑われ,診断および治療目的に緊急内視鏡下手術を施行した。副鼻腔からの生検で,節外性NK/T細胞性リンパ腫,鼻型と診断された。腫瘍細胞は両眼窩・右副鼻腔・髄液に認められ,Ann Arbor分類におけるStage IVBであった。放射線治療を施行し,副鼻腔・眼窩内の病変はほぼ消失したが視力は回復せず,全身状態は徐々に悪化した。当科受診の約3か月後に原病死した。本症例では眼窩内優位の病変を認めたため,腫瘍が眼窩内から発生した可能性も考えられた。進行したNK/T細胞性リンパ腫は予後不良といわれており早期診断が求められるが,腫瘍細胞の壊死傾向がみられるため複数個所からの生検や病理医への免疫染色の依頼が重要である。今回の症例を提示するとともに,若干の文献的考察を加え,報告する。
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