耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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36 巻, 1 号
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原著
  • 饒波 正史, 喜友名 朝則, 喜瀬 乗基, 杉田 早知子, 近藤 俊輔, 又吉 宣, 真栄田 裕行, 我那覇 章, 古波蔵 健太郎, 鈴木 ...
    2018 年 36 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    IgA腎症に対し口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法を併用し6年以上の長期経過観察を実施しえた44症例を対象に,長期腎機能予後と遺残扁桃・ワルダイエル輪の代償性肥大・炎症所見について調査した。低・中リスク群では27例中26例で腎機能が保持されていた。一方,高・超高リスク群では,腎機能保持は8例,腎機能低下は8例(2例の末期腎不全・透析導入)となっていた。腎機能維持のためには腎機能が保たれている早期に口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス治療を行うことが重要と推定された。口蓋扁桃遺残は9%であった。アデノイド肥大は軽度が多いが,舌扁桃は19%に肥大を認めた。しかし,口蓋扁桃遺残,アデノイド肥大,舌扁桃肥大と腎機能予後には明らかな関係を認めなかった。炎症所見はアデノイドでは発赤,びらん,膿汁付着を陽性所見とし,舌扁桃では膿栓があるものを陽性所見とした。鼻咽腔ファイバー検査を実施できた42例中,23例は両方に炎症所見なし,5例で上咽頭のみ炎症所見あり,7例で舌扁桃のみ炎症所見あり,4例で上咽頭及び舌扁桃に炎症所見ありであった。透析に至った2例中1例では上咽頭に炎症所見を認めた。上咽頭,舌扁桃の炎症所見の有無と腎機能予後に明らかな関連を認めなかった。IgA腎症における口蓋扁桃摘出術後の長期予後と,上咽頭炎の関係を明らかにするためにさらなる調査が必要である。

  • 平野 隆, 門脇 嘉宣, 川野 利明, 森山 宗仁, 児玉 悟, 鈴木 正志
    2018 年 36 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    小児において無莢膜型インフルエンザ菌は滲出性中耳炎の主たる原因菌の一つであり,このインフルエンザ菌の外膜蛋白の成分の一つであるリポオリゴ糖はphase variationによりPhosphorylcholine(ChoP)をエピトープに発現することが知られている。このphase variationによるChoPの発現により細菌の気道粘膜上皮への定着や組織浸潤,宿主のリンパ球などの免疫応答の抑制や調整をすることが知られており,滲出性中耳炎の遷延化に関与することが示唆されている。今回,インフルエンザ菌由来外膜におけるChoPの表出と中耳ムチン,特にMUC5AC及びMUC5B産生への影響について検討した。ChoP陽性(+)及びChoP陰性(–)インフルエンザ菌外膜溶液を中耳腔に注入し,1,3,7日目に顕微鏡下に中耳洗浄液を採取し中耳洗浄液中のMUC5AC及びMUC5Bムチン濃度を測定した。ChoPの有無にかかわらず,インフルエンザ菌外膜により中耳粘膜に免疫応答を誘導し,中耳局所に炎症を誘導することが判明した。中耳貯留液中のMUC5AC濃度は中耳炎惹起後7日目に,MUC5B濃度は中耳炎惹起後3日目に,ChoP(+)群においてChoP(–)群と比較して明らかに亢進していた。インフルエンザ菌は,phase variationによりChoPを表出し,中耳炎惹起後早期にではなく,炎症後期において中耳粘膜における粘液産生遷延化に関与している可能性が示唆された。

総説
  • 長門 利純, 熊井 琢美, 高原 幹, 大栗 敬幸, 小林 博也, Celis Esteban, 原渕 保明
    2018 年 36 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    鼻性NK/T細胞リンパ腫は鼻腔や口蓋といった顔面正中部に生じるNKまたはγδT細胞由来のEBウイルス関連悪性リンパ腫である。病理組織学的に,腫瘍組織内にリンパ球や単球,マクロファージなどの炎症細胞浸潤が著明であるという特徴を有する。腫瘍細胞内に外来抗原であるEBウイルス由来蛋白を有し,腫瘍組織内にリンパ球浸潤が著しいにも関わらず,免疫系が腫瘍細胞を排除できないことから,本疾患は腫瘍免疫系を回避・抑制する複数のメカニズムを有していると思われる。我々は本疾患に対して,エピトープペプチドを用いて腫瘍抗原特異的CD4陽性ヘルパーT細胞を賦活化するペプチド免疫療法の基礎的研究を続けてきた。EBウイルス関連腫瘍である本疾患では,非自己であるEBウイルス由来蛋白はペプチド免疫療法の有力な標的候補となり得る。本稿では,我々の今までの研究の中から,EBウイルス由来蛋白LMP1のpromiscuousヘルパーT細胞エピトープ同定に関する研究を紹介する。また,本疾患に対して,エピトープペプチドにToll様受容体リガンドをアジュバントとして組み合わせた免疫療法の可能性や,抗programmed death-1/programmed death-ligand 1抗体の併用治療に関して,我々の研究結果を中心に概説する。

  • 長田 年弘
    2018 年 36 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    ヒノキ花粉症はスギ花粉症と並び,我が国における代表的な季節性アレルギー疾患であり,その患者数は増え続けている。唯一,長期寛解や根治が期待されるスギ花粉症の治療法の一つに,アレルゲン特異的免疫療法がある。理論的にはアレルゲンの共通抗原性により,スギ花粉症に対するアレルゲン特異的免疫療法によりヒノキ花粉症への治療効果が期待される。しかしながらスギ花粉症に対するスギアレルゲン特異的免疫療法はヒノキ花粉飛散期のアレルギー症状抑制効果が弱いことが報告されており,ヒノキ花粉に特異的な未知アレルゲンの存在が示唆されていた。我々は,ヒノキ花粉中のメジャー蛋白質を解析した結果,新規ヒノキ花粉主要アレルゲンCha o 3を同定した。ヒノキ花粉に対するImmunoCAPスコア2以上のスギ・ヒノキ花粉症患者の87.5%がCha o 3特異的IgEを有していたことに加え,Cha o 3特異的IgE抗体価は既知ヒノキ花粉主要アレルゲンCha o 1以上にImmunoCAP検査値と強い正の相関が認められ,臨床検査値に強く影響していることが示唆された。さらに,スギアレルゲン特異的免疫療法はCha o 3特異的IL-5産生を十分に抑制できないことが示され,Cha o 3がスギ標準化エキスを用いたアレルゲン皮下免疫療法の薬効がヒノキ花粉飛散期に減弱する原因の一つであると考えられた。以上の新規知見より,スギ・ヒノキ花粉症シーズンを通したアレルギー症状のコントロールのためには,従来のスギアレルゲンを用いた免疫療法に加え,ヒノキアレルゲン特異的免疫療法の開発が重要であると考えられる。

  • 洲崎 勲夫, 浅野 和仁, 水吉 朋美, 小林 一女
    2018 年 36 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    ペリオスチンは気管支喘息やアレルギー性鼻炎,慢性副鼻腔炎といった気道炎症性疾患の病変部において強く発現している事が報告されている細胞外マトリックスタンパク質の一種である。ペリオスチンは組織の線維化,好酸球遊走能や粘液分泌増強作用を有することから,気管支喘息や慢性副鼻腔炎をはじめとする気道炎症性疾患の発症や増悪化に寄与することが推察され,注目されている因子でもある。血清中ペリオスチン値が喘息患者において,アレルギー性炎症や好酸球性炎症を反映するバイオマーカーとしての有用性を持つ事が報告されて以来,アレルギー性炎症性疾患の発症や遷延化に寄与する因子として臨床研究が活発化している。本因子の産生に関しては線維芽細胞を対象にいくつかの検討が行われているものの,上皮細胞からのペリオスチンの産生・分泌機構やそのメカニズムについての報告は少ない。気道において上皮細胞,特に杯細胞がより多くのペリオスチンを産生し,気道の線維化やリモデリングの促進に寄与している可能性が示唆されている。また,その産生経路にはJAK/STAT6, MEK/ERK1/2の経路が関与している事が報告されている。本稿では,気道炎症性疾患におけるペリオスチンの役割や,上皮細胞における産生・分泌機構やメカニズムについてこれまでに報告されている事を中心に述べる。

  • 折田 頼尚
    2018 年 36 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    制御性T細胞(regulatory T cell, Treg)は自己反応性リンパ球の働きを抑制することによって体内の自己免疫寛容の維持に関わる。この免疫寛容の抑制システムは体内の恒常性維持には不可欠であるが,抗腫瘍免疫をも抑制し結果として腫瘍の増殖を促進すると考えられている。多くのがん種で,腫瘍内へのTregの浸潤は患者の生命予後を悪化させ,IL-10やTGF-βなどの効果をブロックしTregの機能を低下させると抗腫瘍効果が増強されると言われている。しかしながら,腫瘍微小環境はがんの種類,同一のがんでも進行の段階によって変化していくことが予想され,Tregが常に腫瘍の増殖を促進し続けるとは言い切れない。抗CTLA-4抗体にはTregの抑制効果もあることが知られており,現在既に使用されている抗PD-1抗体とともに頭頸部がんの新しい治療の選択肢となる可能性があるが,それらの薬剤がより効果的な症例の選択,症例ごとに最大限の効果が出る投与のタイミングの追求等が今後必要となってくると考えられる。

症例報告
  • 川島 佳代子, 大西 恵子, 山戸 章行
    2018 年 36 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    今回ダニ標準化エキスを用いた皮下免疫療法を施行した通年性アレルギー性鼻炎患者に対して有効性と安全性について検討した。施行患者は通常法6例,急速法7例であった。維持量は両群ともに300 JAUを目標に増量したが,局所反応が強く両群ともに維持量の減量を余儀なくされた。全身性副反応は,呼吸困難感を生じた一例のみであった。治療前と治療半年後との検討では,症状スコアでは水っぱな,鼻づまりで有意にスコアは低下し,薬物スコアにおいても有意にスコアは低下した。総括的状態(Face scale)においても治療半年後において改善がみられた。通常法と急速法においての有意な差は認めなかった。今回の検討でダニ標準化エキスによる皮下免疫療法は安全性が高く,有効であると考えられた。今後も投与スケジュールや有効かつ安全な維持量の推奨量の設定について検討が必要であると考えられた。

臨床ノート
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