産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
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11 巻, 1 号
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原著
  • 坂口 加奈, 前澤 誠希, 猪熊 壽
    原稿種別: 原著
    2020 年 11 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/06/19
    ジャーナル フリー

     持続性リンパ球増多症(Persistent lymphocytosis:PL)を呈する牛白血病ウイルス(Bovine leukemia virus:BLV)感染牛の末梢血B リンパ球のクローナリティーを,Inverse PCR およびマイクロチップ型電気泳動装置を用いて解析した.解析の結果,EBL 発症牛3 検体では全て単一のピークが認められ,陰性対照10 検体では一切ピークがみられなかったのに対し,PL 牛36 検体中5 検体では複数のピークが検出された.EBL 発症牛ではB リンパ球がモノクローナルに増殖し腫瘍化しているが,PL牛の中にはBリンパ球がオリゴクローナルに増殖し,既に腫瘍化していることが示唆された.

  • 松田 敬一, 森川 潤一, 前田 洋佑, 高橋 史昭
    原稿種別: 原著
    2020 年 11 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/06/19
    ジャーナル フリー

     子牛の暑熱ストレスを軽減するため,牛体を直接冷却することを目的として,牛用冷却ジャケットを作製し,その効果を調査した.調査1:暑熱環境下で飼育されていた2 週齢の黒毛和種子牛7 頭を供試し,着衣前,着衣30 分,1,2,3 および5 時間後に,体温,心拍数および呼吸数を測定しその推移を調査した.体温は,着衣前(39.5 ± 0.3℃)に比べ着衣30 分後(39.2 ± 0.3℃)で有意に低下し,着衣5 時間後(39.2 ± 0.1℃)まで有意な低値で推移した.心拍数および呼吸数も同様に着衣5 時間後まで有意な低値で推移した.調査2:暑熱環境下で飼育されていた2 週齢の黒毛和種子牛10 頭(着衣群5 頭,対照群5 頭)を供試し,着衣前および着衣1 時間後に採血および体温,心拍数,呼吸数の測定を行った.体温,心拍数および呼吸数は,着衣群の1 時間後が,着衣群の着衣前,対照群の着衣前および1 時間後に比べ有意に低い値を示した.血液検査では,コルチゾール濃度において着衣群の1 時間後が,着衣群の着衣前,対照群の着衣前および1 時間後に比べ有意に低い値を示した.結果より,牛用冷却ジャケットは体温を低下させ,その効果は5 時間程度継続すると考えられた.また,着衣群でコルチゾール濃度の低下が認められたことから,牛用冷却ジャケットは,暑熱環境下でのストレス軽減に効果的と考えられた.

症例報告
  • 三浦 麻里, 前田 洋佑, 鹿野 達也, 髙橋 史昭, 渡辺 大作
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 11 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/06/19
    ジャーナル フリー

     Pelger-Huët(ペルゲル・フェット;PH)細胞は低分葉核を特徴とする顆粒球の形態異常で,PH 細胞の出現は遺伝的異常を原因とするPH 核異常症(Pelger-Huët anomaly: PHA)および後天的な偽 PH 核異常症(pseudo-Pelger-Huët anomaly: PPHA)に区別される.PPHA の報告は牛では数例あるが,新生子牛での報告はない.症例は,生後2 日齢の黒毛和種雄新生子牛で,低体重(22 kg),出生時から沈うつ,吸乳欲なく,起立不能,低体温および脱水症状が認められた.血液学的所見では,赤血球数261 万/μℓ,ヘマトクリット値7.9%と重度の貧血,白血球数19,450/μℓで,血液塗抹検査で奇形赤血球および核が眼鏡状の低分葉化した好中球(PH 細胞)36%,桿状核球22% と好中球数の増加と核の左方移動が認められ,低血糖が付随していた.母牛についてPHA を疑い,血液塗抹検査を行ったがPH 細胞は認められなかった.第1 ~ 3 病日に抗生剤投与(アンピシリン0.3 g/ 日),第1 ~ 4 病日に輸血(400 m/ 日),第1 ~ 8 病日に輸液し治療した.第5 病日には自力で起立可能となり,吸乳欲も回復した.症状改善に伴いPH 細胞は血液中から急速に減少し,第8 病日には完全に消失し貧血も改善した.また,原因は不明であるが,本症例は感染と骨髄造血不十分に起因して発症したPPHA と診断された.本報告は,黒毛和種新生子牛のPPHA と診断された初めての症例である.

  • 前澤 誠希, 工藤 直人, 轉馬 創, 関塚 次郎, 渡邉 謙一, 堀内 雅之, 松本 高太郎, 古林 与志安, 猪熊 壽
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 11 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/06/19
    ジャーナル フリー

     5 歳2 カ月齢のホルスタイン種乳用牛が頸部腫瘤を主訴に受診した.身体検査により,左頸部の皮下腫瘤および体表リンパ節の腫大が認められた.左浅頸リンパ節の細針吸引生検で,中から大型の異型リンパ球が70% 認められた.血液および血液生化学検査では,リンパ球の増多,乳酸脱水素酵素活性およびチミジンキナーゼ活性の高値が認められた.牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus : BLV)遺伝子およびBLV 抗体は陰性であった.病理学的検索では左頸部,左胸部および左腋窩部の皮下に腫瘤が認められた.加えて,腹腔内および骨盤腔内にも腫瘤が認められ,概ね全身のリンパ節は腫大していた.腫瘤および腫大リンパ節の病理組織学的検索では大型独立円形の腫瘍細胞がシート状に増殖していた.免疫組織化学では,ほとんどの腫瘍細胞はCD3 陽性であり,一部の腫瘍細胞ではBLA-36 およびCD20 陽性であった.蛍光二重免疫染色ではCD3 およびBLA-36 を共発現している腫瘍細胞が認められた.以上の所見より,本症例はB 細胞マーカーを共発現するT 細胞性リンパ腫と診断された.

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