先天的に著しい頸部短縮を呈し,日本大学付属動物病院に来院したホルスタイン種子牛について,原因ならびに病態解明を目的とした検査を行った.症例は7 日齢のホルスタイン種雌子牛で,一般健康状態は良好,神経症状は認められなかった.一般血液検査および血液生化学検査は概ね正常であった.Computed tomography(CT)検査で第2 頸椎(軸椎)の歯突起分離不全による環椎軸椎癒合,第4 頸椎と第5 頸椎間の癒合並びに第7 頸椎と第1,2 胸椎間の癒合が認められた.胸部では,左側肋骨が13 本確認されたのに対し,右側肋骨は12 本であった.さらに,胸椎棘突起はしばしば癒合していた.また,第3 から第5 胸椎部で椎体が腹側へ弯曲していた.腰椎は第1 腰椎の左側横突起が欠損しており,第1 腰椎と第2 腰椎間の癒合が認められた.また,第3 腰椎は楔形に変形し,第3 腰椎と第4 腰椎は癒合して背側に弯曲していた.病理解剖検査では第3 および第4 頸椎で脊柱管腹側部に内腔への骨性隆起が認められた.脳および脊髄に異常は認められなかった.ウイルス分離,遺伝子型検査はいずれも陰性であった.以上より,本症例は先天性の脊椎および肋骨異常を主とする軸骨格系の奇形と診断したが,その原因は特定できなかった.しかし,棘突起の癒合,椎骨の欠損および癒合といった様々な脊椎奇形が認められることから,胎生初期の体節形成時における形態形成障害であることが示唆された.
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