産業動物臨床医学雑誌
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原著
  • 秋吉 珠早, 迫田 智汎, 野内 南, 阿部 紀次, 佐藤 綾乃, 加藤 敏英
    原稿種別: 原著
    2021 年 12 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2022/09/29
    ジャーナル フリー

     輸送距離が異なる黒毛和種肥育素牛を対象に,輸送ストレスの評価を目的として,血液成分,被毛中コルチゾル(h-Cort)ならびに糞便中コルチゾル代謝物含有量(f-Cort)を比較した.供試牛は,長距離群7 頭と短距離群30 頭であり,それぞれの月齢および体重(平均±標準偏差)は8.0 ± 0.0 カ月および197.9 ± 34.0 kg,8.8 ± 0.7 カ月および300.4 ± 42.6 kg であった(月齢,体重ともに群間に有意差あり,p<0.05).長距離群は,沖縄県多良間島から山形県最上町までの約2,628 km(海路956 km,陸路1,672 km)を所要時間96 時間,短距離群は山形県川西町から最上町までの陸路約130 km を所要時間3 時間で輸送された.すべての供試牛は,家畜運搬用トラックに積み込まれ,1 頭当たりの収容スペースはそれぞれ0.93,1.00 m2 であった.検査材料として,被毛は頸部背側部から,輸送前と農場到着後72 日の2 回,血液と直腸便は農場到着時を加えた3 回採取した.その結果,輸送前と到着後72 日におけるh-Cort の平均値(pg/mg)は,長距離群が6.8 と11.7,短距離群が3.9 と1.5 であり,短距離群では有意に減少した(p<0.05).群間の比較では,長距離群が到着後72 日に有意に高値を示した(p<0.01).同様に,輸送前,到着時および72 日後のf-Cort の平均値(pg/mg)は,長距離群ではそれぞれ5.1,60.9 および37.7,短距離群ではそれぞれ30.6,28.8 および15.2 であり,長距離群では到着時に有意に増加し,短距離群では72 日後に有意に減少した(p<0.05).群間での比較では,長距離群は短距離群に比べ,輸送前に低値,到着時と72 日後に高値を示し,いずれも有意差が認められた(p<0.01または0.05).血液成分のうち,ビタミンA 濃度は両群とも輸送前に比べ到着時に有意に低値を示し,FFA は到着時に有意に高値を示した(p<0.05).特に長距離群におけるFFA の上昇幅は,短距離群に比べ大きかった.以上の成績より,長距離輸送は牛に対してより大きくかつ持続的なストレスを与えた可能性が示唆された.

  • 工藤 彩佳, 森山 咲, 渡邊 謙一, 堀内 雅之, 古林 与志安, 猪熊 壽
    原稿種別: 原著
    2021 年 12 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2022/09/29
    ジャーナル フリー

     ホルスタイン種の牛コレステロール代謝異常症(cholesterol deficiency : CD)と類似した臨床症状,すなわち慢性下痢または筋萎縮を発現したヘテロ子牛12 頭(ヘテロ)の病態を明らかにするために,その臨床および病理解剖所見をホモ発症牛29 頭(ホモ)と比較検討した.両群の慢性下痢,筋萎縮,発熱および食欲低下の頻度に差はみられなかった.ヘテロの血清総コレステロール濃度(中央値29 mg/dℓ)はホモ(中央値8 mg/dℓ)に対し有意に高値であった.赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および平均赤血球容積はいずれもヘテロがホモよりも有意に高値を示したが,白血球数,総蛋白質濃度,AST およびLDH 活性に差はなかった.病理解剖において肺炎,胸膜炎,臍帯炎,心奇形等の器質的異常を認めた割合は,ヘテロ(50%)がホモ(10%)よりも有意に高かった.ヘテロ牛にみられたCD 様症状は器質的病変に基づくものが多く,必ずしも低コレステロール血症に起因しないことが示唆された.しかし,血清総コレステロール濃度が著しい低値(15 mg/dℓ未満)を示したヘテロ2 頭のうち1 頭では,器質的病変がみられず,またホモと同様の食道粘膜の潰瘍が認められた.ホモ同様のコレステロール代謝異常によるCD 様症状がヘテロで発現することを完全に否定することはできなかった.

  • 中村 瑞希, 大谷 昌之
    原稿種別: 原著
    2020 年 12 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2022/09/29
    ジャーナル フリー

     泌乳初期の乳牛に対するショ糖給与の効果を明らかにする目的で,経産牛14 頭を対照区とショ糖を給与した試験区(TMR 乾物に対し10% 添加して給与)の2 処理区に分け,血液性状,第一胃内性状,乳量,乾物摂取量,疾病発生状況等を調査した.ショ糖給与期間は分娩日から分娩5 日後までとした.試験区では,ショ糖給与前に対し給与2 hr 後(p<0.05)および5 日後(p<0.01)にルーメン液中プロピオン酸濃度が有意に高値を示し,給与前の値を100 とした増加率は給与1 hr および2 hr 後に,対照区に対して有意に大きくなった(p<0.05).さらに,酪酸濃度の増加率も給与2 hr 後に,試験区で有意に大きくなった(p<0.05).また,ルーメン微生物体タンパクの指標である尿中アラントイン濃度が,ショ糖給与前に対し給与5 日後に有意に高値を示した(p<0.05).ルーメン液pH の減少率は給与5 日後に試験区で大きくなる傾向を示した(p<0.1).血液生化学値は,血中NEFA 濃度の増加率が給与1 hr および4 hr 後に試験区で小さくなる傾向(p<0.1)を示し,体タンパク分解指標の3-メチルヒスチジン濃度の減少率が,給与4 hr および6 hr 後に有意に大きく(p<0.05)なった.乳量,乾物摂取量,疾病発生状況に処理間差は見られなかった.以上のことから,乳牛に給与したショ糖は,ルーメン内で速やかに発酵を受けて主にプロピオン酸や酪酸が産生され,微生物体タンパクの合成に関与する可能性が考えられたが,産生されたプロピオン酸が糖新生の基質となることによるケトーシスへの効果や,生産性への影響は見られなかった.

  • 千葉 悠斗, 伊藤 めぐみ, 土屋 博威, 楠本 晃子, 茅野 光範, 髙橋 英二
    原稿種別: 原著
    2021 年 12 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2022/09/29
    ジャーナル フリー

     牛の伝染性角結膜炎(IBK)はピンクアイと呼ばれる伝染病であり,進行すると角膜潰瘍などの重度の角膜炎を起こし,増体悪化や抗菌剤治療費など大きな経済的損失をもたらす.角結膜炎が多発する1 育成牧場において,角膜および結膜病変を認める12 頭(重症),結膜病変のみの12 頭(軽症),眼病変のない12 頭(無症状)の計36 頭のホルスタイン種育成牛を供試し,結膜からMoraxella 属菌およびMycoplasma 属菌の検出を試み,検出菌種と眼病変との関連および角結膜炎多発の原因を検討した.Moraxella 属菌は,Moraxella bovoculi およびMoraxella bovis が検出され,Mycoplasma 属菌は,Mycoplasma bovoculi が検出された.重症牛ではMoraxella bovoculi 検出,Moraxella bovis 検出およびMoraxella 属菌未検出はそれぞれ,11,1 および0 頭,軽症牛ではそれぞれ4,5 および4 頭(混合感染の1 頭を含む),無症状牛ではそれぞれ1,4 および7 頭であった.IBK の主原因菌とされるMoraxella bovis は無症状または軽症牛から主に検出され,病原性が不明瞭とされるMoraxella bovoculi は角膜および結膜病変を認める重度の角結膜炎牛から主に検出された.Mycoplasma bovoculi は重症および軽症牛それぞれ10 頭と無症状牛9 頭から検出され,眼病変の重症化との間に関連は認められなかった.以上から牛の重度角結膜炎の原因菌としてMoraxella bovoculi についても認識する必要性があると考えられた.

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