産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
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3 巻 , 1 号
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原著
  • 岡田 啓司, 小松 司, 佐藤 雅彦, 丹羽 友一郎, 青木 美樹子, 佐藤 繁, 安田 準
    2012 年 3 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    大腸菌ワクチン接種が末梢血および初乳に及ぼす免疫賦活効果を検証するため,ホルスタイン種乳牛に大腸菌ワクチンを投与し,末梢血液中と初乳中のリンパ球サブセット,血清と乳清の抗体濃度を測定した.乾乳期のホルスタイン種経産牛11頭を,大腸菌ワクチン3回投与群(4頭),1回投与群(4頭),非投与群(3頭)に分けて供試した.採血は分娩予定6週前,4週前,2週前の各投与前,および分娩後3日,1週,2週,3週の7回,初乳は分娩日の初回搾り乳を採取して分析した.その結果,末梢血CD4+T細胞数は,分娩後3日に3回投与群(1,643±316個/mℓ)が1回投与群(933±339個/mℓ)よりも高値(p<0.05)を示した.また分娩後3週に3回投与群(1,250±230個/mℓ)は非投与群(778±29個/mℓ)よりも高値(p<0.05)を示した.CD8+T細胞数は,分娩前4週から分娩後3日にかけて3回投与群が他の2群よりも高値で推移した.γ/δT細胞数は,分娩後2週に3回投与群(303±100個/mℓ)が1回投与群(573±145個/mℓ)よりも低値(p<0.05)を示した.血清IgG1は,分娩後1週に1回投与群(7.4±1.6mg/mℓ)が非投与群(10.7±3.6mg/mℓ)よりも低値(p<0.05)を示した.初乳中IgA濃度は,1回投与群(11.4±1.6mg/mℓ)が非投与群(4.8±2.9mg/mℓ)よりも高値(p<0.05)を示し,3回投与群(10.1±3.3mg/mℓ)も非投与群に比べて高い傾向を示した.その他の項目は群間に差がなかった.
  • 渡邉 貴之, 小西 一之, 野口 浩正, 大福 浩輝, 岡田 啓司
    2012 年 3 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    黒毛和種経産牛の栄養状態と胚移植受胎率の関連性について調査した.試験はⅠ期とⅡ期に分けて実施した.泌乳していない黒毛和種経産牛を,Ⅰ期は61頭,Ⅱ期は29頭供試した.移植胚は新鮮1胚または凍結1胚とした.粗飼料は全て収穫時に飼料分析を行った自家産数種の乾草または低水分サイレージのうち2種類をTMRミキサーで混合して給与した.飼料設計は,Ⅰ期は可消化養分総量(TDN)130%,乾物摂取量(DMI)100%以上とし,可消化粗蛋白質(DCP)は考慮しなかった.Ⅱ期はⅠ期の代謝プロファイルテスト(MPT)結果を考慮して,これら粗飼料に圧片トウモロコシを加えTDN 120%,DCP 200%未満,DMI 100%以上とした.両期とも胚移植開始2カ月前から体重が維持できるよう混合粗飼料の給与量を調整した.Ⅰ期は20頭,Ⅱ期は10頭を無作為に抽出し,MPTを胚移植開始1カ月後に実施した. TDNの充足率はⅠ期がⅡ期よりも有意に高かった(137% 対113% , p<0.01)が,MPTを取り入れ高タンパク状態を改善したⅡ期のDCP充足率はⅠ期に比べ有意に減少した(310%対147% , p<0.01).DMI充足率は114%と107%で差は認められなかった.給与した飼料の平均デンプン(NFC)含量はⅠ期が7.9%,Ⅱ期が17.6%とⅡ期が有意に高かった.Ⅱ期はⅠ期に比べ血中遊離脂肪酸,β-ヒドロキシ酪酸が有意に低かった(p<0.05,p<0.01)ことから,低NFCに起因するル-メンの発酵不足によるエネルギー不足が改善されたことが考えられた.また,血液尿素窒素もⅡ期がⅠ期に比べ有意に低かった(p<0.01)ことから,Ⅱ期では,Ⅰ期においてみられたルーメン発酵不足と高タンパク飼料によるル-メン内の利用しきれないアンモニアの発生が抑えられたと考えられた.胚移植受胎率はⅠ期37.7%(23/61),Ⅱ期は65.5%(19/29)とⅡ期が有意に高く改善された(p<0.05).以上のことから,黒毛和種受胚牛の受胎率はDCPの過剰摂取やDCPとNFCのアンバランスな場合に低下すること,MPTを基にした飼料設計で改善することが認められた.また,イネ科牧草の飽食給与は,著しい蛋白過剰をもたらす可能性があることが明らかになった.
  • 福田 恭秀, 富岡 美千子, 辻村 歩美, 菊池 元宏, 渡辺 大作
    2012 年 3 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    去勢肥育牛における尿路閉塞と膀胱破裂の鑑別のための臨床症状および血液性状の特徴,膀胱破裂の予後判定のために治癒群と死亡群の相違を明らかにする目的で研究を行った.供試牛は尿閉により尿道造瘻術を行った黒毛和種去勢肥育牛18頭で,腹部超音波検査と膀胱内視鏡検査から尿路閉塞群(8頭)および膀胱破裂群(10頭)に分類し,正常対照群20頭と比較した.膀胱破裂に対する処置として,膀胱カテーテルの留置,腹水の除去,腹腔へ抗生剤(アンピシリンとクロキサシリン合剤4g)を添加した生理食塩水注入および術後は食欲が回復するまで酢酸リンゲル液を主とした輸液(5~10ℓ)と前述の抗生剤投与 (4g/日) を実施した.膀胱破裂群では食欲廃絶,第一胃運動の低下,無尿および下痢が全例でみられ,直腸検査において膀胱は緊張あるいは弛緩していた.正常対照群に比べて尿路閉塞群では血漿総蛋白質 (TP) および総ビリルビン (T.Bil) の有意な高値が,また血漿無機リン (iP) の有意な低値がみられた.正常対照群に比べて膀胱破裂群では,赤血球数,Ht値,血漿TP,グルコース,T.Bil,尿素窒素 (UN) およびクレアチニン (Crea) の有意な高値が,また血漿Na,Clおよび血漿iP/UN比の有意な低値がみられた.膀胱破裂の指標として,食欲廃絶,無尿,努責の欠如,下痢,血漿iP/UN比0.15以下,血漿Cl値95mEq/ℓ以下,血漿UN値35mg/dℓ以上,血漿Crea値2.5mg/dℓ以上が示唆された.膀胱破裂群の術後2~6日の血液性状では,死亡例(5/10頭)は治癒例と比較して血漿UNの有意な高値,血漿NaおよびClの有意な低値がみられた.以上から,尿石症の病態把握と膀胱破裂の予後判定において臨床所見とともに,CBC,血漿UN,Creaおよび電解質の測定が有用であることが明らかになった.
短報
  • 生田 健太郎, 佐藤 繁, 水口 人史, 星川 俊也, 谷津 實, 岡田 啓司
    2012 年 3 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ルーメン内留置型・無線伝送式pHセンサー(pHセンサー)の校正とパーツ交換を可能とすることで実用価値を向上させるため,前胃内に存在するpHセンサーを経口的に回収する機器を開発した.回収機器は支持パイプの先に接続したステンレス製フレキシブルチューブ内にワイヤーを通し,噴門部の通過を容易にする樹脂製カバーとpHセンサーの脱落防止のためゴム製のプロテクトラバーをチューブ先端に取り付けた.また,回収機器のワイヤー先端には球状ネオジム磁石を取り付け,pHセンサー尾部に取り付けた鎖と固着させて回収できるよう作製した.ホルスタイン種乳牛15頭を用いて回収実験を行ったところ,回収機器の磁石とpHセンサーの固着は15頭全てで確認でき,うち9頭(60%)で回収が達成できた.
症例報告
  • 高橋 聖大, 石川 弘, Danil Kim , 佐々木 恒弥, Bhuminand Devkota , 山岸 則夫
    2012 年 3 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2012/06/30
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    外尿道口が閉塞し尿膜管遺残構造が高度に拡張した尿膜管開存の子牛1頭について診断および治療を行う機会を得たので,その概要を報告する.症例は2カ月齢の黒毛和種 (雌,体重50kg) で,生後1度も外尿道口からの排尿が見られず,本動物病院へは尿膜管遺残構造の摘出手術を目的として来院した.来院時,症例は常時軽度背弯姿勢を示し,臍部より尿の滴下を認めた.腹圧が常に高く触診を嫌うため,腹部深部触診を行うことはできなかった.仰臥位保定で腹部超音波検査を行ったところ,臍の直ぐ尾側方向に,液体を多量に貯留して細い管腔構造で膀胱と連絡する10cm×6cm大の嚢状構造物が描出された.尿膜管遺残構造が高度に拡張した尿膜管開存と診断し,これを外科的に切除することとした.腹部超音波検査所見の通り嚢状構造物は膀胱と連絡しており,液体を多量に貯留して拡張した尿膜管遺残構造であることが確認された.膀胱にも尿が多量に貯留しており,膀胱の圧迫により外尿道口からの排尿の有無を確認したが,外尿道口からの排尿はなく,内側からの薄い膜状構造の突出が認められた.この膜状構造を鉗子で穿孔することで,外尿道口からの排尿が可能となった.その後,臍部を含む尿膜管遺残構造を全切除し,膀胱をレンベルト-カッシング縫合にて閉鎖した.滅菌生理食塩水で腹腔内を洗浄後,閉腹して手術を終了した.手術後,子牛は外尿道口からの自然排尿が可能であった.摘出後の尿膜管遺残構造を切開したところ,壁は肥厚し内部に多量の液体(尿)を貯留していた,この尿の細菌培養検査の結果,Escherichia coliが多数分離された.
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