産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
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4 巻, 4 号
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原著
  • 渡辺 大作, 辻村 歩美, 富岡 美千子, 福田 恭秀, 川島 秀平, 小森田 真悟, 遠藤 健太郎, 高岸 聖彦
    2013 年 4 巻 4 号 p. 143-153
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    黒毛和種牛の肥育農場(A)で2010年11月〜2012年2月にかけて尿石症が多発した.その原因究明のため,尿石症が多発したA農場の飼料変更前に採材した群をA変更前群とし,発生が低い2農場(B群,C群)と比較し,また発症予防のため飼料変更(Ca添加減少,陰イオン製剤添加)した後の牛群をA変更後群として比較検討した.3カ月間隔で検診を実施し,血液および尿検査,給与飼料,枝肉成績並びにと畜場における膀胱内結石の有無を調査した.その結果,給与飼料のCa/PはA変更前群では1.2〜1.3,BおよびC群は0.6〜0.7で,15カ月齢以降のCa給与量はA変更前群では45〜53g/日とBおよびC群の約170%,P給与量は36〜42gとBおよびC群の約70%であった.A変更前群の尿pHはBおよびC群に比較し平均8.1〜8.3と有意に高く,血清Ca濃度は有意な高値または高い傾向,尿中Mg排泄率は有意な高値,尿中P濃度と尿中P排泄率は有意な低値を示した.尿石症牛の膀胱内結石の主成分はストラバイトで,ケイ酸塩(CaSi, MgSi)が少量含まれていた.A変更後群では尿pHは低下し,尿石症の発生はなくなり,膀胱内結石保有率は減少した.今回の事例は,BおよびC農場配合飼料に比較して高いCa含量のA農場変更前配合飼料に起因して尿pHがアルカリとなり,ストラバイト生成が亢進した結果と考えられた.
  • 菊池 朋子, 一條 俊浩, 吉田 裕貴, 河野 充彦, 村山 勇雄, 高橋 千賀子, 木村 有一, 佐藤 洋
    2013 年 4 巻 4 号 p. 154-159
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    乳牛における血乳症は生理的なものとされ,その発生機序に不明な点が多く,現在も治療および予防法が確立されてはいない.今回,乳牛における血乳症の現状を把握する目的で,2年間で246例の治療カルテを調査した.また血乳中の体細胞について顕微鏡学的観察を実施した.その結果,血乳症のみが治療対象であった例は94例(38%)で血乳症と併発疾病が認められたものが152例(62%)認められた.併発疾病としては乳房炎が63例と最も多く,次いで乳熱40例およびケトージス12例が認められた.分娩前に血乳症が確認され治療されている例が認められた.治療は主に止血剤が投与され,平均治療回数±標準偏差は3.4±1.7回であった.血乳中の体細胞には赤血球の他に分葉核球,単核球,リンパ球,上皮系細胞,および細胞残屑が認められた.血乳に特異的な細胞は認められなかったが,正常乳と比較して血乳では上皮細胞および細胞残屑が有意に認められた.これらのことから乳房内の細胞損傷の可能性が示唆された.
短報
  • 佐藤 千尋, 大山 貴行, 千葉 伸, 木戸口 勝彰, 安田 準
    2013 年 4 巻 4 号 p. 160-165
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    ヒト用に市販されているクレアチンキナーゼ(CK)アイソザイム分析キット(アガロース膜電気泳動・酵素染色法)を用い,牛のCKアイソザイム分画とMM分画アイソフォームを検索した.健常牛として哺乳牛,育成牛初期,育成牛後期,成牛の計34頭を,疾病牛として白筋症牛6頭を材料に用いた.健常牛の総CK活性値は85.6 ± 28.6 IU/(平均値±標準偏差)で発育ステージによる差は認められなかった.その一方で,CKアイソザイム分画は加齢に伴った変化がみられ,哺乳牛では脳神経型(BB),骨格筋型(MM),ミトコンドリアCK(mCK)の3分画に,育成牛ではそれらに加えMMとmCKとの間に出現したOther-1分画の4分画に,成牛ではBB分画が消失してMM,Other-1,mCKの3分画に分離された.牛ではハイブリッド型または心筋型(MB)分画は認められなかった.MM分画アイソフォームは,MM1,MM2,MM3の3分画に分離され,発育に伴いMM1の割合が増え,MM2およびMM3の割合が減少する傾向にあった.白筋症牛では,総CK活性値の著増を示したが,それはMM分画の増加に起因していた.6頭中2頭ではBBとMMの間にOther-2分画が出現し,健常牛とは異なるアイソザイムパターンが認められた.またMM分画アイソフォームは,MM1の割合が減少し,MM2の割合が上昇していた.以上から,牛におけるCKアイソザイムおよびアイソフォーム分析は,年(月)齢の違いに注意を要するものの,病態把握に活用できると期待される.今後は,他の家畜では報告のないアイソザイム分画の検証等を含めた,分析の有用性の検討が必要である.
症例報告
  • 嘉陽 静香, 二宮 理紗, 古関 博, 堀内 雅之, 古林 与志安, 猪熊 壽
    2013 年 4 巻 4 号 p. 166-169
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    2歳6カ月齢のホルスタイン種成乳牛が水様性下痢を主訴に受診した.第8病日には,胸垂の冷性浮腫および頸静脈怒張が発現し,収縮期駆出性雑音が聴取された.血液検査,心電図検査および心臓超音波検査を実施したが,生前にうっ血性心不全の原因は特定できなかった.病理解剖により,腕頭動脈と前大静脈の短絡が確認された.また,前縦隔において前大静脈に大型の静脈瘤(直径10cm)が形成されていた.本症例は,先天性動静脈瘻の結果,静脈瘤形成とうっ血性心不全を呈した成牛の稀な症例と思われた.
  • 沼津 敬治, 松本 浩毅, 高橋 幸子
    2013 年 4 巻 4 号 p. 170-174
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    元気消失の主訴でホルスタイン種雌育成牛(121日齢)を診察したところ,発熱,膿尿および触診で右腎臓腫脹が認められた.超音波診断検査で腎盂の拡張と内容物の貯留が認められた.化膿性腎盂腎炎を疑い抗生剤で加療したが効果はみられず,一般症状が悪化し,内科的治療では治癒不能と思われた.血液検査で尿素窒素およびクレアチニン値は正常であり,左腎臓機能には異常がないと思われたため,生後149日齢に右腎臓を全摘出した.摘出した右腎臓は重さ6.48㎏で,腎盂は拡張してチーズ様膿が充満していた.腎臓摘出後は順調であり,79カ月齢で腰痿によって死亡するまで,腎臓機能,体重,繁殖成績,病歴および泌乳量を経過観察したところ,いずれも明瞭な異常は認められず,育成期の右腎臓摘出はその後の乳牛の能力に悪影響を与えないことが示唆された.
特別講演会
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