産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
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5 巻, 4 号
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原著
  • 乙丸 孝之介, 志賀 英恵, 鹿海 淳子, 柳田 孝司
    2015 年 5 巻 4 号 p. 185-190
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/12/02
    ジャーナル フリー
    鹿児島県内で飼養されていた黒毛和種肥育去勢牛に対して,肥育ステージごとの血液生化学的検査を行った.供試牛は,102農場にて飼養されていた臨床的に健康な9〜30カ月齢の黒毛和種肥育去勢牛2,207頭で,これらを肥育前期(9〜13カ月齢:418頭)肥育中前期(14 〜16カ月齢:448頭),肥育中後期(17 〜19カ月齢:443頭),肥育後期(20 〜23カ月齢:447頭),仕上げ期(24 〜30カ月齢:451頭)の各肥育ステージに分類した.血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ,γ-グルタミルトランスフェラーゼ活性値の平均値は,肥育中前期以降で前期と比較し高値であった.血清アルブミンの平均値は,中前期以降では3.3g/dℓ以上であった.総コレステロールの平均値は前期で107mg/dℓであったが,中前期以降では137mg/dℓ以上であった.血清ビタミンAの平均値は前期で93IU/dℓであったが,肥育ステージが進むにつれ低下し,仕上げ期では43IU/dℓであった.血清ビタミンEの平均値は前期で172μg/dℓであったが,中前期以降では200μg/dℓ以上であった.これらのことから,鹿児島県内で飼養されていた黒毛和種肥育去勢牛の各肥育ステージにおける血液生化学的検査値は,それぞれ異なることが示唆され,今後,生産病の診断および予防を行う上で1つの指標となると考えられた.
  • 前谷 文美, 寺村 誠, 山崎 昌仁, 大谷 昌之
    2015 年 5 巻 4 号 p. 191-196
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/12/02
    ジャーナル フリー
    二重エネルギーエックス線吸収測定法(Dual-energy X ray absorptiometry;DXA)にてホルスタイン種雌牛(生後1~ 425日)18頭の骨密度を測定した.測定部位は右中足骨とし,機器はDCS-600EXV(日立アロカメディカル,東京)を使用した.血清カルシウム(Ca)濃度,骨形成マーカーである骨型アルカリフォスファターゼ(bone-specific alkaline phosphatase;BAP)値,骨吸収マーカーであるⅠ型コラーゲン架橋N-テロペプチド(type Ⅰcollagen cross-linked N-telopeptide;NTx)値を測定し,骨代謝状況を把握するためにNTxとBAPの比(NTx/BAP)を算出した.日齢と骨密度は強い正の相関関係を示し(r=0.86,p=0.0001),日齢の進行とともに骨密度は増加した.日齢と血清Ca濃度は強い負の相関関係を示し(r=-0.85,p=0.0245),日齢が進むにつれて血清Ca濃度が低下した.NTx/BAP値は血清Ca濃度と負の相関関係を示し(r=-0.61,p=0.0064),日齢とは相関関係がみられなかった(r=0.43,p=0.0743).骨密度とNTx/BAP値は相関関係がみられなかった(r=0.42,p=0.0837).DXA法を用いたホルスタイン種雌牛の骨密度の測定によって,日齢の進行に伴い,骨密度が増加することが判明した.今後,1歳以上のホルスタイン種雌牛を用いた同一個体に対する経時的な骨密度の測定により,成長に伴う骨密度の変化率と分娩前後の骨密度の変化率がデーター化されれば,乳熱などの周産期疾病予防や治療方針の判断につながると考えられる.
症例報告
  • 田中 愛, 三山 豪士
    2015 年 5 巻 4 号 p. 197-201
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/12/02
    ジャーナル フリー
     100頭飼養の酪農場で,牛舎増築後の半年間に初妊牛を100頭導入し飼養規模を拡大したが,増頭に伴い哺乳子牛の死亡事故が増加した.そこで,哺乳子牛の死亡事故低減のために対応の依頼を受けた.死亡事故件数は増頭前では107頭のうち8頭(7.5%)であったが,増頭後には102頭のうち19頭(18.6%)と有意(p<0.05)に増加し,そのほとんどは下痢症と肺炎であった.要因の絞込みのため子牛の代謝プロファイルテストおよび飼養管理状況の調査を行った.その結果より哺乳子牛の栄養充足と飼養環境の適正化が必要であると判断され改善策の立案を行なった.改善策には①哺乳量の増量,②下痢症発症時の断乳の廃止,③飼養スペースの拡張,④乾燥した敷料の増量,⑤飼養場所の消毒の徹底ならびに⑥自由飲水用バケツ設置,などを立案し実施した.その結果,死亡事故件数も改善前に比べ改善後は97頭のうち6頭(6.2%)と有意(p<0.01)に低下し,平均治療回数が改善前の8.8±4.6回に対し,改善後は5.7±3.0回と有意(p<0.01)に減少した.また,栄養状態の指標のひとつである血中の総コレステロール値は,改善前の66.1±15.6mg/dℓに比べ,改善後は127.3±37.4mg/dℓと有意(p<0.01)に増加した.以上のことから,飼養頭数規模拡大に伴う酪農場における哺乳子牛の死亡事故などの増加には,栄養管理と飼養環境管理が大きくかかわることがあり,それらの調査および適切な改善策の立案が疾病防除に有効であることが示された.
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