産業動物臨床医学雑誌
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5 巻 , 1 号
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原著
  • 生田 健太郎, 西森 一浩, 安田 準, 岡田 啓司
    2014 年 5 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    泌乳牛における糞尿排泄量,窒素(N)出納,養分消化率および第一胃微生物態N合成量(MNS)と血液成分との関連性を検討するため,初産牛と経産牛を4頭ずつ供試し,一期14日間のクロスオーバー法で全糞尿採取法によるN出納試験を行った.糞尿排泄量,N出納,養分消化率およびMNSに関する27項目を目的変数とし,血液成分を3つの説明変数群(飼料摂取前,飼料摂取後および飼料摂取前後の差,各13項目)として,81例の重回帰分析を行った.その結果,有用な重回帰式(決定係数(R2) ≧0.5)が62式得られた.これらのうち,飼料摂取前の血液成分を説明変数群とした場合,尿中へのN排泄量,糞尿合計へのN排泄量,乳中へのN排泄量,尿中へのN排泄割合および非繊維性炭水化物(NFC)消化率において精度の高い重回帰式(R2≧0.8)が得られた.飼料摂取後の血液成分を説明変数群とした場合,尿量,N摂取量,糞中へのN排泄量,尿中へのN排泄量,糞尿合計へのN排泄量,糞中へのN排泄割合,N消化率,粗脂肪消化率およびNFC消化率において精度の高い重回帰式が得られた.飼料摂取前後の差を説明変数群とした場合,生糞量,糞中へのN排泄量,糞尿合計へのN排泄量,中性デタージェント繊維消化率において精度の高い重回帰式が得られた. 以上のことから,血液成分が泌乳牛の糞尿排泄量,N出納および養分消化率を反映していることが証明され,野外での把握が困難であったこれらの値を血液成分から推定できることが示唆された.
  • 松田 敬一, 高橋 千賀子
    2014 年 5 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    黒毛和種肥育牛における肥育後期へのビタミンC(VC)製剤の給与が血液成分と枝肉成績に及ぼす影響を調査した.通常の肥育飼料に加えVC製剤(ビタミンCを70%含有した大豆硬化油被覆製剤)を1日30g給与した15頭を給与群,非給与の15頭を対照群とした.VC製剤給与前の24カ月齢から出荷まで,1カ月に1回採血を行い血液生化学検査結果の推移を調査した.出荷時の枝肉成績を調査し両群間で比較検討した.血漿VC濃度,血清ビタミンA(VA)濃度および血清総コレステロール(Tcho)濃度等の血液生化学検査結果の推移には有意な変化は認められなかった.枝肉成績では,牛脂肪交雑基準Beef Marbling Standards(BMS)(給与群:8.40±1.64,対照群:7.27±1.44),ロース芯面積(給与群:68.7±8.6cm2,対照群:62.1±10.2cm2),および内臓価格(給与群:1頭当たり15,199±984円,対照群:1頭当たり13,907±1,837円)において給与群が対照群に比べて有意に高い値を示した.BMSに重要な影響を及ぼすと考えられているVAや,枝肉成績をモニタリングする重要な指標であるTchoなどの血液検査成績には有意な差がない状態で,給与群においてBMSおよびロース芯面積が有意に増加したことから,肥育後期におけるVC製剤の給与はBMSおよびロース芯面積を増加させる可能性が示唆された.
短報
  • 乙丸 孝之介, 志賀 英恵, 時森 麻紀子
    2014 年 5 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    黒毛和種子牛の各発育ステージにおける血液生化学検査値を得るために鹿児島県内の1繁殖農場で飼養されていた黒毛和種雄子牛10頭を経日的に調査した.すべての供試牛は約80日齢まで人工哺乳にて飼養された.供試牛は1週齢(7日齢),4週齢(28 ~34日齢),8週齢(56 ~62日齢),12週齢(84 ~90日齢),16週齢(112 ~118日齢),24週齢(168 ~174日齢),32週齢(224 ~230日齢)の各週齢で採血された.γ-グルタミルトランスフェラーゼ活性値は1週齢で他の週齢と比較し有意に高値を示した.血清総蛋白値は1週齢で6.2g/dℓと4および8週齢に比べ有意に高い値を示した.血清グロブリン値は1週齢で4および8週齢と比較し高値を示し3.4g/dℓと最も高値であった.血清総コレステロール値は離乳後の12週齢で4,8,24および32週齢と比べ有意に低値であった.血清β-ヒドロキシ酪酸値は4週齢まで130μmol/dℓ未満であったが,8週齢以降では400μmol/dℓ以上であった.血清ビタミンE値は8週齢まで200IU/dℓ以上であったが,12および16週齢では70IU/dℓ未満であった.これらのことから,黒毛和種子牛の各発育ステージにおける血液生化学性状は,それぞれ異なることが示唆された.
  • 長濱 克徳, 大久保 成, 一條 俊浩, 木村 淳, 岡田 啓司, 佐藤 繁
    2014 年 5 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    牛第一胃液の温度と体温との関係を明らかにする目的で,第一胃液のpHと温度および体温(直腸温度)の日内変動を検討した.ホルスタイン種去勢牛(5カ月齢,4頭)に乾草あるいは濃厚飼料主体飼料(濃厚飼料)を1日2回給与した.第一胃液のpHと温度は無線伝送式pHセンサーを用い,乾草給与時には給与後7日,濃厚飼料給与時には給与後14日に8時から24時まで10分間隔で連続測定した.直腸温度は直腸式デジタルサーモメーターを用いて1時間間隔で測定した.その結果,朝の給餌後に第一胃液のpHは低下,温度は上昇した.体温は,朝の給餌後に上昇したが,乾草給与時には第一胃液温度に比べて約1.0℃高値で推移し,濃厚飼料給与時には第一胃液温度と近似した値で推移した.第一胃液のpHと体温との間では濃厚飼料給与時に有意(p<0.05)な負の相関,また,第一胃液温度と体温との間では,いずれの飼料給与時でも有意(p<0.01)な正の相関が認められた.体温と第一胃液温度は,乾草および濃厚飼料給与時のいずれも朝の給餌時から夕方の給餌後にかけて上昇する傾向がみられたことから,体温の日内変動は第一胃液温度と密接な関連のあることが示唆された.
  • 門平 睦代, 畠間 真一, 岩佐 光啓
    2014 年 5 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/07/25
    ジャーナル フリー
    牛乳頭腫症は,牛パピローマウイルス(BPV: bovine papillomavirus)が牛の体表皮膚や一部の粘膜に感染することによって,感染部位に乳頭腫と呼ばれる良性腫瘍(イボ)を形成する疾患である.本病の発生は全国的に認められるが,わが国の牛の有病率についての大規模な調査は行われていない.本研究では,十勝地方のと畜場において雌雄,月齢および市町村毎の牛乳頭腫症有病率を調査し,疾病発生に関連するリスク要因について考察を行った.平成25年9月末より12月末までの3カ月間,週1回およそ80頭ずつ,合計1,085頭(雌657,雄428頭)の牛について乳頭部を観察し,腫瘍の有無を記録するとともにトレーサビリティーシステムを使って個体識別情報を収集した.陽性個体数は283頭(雌279頭,雄4頭)で,雌および雄の有病率はそれぞれ42.5%,0.9%であった.月齢が上がると有病率も上昇する傾向が観察できた.また,雌の陽性279頭と陰性378頭の月齢平均値を比較したところ,陽性牛の月齢(平均78カ月)が陰性牛のそれ(63カ月)より有意に高かった.有病率が高い市町村では,飼養されている牛の平均年齢も高い傾向がみられた.乳頭腫の発生は性別および年齢と有意に関連があり,雌であり,かつ月齢が高いほど,イボが観察される確率は高かった.一方,地域や季節,飼養管理方法,吸血昆虫の発生などの環境要因と有病率との関連性は明らかになっておらず,今後さらに詳細な調査が必要である.本調査によって,牛乳頭腫症発生の交絡因子として最も大きいのは雌雄の別であり,次に月齢であることがわかった.これらの情報は,牛乳頭腫症の防除対策を行う上で有用と考えられる.
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