熊本県阿蘇地域の,無畜舎による野外管理で季節繁殖を実施している試験農場において,繁殖和牛のべ31頭を供して,分娩時期がその後の繁殖成績に及ぼす影響を分析した.4月15日から10月までは,牧野で野草主体の生草乾物約10kg/頭/日を自由採食させた.その後11月からはサイレージ乾物8kg/頭/日を制限給与した.人工授精期間は4月1日から7月20日までとした.
分娩時期により早期(E群:1月1日~2月15日)6頭,中期(M群:2月16日~3月31日)17頭,後期(L群:4月1日~5月15日)8頭に分類した.分娩後初回排卵日数(平均 ± 標準偏差)は,L群(44.4 ± 15.1日)がE群(72.8 ± 15.5日)に比較して早かった(p<0.05).
また分娩後7日のBCSはE群(2.75 ± 0.40),M群(2.42 ± 0.33),L群(2.40 ± 0.34)で差がなかったが,その後はそれぞれ低下した.分娩後にBCSが最低を示した日数において,L群(18.2 ± 6.3日)はE群(44.8 ± 6.3日)より早かった(p<0.05).分娩直後のBCSに回復する日数もL群は(40.6 ± 16.0日)はE群(82.6 ± 16.0日)より早かった(p<0.05).
受胎牛率(受胎頭数/群頭数)において3群に有意な差がなかった.しかしL群は,授精精可能日数が短くなるため,分娩後の初回排卵を確認して次回の発情時には確実に授精することと,主席卵胞のサイズや機能性黄体の有無など,卵巣動態の的確な把握が重要であることが示唆された.季節繁殖和牛において,放牧を実施できない時期に制限給餌を行う場合,分娩時期がその後の繁殖成績に影響を与えることが明らかとなった.
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