産業動物臨床医学雑誌
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最新号
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原著
  • 千徳 芳彦, 山本 展司, 橘 泰光, 田幡 欣也
    原稿種別: 原著
    2020 年 11 巻 2 号 p. 57-65
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル 認証あり

     乳牛の急性大腸菌性乳房炎(ACM)の重症例は高率に除籍(死亡あるいは生産性低下により淘汰)されるため重症度評価には迅速性が要求される.全身症状4 項目(体温,第一胃運動性,脱水程度,沈うつ徴候)の合計スコア(1 点間隔・各項目2 〜3 段階;軽症0 〜2,中等症3 〜5,重症6 〜9)により,ACM の重症度を評価するSystemic Severity Score system(SSS 法)は迅速性に優れ,かつ,スコア(SC)と重症度の関連性が検証されている数少ない評価方法の1 つであるが,アメリカの大規模6 農場の調査成績を基に考案されたものであるため,様々な飼養形態や規模の農場を対象とする往診診療における有用性は不明である.そこで,当診療エリアの往診ACM 症例を対象として,飼養状況,初診後100 日以内の除籍について調査し,SSS 法による重症度の妥当性を除籍発生頻度,受信者動作特性曲線(ROC 曲線)分析,生存時間分析を用いて検証した.

     対象となったACM 90 例(39 戸)のうち79 例(37 戸)が搾乳頭数200 以下の農場に在籍し,64 例(29 戸)が繋留飼養であった.症例はすべてACM ワクチン未接種であり,合計SC4 以上であった.除籍割合(n=78)は初診時SC の増加とともに増加し,ROC 分析による除籍予測最適カットオフ値(SC6)で両群の除籍割合を比較したところ,SC5 以下群に対するSC6 以上群の死亡リスク比は3.7(95%信頼区間:CI 1.2-12.0),除籍リスク比は2.6(CI 1.1-5.8)であった.また,除籍をエンドポイントとした生存時間分析(n=90)では,SC6 以上群の生存率はSC5 以下群よりも有意に低く推移した(59 vs 86%,ハザード比 3.5;CI 1.4-8.8).

     以上から,SSS 法は往診診療におけるACM 予防ワクチン未接種症例の重症例選別に適用可能であることが示唆された.

  • 石塚 直樹, Kim Yohan, 岩本 英治, 正木 達規, 木村 淳, 一條 俊浩, 佐藤 繁
    原稿種別: 原著
    2020 年 11 巻 2 号 p. 66-76
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル 認証あり

      黒毛和種牛の肥育後期における第一胃液の性状,液相・固相の細菌叢構成と枝肉成績との関係を明らかにする目的で,第一胃液のpH,揮発性低級脂肪酸(VFA),アンモニア態窒素(NH₃-N),乳酸(LA),リポポリサッカライド(LPS)および液相と固相の細菌叢構成を解析し,肥育および枝肉成績との関係を検討した.第一胃フィステルを装着した黒毛和種去勢牛9 頭を供試し,第一胃液pH は無線伝送式pH センサを用いて測定した.29 カ月齢時に第一胃内容を採取し,二重滅菌ガーゼを用いて液状部(液相)と食渣部(固相)に区分した.液相の各種性状のほか,液相と固相の細菌叢構成を次世代シークエンス法により解析した.また,屠殺解体(平均30.5 カ月齢)後,胸最長筋内脂肪を採取し,ガスクロマトグラフ法により脂肪酸組成を測定した.

     その結果,第一胃液pH は平均5.67 と低値を示し,LPS 活性値は平均6.62 × 104 EU/mℓと高値を示した.細菌叢構成では,液相と固相のいずれもFirmicutes 門,Bacteroidetes 門およびActinobacteria 門の構成比が高かった.種レベルではLactonifacter longoviformisOlsenella umbonata の構成比が高く,固相では液相に比べて,Succiniclasticum ruminisMogibacterium neglectum の構成比が高値を示した.脂肪酸組成はC18:1,C16:0,C18:0,C16:1 の順に多く,一価不飽和脂肪酸(MUFA)は57.46 %,多価不飽和脂肪酸(PUFA)は2.22 %,飽和脂肪酸(SFA)は40.32 % であった.第一胃液pHとC16:1およびC18:1組成比との間に有意な正の相関が認められ,高MUFA群では低MUFA 群に比べて第一胃液pH が高値で推移する傾向がみられた.

     以上のことから,黒毛和種去勢牛の肥育後期における第一胃細菌叢構成は,液相と固相で差異があり,また,固相の細菌叢構成は液相に比べて筋肉内脂肪中MUFA 組成や皮下脂肪厚との間で有意な相関が多いことが示唆された.

症例報告
  • 中道 藍, 千葉 汐莉, 来原 加奈, 渡邉 謙一, 堀内 雅之, 古林 与志安, 猪熊 壽
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 11 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル 認証あり

     分娩2カ月後の9歳3カ月齢の雌のホルスタイン種乳牛が起立難渋を主訴に診察を受けた.病歴として3 年前に鼻出血と心雑音があったこと,また,身体検査で心雑音,頸静脈怒張,胸垂浮腫および胸壁の巨大膿瘍が認められ,血液および血液生化学検査で慢性炎症像が認められたことから,心内膜炎が強く疑われた.心電心音図解析にて右側で全収縮期雑音を,左側で収縮期前期雑音と拡張期雑音が確認された.心臓超音波検査では,僧帽弁・三尖弁・大動脈弁・肺動脈弁に疣贅物はみられず,心室中隔欠損(VSD)が確認された.病理学的検査ではVSD に加えて心房中隔欠損,右心室壁肥厚および大動脈と肺動脈の拡張が認められた.生産に供されていた成牛のVSD 症例で9 歳齢での症状発現は調べる限りでは最高齢であった.

  • 後藤 聡, 千葉 暁子, 森山 友恵, 飯野 君枝, 山岸 則夫
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 11 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/11
    ジャーナル 認証あり

     国内の肉牛生産現場において,去勢は最も頻繁に行われる外科処置の1 つである.去勢は生産性向上の観点から畜産現場で広く実施され,なかでも観血法による精巣摘出が主流とされている.今回,観血去勢後の手術部位感染(surgical site infection: SSI)により陰嚢膿瘍を形成した黒毛和種去勢牛3 頭に対して,一般身体検査および超音波診断装置を用いて陰嚢や精索の形状,膿様物の有無を精査した後,外科的治療を行った.局所的な陰嚢膿瘍と診断した2 例において,膿瘍は非感染部との境界が明瞭であったことから陰嚢の全切除を行った.1 例において精索は膿瘍として大きく腫大したまま腹腔内深部へと連絡していたことから,陰嚢切除ならびに精索瘻による腹腔内膿瘍の排膿処置を行った.術後には継続的な精索瘻の内腔の洗浄を行い,精索の大きさは退縮,排膿の量も減少,手術後42 日目には精索瘻の炎症消退と創傷収縮を認めた.いずれの症例も治癒転帰となったことから,陰嚢切除ならびに精索瘻による腹腔内膿瘍の排膿は有効な治療法であったと考えられた.今回の3 例は,獣医師ならびに畜産関係者に対して,簡易外科手技である去勢術の衛生的な手技実施ならびにSSI 予防対策に努めることの必要を再認識させる重要な症例であった.

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