本研究は肉用種離乳子牛にルーメンバイパストリプトファン粒剤(以下, バイパストリプトファン)を経口投与し、その後の行動、血液性状、増体量および飼料利用性について検討したものである。約90日齢離乳時に子牛10頭を頭数、性および試験開始時体重がほぼ等しくなるよう5頭ずつの対照区と試験区に分け、同一飼養条件下で舎飼いした。試験区の各子牛には体重1kg当たり80mgのバイパストリプトファン(L-トリプトファン30%含有)を離乳前日、離乳当日および離乳後2週間隔日投与した。離乳当日(13 : 00に離乳)、離乳後1、2、4、6および9日目に個体維持行動と社会行動を日中5時間(13 : 00〜18 : 00)観察した。離乳後1、4および9日目には頚静脈採血を行い、血中グルコース濃度、好酸球数割合および好中球数/リンパ球数(以下、N/L)を求めた。さらに、離乳後2週間における子牛の日増体量と飼料要求率を算出した。横臥行動は対照区よりも試験区で多い傾向を示した(P<0.10)が、探査は対照区よりも試験区で少ない傾向を示した(P<0.10)。闘争行動、社会的探査および遊び(主に模擬闘争)は対照区よりも試験区で有意に少なかった(P<0.05)。血中グルコース濃度、好酸球数割合およびN/Lについては、離乳後1日目のN/Lが対照区と比べて試験区で低い傾向を示した(P<0.10)が、他の時期においては両区で有意差が認められなかった。日増体量については、対照区の0.9kgに比べて試験区の15kgは有意に高い値を示した(P<0.01)。以上の結果から、離乳子牛へのバイパストリプトファン粒剤投与量を前報の半量とした場合も横臥行動が助長される傾向を示すとともに、闘争および社会的探査行動が抑えられ、これらの行動的変化が良好な発育に反映したものと推察された。日本家畜管理学会誌、33(3) : 65-72.19981997年8月20日受付1998年2月5日受理
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