本報では、繋ぎ飼い牛舎への適用を前提とした搾乳ロボットシステムの設計評価に資することを目的として、産次と泌乳ステージに対する乳頭間距離の変動および搾乳後の時間経過にともなう日内変動について測定評価した。41頭のホルスタイン種泌乳牛を供試し、泌乳期を通じて搾乳前の乳頭間距離を測定した。産次が進むと各乳頭間距離は有意に増大する傾向であったが(P<0.Ol)、前乳頭間距離は後乳頭間と前後乳頭間に対して各々1.6〜1.8倍と1.2〜1.6倍であった。泌乳前期にみられる乳量の増加にも関わらず、泌乳ステージの進行とともにすべての乳頭間距離は直線的に減少した。他の部位に比較して後乳頭間の変動は大きく、泌乳後期には分娩直後に比して45〜60%まで減少する傾向となった。初産牛における泌乳ステージの進行にともなう後乳頭間距離の減少と経産牛の広い前乳頭間距離に配慮したロボット機械系を主としたシステムを設計する必要を認めた。なお、左右の乳頭間距離の不均衡はある程度認められるものの、機械系の機構次第では大きな問題とはならないと推察された。15頭の経産牛を対象として搾乳後の乳頭間距離の日内変動を測定した結果、乳頭間距離は搾乳後の時間経過とともに直線的に増大した。しかし、泌乳ステージの進行にともなって乳頭間距離の復帰の度合いが有意に小さくなった(P<0.05)。搾乳による乳頭間距離の変化は、後乳頭間が43〜55%の縮小と他の部位に比べて明らかに大きかった。泌乳後期においては特に搾乳回数や搾乳間隔の設定に配慮し、ロボット制御システムの設計に反映させることによって自動装着成功の機会を増加させるなどのシステムの信頼性を高めることができるものと考えられた。特に、乳頭探索領域を限定することによって、肢や対象外の乳頭を干渉あるいは誤検出する機会を低減できると推察された。日本家畜管理学会誌、35(3) : 55-64、2000 1999年3月1日受付1999年11月1日受理
抄録全体を表示