反芻家畜における黒ヤギ漢方薬副産物(以下,漢方薬副産物)とトウフ粕の飼料価値および効率的な給与順序を究明するために,平均体重47±3kgであるコリデール種去勢めん羊9頭を用い,濃厚飼料の一部を漢方薬副産物およびトウフ粕に代替するとともに,飼料の給与順序を変えて給与し,日増体量,消化率,採食・休息行動について比較検討した.1日の乾物給与量(濃厚飼料60%:粗飼料40%)は体重の2.5%に制限給与した.また,供試飼料における漢方薬副産物およびトウフ粕の代替率は飼料乾物の10%とし,その分濃厚飼料を減じた.濃厚飼料と粗飼料の給与順序の違いによってめん羊を3頭ずつ3群に分け,第1群には午前に濃厚飼料,午後に粗飼料を給与(以下,濃→粗群),第2群には午前に粗飼料,午後に濃厚飼料を給与(以下,粗→濃群),第3群には1日分の総濃厚飼料と粗飼料を混合し,これを午前,午後50%ずつ分けて給与(以下,混合群)した.なお,各試験群ごとに対照区,漢方薬副産物代替区およびトウフ粕代替区を設け,3×3ラテン方格法を適用した.得られた結果は次のとおりである.1. 乾物摂取量は各試験群において処理区間で有意差はなかった.めん羊の日増体量は濃→粗群の場合,トウフ粕代替区で0.22kgと他の処理区に比べて有意(P<0.05)に高かったものの,混合群の場合では逆に0.13kgと対照区よりも有意(P<0.05)に低かった.飼料要求率は濃→粗群のトウフ粕代替区で最も小さい値を示し,粗→濃群では対照区と比べ漢方薬副産物およびトウフ粕代替区で低下する傾向を示した.また,混合群においては飼料要求率が対照区と比べてトウフ粕代替区で有意(P<0.05)に劣った.給与順序の影響については,増体量および飼料要求率は濃→粗群で他の給与順序群に比べて有意(P<0.05)に優れることが認められた.2. 乾物,有機物およびNFEの消化率とTDN含量は濃→粗群において漢方薬副産物代替区で対照区より低く,粗→濃群においては漢方薬副産物区およびトウフ粕代替区で乾物,有機物および粗蛋白質の消化率が対照区より低く,NFEの消化率はトウフ粕代替区で他の処理区より低かった.混合群では処理区間でいずれの成分消化率においても有意差がなかった.給与順序については,各成分の消化率は濃→粗群で混合群とほぼ同様であったが,粗→濃群ではこれらの群より劣る傾向が認められた.3. 採食時間と休息時間は各給与順序においていずれの処理区間でも有意差はなかったが,採食時間は混合群で他の給与順序群より長い傾向を示した.採食速度は濃→粗群および粗→濃群において対照区で有意に高く(P<0.05),トウフ粕代替区で最も低かった.起立時間や横臥時間には各処理区間に有意差は認められず,混合給与により横臥率が上昇する傾向にあった.以上の結果から,黒ヤギ漢方薬副産物およびトウフ粕は濃厚飼料に比べ,めん羊の増体量,飼料効率,消化率がやや劣るものの反芻家畜の飼料資源としての価値を有し,一部を濃厚飼料と代替しても利用性や行動面での問題は生じないことが示唆された.なお,これら代替の効果を期待するには漢方薬副産物およびトウフ粕を含む濃厚飼料を午前に,粗飼料を午後に給与する方が他の給与順序より有利と考えられた.
抄録全体を表示