音声言語医学
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38 巻, 2 号
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  • 中嶋 理香, 洞井 奉子, 杉田 朋子, 辰巳 寛, 濱中 淑彦
    1997 年 38 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    失語症者が日常生活で用いる構文処理能力を知る目的で, コミュニケーション能力 (以下C能力) と構文能力の関係を調べた.C能力の評価には, 実用コミュニケーション能力検査 (CADL) を用い, 構文処理能力の評価には失語症構文検査2Aを用いた.また情景画説明課題を行い, 失語症者の用いる構文および発話文節数を健常者と比較した.さらに, CADL家族質問紙をもちいて日常生活場面を家族に評価してもらった.対象はCADLで実用レベルまたは自立レベルと評価された16名である.日常生活に必要な構文理解能力は語順ストラテジーレベルで, 文頭の名詞句が動作主でない可逆文の表出が可能であるレベルと推測できた.情景画説明課題の結果から, 失語症者は健常者と用いた構文の種類に違いがなかった.日常コミュニケーションに対する家族の評価はやや流暢性失語が非流暢性失語に比べ高い傾向にあったが, 評価率プロフィールに一定の傾向はなかった.
  • 岡田 澄子, 才藤 栄一, 藤谷 順子, 植田 耕一郎, 奥平 奈保子
    1997 年 38 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    慢性期摂食・嚥下障害患者の障害像を検討する目的で, 東京都リハビリテーション病院を受診し摂食・嚥下に問題を認めた患者88名について検討を行った.検討した項目は原因疾患, 損傷部位, 障害, 誤嚥, むせ, 栄養摂取方法などであった.さらに対象患者88名のうち嚥下治療を行った74名については嚥下治療の効果も検討した.慢性期の摂食・嚥下障害患者では咽頭・喉頭機能の障害に加え認知障害などさまざまな障害を有する例が多く複雑な障害像を呈していた.損傷部位と嚥下機能の重症度については明らかな傾向は認められなかった.治療前の栄養摂取方法をみると, 能力に見合わない摂取方法をしていた患者が多く認められた.また嚥下治療の有効性を重症度の変化と栄養摂取方法の変化でみたところ, 約半数の患者に明らかな効果が認められた.経口摂取が困難であった患者にも能力にあった摂取方法を選択することができ, 嚥下治療は有用であった.
  • 熊田 政信, 小林 武夫, 小崎 寛子, 新美 成二
    1997 年 38 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    痙攣性発声障害 (SPD) の評価法として, 障害されたモーラ数を患者の発話文中において数えるモーラ法を提案する.モーラは日本語における“拍”のことで, 日本語発話の音韻的かつ時間的な一つの単位である.したがって, 障害されたモーラ数は, 患者の発話の達成度の客観的な指標になると考えた.発話資料として, 同一の朗読文 (25モーラ) を用いた.対象は, 1991年5月より1994年6月までの間に東京大学付属病院耳鼻咽喉科音声外来を受診しSPDの確定診断をうけた患者で, ボツリヌストキシン声帯筋内注射の初回注射前後の録音資料のある10名であった.結果, 医師による聴覚印象的重症度評価が良いほど障害されたモーラ数 (M) は小さくなる傾向がみられた.また, 注射前との相対評価である患者自身による主観的評価が良いほど, 注射前と比較しMが大きく減少する傾向がみられた.したがって, モーラ法は, 聞き手話し手両者の評価を同時に反映した簡便な評価法として有用であると確認できた.
  • ―卵性双生児不一致の症例―
    早坂 菊子, 千本 恵子
    1997 年 38 巻 2 号 p. 182-189
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    一卵性双生児の不一致症例を対象として, 吃音に関する母子間のD-Cモデル (要求一許容性モデル) によるスピーチの関係性を検討した.スピーチの速度はOSR (音節/60sec.) , スピーチの長さはMLU (文節/発話数) で算出した.母子のOSRとMLUの差が小さい程, 要求と許容性は一致し, 子供に無理な負担がかかっていないと判断した.治療期間を大きく3期に分け, それぞれ1, II, III期間とした.MLUでは1期では差が大きかったが, II期, III期となるに従って母親のMLUは減少し, 子供は増加してきた.OSRでは1期においては両者ともに速度が速すぎ, 子供に負担がかかっていたが, II期には, ゆっくり話すように母親に要請したため, 母親の速度が減少し, 子供もそれにともなって減少した.MLU, OSRともに, I期からIII期に進むに従ってその差が減少し, 要求と許容量の調和がとれてきていることが示されている.非流暢性も消失し, 安定しているため, 追跡期での両者の差の拡大は問題とならないように考えられる.
  • ―膀胱・尿道用硬性内視鏡の応用―
    川井田 政弘, 福田 宏之, 甲能 直幸
    1997 年 38 巻 2 号 p. 190-195
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    直達喉頭鏡を用いた喉頭顕微鏡下の観察は優れたものであるが, 喉頭腔のうち, 仮声帯下面や喉頭室, 声帯下面などは死角となる.腫瘍性病変では, これらの部位に浸潤することもあり, 死角部位の詳細な観察法が望まれる.そこで, 泌尿器科で用いられる膀胱・尿道用の側視型硬性内視鏡にカラービデオカメラを接続し, 直達喉頭鏡を通して喉頭腔の多方向内視鏡観察を試みた.カラーテレビモニターに拡大された鮮明な映像を映し出すことができた.通常光源に加え, 喉頭ストロボスコープを使用し, バイブレーター法での観察も行われた.声門部上皮内癌と声門型喉頭癌の2症例に施行したが, いずれも鮮明な映像が得られた.本法を紹介するとともに, 手技や利点について考察した.
  • 伊藤 友彦, 辰巳 格
    1997 年 38 巻 2 号 p. 196-203
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究は幼児が日本語の特殊拍 (撥音, 長音, 促音, 二重母音の第二要素) をいつごろからどの程度自覚できるかを検討したものである.対象児は3歳から6歳の幼児80名であった.本研究の結果, 以下の点が明らかになった.聴覚的に提示された特殊拍省略語を自覚的に捉えることができる幼児は4歳では4割に満たなかったが, 5歳では6~7割に達した.しかし理由を適切に言語化できる幼児は5歳でも4割に達しなかった.これに対して特殊拍を発話において自覚的に分節化できる幼児は, 促音を除き, 4歳ですでに100%に達していた.一方, 文字の読みが可能な幼児は特殊拍省略語の自覚の発達と同様, 4歳から5歳にかけて著しく増加したが, 文字が読める幼児が特殊拍省略語を自覚できるとは限らなかった.また, 発話において特殊拍を自覚的に分節化できない幼児は文字の読みもできない傾向が認められた.索引用語: 特殊拍, 分節化, 発達, メタ言語知識, 読み
  • ―声のfreezing現象―
    三島 佳奈子, 堀口 利之, 野島 啓子, 三宅 直之, 磯崎 英治
    1997 年 38 巻 2 号 p. 204-210
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    薬効ピーク時に移動能力, ADLが向上する一方で, 一時的な起声困難が出現する若年性パーキンソン病患者を経験した.本症例の起声困難はドラッグコントロールにより改善しており, 薬物 (L-DOPA) に起因するすくみ現象による声帯の内転障害と考えられた.同一個体内で歩行と発声という異なる運動間ですくみ現象が時間的解離をもって出現した原因について考察した.結果, 同一個体内においても四肢・体幹と喉頭ですくみ現象の発現機序に相違がある可能性, あるいは薬物の治療閾値がおのおのの筋において異なる可能性を考えた.また, 本症例の起声困難には“kinesie paradoxale”を伴っており, 声帯のすくみ現象には発声を他の目標行動に変換して誘発する方法が有用であった.
    A 62-year-old man with juvenile Parkinson's disease was reported. When L-Dopa was working the patient felt difficulty in voicing although he could walk smoothly. Meanwhile, when L-Dopa was not working his difficulty in voicing disappeared but he was unable to walk. This discrepancy between voicing and walking is disussed.
    Laryngofiberscopic examination showed the following intriguing findings. When L-Dopa was working the patient's vocal cords assumed the hyperabduction position. Also, during an attempts at phonation, the vocal cords developed a tendency to adduct but were unable to. This movement seemed to correspond to a“freezing”phenomenon in walking. The adduction tendency of the vocal cords ameliorated temporazily by voluntarily making a cough instead of voicing. Such a phenomenon appeared as a freezing of vocal cord movement with kinesie paradoxale.
    Two hypotheses were raised to explain this “see-saw” phenomenon between voicing and walking. First, the mechanism of the freezing phenomenon might differ for voicing and walking. Second, the threshold for the effectiveness of L-Dopa might differ for the intrinsic laryngeal muscles controlling voicing and for the limb and truncal muscles controlling walking. The task of hawking which we attempted was very useful in speech therapy on PD patients who exhibited the freezing phenomenon of the vocal cords with kinesie paradoxale.
  • ―加工音による実験―
    東川 雅彦, 坂倉 淳, 高橋 宏明
    1997 年 38 巻 2 号 p. 211-215
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    囁語における高さの知覚 (ピッチ) とホルマント周波数の関連を明らかにすることを目的として, 正常発話者2名の囁語サンプル/a/のホルマント周波数を移動させた加工音を作成し, それらがピッチの知覚に及ぼす影響を調べた.加工音の設定は, 第1ホルマント周波数 (F1) , 第2ホルマント周波数 (F2) , および全周波数成分を±50Hz, ±100Hz移動させたものとした.聴取者は6名の耳鼻咽喉科医とした.その結果, 全周波数成分を移動させた加工音において, 移動に応じてのピッチの変化が最もよく知覚された.次いでF1を移動させた加工音がよく聞き取られた.F2の移動は設定どおりのピッチの変化が知覚されることは少なかった.以上の結果から囁語のピッチの出し分けには, 口唇の丸め, 喉頭の移動などによって得られる, ホルマント構造全体をシフトさせる調節が重要であることが推測された.
  • ―内視鏡検査と喉頭顕微鏡下手術を中心として―
    福田 宏之
    1997 年 38 巻 2 号 p. 216-223
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    1970年代から系統化されだした音声外科は最近では日常普通に行われる臨床行為となっている.あらゆる臨床はその基礎的研究に支援されたものでなければならないが, この音声外科もこの間のたゆまぬ基礎的研究に裏付けられたものとなっている.その中核となるものはなんといっても発声時の声帯振動の解明にあるだろう.著者らの研究室では, X線ストロボスコピーが開発され世界で始めて声帯振動を前頭面から実画面として記録解析することに成功した.幾多の研究の結果, 声帯振動の本質は粘膜波動でtravellingwaveであるとしそれも遊離縁に有意なものとした.一方で声帯の層構造に対しても, 従来の粘膜―筋層に加えて粘液層を乗せた3層構造を提唱しこれらの観点から声帯に対処すべきとした.また診断ではstrobofiber-videogram, electronic laryngoendoscopeを駆使して粘膜波動の動態解明から声帯の物性判定が大切であるとして音声外科, 特に喉頭顕徴鏡下手術はどうであるべきか言及された.すなわち声帯遊離縁の粘膜の保護維持が肝要で決して瘢痕形成を招いてはいけないわけで, あくまでも粘膜の柔らかさを保つべきとした.そのためには手術操作の数が少なければ少ないほどがよく1~2回の鉗子操作で切除すべく喉頭鏡操作, 器具の選択から注意が必要と主張された.言葉をかえると, 常に小さな器具で頻回にあたかも注意深く精密に行っているようにみえる喉頭顕微鏡下手術は良くないということである.
  • ―21世紀へ向けて―
    1997 年 38 巻 2 号 p. 224-225
    発行日: 1997/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 38 巻 2 号 p. 229
    発行日: 1997年
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
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