音声言語医学
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39 巻, 4 号
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  • 三浦 哲
    1998 年 39 巻 4 号 p. 363-368
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    聾学校幼稚部に在籍する4歳の聴覚障害幼児6名を対象に, 「話し合い」活動中に他者から提示された訂正方略に対する応答状況を検討した.その結果, 対象児は多くの場合, 他者による訂正方略に対する応答が可能であった.その際, 自らの最初の表出を反復するのではなく, 主に音声部分の発話内容や音韻的側面および韻律的側面を変更していた.また応答パターンには個人差が認められ, その個人差に関与すると思われる要因がいくつか見出された.さらに訂正方略の活用と応答の間の関連性が示唆された.今後の課題として, 対象児を縦断的に追跡し, 対象児の応答パターンと訂正方略の活用状況および音声表出能力との関係について, さらに検討する必要があると思われた.
  • ―言語学的説明の試み―
    伊藤 友彦
    1998 年 39 巻 4 号 p. 369-377
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    聴覚障害児は格助詞の習得が困難であるといわれているが, その習得の困難さの中身を言語学の知見を踏まえて掘り下げて検討した研究はほとんどない.本研究では1) 項構造と句構造, 2) 構造格と内在格, 3) 抽象格と形態格, の3点から聴覚障害児の格助詞の誤用を検討した.対象児は聾学校中学部に在席する生徒21名 (12~15歳) であった.本研究の結果, 格助詞の誤用を含む文の多くは, 項構造が正しく, 句構造もD構造のレベルまでは正しい可能性が示唆された.また, 多くの対象児が構造格と内在格の違いに関する言語知識は有していることがうかがわれた.しかし, 主格, 対格などの抽象格の付与・吸収, または付与された抽象格を「が」「を」などの形態格に具現する知識は十分には獲得されていないことが示唆された.
  • ―精神遅滞児の場合―
    喜舎場 国夫
    1998 年 39 巻 4 号 p. 378-382
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    精神遅滞児の場合, 能動文に適用される意味ストラテジー, 語順ストラテジー, 助詞ストラテジーがPiagetが示した思考発達のどの段階において習得されるかを, 数の保存課題を用いて検討した.対象児は39名で, 暦年齢は3歳5ヵ月から15歳5ヵ月 (平均10歳2ヵ月) , 精神年齢は1歳6ヵ月から7歳9ヵ月 (平均3歳7ヵ月) , 知能指数は8から73 (中央値42) であった.刺激文に対して動物のミニチュアを動かす動作法によって対象児が使用する文理解ストラテジーを判定した.その結果, これら3形式の文理解ストラテジーは前操作的知能の時期において習得が可能であることを確認した.さらに, 受動文が理解されるためには思考の発達が具体的操作の時期に達し, かつ脱中心化が獲得される必要があると考えた.
  • ―精神遅滞児の場合―
    喜舎場 国夫
    1998 年 39 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    精神遅滞児の場合, 文理解ストラテジーと順序概念とがいかなる関係にあるかを検討した.対象児は39名で, 暦年齢は3歳5ヵ月から15歳5ヵ月 (平均10歳2ヵ月) , 精神年齢は1歳6ヵ月から7歳9ヵ月 (平均3歳7ヵ月) , 知能指数は8から73 (中央値42) であった.順序概念に関するテストは絵カードの順序配列テストを用いた.
    その結果, 意味ストラテジーを使用する者には順序概念が形成されていなかった.語順ストラテジーを使用する者には順向性, 助詞ストラテジーを使用する者には逆向性の順序概念が形成されていた.また, 格助詞「が」と「を」の理解テストを質問法を用いて, 助詞ストラテジーを使用する者12名に対して行った.その結果, 両助詞の理解が可能な者と, どちらか一方のみしか理解できない者とがいた.
  • ―U仮説に基づいて―
    早坂 菊子, 小林 宏明
    1998 年 39 巻 4 号 p. 388-395
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    言語発達遅滞を既往歴に持ち, 治療時にも約1年相当の言語の遅れを持った3歳の吃音児に発吃直後に治療指導を行った.治療は言語発達の促進, 内面因子 (パーソナリティー) の変容を中心に行った.幼児吃音の類型化診断ではU4-A2と診断され, 予後は悪いことが予測された.しかし発吃直後ということもあり, また, 内面因子の神経学的問題にもプレイの内容を考慮して行ったことや, 言語発達の促進が順調であったことなどで, 治療開始後2年後の吃音症状は消失した.言語発達は文節数の長さで測定された.文節数が長くなればなるほど発語があいまいになるので, 臨床上みられるほどには, データー上の変化はみられなかった.しかし周囲の人と言語でコミュニケーションする力もつき, パーソナリティーの弱さ (対人的過敏性) も減少し, 安定して幼稚園生活をおくれるようになった.
  • 浅野 和海, 後藤 慶子, 櫻井 榮, 岡本 健
    1998 年 39 巻 4 号 p. 396-403
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    CATCH22患児9名の鼻咽腔閉鎖機能を調査し, 口腔内所見や鼻咽腔造影X線ビデオの所見とあわせて検討した.鼻咽腔閉鎖機能は, 2例が良好, 5例がやや不良, 2例が不全で, 計7例 (78%) に問題があった.口腔内所見では, 口蓋垂裂を4例 (44%) に, 後鼻棘の欠損を5例 (56%) に認め, 少なくともどちらか一つの所見を認めたのが, 9例中7例 (78%) であった.鼻咽腔閉鎖機能が良好であった2例にも, 後鼻棘の欠損を認めた.疾患別にみると, 粘膜下口蓋裂が3例, 先天性鼻咽腔閉鎖不全が4例であった.鼻咽腔閉鎖不良の主要因がS/P比のみにあったものは2例, 動態のみは1例, 双方は4例であった.S/P比に問題があった7例のうち, 3例は咽頭腔が深かった.
  • ―良性病変におけるビデオ観察―
    川井田 改弘, 福田 宏之, 甲能 直幸
    1998 年 39 巻 4 号 p. 404-409
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    接触型硬性内視鏡を用いた子宮の粘膜上皮の微細観察が婦人科領域で最初に行われた.その後, 喉頭領域においても, 全身麻酔下の直達喉頭鏡を用いた喉頭観察時に婦人科領域の接触型硬性内視鏡を用いて喉頭粘膜上皮の微細な観察がなされ, その有用性が報告されてきた.その後, Karl Storz社より喉頭用の接触型硬性内視鏡が開発され, 本邦でも市販されることになった.カラービデオカメラやビデオシステムなどを組み合わせて, カラービデオモニターのスクリーン上に喉頭粘膜上皮の微細構築を映し出すことができるようになった.われわれは, 喉頭の良性病変に本微細観察を行い, 実際の観察所見を呈示するとともに, その利点や今後の展望などについて検討した.
  • ―第一報: 構音機能の変化に関する検討―
    西尾 正輝, 新美 成二
    1998 年 39 巻 4 号 p. 410-420
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    筋萎縮性側索硬化症にともなうdysarthria2例を対象とし, 発話明瞭度が良好な時点から口頭コミュニケーションが困難となるまでの期間における構音機能の経時的変化について聴覚的および音響学的に検討し, 主として以下の結果を得た.1) 構音方法別分析では通鼻音の正当率が高く保持され, 構音が全体的に鼻音化する傾向を認めた.2) 母音では正当率が/a/で高く/i/で低下する傾向を認めた.3) 子音の音素別正当率の経時的変化でも2症例間である程度の共通性がみられ, 軽度期から障害された音素ほど経時的に重症化する傾向が認められた.4) 音響学的分析では, いずれの発話サンプルにおいても発話明瞭度の低下にともない, F1, F2でともに遷移率が低下し, 単音節および単語明瞭度の変化と高い相関を認めた.こうした結果から, 本音響学的パラメーターは構音機能の変化を客観的, 定量的に反映するものと考えられた.
  • 吉川 智子, 石原 保志, 大沼 直紀, 永渕 正昭
    1998 年 39 巻 4 号 p. 421-427
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究は, 重度聴覚障害者の補聴器適合を目的として, 最初に38名を対象として各周波数別の補聴器装用閾値と, アクセント・モーラ数の弁別および音韻聴取能力との関係を検討した.次に, この対象者の中で高音漸傾型で, かつ聴力レベルが80dB以上の者を21名選択し, 使用補聴器特性の検討を行った.
    結果から、以下のように考察できた.1) 重度聴覚障害者は, 音韻聴取が困難であるため, 聴取が良好な韻律情報が活用できるような補聴器設定がのぞまれる.2) 日本語の周波数特性の設定は, 250Hz~3000Hzの利得を最優先し, ハーフゲイン法以上の利得の補償が必要である.3) 聴器の保護を考慮しながらも, できるだけ最大出力音圧レベルを高く設定し, 広いダイナミックレンジを確保することが必要であると考えられた.
  • 田中 美郷, 針谷 しげ子
    1998 年 39 巻 4 号 p. 428-441
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本論文では聴覚障害および重度脳障害を有する重複障害児の難聴診断ならびにその対策について述べる.この目的のために, 他病院から難聴対策を求めて紹介され, かつ1年以上にわたってフォローアップしてきた高度ないし重度精神遅滞を有する重複障害幼児10例を選んだ.これら10例中4例は脳性麻痺を有し, 2例は視覚障害をも合併していた.聴覚的および神経学的精密検査の結果, 8例は中等度, 高度ないし重度の末梢性難聴を有し, 残り2例中1例は単純ヘルペス脳炎が原因の両側側頭葉損傷による高度な中枢性聴覚障害を有し, 他の1例は脳幹聴覚伝導路の未熟が原因と考えられる一時的難聴と判明した.これらの子供は全員われわれのホーム・トレーニング・プログラムに参加し, 末梢性難聴を有する8例には難聴の程度が推定でき次第補聴器を装用させた.8例とも補聴器の活用は成功したが, その効果の確認には長時間を要し, 特に高度難聴に重度精神遅滞, 脳性麻痺および盲を合併する最重度障害例では15年を要した.今回の長期にわたる追跡研究によって得られた知見は, 補聴器を活用した聴覚的リハビリテーションが長期にわたって忍耐強く続けられるならば, 高度難聴に重度精神遅滞を合併する重複障害児にも, コミュニケーションに役立つ聴覚機能を発達させ得ることを確信させる.
  • 高橋 宏明
    1998 年 39 巻 4 号 p. 442
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
  • 坂倉 淳
    1998 年 39 巻 4 号 p. 443-449
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    人工喉頭音声の現況と問題点を知る目的で京阪地区の喉摘者971名を対象としてアンケート調査を実施し, 681名から回答を得た.その結果, エレクトロラリンクス使用者の割合が増え, 笛式人工喉頭と食道音声使用者は減少していることが分かった.また, 高齢者ほど人工喉頭の使用者の多いことが判明した.
    喉摘者の自覚的満足度を調べると, 笛式人工喉頭は満足度が最も高く, エレクトロラリンクスは, 最も低いという結果になった.笛式はエレクトロラリンクスに比べ, ほとんどの年齢および使用年数で高い満足度を示した.また, 会話のみならずQOL全体に対する評価では, 笛式は満足度が高く, エレクトロラリンクスは低い結果となった.
    高齢化の進みつつあるわが国では, エレクトロラリンクスの果たす役割は大きく, 一方, 笛式人工喉頭も, 今なお, その価値を失っていないことが確認された.効果的な発声指導のためには医師やSTと喉摘者の連携が重要と考えられた.
  • ―空気力学的な面より―
    長井 克明, 岩田 重信
    1998 年 39 巻 4 号 p. 450-455
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    われわれは食道音声の発声機構につき研究してきたが, 本実験では流率, 新声門下圧, 基本周波数, 音圧に咽頭圧を加えて14名の無喉頭者の食道音声に対して同時測定した.流率, 咽頭圧, 新声門下圧については中央値が不安定のため最大値を採用した.咽頭圧, 新声門下圧は, 2つの体内式マイクロチップトランスデューサーを経鼻的に挿入して測定した.録音した食道音声は聴覚的分析法を用いて習熟度判定を行った.新声門下圧は17.3から193.6cmH2Oに分布し, その値は正常喉頭者の声門下圧より高値を示した.発声中の新声門下圧は常に咽頭圧より高かった.上級者は中, 低級者に比較して流率, 咽頭圧, 新声門下圧は高く, 抵抗は低かった.空気力学的検査は食道音声の機構解明に有用であった.
  • 小林 範子
    1998 年 39 巻 4 号 p. 456-461
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    喉頭摘出後の患者に対する音声リハビリテーションは元来言語聴覚士 (ST) が担当する業務である.その内容は (1) 患者に対する無喉頭音声の理解の促進, (2) コミュニケーション手段の選択, (3) 食道音声などの無喉頭音声の訓練, (4) 無喉頭に伴うコミュニケーションの問題などに関する相談と助言である.北里大学病院ではSTが医師との協力体制の下で系統的に音声リハビリテーションを実施した結果, 食道音声が効率良く獲得されることが認められた.その実施状況を紹介し, 無喉頭音声の訓練の基本的な条件などについて検討した.
  • 木西 實, 天津 睦郎, 牧野 邦彦, 毛利 光宏, 佐古田 美佳, 藤本 崇史, 寺岡 優, 大月 直樹, 斎藤 幹
    1998 年 39 巻 4 号 p. 462-467
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    過去20余年間に行ってきた300余例の気管食道瘻形成術による音声再建成績と気管食道瘻音声の発声機構の概要を述べた.
    気管食道瘻音声は下咽頭後壁に主として甲状咽頭筋の筋収縮による膨隆部が生じ, これが前壁粘膜と接触部を生じ, その一部に新声門が形成される.新声門での粘膜振動により規則性のある音声が生成され, 強大音や高音生成時にも呼気圧の増大に対応して甲状咽頭筋がその収縮の度合いを変化させることにより新声門閉鎖を保持する新声門での音声調節を遂行していた.また, 無声音生成時に甲状咽頭筋の一過性弛緩により新声門閉鎖の保持力の低下をさせることにより新声門での構音調節を行っていた.
    このように気管食道瘻音声では, 喉頭調節に代わる新声門調節として甲状咽頭筋が収縮・弛緩という役割を遂行する発声機構が存在することが判明した.
  • ―新声門調節をめぐって―
    西澤 典子, 目須田 康
    1998 年 39 巻 4 号 p. 468-476
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    食道音声, 気管食道瘻音声の音源 (新声門) の開大閉鎖機構を中心に嚥下, 発声, 発話における調節を検討した.無喉頭音声の熟練者を対象として, フォトグロトグラムによる新声門開大度のモニターとともに口腔内圧, 筋電図, 音声などを同時記録し, 解析した.嚥下や食道音声の空気摂取など比較的粗大な運動について, 新声門開大筋としてオトガイ舌骨筋, 新声門閉鎖筋として下咽頭収縮筋を同定した.両者の協調の様子は下咽頭収縮筋が発声における振動部を形成する筋肉として働くか否かによって異なっていた.語中無声音の構音で, 新声門の一過性開大が音源振動の一時的停止に関与し有声無声の出し分けを成立させている可能性が示唆され1例の被験者で下咽頭収縮筋の一過性抑制による新声門開大への協調が確認された.しかし他の6例では必ずしも正常喉頭にみられるような開大筋閉鎖筋の相反的活動の図式を当てはめることはできなかった.
  • ―各種検査法の適用とその問題点―
    能登谷 晶子, 中村 公枝, 鷲尾 純一, 内山 勉, 廣田 栄子, 森 寿子, 中川 辰雄
    1998 年 39 巻 4 号 p. 477-482
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    わが国では聴覚障害児の言語機能に関する標準化された検査法や評価法はいまだ確立されていない.臨床場面で健常児に比較的よく使用されている検査法 (ITPA, 読書力診断テスト, 田中ビネー知能検査, トークンテスト) を用いて, 聴覚障害児の言語評価を実施した.本報告ではこれらの検査を聴覚障害児に用いた時の結果や問題点について述べた.さらに, アメリカ合衆国において標準化された聴覚障害児の言語評価についても言及した.
  • ―評価項目の検討とその問題点―
    能登谷 晶子, 中村 公枝, 廣田 栄子, 森 寿子, 鷲尾 純一, 内山 勉, 白坂 康俊
    1998 年 39 巻 4 号 p. 483-487
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本稿では, まず臨床家に実施したアンケート調査の結果について述べた.さらに, 聴覚障害児に言語検査を行う際の特殊性や言語評価を語彙, 構文, 意味的側面からまとめた.
  • ―聴覚障害小委員会の活動をふまえて―
    倉内 紀子, 氏田 直子, 白坂 康俊, 城間 将江, 高橋 晴雄, 中川 辰雄, 能登谷 晶子, 福田 友美子, 冨里 則子, 森 寿子
    1998 年 39 巻 4 号 p. 488-494
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    日本音声言語医学会言語委員会の聴覚障害小委員会人工内耳部会は, 1993年に発足し, アンケート調査, ワークショップの開催, 報告書の作成などの活動を行ってきた.本稿では, 人工内耳部会の活動を報告するとともに, 装用者の推移, コード化法の改良, 人工内耳の効果と限界, 適応基準の変化など, 小児人工内耳をめぐる近年の動向を概説した.そして, 今後の課題として, 効果の個人差に及ぼす要因の検討, 健聴児や補聴器装用児との言語発達の比較研究, 評価・訓練法の開発, リハビリテーション・プログラムの整備などがあげられた.とくに, 小児の人工内耳では, 聴取能力だけでなく, 発語能力や言語能力, コミュニケーション能力なども含めた総合的な観点からの検証を行っていくことが重要であることを提言した.
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