音声言語医学
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42 巻, 4 号
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  • ―予防的関与を視野に入れて―
    溝上 奈緒美, 早坂 菊子
    2001 年 42 巻 4 号 p. 304-310
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    3歳児を持つ親を対象に行った非流暢性発話に関する調査についで, 2年後追跡調査を行い, 幼児吃音発生に影響を与える要因に検討を加えた.その結果, 環境要因として, 親子言語関係の過保護性・受容性が非流暢性の変化に影響を与えることが示唆された.また, 子どものパーソナリティについては, 母親依存傾向のみが, 非流暢性の変化に影響を与える要因となることが示唆された.
    これらの結果から, 親の過保護性は子どもの母親依存傾向を助長し, 非流暢性の維持要因を形成していくこと, そしてそこに悪化要因となりうる規範性・非受容性が加わり非流暢性が吃音へと進展するという, 親子言語関係と子どものパーソナリティ傾向との相互作用から, 幼児吃音発生過程を考察した.
    また, 考察された吃音発生過程から, 幼児吃音予防の可能性も示唆された.
  • 武田 篤, 及川 絵美子, 村井 盛子
    2001 年 42 巻 4 号 p. 311-319
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究は特異的言語発達遅滞児の予後に影響を及ぼす因子を明らかにするために行われた.対象は1988年から1999年までの間に当科言語治療室で特異的言語発達遅滞と診断した134例で, これらを言語理解の発達が良好か否かを基準に, 発語遅滞群と言語理解遅滞群の2つのサブタイプに分類した.2群の改善率をカプランマイヤー法どログランク検定で比較すると, 各時点および追跡期間全体で両群間に有意差を認め, 発語遅滞群は言語理解遅滞群よりも有意に予後が良好であった.どのような臨床的要因が改善に交絡しているかを調べるために, コックス比例ハザード回帰モデルを用いて検討したところ性別, 発語および言語理解の3つの因子が関与していた.なかでも言語理解は予後を左右する最も重要な因子であったことから, 臨床的に言語理解の発達を基準に特異的言語発達遅滞を2つのサブタイプに分類することは, 予後の予測に有用であると結論した.
  • 小島 義次
    2001 年 42 巻 4 号 p. 320-324
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    運動性構音障害 (dysarthrias) の発話時の息づかい能力を日常臨床で簡便に評価する目的で痙性構音障害18名, 失調性構音障害12名に「音読時息つぎ検査」を行って, その成績を発語運動機能検査結果との関連で検討した.発話障害のない者5名を対照群とした.
    息つぎ回数と会話明瞭度との間に高い相関があった.息つぎ回数と最大発声持続時間との相関は相対的に低かった.最大発声持続時間に加えて, 痙性構音障害では発声ならびに構音動作の正確さが息づかいに影響しており, 失調性構音障害では呼気タイミングの調節能力が重要であると考えられた.
    以上から本検査は発話時の息づかい能力の有効な評価法であると結論した.
  • 小林 武夫
    2001 年 42 巻 4 号 p. 325
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
  • 村野 恵美
    2001 年 42 巻 4 号 p. 326-331
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    痙攣性発声障害は原因不明のまれな神経疾患である.多くの場合, 診断は音声の聴覚的評価から容易に可能であるが診断の誤りを避けるためにはいくつかの注意を払わねばならない点がある.本論文は3部からなる.第1部ではSDに関する最初の報告, 定義さらに音声障害の専門家の見解がどのように変化してきたかなど, この疾患に関わる歴史的背景を概説した.第2部では, 適切な診断のために, 専門家にとって最も重要な方法について述べた.音声の聴覚的印象評価はSDの診断における有力な手がかりには違いないが, この他に考慮しなければならない二つの側面がある.一つは, 特定の発声課題時に観察される喉頭の異常運動であり, もう一つは同じ様の音声症状を呈する他の患者との鑑別診断のための詳細な問診である.第3部では鑑別が必要な主な疾患について述べた.
  • 牧山 清, 熊田 政信, 小林 武夫
    2001 年 42 巻 4 号 p. 332-342
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究では痙攣性発声障害 (SD) の重症度を評価する目的で音声評価法を考案し, その有用性について検討した.SD患者15人を対象としたモーラ法の検討では, 聴覚的重症度が高い患者ではモーラ法のスコアーも高かった.また, 経過観察における重症度評価にも有用であった.別のSD患者15人を対象として音響学的および空気力学的評価を行った.朗読時間に対する無音区間の比率, shimmer, SNR, およびflow標準偏差値と聴覚的重症度との間に有意の関係が認められた.日常生活の各場面を想定した支障度評価用アンケートを作成し, 聴覚的重症度と比較検討した.その結果, われわれが診察中に把握することができない患者の日常の支障度を評価することが可能であった.
  • ―アンケート調査による検討―
    山崎 竜一
    2001 年 42 巻 4 号 p. 343-347
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    Questionnaires were sent to physicians and speech and hearing therapists who examined and treated patients with spasmodic dysphonia (SD) during a 5-year period from 1994 to 1999. Questioned were the number of SD patients seen in the past 5 and 1 years, age of onset, age of initial visit, sex, classification and treatment methods. The questionnaires were sent to 81 facilities in the nationwide university hospitals, of which 45 facilities, or 56%, responded. Questioned also were the number of new outpatients in the past year and the number of patients with laryngeal cancer, sudden deafness or Bell's palsy, The morbidities of patients with the above diseases were compared retrospectively with that of spasmodic dysphonia. The findings of investigation are as follows.
    1. The number of patients scen in the past 5 years was 224. Sex was confirmed in 169 patients ; 31 males (18.3%) and 138 females (81.6%) or sex ratio 1: 4.4. The ratio of the females to males was relatively higher than that found in the literatures.
    2 . Classification was confirmed in 169 patients, of whom 153 (91%) had adductor type and 16 (9.5%) abductor type.
    3 . Age of onset as a whole was between 14 and 77 years old (average 36.7), that of adduction type was between 14 and 77 (average 37.2) and abduction type between 15 and 71 (average 33.1) .
    4 . The estimated morbidity of SD per 100, 000 population was inferred to be 0.29 originating from laryngeal cancer, 0.77 from sudden deafness and 0.94 from Bell's palsy.
  • 小林 範子, 廣瀬 肇, 小池 三奈子, 原 由紀, 山口 宏也
    2001 年 42 巻 4 号 p. 348-354
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    痙攣性発声障害 (SD) に対する音声訓練の有効性を検討するために, SDと診断された患者17名に対して訓練を実施した.喉頭の過緊張の軽減に有効とされる6種類の訓練手法と発話速度低下の訓練を組み合わせて使用した.音声症状の評価は, 3名の言語聴覚士による「喉詰めの度合い」の聴覚印象評価によって行った.17名のうち9名が音声の改善と結果に対する患者自身の満足に基づいて訓練を終了し, 2名が通院困難のために訓練中止, 6名が音声改善中のために訓練継続という結果であった.訓練終了例の年齢, 病悩期間, 訓練回数, 初診時の重症度には共通点が認められなかった.重度の音声症状が軽度にまで改善して訓練を終了したものが4例あった.「ため息発声」, 「気息声」, および発話速度低下訓練が多くの症例に有効な訓練手法であった.本研究の結果は, SDに対する治療法の一つとしての音声訓練の有効性と訓練の実施方法を示唆するものと思われる.
  • 熊田 政信, 村野 恵美, 小林 武夫
    2001 年 42 巻 4 号 p. 355-361
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    内転型の痙攣性発声障害の治療法としてわれわれはBotulinum Toxin (BT) 甲状披裂筋内注入術を主に用いている.その理由は, 自覚的にも他覚的にもよく効くこと, 侵襲性が少ないこと, 副作用が軽微であることなどである.BT (A型) はClostridium botulinum (ボツリヌス菌) の産生する神経毒で, 神経筋接合部に作用し一時的な麻痺をもたらす.効果の持続は平均約3ヵ月であるが1年以上効果が持続する例もみられるのは注目に値する.副作用としては気息性嗄声と誤嚥があるが, これらは長くても2週間以内には消失する.注射法としては, 主に前頸部からの経皮的注入法により, 筋電図ガイド下に行う.23ゲージ注射針を用いるが, 先端部分以外が絶縁コーティングされた特別仕様であり, 同時に筋電図の電極となる.初回注射は片側2.5単位とし, 効果が過不足する場合他のオプション (両側2.5単位ずつ, 片側5単位, 両側5単位など) への移行を考える.
  • 一色 信彦
    2001 年 42 巻 4 号 p. 362-368
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    痙攣性発声障害に対し声門を開大させる甲状軟骨形成術II型を11例に行い1例を除ききわめて良好な結果が得られた.本症の特徴は独特な音声 (持続的圧迫努力性音声か継続性努力性音声) と喉頭の過閉鎖声帯過内転にある.手術の原理は甲状軟骨を正中で, 軟骨下の軟部組織は可及的に損傷しないようにして, 切断, 左右に広げ声が楽に出るように軟骨断端の分離巾をきめる.通常3~4mmである.1例の不成功例は他のジストニアの合併のため軟骨が異常肥厚しており開大が不可能であった.改善全例で, 術中の音声の変化, 発声しやすさの変化から本手術法が合理的であることが分かった.軟骨開大巾の維持固定には主にシリコンブロックを用いたが, 正確を要する手技で成功を大きく左右する.術後瘢痕拘縮などの影響を考慮して, 術中は過矯正ぎみが望ましい.本法は声帯に触らないので音声悪化の可能性はなく, 正確を要するが安全, 術中調節可能, 再手術可能の手法である.
  • 中西 由佳
    2001 年 42 巻 4 号 p. 369-374
    発行日: 2001/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    ボツリヌストキシン治療を受けたことのある痙攣性発声障害患者 (SD) を対象に, 平成12年2月21日~平成12年4月6日にアンケート調査を実施した.調査の目的は, 患者がSDと診断されるまでの経緯と患者の社会生活の実態を把握することであった.調査対象35名のうち, 有効な回答は28例 (対象総数の80%) であった.
    調査結果から, SD患者はSDと診断を受けるまでに複数の病院を受診する必要があったことがわかった.さらにSD患者は発症したことによってコミュニケーション活動を抑制する傾向にあることもわかった.
    回答をよせたSD患者の意見を集約すると, SDの早期診断の重要性と社会的認知の必要性を求めるものが主なものであった.しかし現状でのSD診断は不確実なものであり, その治療施設は少なく, 治療機会は限られている.また, 診断後の患者への対応にも検討すべき点が明らかとなった.
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