私達はこれまで, さまざまな舌切除量の患者の上顎口蓋部に, 患者の残された舌の機能をより有効に活用することを目指して, 「アタ」・「アキ」・「アカ」の3被験語のパラトグラムを利用した舌接触口蓋床義歯を製作し, 発音を含めた顎・口腔機能の改善に良好な成績を上げてきた.
今回は, 舌切除患者に装着した舌接触口蓋床義歯の長期にわたる保全を行っていくための基礎的資料を得るため, 舌切除の程度の異なる, 発語明瞭度が50%以下の2症例を対象に, 新・旧舌接触口蓋床義歯装着時の舌の調音の特徴を, 装着した舌接触口蓋床の口蓋形態とパラトグラムを用いて検討した.
その結果, 一方の症例 (症例A) では舌の可動範囲が小さく, またもう一方の症例 (症例B) では可動範囲が大きくなっていく様子が伺われた.すなわち, 舌の形態・機能は変化しており, その変化の傾向には個人差があることが認められた.
したがって, 積極的, 定期的な検査や保全を行う姿勢の必要性が示唆された.
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