音声言語医学
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49 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • ―functional MRIによる検討―
    本間 緑, 今泉 敏, 丸石 正治, 村中 博幸
    2008 年 49 巻 4 号 p. 237-247
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    音声の聞き手が発話者の気持ち (快/不快) や聞き手自身が受けた気持ち (快/不快) を判断する課題での脳活動を事象関連機能的磁気共鳴画像法によって解析した.刺激として, 言語属性 (語の辞書的意味: 肯定的/否定的) と感情属性 (話し方で伝達される感情: 快/不快) が調和ないし拮抗している音声を使用した.その結果, 背内側前頭前野の活動は両課題とも有意に活動した.活動レベルは発話者の気持ち判断より聞き手自身の気持ち判断でより高かった.音声の感情属性と研究協力者の判断結果の一致率と反応時間では, 両課題とも言語属性と感情属性の交互作用が有意であったが, 感情属性の主効果は発話者の気持ちの判断のみ有意であった.音声の言語属性と感情属性は発話者の気持ちや聞き手自身の気持ちの判断過程で相互にかかわり合い, 背内側前頭前野は両属性の統合結果に基づいて行われる発話者の気持ちや聞き手自身の気持ちの推定に寄与することが示唆された.
  • ―評価表の作成を試みて―
    前岡 恵美
    2008 年 49 巻 4 号 p. 248-253
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    失語症者の言語聴覚療法においてQOLの向上につながる訓練法の構築が重要である.今回, QOLに結びつくパラメーターとして「能動的態度」に着目した評価表 (能動的態度評価表; 以下, 評価表) を作成し, その基本的事項の検討をした.評価表は, 事物への関心, 対人意識等の6側面で構成し, 25の下位項目を設定した.本評価表を用いてスタッフ6名が15名の失語症者を評価した.その結果, 本評価表は内的整合性信頼性が高く評価スタッフ間の一致度は25項目中23項目で高かったことから, 失語症者の能動的態度の評価に有用性があると考えられた.また, 評価結果では, 事物への関心, 参加態度, 日常生活動作の3側面は良好であり, 対人意識, 発話行動, 社会的行動の側面は良好とはいえなかった.下位項目では, 言語的手段を必要としない項目は良好であり, 話題転換, 話題提供, 指導的役割, 指示行動, 他者への気遣い, 援助行動について, 非良好であった.
  • ―学習障害児の指導に関して―
    酒井 厚, 堀 彰人, 宇野 彰
    2008 年 49 巻 4 号 p. 254-264
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, 全国の医療関係者140名 (医師, 言語聴覚士, 臨床心理士など) に横断的な調査を行い, 学習障害児への評価・診断・指導に関する教育機関との連携の実態と, 連携行動を促進もしくは抑制する要因メカニズムについて検討した.
    結果としてどの職種の医療関係者も, 連携の必要性意識は高いが実際の行動は少ないと認識していた.また, 連携行動に関する多くの項目で医師の得点が他職種より高く, 教育機関との連携時には医師のリーダーシップが重要なことが示唆された.
    連携行動への影響要因を探るパス解析では, 医療関係者のアセスメント実施頻度の高さが医療関係者から教員への援助を促し, それが医療と教育の双方向的な連携につながるという結果が得られた.また, このアセスメント実施頻度の高さは, 医療関係者による親や担任教員との「情報交換」の活発さに基づくものであることが示された.
  • 弓削 明子, 岡部 早苗, 石田 宏代, 鈴木 恵子, 正来 隆, 西山 耕一郎, 岡本 牧人
    2008 年 49 巻 4 号 p. 265-272
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    言語発達遅滞を伴った粘膜下口蓋裂児1症例の構音指導経過を整理し, 障害の背景について検討した.3歳11ヵ月で初回口蓋形成術が施行されたが, 鼻咽腔閉鎖機能不全が残存した.言語は発達したが不明瞭な構音の状態が続き, 構音の特徴としては (1) 呼気の鼻漏出による子音の歪み (2) 声門破裂音の残存 (3) 構音可能な音が少ない (4) 構音可能な音の一貫性のない誤り (5) 音節の省略 (6) 音読時に構音が改善することが挙げられた. (1) ~ (3) は鼻咽腔閉鎖機能不全の影響が考えられ, 5歳10ヵ月時再手術の適応となった.また (3) には運動の拙劣さが, (2) (4) ~ (6) の背景には音韻意識の悪さが考えられた.そこで構音器官の位置づけ法を用いた子音の生成訓練に加え音韻意識の形成を目的とした指導も併せて行った.その結果8歳時には会話明瞭度は初診時の4から2へと改善が見られた.以上より口蓋裂児の診療にあたっては, 鼻咽腔閉鎖機能だけではなく, 音韻意識の発達も考慮して評価し, 必要に応じてその指導をすることの重要性が示唆された.
  • 五島 史行, 矢部 はる奈
    2008 年 49 巻 4 号 p. 273-276
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    難聴を一定期間放置すると語音明瞭度が低下することは長期間の難聴に伴う聴取能の剥離として知られている.高齢者の補聴器装用者の問題は語音明瞭度の低下によるものが多い.近年, 言語聴覚士の積極的介入を軸とした補聴器フィッティング, 装用訓練を導入し補聴器装用訓練が奏功する可能性が報告された.言語聴覚士を積極的に活用できる医療施設等は限定されるため, より簡便な聴能回復リハビリテーション法が必要である.今回われわれは, 自宅での音読トレーニングなどを指導することによって裸耳の語音明瞭度の改善を認めた症例を経験したので報告する.症例は77歳女性.2005年7月に感音難聴を主訴に初診.両側高度感音難聴を認めた.語音明瞭度は右30%, 左20%であった.書籍“脳を鍛える大人の音読ドリル―名作音読・漢字書き取り60日”を用いたトレーニング, 新聞の音読をすることを指示した.6ヵ月後右耳の語音明瞭度は60%まで改善した.
  • 澤村 誠志
    2008 年 49 巻 4 号 p. 277-280
    発行日: 2008/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    私は, 父が切断者であったことから, 「切断者のリハビリテーション」をライフワークとして地域で生活されている多くの切断者の生活から, 多くを学んだ.そしてそのニーズから医療リハ・社会リハ・職業リハ・教育リハ・リハ工学・まちづくりなど総合リハサービスの連携の重要性を心に刻み, その拠点として, 昭和44年兵庫県立総合リハビリテーションセンターの開設にかかわった.「障害のある人が私の師, 地域が私の教科書」.これが今でも私の永遠のテーマとなっている.年齢, 障害の種類, 性別, 文化を超えて, 誰もが住み慣れた地域で, 一生安全に, 安心して, 心豊かに生き生きとした生活が送れるような地域社会を創生したい.これが「地域リハビリテーションの心」であり, ゴールはユニバーサル社会の創生にある.このためには, 海外先進国との比較において遅れているわが国の社会保障制度の抜本的な改革を含めて, 医療, 介護福祉, 障害者福祉などのあり方についての提言を行った.
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