音声言語医学
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総説
  • 深堀 光緒子, 千年 俊一, 栗田 卓, 伊東 智樹, 渡邉 紗千, 佐藤 文彦, 梅野 博仁, 佐藤 公則
    2025 年66 巻4 号 p. 171-176
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/21
    ジャーナル 認証あり

    声帯粘膜病変に対する顕微鏡下の経口的レーザー手術(TLM)では,音声機能の温存と病変の根治性の両立が求められる.TLM後の音声は切除範囲に依存し,特に声帯筋切除を伴う場合には顕著な音声障害を生じる.声門癌に対するTLMではELS分類が広く用いられているが,声帯振動に重要な粘膜上皮と粘膜固有層浅層の切除に対応するのはType Iに限られる.当科では,Type Iに相当する切除を,平野分類に準じて,声帯上皮のみの切除,声帯靭帯が露出する切除,声帯筋の露出を伴わない声帯靭帯の部分切除として行っている.粘膜固有層浅層はヒアルロン酸に富み微小血管が分布する領域であり,創傷治癒において瘢痕抑制と組織再生に寄与するため,過剰切除は術後の声帯振動障害を助長しうる.音声外科医が行うTLM手技は緻密かつ繊細であるべきで,可能な限り術後の声帯振動を回復させる,つまり声帯瘢痕の形成を抑制する工夫が求められる.

原著
  • 松尾 基史, 中村 光
    2025 年66 巻4 号 p. 177-184
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,聴覚障害や知的発達症などの明確な原因が特定されないが,年中(4歳児クラス)までに言語発達遅滞と診断された児における,その後の言語発達阻害を予測する因子を明らかにすることである.言語発達遅滞のあった児146名を,就学直前に実施したWISC-IVの言語理解指標(VCI)値によってVCI良好群109名と不良群37名に分け,年中時に実施した各種言語発達検査の結果および各種情報を両群間で後方視的に比較した.その結果,国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査の聴覚的記銘力の成績,絵画語い発達検査(PVT-R)の評価点が,言語発達不良を予測する変数として抽出された.また,自閉スペクトラム症および(または)注意欠如多動症の有無別の2群でそれぞれ同様の分析を行うと,あり群では類似の結果が得られたが,なし群では聴覚的記銘力のみが言語発達不良と関連した.幼児期の言語発達遅滞児に対しては,ワーキングメモリと理解語彙力を評価することが予後予測に重要であると示唆された.

  • 長谷川 智宏, 渡邊 雄介
    2025 年66 巻4 号 p. 185-191
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/21
    ジャーナル 認証あり

    背景:一側性声帯麻痺に対する声帯内トラフェルミン注入術において,音声改善が十分に得られず追加治療が必要となる場合がある.しかし,その術前因子は明らかでない.
    方法:2014年から2017年に当院で一側性声帯麻痺の診断で,声帯内トラフェルミン注入術を受けた患者75例の診療録を後方視的に調査した.年齢,術前の最長発声持続時間,声区,平均呼気流量,Voice Handicap Indexおよびこれらの術前後変化量を評価項目とした.
    結果:注入前の声区,平均呼気流量で有意差を認めた.カットオフ値を算出したところ声区が17.5半音,平均呼気流量が972.1ml/secとなった.術前後の変化量で最長発声持続時間において有意差を認めた.
    まとめ:一側性声帯麻痺に対する声帯内トラフェルミン注入術において,術前音声検査の声区,平均呼気流量が音声改善効果の予測因子となり,術後の最長発声持続時間改善が再治療の指標である可能性がある.これらを基に患者にとって最適な治療方針を決定する必要がある.

  • 青木 瑞樹, 飯村 大智, 宮本 昌子
    2025 年66 巻4 号 p. 192-200
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,成人吃音者の生活の質(QOL)の高低に関連する要因の関連性を明らかにすることを目的に,吃音者86名に対し質問紙調査を行い,セルフ・スティグマと自己受容に焦点を当てた仮説モデルを検証した.その結果,セルフ・スティグマが自己受容を媒介して精神的健康度に関連し,特に自己受容が高いことがQOLの精神的健康度の向上に関連することが確認された.また,セルフ・スティグマは吃音に関する知識や自助グループ(SHG)の参加経験によって調整されることが示された.SHGへの参加は役割/社会的健康度にも直接的な関連を示し,これらの要因が吃音者の精神的・社会的健康度の向上に重要な役割を果たすことが示された.QOL向上にはセルフ・スティグマの軽減やSHGの活用が有効であると考えられるとともに,自己受容に焦点をおくことで吃音の持続的な困難感に対する態度や価値観に変容をもたらし,長期的に高いQOLを維持するための基盤となることが考えられた.

  • 兒玉 成博, 坂本 和也, 原 浩貴
    2025 年66 巻4 号 p. 201-208
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/21
    ジャーナル 認証あり

    音声障害に対してケプストラム分析を行い,信頼性を検証したので報告する.2024年4月から2025年2月までの間に川崎医科大学附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科にて音声障害と診断され音声評価を実施した24例(男性5例,女性19例,平均年齢48.7±19.1歳)を対象とした.本研究では,ケプストラム分析のCPP,L/H ratioおよびCSIDに焦点を当て,検査者内および検査者間信頼性,日内再現性,分析方法間の比較を検討した.結果,検査者内信頼性および検査者間信頼性では高い一致度を認めた.日内再現性に関しても,ほとんどの項目で高い一致度が確認された.分析方法の比較では,「今,一気に板を切る」「ピリッと辛い柿の種を買った」において,CPPおよびL/H ratioの一致度は低かったものの,強い相関を示した.検査に用いる短文によっては,分析方法の違いにより解析結果に差異を生じ,特に硬起声や破裂音を含む短文ではその傾向が強いと推測された.

  • 竹尾 勇太
    2025 年66 巻4 号 p. 209-216
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,知的障害(ID)児と定型発達(TD)児の複文の理解方略について等位節文と関係節文を用いて明らかにすることを目的とした.また,音韻記憶と語彙年齢の関連も検討した.参加児はID児21名,TD児20名であった.文理解課題は,絵画選択法を用いた.音韻記憶課題は非語の復唱を実施し,語彙年齢はPVT-Rで測定した.実験の結果,両群ともに関係節文の成績が等位節文より有意に低かった.またID群では等位節文と音韻記憶の間,TD群では関係節文と語彙年齢の間に有意な正の相関を示した.本研究の結果から,ID児およびTD児は複文の理解において,はじめの名詞句-名詞句-動詞の連鎖を単文と捉え,主節と従属節の述語を対等な関係として解釈する可能性が示唆された.また,TD群では語彙年齢が高い児ほど連体修飾節内の動詞の項構造を手掛かりにしていると推測された.一方,ID群では文の長さと複雑さが増すと,音韻記憶や語彙発達の影響を受けにくくなることが示された.

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