音声言語医学
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66 巻, 3 号
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総説
  • 熊井 良彦
    2025 年66 巻3 号 p. 115-118
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    再生医療は機能が欠落した組織,器官や臓器等の損傷に対し,正常な機能を有する細胞や組織を移植して機能回復を図るため,根治療法となりうる.音声言語の源となる器官である喉頭は粘膜,筋肉,軟骨からなる複合組織であり,呼吸,発声,嚥下という人間のQOLに直結する重要な機能に密接にかかわっている.すでに音声言語領域においても枠組み,筋肉,粘膜,反回神経などを対象とした再生医療研究が活発に行われており,一部はすでに臨床応用にいたっている.本稿では,他領域での再生医療の現状と展望およびそれらの音声言語領域への応用について紹介する.

  • ―声帯瘢痕に対する新規薬物治療法の開発と再生治療の進歩―
    椋代 茂之, 金子 真美, 平野 滋
    2025 年66 巻3 号 p. 119-127
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    声帯瘢痕は難治性線維化疾患であり,嗄声による生活上の損失は大きい.線維化予防・根治治療ともに確立した治療法はない.われわれは,動物実験モデルを用いて新規薬剤による線維化予防効果を検証した.選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)やtransient receptor potential ankyrin 1(TRPA1)活性化によるTGF-β1/Smadシグナリングを介した抗線維化作用,響声破笛丸の抗炎症・抗酸化作用を介した線維化予防を明らかにした.近年,声帯瘢痕に対する根治治療として再生医療の有効性が報告されている.なかでも,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は,実臨床で軽症・中等症例への有効性・安全性が確認されている.一方で,重症例への効果は限定的であることもわかり,新たな課題となっている.われわれは,重症瘢痕を想定した動物実験モデルにおいて,有望な再生材料とされる羊膜による声帯粘膜全置換移植を行い,良好な再生効果を確認した.これらの基礎研究の成果を臨床応用につなげることが今後の課題である.

  • 佐藤 公則, 千年 俊一, 佐藤 公宣, 佐藤 文彦, 梅野 博仁
    2025 年66 巻3 号 p. 128-136
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    披裂軟骨内の弾性軟骨は,披裂軟骨声帯突起尖端から尖にかけて披裂軟骨の上部に分布している.披裂軟骨が内転外転する際には,声帯突起尖端の弾性軟骨部が湾曲する.披裂軟骨が内転して声門が閉鎖する際には,披裂軟骨声帯突起尖端から尖にかけて披裂軟骨の上部に分布する左右の弾性軟骨部が接する.同部は重層扁平上皮に覆われている.
    機能組織解剖学的に弾性軟骨は,披裂軟骨声帯突起が開大,閉鎖する際に柔軟に湾曲し,声帯突起尖端に掛かる負荷を軽減し,両側披裂軟骨が接触する際に生じる機械的損傷から,披裂軟骨とそれを覆う粘膜を保護する役割が示唆される.弾性軟骨は終生骨化せず,その機能を生涯維持する.
    披裂軟骨声帯突起は声門の形成と枠組みの支持体として尖端ほど柔軟性・弾性に富んだ支持体をもった組織構造であり,後方にいくほど支持体としてしっかりした構造になっており,披裂軟骨声帯突起の働きにとって機能的な組織構造である.

原著
  • 太田 久裕, 小渕 千絵, 山本 弥生, 山田 浩之
    2025 年66 巻3 号 p. 137-143
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    わが国では高齢化が進んでおり,高齢者の問題の一つに難聴が挙げられる.このような社会のなかでは,健康で社会とのつながりをもち,楽しみながら生きることは重要となる.本研究では,補聴器を装用した難聴高齢者36例,健聴高齢者24例に対し主観的幸福感,不安,抑うつ,社会的孤立の質問紙による調査を実施し,両群を比較し,個人要因について分析した.その結果,両群間で差は見られなかった.各要因の検討において,難聴高齢者では主観的幸福感の低さと不安や抑うつの強さ,社会的なつながりの少なさに関連があった.健聴高齢者では主観的幸福感の低さと不安の強さに関連があった.難聴高齢者の主観的幸福感を保つには社会とのかかわりが減少しないように難聴を早期に発見し補聴を行うだけでなく社会的な支援が必要であることが示された.

  • 權田 綾子, 工 穣
    2025 年66 巻3 号 p. 144-149
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    FLEX24電極を用いた残存聴力活用型人工内耳(electric acoustic stimulation:EAS)の調整方法について,9例12耳で検討を行った.従来のEASのマッピング方法である,65dBHLに相当する周波数(クロスオーバー周波数)よりも低音域に音響刺激(acoustic stimulation:AS),高音域に電気刺激(electric stimulation:ES)を行う方法で作成したプログラムを使用している症例(EAS群)が6例8耳,ASの音を嫌がりESのみで使用していた症例(ES群)が3例4耳であった.12耳中11耳はSkarzynskiらが残存聴力を基に分類した低音域の刺激方法を好んだが,1耳は分類どおりのプログラムを好まなかった.EASのマッピングにおいて,装用者のさまざまな側面に留意し,より快適に装用できるプログラムを提供することが必要だと考える.

  • 間藤 翔悟, 石毛 美代子, 小黒 亮史, 中川 秀樹, 齋藤 康一郎
    2025 年66 巻3 号 p. 150-156
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    喉頭肉芽腫は複数の保存的治療が併用されることが多いが,個々の治療法に関する選択基準は明らかになっていない.本研究では喉頭肉芽腫に対する音声治療の効果とその適応について,後方視的に検討した.対象は2016年4月から2024年3月までの間に,胃食道逆流症に対する薬物治療が無効であった喉頭肉芽腫に対して,音声治療を実施した患者10例.音声治療は声の衛生指導,喉頭マッサージ,semi-occluded vocal tract exercisesを実施した.音声治療の実施後に病変が消失した患者は5例,咽喉頭異常感が消失した患者は7例であった.また,音声治療による病変サイズの変化量と,治療前の声門閉鎖ならびに音声治療による咽喉頭異常感の変化量との間にはそれぞれ有意な相関関係が認められた.胃食道逆流症に対する薬物治療が無効であった喉頭肉芽腫に,声帯萎縮による声門閉鎖不全あるいは咽喉頭異常感を合併している場合には,音声治療を行うことで病変の改善が期待できる可能性が示唆された.

  • ─課題,姿勢,年齢による影響─
    池野 雅裕, 福永 真哉
    2025 年66 巻3 号 p. 157-163
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    鼻音化率測定装置(以下,ナゾメータ)は,鼻咽腔閉鎖機能(または口蓋帆・咽頭閉鎖機能,以下VPF)を評価する方法の一つである.本研究では,健常成人のVPF評価においてナゾメータを使用した際の鼻音化率に影響を及ぼす要因について,課題や姿勢,年齢の違いを分析,検討した.対象は,顎口腔諸器官に器質的および機能的な異常がなく,構音障害および摂食嚥下障害の既往がない若年者39名および高齢者20名とした.方法は,ナゾメータ装着下にて測定姿勢は,仰臥位,リクライニング位45度,座位とし,測定課題は,母音発声,被験文を音読した際の鼻音化率を比較した.結果,母音では若年群,高齢群ともに角度による鼻音化率に有意差は認めず,短文では若年群で仰臥位とリクライニング位45度,リクライニング位45度と座位の標準文と高圧文,仰臥位と座位の高圧文で有意差が認められた.高齢群では,いずれの条件においても有意差は見られなかった.結果から,鼻音化率には,鼻咽腔の解剖学的構造や年齢による変化,重力の影響が示唆された.

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