有病者歯科医療
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4 巻, 2 号
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  • 3. 紹介患者における検討
    西原 昇, 桑澤 隆補, 山崎 卓, 茅野 めぐみ, 本澤 一路, 三宮 慶邦, 扇内 秀樹
    1996 年 4 巻 2 号 p. 47-52
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1993年11月から1994年10月までの1年間に東京女子医科大学歯科口腔外科を紹介により受診した有病者について臨床統計的観察を行い, 次の結果を得た。
    1. 紹介により来科した患者は1323名で, 有病者は885名であった。
    2. 性別では, 男性461名, 女性424名で, 年代別では60歳代が206名 (23.3%) と最も多く, 次いで50歳代, 40歳代の順で, 平均年令は48.7歳であった。
    3. 院外からの紹介では, 歯科が57名, 医科が36名であった。院内の紹介では, 入院患者597名, 通院患者195名の計792名であった。
    4. 院外患者の紹介理由は, 全身疾患の合併によるものが最も多く, 院内からでは患者の希望によるものが多数を占めていた。
    5. 他科疾患別では, 循環器疾患が383名 (33.7%) と最も多く, 次いで新生物, 内分泌・代謝疾患, 泌尿器疾患の順であった。
    6. 当科での疾患は, 歯科疾患が656名 (74.1%) を占め, 次いで炎症, 顎関節症, 外傷などの順であった。
    7. 処置内容では, 充填・補綴処置, 抜歯, 経過観察の順に多かった。
  • 中里 滋樹, 渋井 暁, 工藤 啓吾
    1996 年 4 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患を有する歯科疾患患者は, 当科ではすべての心疾患患者の約50%を占めている。
    近年著者らは, 口腔外科処置を必要とし, 虚血性心疾患を有する患者の全身評価に, 著者らの作成した術前評価法を臨床に応用しているが, その評価法はマスターズテストの結果に危険因子を加算した方法である。昭和58年から平成7年までに当科で虚血性心疾患を有する患者の口腔外科処置で偶発症が発生した症例は5例であり, そのうち4例は著者らの作成した術前評価法では, マスターズダブルテストは陽性で, 危険因子は1-3個含んでいた。
  • 第1報 統計的観察
    藤原 寿彦, 白川 正順, 坂井 陳作, 岩本 正生, 小笠原 健文, 野村 健, 宮原 康郎, 神田 禎則, 阿多 史雄, 五百蔵 一男, ...
    1996 年 4 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    高齢化社会が本格化した昨今, ますます有病者の歯科受診が日常化しようとしている。
    今回筆者らは, 1988年1月から1993年12月までの6年間に町田市民病院口腔外科を受診した初診患者13455例のうち全身疾患を有し現在内科をはじめ他科で加療を受けている有病者2209例について, 臨床統計的観察を行い, 若干の知見を得たので考察を加え報告する。
    性別では男性1025例, 女性1184例, 年代別では60歳代521例 (23.6%) と最も多く, 次いで50歳代499例 (22.6%), 70歳代351例 (15.9%) であった。
    全身疾患別では, 循環器疾患が圧倒的に多く1469例 (58.0%) で, そのうち高血圧症が862例 (58.7%) と過半数を占めた。次いで代謝疾患393例 (15.5%), 消化器疾患324例 (12.8%), 呼吸器疾患103例 (4.1%) などの順であった。
    また処置内容では, 観血処置が1245例 (53.6%) と過半数を占め, なかでも抜歯が947例 (76.1%) と多数を占め, 保存, 補綴処置は157例 (14.6%) であった。
    観血的処置例では術中なんらかの麻酔管理を必要とした患者は738例 (31.8%) で, 笑気吸入鎮静法が388例 (52.6%) と過半数を占めた。
    本報告は他報告に比較して有病者率が低かった。その理由は対象とする患者が現在全身疾患を有し加療中のものに限定し, 過去に有病歴をもっていても現在加療を受けていないものについては除外したためと思われた。
  • 岩坪 れい子, 保坂 栄勇, 後藤 和久, 村山 高章
    1996 年 4 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    合併症を有する三名の患者の顎関節脱臼の治療例を報告する。
    症例1: 心筋梗塞を有する68歳の女性が左側顎関節の習慣性脱臼を主訴として紹介来院した。心筋梗塞の発作以来, 患者は義歯を使用していなかったが調整し, また床裏装を行なって装着させたところ, 習慣性脱臼を防止できた。
    症例2: 脳内出血後, 片麻痺を生じ, また高血圧を有する86歳の女性に陳旧性両側性顎関節脱臼が発見され, 紹介来院した。
    全麻下にて観血的整復術を施行した。
    予後は良好である。
    症例3: 小脳萎縮, パーキンソン症候を有する68歳の女性が習慣性両側性顎関節脱臼を主訴として来院。全麻下にて関節結節削除術を施行した。術後経過は良好である。
    合併症を有する患者の場合, 治療法は慎重に選択されるべきであると考える。
    顎関節脱臼の治療にはさまざまな保存的または観血的療法があり, 合併症を有する患者の場合, 可能なかぎり保存的療法が望ましいが, 観血的療法を選択しなければならぬ場合もある。
  • 第1報 根尖病巣歯の処置について
    後藤 康之, 竹内 学, 桂川 高雄, 外山 和利, 上田 実
    1996 年 4 巻 2 号 p. 74-79
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    骨髄移植前に口腔病変を治療することは, 骨髄移植期間中の感染性合併症を減少させるとの報告がなされてきた。しかし, 臨床症状がない根尖病巣歯の治療に対しては一定の見解が得られておらず, その対応に苦慮することが多い。
    そこで本研究は, 1987年10月~1993年12月の間に骨髄移植前の口腔診査にて名古屋第二赤十字病院歯科口腔外科を受診した78人の内, 臨床症状がなく, X線写真で発見された根尖病巣歯を有する24人を対象とし, 治療を受けた群 (抜歯群, 再根管治療群) と未処置群に分け, 骨髄移植後の感染性合併症について比較検討することを目的とした。
    検討項目は, 1) 発熱日数 (38℃ 以上), 2) 好中球数500/μlになるまでの日数, 3) 腫脹・疼痛・違和感等の歯性感染に関する症状の有無とした。
    その結果, 発熱日数, 好中球数500/μlになるまでの日数, 局所感染の有無において治療群と未処置群との間に明らかな有意差は認めなかった。
    以上の結果より, 無症状根尖病巣歯は, 骨髄移植後の感染性合併症の発生を必ずしも惹起するものではないことが示唆された。
  • 濱田 良樹, 濱田 明子, 高田 典彦, 木下 径彦, 堀内 俊克, 岩佐 治男, 瀬戸 皖一
    1996 年 4 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 維持透析患者の口腔内に自然出血をきたした骨膜下インプラント周囲炎の1例を経験したので報告する。
    患者は, 糖尿病性腎症に心筋梗塞などの合併症を有しており, 全身麻酔下骨膜下インプラント体摘出術に際し, そのリスクはきわめて高く, 周術期管理に難渋した。
    術前の断続的な自然出血による貧血の悪化は, 術前輸血にて補正し, 血清カリウム, BUN, 血清クレアチニンなどは, 手術前日まで透析を行うことによってコントロールした。また術後の高カロリー栄養補給を中心静脈栄養にて行うことで, 水分, 血糖の管理を単純化し, 同時に術後の口腔内を清潔に保った。手術時間は3時間8分, 術中の総出血量は831gであったが, 術中の輸液を調整することで対応し, 輸血は行わなかった。術後の透析は手術翌日より再開したが, 出血等のトラブルは全くなく順調に回復した。現在, 新たに作製した上下顎総義歯を問題なく装用中である。
    本症例の治療経験から, 特に有病者に対して歯科インプラントによる治療を行う場合には, 口腔内の状況のみならず, 全身状態の把握と長期的予後についても慎重に検討するべきであると考えられた。それには, 医科担当医への歯科インプラントに関する啓蒙と患者管理における協力体制の確立が不可欠であると思われた。
  • 飯田 尚紀, 野口 いづみ, 笹尾 真美, 雨宮 義弘, 中川 洋一
    1996 年 4 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    53歳男性 (体重52kg, 身長151cm) のアイゼンメンジャー症候群患者の歯科治療に対する全身管理を経験した。患者は右上顎の痛みを訴えて来院した。患者は41歳時に血尿と息切れの為に内科を受診し, 心室中隔欠損症, 肺高血圧症を指摘され, アイゼンメンジャー症候群の診断を受けた。根治術の適応外と診断され40日間入院し, 投薬治療が行われた。51歳時には心不全のため40日間入院し, それ以後フロセミド (ラシックス(R)), スピロノラクトン (アルダクトンA(R)), 塩酸ジルチアゼム (ヘルベッサー(R)) を内服しており, NYHA II~III度と考えられた。血圧115-140/65-70mmHg, 脈拍は68-89回/分と正常範囲内であったが, 動脈血酸素飽和度は88~93%と低値であった。内科の担当医からは突然死の可能性もあると伝えられていた。口腔内精査の結果, 全顎の歯周炎が認められ, 7〓78〓の抜歯と全顎の除石が必要と考えられた。
    術前には担当医と連絡をとり病状を把握し, 患者と家族に病状を説明し承諾を得た。入院させて処置を4回にわたって行うこととし, 1, 2回目は抜歯を, 3, 4回目は除石を行った。術前より感染性心内膜炎予防のために抗菌剤を投与し, 術中は心血管系作動薬と抗ショック薬と救急蘇生器具を準備した。患者を処置室に入室させ, 血圧計, 心電図計, パルスオキシメータを装着し, 静脈路を確保した。局所麻酔は表面麻酔奏効後にフェリプレシン0.03単位添加3%プロピトカインを用いて浸潤麻酔を行った。4回とも術中経過は順調で, 術後も30分間パルスオキシメータによる観察と注意深い管理を行った。なお, 術後3日間抗菌剤を投与し, 術後も合併症もなく無事に経過した。
  • 金 賢成, 廣瀬 陽介, 糸山 暁, 佐藤 健, 林 直樹, 廣瀬 伊佐夫
    1996 年 4 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    歯科麻酔科における有病者全身管理の実態を把握するために統計的検討を行った。対象は, 1985年4月から1994年3月までの9年間に院内他科から患者の状態評価や歯科処置中の安全のための全身管理依頼を受け, 歯科麻酔科外来を受診した有病者とした。結果は次のごとくであった。
    1. 1985年4月より1994年3月までの9年間の松本歯科大学病院を受診外来患者で歯科麻酔科に依頼があり当科で全身管理を行った有病者について臨床統計的検討を行った。
    2. 全身管理を行った有病者数は425例で男女比はほぼ同一であった。平均年齢は56.4±15.3歳で, 当科受診の健常者の平均年齢27.3±11.2より高齢であった。
    3. 基礎疾患では高血圧症 (42.2%), 循環器系疾患 (32.2%) の両者で全体の14.4%となり, 特に高血圧症と他の基礎疾患との合併率が高かった (35.1%)。
    4. 処置では抜歯術 (65.5%) を含む観血的処置が全体の78.1%であった。
    5. 全身管理法はStand by群 (58.5%) が最も多く以下IS群 (28.4%), IV群 (13.1%) の順となった。
    6. 術中RPPが12,000を上回った症例はStand by群 (34.5%), IV群 (43.1%), IS群 (49.5%) となった。
  • 寺本 貴, 川合 道夫, 朝比奈 たまき, 水谷 英樹, 上田 実
    1996 年 4 巻 2 号 p. 100-104
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    血小板無力症は, 出血時間が延長し, 血小板の数には異常を認めず, その機能の異常による出血性素因の一つで, 稀な先天性疾患である。こういった患者の外傷や外科的侵襲後の出血に対しては, 従来, 血液製剤を輸注することにより, 止血管理を行ってきた。
    今回われわれは, 血小板無力症患者の抜歯を経験したので報告する。患者は31歳女性で, 右側下顎臼歯部の歯痛を主訴に当科を受診したが, その際, 左側上下顎第三大臼歯周囲歯肉に出血を認めた。両側上顎第三大臼歯, 左側下顎第三大臼歯は歯冠崩壊し, 抜歯の適応と考えられた。全身麻酔下にて, 3本の智歯を抜歯した。術前術後に, 血小板を10単位輸注した。その際, 白血球除去フィルターを使用し, 血液製剤中の混在白血球を除去することにより, 輸血後の非溶血性発熱反応, 同種抗原感作による血小板輸血不応状態の予防, 移植片対宿主反応 (GVHR) の防止に努めた。そして, 極力周囲の組織に対する侵襲を避け, 縫合やコアグレーターなどで, 局所止血処置を十分かつ確実に行ない, 保護床などで創面を保護し, さらに, 血管強化作用のあるカルバゾクロム系製剤や, 凝固, 線溶系に働く抗プラスミン剤を補助的に使用した。その後は特に出血を認めず, 7日後に軽快退院した。
  • 朝比奈 たまき, 水谷 英樹, 川合 道夫, 寺本 貴, 上田 実
    1996 年 4 巻 2 号 p. 105-108
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    口腔外科領域では, 頸部結核性リンパ節炎は頸部腫脹を来す主要な疾患の1つであるが, 悪性腫瘍を含めた他の疾患との早期鑑別診断は非常に困難である。今回われわれは, 透析患者に発症した頸部結核性リンパ節炎を経験したのでその概要を報告する。
    症例: 50歳, 女性
    主訴: 左側頸部腫脹
    既往歴: 内科にて透析治療中
    胸部X線写真, 菌検査は陰性であったが, ツベルクリン反応は陽性であった。頸部結核性リンパ節炎が疑われたが, 頸部腫瘍も否定できず, 全麻下に頸部リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的検査では結核性リンパ節炎が認められた。
    透析患者は易感染性であることが知られており, 肺外結核の中ではリンパ節結核が多く認められる。患者は透析中であり抗結核剤の投与時期, 副作用に配慮する必要があった。
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