有病者歯科医療
Online ISSN : 1884-667X
Print ISSN : 0918-8150
ISSN-L : 0918-8150
6 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 角 保徳, 西田 功, 佐々木 成高
    1998 年 6 巻 2 号 p. 33-41
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 病診連携を推進する上で, 開業歯科医師及び病院歯科医師の意識及び実態を把握するためのアンケート調査を行った。その結果, 以下のことが判明した。
    1: 病院歯科医師と開業歯科医師ともに医療法や地域保健医療計画の認知度が必ずしも高くなく, その認知度に差がある。このことが今後の地域保健医療計画の推進への障害となりうるので同計画の認知度の向上が望まれる。
    2: 地域保健医療計画の認知度が向上すれば, 地域歯科医療での病診連携を充実しうることが推測される。
    3: 個人的病診連携ではなく, 組織的な病診連携を推進する必要がある。
  • 中村 広一
    1998 年 6 巻 2 号 p. 42-47
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    抗精神病薬療法下の53才女性の精神分裂病者にみられた顎関節脱臼を報告する。患者はfluphenazineによる薬物療法下にあり, 1年以上前から持続する咀嚼困難を訴え来科した。臨床所見およびX線写真にもとづき両側顎関節亜脱臼と診断した (写真1,2)。これらの症状の発症原因としてfluphenazineの副作用である錘体外路症状が推測されたが, 精神症状の治療上の必要性から処方の変更はなかった。顎関節の症状は改善しないまでも悪化もなく5カ月経過した時点で, 1週間にわたる重篤な完全脱臼が発現したが患者はこれを放置した。入院下に徒手整復を行い, 顎関節はほぼ満足できる状態となった。その際, fluphenazineがchrolpromazineに変更され, 以後, 顎関節に問題なく経過した。しかし約1年後, 精神状態の悪化に伴い精神科からhaloperidolの投与が開始され, その7カ月後に顎関節完全脱臼が再燃した。徒手整復を施行し, haloperidolがchrolpromazineとlevomepromazineに変更された。その後は顎関節の異常なく経過し, 正常咬合を保っている。本症例の顎関節脱臼はfluphenazineおよびhaloperidolの副作用のひとつである遅発性ジストニアに起因したものと推測された。
  • 8. 出血傾向が疑われる患者への対応
    馬場 浩雄, 栗田 浩, 小谷 朗
    1998 年 6 巻 2 号 p. 48-54
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1986年7月より1990年6月までの4年間に信州大学医学部付属病院歯科口腔外科を受診した7988名を対象に, 出血傾向が疑われた患者に対する歯科口腔外科的治療の実態を調査検討し, 処置を行うにあたり出血傾向を考慮すべき患者は261名 (平均年齢37.5歳) で, 外来新患総数の3.3%を占めた。疾患別患者数では血液造血器系疾患が63.2%と最も多く, 次いで循環器系疾患24.9%, 肝疾患5.4%, 腎疾患3.8%であった。処置内容は抜歯などの口腔外科的治療が57.9%を占めた。出血傾向を考慮すべき261例中, 147例 (56.3%) に観血的処置が行われていた。この内, 56例 (38.1%) に対し, 延べ89件の特別な配慮がなされていた。治療後のトラブルは6例 (4.7%) に後出血があり, 肝疾患が3例と多かった。
  • 織田 真由美, 亀倉 更人, 北川 栄二, 福島 和昭
    1998 年 6 巻 2 号 p. 55-59
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    リチウム服用患者の全身麻酔に際しては, リチウム中毒および副作用に留意する必要がある。特に, 麻酔関連薬剤との相互作用, 心電図異常や腎障害, 周術期の電解質バランスの異常に十分配慮することが重要となる。すなわち, 術前からリチウムを一時休薬し, 周術期のリチウム濃度を測定し, 筋弛緩モニターを用いることに加え, さらに, 電解質, 特に血清ナトリウム濃度の測定を行い。適切な輸液管理に留意することが重要である。また, 麻酔薬の過量投与に注意することが必要である。
    今回我々は, リチウム服用患者の全身麻酔を経験したが, 周術期に血清リチウム濃度を測定するとともに, 使用する薬剤とリチウムとの相互作用や, 電解質異常に留意し, また, 通常のモニターに加え筋弛緩モニターを用い, 特に問題なく管理を行うことができた。
  • 旭 吉直, 金 容善, 丹羽 均, 高木 潤, 崎山 清直, 米田 卓平, 伊藤 正己, 松浦 英夫
    1998 年 6 巻 2 号 p. 60-63
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    大阪大学歯学部附属病院にて, 特発性間質性肺炎を有する52歳女性の歯科治療が昨年行われた。
    本患者は, 44歳時に呼吸困難と動悸を訴え, 某総合病院で, 心不全を合併した特発性間質性肺炎の診断を受けて90日間入院した。50歳時には1日24時間の酸素吸入療法が開始された。2年前からは, 合計4回, 無力状態になり, 同院に搬送されていた。
    胸部レントゲン写真では心拡大が認められ (心胸郭比70%) (図2), 心電図上, 心室性期外収縮の頻発と右室負荷が認められた (図1)。両下肺野で捻髪音が聴取された。身体活動性は, NYHAの分類でIII度, Hugh-Jonesの分類ではIV度に相当すると考えられた。
    歯科治療時は, 心泊数, 血圧, 心電図, 動脈血酸素飽和度をモニタリングし, 抗不整脈薬も投与できるようにしておいた。心電図上, 心室性期外収縮と発作性上室性頻脈の頻発が認められたが (図3), 不快な症状を訴えなかったため, 薬剤は使用しなかった。レジン充填は無事に終了できたが, 10日後, 呼吸不全のために本患者は死亡した。
    有病者の歯科治療の危険性をあらためて認識させられた症例であった。
  • 田上 泰子, 野口 いづみ, 大山 奈美, 木村 貴美, 矢崎 素子, 余 徳雄, 高野 宏二, 笹尾 真美, 関田 俊介, 雨宮 義弘
    1998 年 6 巻 2 号 p. 64-74
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症患者3症例の歯科治療のための全身管理を経験した。
    症例1は16歳, 男性で, 糖原病による拡張型心筋症と軽度の精神発達遅滞がみられた。NYHA心機能分類2度と考えられ, 心電図では心房細動, 頻脈がみられ, 左室駆出率 (EF) 30~34%, 心胸郭比 (CTR) は63%であった。モニターと酸素投与を行ないながら, 4本の大臼歯のレジン充填を局所麻酔葉を用いずに無事行うことができた。
    症例2は47歳, 女性で, 43歳時に動悸と下肢の浮腫を自覚し拡張型心筋症の診断を受けた。NYHA心機能分類3度と考えられ, 心電図では心房細動, 徐脈がみられ, 心室性期外収縮が17000回/日認められた。EFは50%, CTRは57%であった。9カ月間に13回の歯科処置を行った。モニター, 酸素投与, 抗菌葉の予防投与などを行ない, 救急薬の投薬を必要とすることなく処置を終了した。
    症例3は41歳, 女性で, 22歳時第1子出産後, 拡張型心筋症の診断を受けた。NYHA心機能分類2度と考えられ, 心電図では頻脈, 散発性の心室性期外収縮, V4~6でSTの軽度の低下を認め, EFは18%, CTRは54%であった。5カ月前に口腔外科で, 抗菌葉の予防投与を行なわずに, 1/8万エピネフリン添加2%リドカイン5.4mlを用いて, 〓8〓8を抜歯していたが, 幸運にも経過に問題は無かった。今回, 2回目の感染根管治療中に, 心室性期外収縮が頻発したために, リドカインを静脈内投与した。3回目の処置の前に心不全が増悪し, 治療は中断した。
    今回の処置にあたり, 内科担当医と十分に話し合い, 全身状態について評価し, 歯科医と歯科処置について検討した。処置中は心電図, 血圧, Spo2のモニターを行なった。静脈路を確保し, リドカインを含む救急薬の準備をした。必要に応じて予防的抗菌薬の予防投与を行なった。このような対策が処置を無事行なえた結果に寄与していると思われる。拡張型心筋症の患者の歯科治療には注意深い配慮が必要である。
  • 山田 剛也, 金山 景錫, 西村 正彰, 戸崎 宏樹, 鶴迫 伸一, 小竹 洋, 瀬上 夏樹
    1998 年 6 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 1998/06/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回, 筆者らは陳旧性心筋梗塞の患者に対する抜歯を施行し, 抜歯後に急性心筋梗塞を再発させた1例を経験した。患者は59歳男性, 既往歴には陳旧性心筋梗塞と糖尿病を保有していた。今回の抜歯は, 心筋梗塞発症長期経過後4回目であった。患者は抗血小板薬, 抗凝固薬併用療法を受けており, 今回の抜歯に際し, 内科医の判断で両薬剤を10日前から休薬した。自験例を通じ, 虚血性心疾患患者の抜歯など, 観血処置に際し, 抗血小板薬, 抗凝固薬の中止は現有疾患の増悪を誘発し危険と思われた。しかし, 休薬に対する明確な基準はなく, 基準作成が早急に必要と考えられた。
feedback
Top