有病者歯科医療
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最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 宮下 みどり, 上條 留美, 宜保 明希子, 吉村 伸彦, 栗田 浩
    2015 年 24 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     2012年4月よりがんや循環器疾患,臓器移植患者等に対する周術期口腔機能管理が健康保険の適応となり,口腔管理をうける患者数の増加とともに,口腔の健康に対する関心も高まりつつある.口腔管理により口腔細菌が関与する全身疾患が減少することが期待される.この予備研究の目的は,周術期口腔機能管理の保険導入により口腔細菌が原因となる菌血症が減少したか否かを探ることである.
     2007〜2013年度までの期間の血液培養検査結果の調査を行った.この期間の血液培養検査における細菌検出率は,12.6%〜17.0%であった.周術期口腔機能管理保険導入以前(2007〜2011年まで)は,検出細菌中で口腔細菌の占める割合は5.7%から8.7%で平均7.1±1.2%(95%信頼区間5.69〜8.59%)であったが,周術期口腔機能管理保険導入後には4.1%(2012年),2.6%(2013年)と減少していた.口腔細菌検出率に関して,2007〜2011年と2012〜2013年の間で統計学的に有意な差を認めた.加えて,保険導入後の周術期口腔機能管理目的に受診した患者数も増加していた.
     これらの結果より,周術期口腔機能管理の保険導入は口腔健康管理に良い影響を及ぼし,結果的に口腔細菌による全身感染症の減少がもたらされた可能性が示唆された.
  • 妹尾 日登美, 中野 優子, 徳宮 元富, 應谷 昌隆
    2015 年 24 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     超高齢者社会を迎え,大腿骨骨折の患者は増加してきている.高齢者の大腿骨骨折は自宅での転倒などの軽微な損傷で容易におこる.一旦大腿骨骨折が生じるとADLが低下し,たちまち口腔内環境は悪化する.大腿骨骨折患者の術後におこる合併症として最も多いのが肺炎である.そこで,われわれは70歳以上の大腿骨骨折患者165人を対象に周術期専門的口腔ケアの効用につき検討した.
     周術期専門的口腔ケアを行った群(介入群)79例と行わなかった群(非介入群)86例に分類し,手術後1か月間において,各群の術後発熱,3日以上持続する発熱,肺炎の発症,創部感染の有無について調査した.手術後の発熱,3日以上持続する発熱の頻度については非介入群において多かったが有意差は認めなかった.肺炎の発症は介入群1例,非介入群7例に認められ,統計学的に有意に介入群のほうが少なかった.創部感染は非介入群において1例認めたのみであった.
     高齢者大腿骨骨折患者の術後肺炎予防に周術期口腔ケアは有用であり,積極的に行っていくべきであると考える.
臨床報告
  • 田中 里枝, 長田 哲次, 梅本 紘子, 平野 智昭, 渡邉 賀子, 内山 佳之, 増本 一真, 加藤 文度
    2015 年 24 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は正常な骨髄に関わらず,低血小板数を示す自己免疫疾患である.今回,私たちは術後重篤なITPを発症した症例を経験したので報告する.
     患者は74歳男性で,下顎歯肉扁平上皮癌の治療のため,下顎骨区域切除術,肩甲舌骨筋上頸部郭清術,大胸筋皮弁およびプレートによる再建術を受けた.術前の血液検査に異常値はなく,術中の出血量は310mLであった.術後1日目,血小板数の減少(1.9×104/μL)を認め,血液内科医にコンサルトした.薬剤性血小板減少性紫斑病(DITP),ヘパリン起因性血小板減少性紫斑病(HIT),播種性血管内凝固症候群(DIC),ITP,白血病が鑑別診断として考えられた.直ちに使用薬剤を休薬したが,血小板数は減少し続けたためDITPは除外された.HIT抗体,フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP),Dダイマーは正常値のためHITおよびDICは否定された.骨髄生検にて正常な骨髄細胞を示し,白血病は除外され,最終的にITPと診断された.術後6日目から4日間ステロイドパルス療法を行い,ロミプロスチム(ロミプレート)を投与し血小板数が正常範囲内に回復した.ほとんどのITP患者は予め診断がついており術前治療にてコントロール可能である.しかし,本症例では術後に血小板減少を発症した.急性ITPは大出血の原因となるので,早期診断および積極的治療が重要である.
  • 桐原 有里, 玉井 和樹, 伊介 昭弘, 髙山 岳志, 秋山 浩之, 髙倉 育子, 林 勝彦
    2015 年 24 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     先天性第Ⅴ因子欠乏症は,常染色体不完全劣性遺伝の形式をとり,鼻出血,月経過多,抜歯後出血などの出血症状や臨床検査所見としてAPTT,PTの延長,第Ⅴ因子活性の低下を示す非常にまれな疾患である.今回我々は先天性第Ⅴ因子欠乏症患者に対する抜歯を経験した.本疾患患者に対する止血処置としては,分離精製された凝固因子製剤がないため新鮮凍結血漿の輸注が行われている.今回の症例では抜歯前において臨床検査結果が顕著に改善しており,輸血療法を行わずに局所止血のみで良好な止血状態が得られた.
     今回の症例より,先天性第Ⅴ因子欠乏症患者では後天的な影響がなくても臨床検査結果に大きな変化がみられることがあり,術前の評価や継続的な経過観察が重要であると考えられた.
  • 窪田 稔
    2015 年 24 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)は,腫瘍の3次元的な輪郭に沿った線量分布作成を可能にする技術で,CT画像による高精度な治療計画を必要とする.頭頸部癌の治療では,歯科金属によりCT画像上に金属アーチファクトが発生し,正確な治療計画が不可能になることがある.今回,我々はIMRTに際して予め歯科金属除去を行い,治療計画用CT画像において金属アーチファクトを軽減することができた下咽頭癌の1例を経験したので,その概要を報告する.
     患者は79歳男性で,IMRT前の歯科治療・口腔ケアおよび口腔内歯科金属除去の依頼で,2014年5月に当科紹介受診となった.口腔内所見として残存歯17本すべてに金属冠による補綴処置が施されていた.欠損歯部分を含めた金属冠歯数は20本であった.当科受診前に撮影されたCT画像では,上下顎ともに広範囲の金属アーチファクトが認められた.IMRT前の歯科処置として,臼歯を中心とする9本に対して金属冠除去を行った.上顎義歯の鉤歯3本および他2本の歯に暫間被覆冠を作製した.予後不良あるいは保存不可能と判断した臼歯3本と根尖病変を認めた右下犬歯は抜歯した.処置に要した期間は34日間で,受診回数は6回であった.治療計画用のCT画像では,当科受診前の画像所見と比較し,明らかに臼歯部領域で金属アーチファクトの減少が認められた.2回目のCT撮影から14日後より入院下にて放射線治療(2Gy×35回~70Gy)が開始された.
     頭頸部の放射線治療に際して,歯科金属除去を行うことによりいくつかの歯科的リスクや経済的問題が生じうる.一方,除去の範囲は,CT画像上のアーチファクト発生の部位や程度を左右し治療計画の精度に大きな影響を与えると考えられる.したがって,治療効果の高いIMRTのため,予め放射線治療医との綿密な協議が必要である.早期に癌の治療が開始できるよう,歯科的前処置はできるだけ効率的に進める必要がある.
  • 秋山 麻美, 冨田 優也, 高橋 靖之, 高田 正典, 平澤 貴典, 佐野 公人
    2015 年 24 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/06
    ジャーナル フリー
     今回我々は,歯科治療時に狭心症の胸痛発作を発症し,対応に苦慮した症例を経験した.患者は82歳男性.冠攣縮性狭心症,陳旧性心筋梗塞,発作性心房細動があり,内服加療中である.患者が胸痛を訴えているとの緊急応援要請あった.患者は硝酸薬を内服したところで,意識清明,血圧80/45mmHg,脈拍数47bpm,経皮的動脈血酸素飽和度98%であった.胸痛,呼吸浅速,顔面蒼白を認めたため,モニタリングと酸素投与を開始した.徐々に胸痛は軽減し気分不快も改善したが,循環抑制が著明であったため,循環器内科に救急搬送した.搬送時には諸症状が消失したが,その1週間後に入院下で心臓カテーテル検査を施行した.その後,本人が管理していた内服薬は用法・用量が遵守されていないことが判明した.高齢の患者は,必ずしも指示された通りに服薬しているとは限らない.術者ならびにスタッフは実際の服薬内容を確認し,その情報を共有する必要性があることを再認識した症例であった.
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