日本医真菌学会雑誌
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32 巻, 2 号
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  • Mahendra PAL, Chikage ONDA, Atsuhiko HASEGAWA
    1991 年 32 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    In vitro study to determine the sexual compatibility of 26 Cryptococcus neoformans isolates was conducted on sunflower (Helianthus annus) seed agar. Among 26 isolates examined, 14 were originated from animals, 6 from men and 6 from environmental substrates; 17 isolates were obtained in Japan and 9 in India. These isolates were crossed with each of the 2 mating types (α and a) of Filobasidiella neoformans var. neoformans or F. neoformans var. bacillispora. All the isolates produced basidiospores, basidia, dikaryotic hyphae with clamp connections when paired with the “a” mating type of F. neoformans var. neoformans. We could not find any isolate showing sexual reproduction with “α” mating type of either variety of F. neoformans. Furthermore, none of the isolates exhibited self-fertile behavior. Our results indicate that the “α” mating type occurs more frequently in both clinical and natural isolates of C. neoformans originated from Japan and India.
  • 症例報告と原因真菌の薬剤感受性
    桐生 博愛
    1991 年 32 巻 2 号 p. 107-117
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    産業医科大学皮膚科で確実に角膜真菌症と診断された 2 症例を報告し, ついで 1988 年までの本邦報告例について若干の統計的観察を行った.症例 1 は, 右眼の眼痛と視力障害を主訴とした 35 歳男性で, 原因菌は Fusarium solani であり, amphotericin B の点眼によって治癒した.症例 2 は左眼の眼痛と視力障害を主訴とした 65 歳女性で, 原因菌は Alternaria alternata であり, ketoconazole の内服によって治癒した.
    本邦における角膜真菌症の症例は, 1988 年までに 250 例を越える報告がある.そのうち直接鏡検で病巣内に菌要素が証明され, さらに培養も陽性で原因菌種の同定までなされている症例は全症例数の 34% であった。我々はこれらの症例を確実例として統計的な観察を行った.その結果症例数は年々増加の傾向を示し, 年齢的には若年者に少なく高齢者に多い傾向を示した.分離された原因菌種は20種以上にのぼるが, なかでも Fusarium が最も多く, 全体の 26% を占めた.
    次に我々の分離した F.solani 及び A. altemata に対する抗真菌剤の最少発育阻止濃度 (MIC と略) を測定した.その結果 pimaricin または amphotericin B の点眼はいずれの菌にも有効であるが, miconazole と ketoconazole は Fusarium に対して効果が弱いと思われた.つぎに MIC 測定における培地 pH と培養温度の影響について検討し, これらを通常より生体に近い条件に設定した場合, amphotericin B と ketoconazole の MIC 値がかなり改善される結果を得た.よって, これらの薬剤は実際の治療において MIC 値から予測されるより強い抗菌作用を示している可能性が示唆された.
  • 前崎 繁文, 河野 茂, 安岡 彰, 山田 洋, 光武 耕太郎, 古賀 宏延, 原 耕平, 瀬戸 牧子, 豆谷 源一郎
    1991 年 32 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    深在性真菌症は一般に診断および治療が困難なことより, しばしば重篤な結果を招来する.今回, 我々は血清学的検査法によりカンジダ血症を早期に診断し, 抗真菌剤の投与により治癒し得た症例を経験した.症例は5例すべて70歳以上の高齢者で, 基礎疾患として, 3例に脳梗塞を認め, 2例は老人性痴呆のため長期臥床の状態であった.血清学的診断の検討では, 5例中3例で, Fungal indexが60以上の陽性を示した.Cand-Tecは5例中2例で16×の強陽性を示し, またマンナン抗原の検出は3例中1例に陽性であった.D-アラビニトールは4例すべて陰性であったが, D-アラビニトール/クレアチニン値は1例が正常上限以上の陽性であった。真菌学的検査では5例すべて血液よりCandida属が分離され, Candida al-bicansが3例, Candida Parapsilosis, Candida tropicalisがそれぞれ1例であった.
  • 加藤 卓朗, 西岡 清, 佐野 隆夫
    1991 年 32 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    Microsporum canis 感染症患者の非病変部の菌の検索を行った.対象はM. canis 感染症患者 9例で, その内訳は頭部白癬5例, 体部白癬4例であった.性別は男性3例, 女性6例で, 年齢は3歳から46歳 (平均14.9歳) であった.培地としてアクチジオン・クロラムフェニコールを加えたサブロー平板培地を用いた.培養法として, 手指腹にはFinger-press法を, 手背, 頚部, 背部には綿棒法を, 頭髪にはヘアーブラシ法を用いた.結果はすでに報告した病巣のない頭髪と同じようにその他の部位の非病変部から高率にM. canisを検出した.とくに本菌による手白癬はまれにもかかわらず, 手指腹は9例中7例 (77.8%) が陽性で, 陽性症例では10本すべての指の圧抵部位より菌が発育する症例が多かった.その他の部位では手背が6例中3例 (50%), 頚部が9例中4例 (44.4%), 背部が5例中2例 (40%) とそれぞれ高率に菌を検出した.また頭部白癬患者にはグリセオフルビン内服療法, 体部白癬患者には病変部のみ抗真菌剤の外用療法を行ったが, 手白癬を含めて全例で非病変部に新たな発病はみられなかった.以上よりM. canisは病巣中から周囲に大量に散布されるために, 病変がない皮膚からも頭髪と同様に高率に菌が検出されるが, 菌は多くの場合, 単に付着しているにすぎないと結論した.
  • 庄司 昭伸, 木村 雅友, 三橋 武弘, 宇田川 俊一
    1991 年 32 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    深在性真菌症およびノカルジア症において病巣の新鮮組織からと同様, 凍結保存した組織をもちいても原因菌を分離培養することが可能であることを示した.密封容器を使用し, -80℃で保存した凍結組織を材料として分離培養した.1例では, 1年2ヵ月の長期間の保存にもかかわらず菌が生存していた.また, 病巣から病原菌を分離培養するときは, 汚染を避けるため抗生物質等の抗菌剤の液中で試料を微細にした方がよいが, 菌種によっては感受性があるため注意が必要である.
    このような方法で, Candida tropiealis, C.albicans, Nocardia asteroides, Aspergillus terreusなどの分離培養に成功した.
  • I. Sporothrix schenckii細胞におけるスクアレンエポキシダーゼ反応阻害および直接的細胞膜障害
    平谷 民雄, 浅黄 友季世, 山口 英世
    1991 年 32 巻 2 号 p. 139-149
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    Sporothrix schenckiiを試験菌として用い, 新規ベンジルアミン系抗真菌剤butenafine hydrochloride (butenafine) の抗真菌作用メカニズムについて検討を行い, 以下の成績を得た.
    (1) Butenafine≧1.1×10-7Mの添加により本菌の発育はほぼ完全に阻止され, 遅くとも24時間以後生菌数は経時的に低下した.
    (2) Butenafine≧5×10-8Mの存在下で本菌のエルゴステロール合成は明らかに阻害され, 一方スクアレンが大量に蓄積した.
    (3) Butenafineを≧1.4×10-5Mの高濃度で本菌細胞に作用させると, K+, 無機リン酸などの細胞内成分が急速に放出され, 細胞外のpHは上昇した.これらの成分の放出量は, 薬剤濃度と時間に依存して増加した。
    (4) 以上の成績から, (i) 本剤は, アリルアミン系またはチオカルバミン酸系薬剤と同様, 真菌ステロール合成経路上のスクアレンエポキシダーゼを作用標的とし, 結果的に起こるエルゴステロール合成阻害によって抗菌活性を発揮すること, (ii) この作用メカニズムとは別に, butenafineは高濃度で細胞膜に対して直接的障害を与えること, (iii) 高度感受性菌においては (i) の作用メカニズムが一次的に働くが, 低度感受性菌では (ii) も重要な役割を演じる可能性があることが示唆される.
  • II. Sporothrix schenckiiのtolciclate耐性変異株を用いた解析
    平谷 民雄, 浅黄 友季世, 山口 英世
    1991 年 32 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    チオカルバミン酸系抗真菌剤tolciclateおよびアリルアミン系抗真菌剤naftifineに対して高い感受性を有する二形性真-菌Sporothrix schenckii野生株ならびにこの株から誘導したtolciclate耐性変異株の酵母形細胞を用い, 新規ベンジルアミン系抗真菌剤butenafine hydrochloride (butenafine) の抗真菌作用メカニズムについて検討を行い, 以下の成績を得た.
    (1) S. schenckii野生株はbutenafineに対して高い感受性を示し, 本剤の50%発育阻止濃度 (IC50) は0.005μg/mlと低かった.一方, tolciclateおよびnaftifineに対して耐性化した7株の変異株は, 例外なく, スクアレンエポキシダーゼ活性を欠損するものとしないものとに分けられたが, いずれの変異株もbutenafineに対して交叉耐性を示し, IC50値は0.04~0.63μg/mlの範囲にあった.
    (2) Butenafineを5μg/ml以上の高濃度で感受性株およびスクアレンエポキシダーゼ活性を欠損する耐性変異株の両者の静止期細胞に作用させると, 細胞内のK+が迅速に放出された.その放出量は薬剤濃度に依存し, また同一薬剤濃度下では感受性野生株と耐性変異株との間で明瞭な相違はみられなかった.
    (3) 感受性野生株および耐性変異株の発育培養に0.04~40μg/mlの範囲で種々の濃度のbutenafineを添加し, 培養した場合, いずれの菌株においても培養6時間目の時点ではいかなる薬剤濃度によっても殺菌的作用を受けなかった.しかし, 培養24時問以後では, 野生株においては0.04μg/ml以上, 変異株においては0.63μg/ml以上の薬剤濃度で殺菌的効果が認められた.
    (4) 以上の成績から, 少なくともS. schenckiiのような高度感受性菌においては, アリルアミン系およびチオカルバミン酸系薬剤と同様, スクアレンエポキシダーゼ阻害作用がbutenafineの一次的作用メカニズムとして働き, 直接的細胞膜阻害作用は二次的な役割しか持たないと考えられる.しかし, 低度感受性菌においては後者の作用が抗菌活性により大きく関与する可能性も否定できない.
  • 海老原 全, 小粥 雅明, 杉浦 丹, 増田 光喜, 西川 武二
    1991 年 32 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    65歳, 女, 乳癌患者の左大腿に認められたクロモミコーシスの1例を報告した.極めて初期の病変像を示していると考えられ, 臨床的には紅色を帯びた淡褐色扁平隆起性小結節を呈し, 組織学的には, 表皮突起が不規則, 樹枝状に伸長し, 微小膿瘍を包囲する所見が認められ, elimination現象が進行しつつある状態と考えられ, 将来, 典型的結痂疵状局面へ移行するものと推察された.また鱗屑・痂皮, 真皮病変内に多数の菌要素を認め, 基礎疾患およびステロイド剤長期内服による細胞性免疫能の低下が原因と考えられた.
  • 新規アリルアミン系抗真菌剤Terbinafineの作用
    西山 彌生, 浅黄 友季世, 平谷 民雄, 山口 英世, 山田 直子, 大隅 正子
    1991 年 32 巻 2 号 p. 165-175
    発行日: 1991/04/15
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
    Trichophyton mentagrophytes 発育菌糸に及ぼすアリルアミン系抗真菌剤 terbinafine の影響を走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて検討した.低濃度のterbinafine (0.2ng/ml) の作用で菌糸発育は阻害された.発育菌糸の形態変化はterbinafineの作用濃度に比例して増大する傾向がみられた.低濃度の薬剤処理では菌糸の幅が不均一になり, 屈曲した不整形菌糸, および菌糸先端部の膨化が認められた.薬剤の作用濃度が上昇すると菌糸表層部の剥離, 穿孔が顕著に認められ, 最終的に菌糸は破壊像を呈した.一方, 低濃度の薬剤を作用させた細胞内では, 高電子密度を呈する顆粒構造が細胞壁および細胞質内に認められた.薬剤濃度を上昇させると, 細胞膜およびオルガネラの膜構造が変性, 融解し菌糸細胞はゴースト化した.これらの形態学的所見から, terbinafine はT. mentagrophytes発育菌糸細胞内に顆粒構造物を形成させ, 膜構造を破壊し, 細胞死に至らせる顕著な効果を有することが示された.
  • 1991 年 32 巻 2 号 p. 182
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/12/21
    ジャーナル フリー
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